事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します

共謀罪とテロ等準備罪の違いは?:組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案

「共謀罪ってなんですか?」

 

 

こう聞かれたとき、あなたは答えられますか?

 

 

私は、こう答えます。

 

 

人によって違う意味で「共謀罪」の語を使っている

 

 

………

 

 

こう言うと身もふたもない話なので、ちゃんと説明します。

というより、説明をしなければなりません。なぜなら

 


言葉の意味や用法を歪ませることが目的の者がいるから

 

このような者にヤラれないように、しっかりと認識を整えましょう。
また、あなたがご自身で検索をしたいときの指針を提供することにもなると確信しています。

 

追記:2017年に国会提出された法案についての法務省の説明はこちらです。

法務省:組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案

 

 

 

大前提:いわゆる共謀罪と呼ばれている法案は、過去に3回提出され、廃案となっている

「共謀罪」という語で検索をかけると、過去の法案と、それについての法務省の説明のページが見つかります。例えばここです

法務省:組織的な犯罪の共謀罪に関するQ&A

 

しかしこれは、今国会に提出予定の法律案に関するものではありません。

 

昔の情報とそれに対する誰かによる批判を鵜呑みにして、今国会に提出予定の法案=テロ等準備罪について考えてはいけません。

 

従来のいわゆる共謀罪と今国会に提出される法案は全く別物である

 

ということをまずは認識してください。

 

そうでなければ、今国会提出法案=テロ等準備罪の評価や、それに対する各者の論評の評価を誤ってしまうことになります。 

 

 

「共謀」という一般的な言葉の意味に忠実な「共謀罪」 

「共謀」とは、平たく言えば「2人以上での悪巧み」ですが、犯罪の場面における意味は

 

2人以上での犯罪の合意

 

これが中心的な意味であるということを抑えてください
これ、試験にでますよ。……いや、出ないか

 

合意は2人以上じゃないとできないので当たり前ですが一応意味を明確にするためにつけました。 

 

ただ、これだけだと軽犯罪法などに規定されている、とても軽微な犯罪も含むことになってしまいますから、いわゆる共謀罪として提出されてきた法案では修正がくわえられており

 

特定の犯罪が実行される危険性のある合意

 

これがいわゆる共謀罪における「共謀」の意味です。

 

 

いずれにしても、今国会提出法案=テロ等準備罪と異なり

 

合意が成立した時点で犯罪が成立する

 

ということです。

 

なお、この意味における共謀罪規定を設けている国は、イギリスなどごく一部の国です。

 

これに対して、今国会提出予定の法案=テロ等準備罪は、合意が成立しただけでは犯罪は成立しません。この点に注意して、今国会提出予定の法案=テロ等準備罪を見ていきましょう。

 

テロ等準備罪とは

 

テロ等準備罪でも、特定の犯罪が実行される危険性のある合意は犯罪の成立に必要です。
※厳密には、「計画」という語が規定されています。意味は「共謀」とほぼ同じですが、異なる可能性も含みます。

 

しかし、それだけでは犯罪は成立しません。

 

テロ等準備罪では、更に「特定犯罪の準備行為」が必要です。

 

 

特定犯罪の準備行為」って何?

 

という疑問が湧きますが、この点こそ今後の国会での議論で明らかになることです。
なお、刑法では「予備罪」の規定がありますが、これとの関係についても議論がされることでしょう。

 

さて、テロ等準備罪を共謀罪と呼ぶ者もいます。
つまり、テロ等準備罪の「別称」として「共謀罪」の語を用いるということです。

 

 

2017年4月時点で「共謀罪」と呼ばれるものの意味 

以上みてきたように、「共謀罪」と呼ばれるものには以下の意味である可能性があります。

 

  1. 一般的な意味=2人以上による犯罪の合意のみで成立する罪
  2. 従来の共謀罪規定における意味=特定の犯罪実行の危険性のある合意のみで成立する罪
  3. テロ等準備罪の別称
  4. 外国で成立している、テロ等準備罪類似の法律の呼称

 

それぞれ意味が異なる(異なる可能性がある)ので、注意しましょう。

 

 

誰かが「共謀罪」といったら

 

 

それどういう意味で使ってるの?

 

 

と言ってやってください。それでその人の信用度がわかります。

 

 

 

小括 

「共謀罪」という語は、2017年4月時点では誤解を招きます。

 

現在与党案として国会提出予定のものは、「テロ等準備罪」です。「共謀」は犯罪計画の合意時点で犯罪成立しますが、「準備罪」は、さらに準備行為が犯罪成立のために要求される点で、全く異なる構成要件の修正形式です。

 

世の中で「共謀罪」と呼ばれている法律、或いは法律案は、その内容が異なるということを、前提としていきましょう。

 

 

「テロ等準備罪」の正式名称は?

 

ここまで今国会提出予定法案をテロ等準備罪としていましたが

 

「テロ等準備罪」という語も、与党のつけた通称です。

 

今国会に提出予定の法案の正式名称は

 

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案

 

こちらになります。検索で原文が見たい場合には、こちらの語を打つと良いでしょう。

 

※なお、過去にいわゆる共謀罪として提出された法案として

【犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案】

こちらも検索に引っかかってきますが、過去のものなので無視しましょう。

 

若干のQ&A

 

法務省が説明をしてこなかったのはおかしいのか?

おかしくありません。

 

こういう理由で批判をしている人がいたら、軽蔑しましょう。

 

何度もここで書いてますが、テロ等準備罪は、今国会提出予定にすぎないんです

 

つまり、法務省はどんな内容の法案が提出されるのかわからないのです。

 

 

 

 

「法務省はテロ等準備罪についてどういう見解ですか?」

        

        ↓

        ↓

        ↓

 

「知らんがな(怒)」

 

 

過去に国会に提出された、いわゆる共謀罪についてであれば、法務省は見解を出せますし、冒頭に紹介したQ&Aのページもあります。しかし、未だ提出されていないものについて意見を述べることは、推測でもって公式見解を述べることになり、不誠実です。

 

「共謀罪」は内心の自由を侵害するものだ!という批判に対して

 

以上みてきたように、今国会提出予定の法案であるテロ等準備罪は、具体的な準備行為があって初めて犯罪が成立します。

 

上記批判が当たらないことは明らかです。

 

にもかかわらず、与党がテロ等準備罪の内容を閣議決定した後にも同様の批判を続けている者がいます。これは、法案の中身を見ていないか、誰かの受け売りをコピペしているだけということでしょうね。

 

犯罪の合意で処罰する場合でも内心の自由なるものが問題になるはずがないという突っ込みもしたいですがここでの主眼ではないのでスルーします。 

 

まとめ

 

  • 「共謀罪」という語が使われているとき、どういう意味で用いられているか、しっかりと把握しましょう
  • 過去の法案の情報に引きずられないように気を付けましょう

 

※補足
この記事を書いているときはテロ等準備罪は国会未提出でしたが、提出されましたね。