事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します

虚心坦懐に事実を見るということ。SPEEDIの放射線量の予測値と、その予測の根拠となる計算についての正確な理解が福島を救います。

 3・11にSPEEDIのデータが公表されなかったということについて報道がなされていますが、衝撃的な数字やカラーが目に入ってくるものなだけに、端的に事実を把握することが肝要です。

 

news.yahoo.co.jp

 

同省の政務三役はこの日行われた内部協議で、予測結果の図面を見て「一般にはとても公表できない内容であると判断」し、公表を見送った

※同省=文部科学省

 

 

この点について、しっかりと整理しましょう。

 

 

SPEEDIの結果は、事故当時の「仮定」計算条件における、「予測」 

 

上記記事の中にある、「SPEEDIによる放射能拡散予測結果」については以下の資料があります。

http://archive.gohoo.org/archives/wspeedi/jaea_0316_2.pdf

 

 

これは、「仮定計算条件に基づく予測結果」です。

 

 

コンピューターシミュレーションによる推測値です。

実際に放出された放射線量を表すものではありません

 

これは、ものづくりの現場で利用されている解析ソフトと同様の精度があるという感覚でみてはいけないものなのです。

 

政府以外の試算結果

www.youtube.com

 

青山繁晴参議院議員は、こう指摘します。

 

原子力安全保安院が発表したのは370000テラベクレル原子力安全委員会が、630000テラベクレルと発表。その後原子力安全保安院50万テラベクレルを上乗せした数字を発表。日本政府が発表した数字はこれが全てです。両委員会もその後廃止され、野田内閣のもとで原子力規制委員会が発足しています。その後、放射性物質の計算はなされていません。

ー略ー

コンピューターシミュレーションによる推測値というのは、値や条件の入れ方によっては、手計算と違って、どんどん大きくなりかねないという、科学に携わる者であればどなたでもご存じの特徴があります。

ー略ー

東京大学名誉教授の西村肇は、2011年4月8日の記者会見で、福島原子力災害による放射性物質の漏えいは、1000テラベクレル程度という計算を明らかにされています。

 

これは、空間放射線量についての話ではないので、今回の報道に直接適用されるものかどうかは慎重になるべきことをあらかじめことわっておきます。

 

なお、事故から相当の日数が経過した後には、政府は福島の上空の空間放射線量を実際に測定しています。この日記で言及しているのは、あくまで事故当時の放射性物質の量についての予測(概算)であって、これについては現時点でより真実に近い値が計算されていないという指摘についてです。

以下に「放射線の正しい知識を普及する会」のリンクを示します。

【記事紹介】福島の住民がさらされている放射能は、考えられているよりもずっと少ない « 放射線の正しい知識を普及する会 Web

 

現地計算がなされていない理由

放出源である福島第一原発の原子炉付近は未だ高い放射線量を示している(これはその通り)ため、調査ができる環境が整っていないということ。

 

これは、技術的な問題もあると思われるため、今後の努力が望まれます。

 

IAEAなどの国際機関はどうしているのか

 上記動画では、IAEA事務局長が、38万~120万テラベクレルという試算であり、日本政府の発表と大きく異なるものではないと発言したと紹介されています。

 

しかしこれは、IAEAなどの国際機関も、基本的には日本が出した値あるいはデータの取り方を参照しています。

 

したがって、現時点で、世界中のどの機関も、放出された放射線量の、比較的真実に近い計算はできていないという現状があります。

 

結語:思い込みで事実を解釈してはいけないということ

日記冒頭の記事の内容は、事実に基づく中立的な報道です。

ただし、この記事を読んだ人の中には、「一般にはとても公表できない内容であると判断」し、公表を見送った、という文言を見て、

 

とんでもなく重大な汚染があったのに隠蔽されていた?

 

と、思い込む人が出てくることは、ある意味で当然だと思います。

 

しかし何度も言うように、これは「仮定的な計算条件」のもとで算出された「予測値」でしかないわけです。

そうであるからこそ、一般には公表できない内容であると考えてしまった面があると思います。ただ、このような方針が「隠ぺい体質」という批判を呼び込み、国民が福島に関する情報においては、「とりあえず危険な方向で理解する」という態度を取らせたといえ、リスクコミュニケーションとしては完全に誤りであることを指摘します。

 

SPEEDIの計算手法、仮定条件に基づく予測が実態に合ったものだったのかどうかは、現時点ではまだわかりませんが、西村肇教授や青山繁晴参議院議員の指摘は、非常に重要なものだと言えるでしょう。

 

この点についての私たちの認識が、福島の本当の復興の成否を左右します。