事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

高須クリニック院長の名誉毀損裁判2:「答弁書を陳述」ではないのか?

大西側は「勝利を確信」とのことです。

※本エントリは当初から内容を修正しています。

高須クリニック院長が大西議員の発言を巡り、民進党らを相手取った名誉毀損裁判で、第一回口頭弁論期日が行われました。
※ここではわかりやすさのために「大西側」と記述します。

大西側の説明

民進党側は請求棄却を求め、公判終了後に以下のコメントを出した。

被告らは、本日の答弁で、原告が主張する名誉毀損が成立せず、原告の主張が認められないことを詳細に明らかにした。このため、本件では、被告ら勝訴の判決が早期に下されるものと確信している。

高須クリニック院長の指摘

ほう。

これは本当ですかね?

ということで、最初は以下のような可能性を考えていました。

「答弁書を陳述」の可能性

参考:http://www.shomin-law.com/minjisaibanshinri.html

どういうことかというと

大西側(被告)が書いた「答弁書」に、詳細な反論が書かれていて、それを「陳述します」と言えば、それで裁判上、公判廷で答弁書に書いてあることを口頭でしゃべったことになっていたのではないか?ということです。

民事裁判の実務の運用

※ここは飛ばしてもいいと思います。

民事訴訟ではまず訴える人(原告)が「訴状」を提出します。

その訴状には、平たく言うと

  1. 誰が、誰に対して
  2. 相手に何をしてほしいのか
  3. それはどういう法律を使うのか
  4. どういう理由(事実)があってその法律が適用されるのか

という事が書かれています。

訴状は相手(被告)と裁判所に送付されます。

これに対して相手も「答弁書」を作成します。

平たく言うと、原告の訴状に書かれたことに対して、認めるのか、認めないのか。認めないとしたらどういう理由なのか、ということが書いてあります。

これも相手方(原告)と裁判所に送付します。

そして、裁判ではまず訴状と答弁書の内容で合っているかを裁判所が確認します。

このとき、裁判というのは通常「口頭主義」が妥当するので、直接口に出して読み上げるのが法律上の原則です。

が!

現実には、訴状と答弁書を読み上げるのは時間が長くなる

その分、他の裁判等にかけられる時間がなくなり

時間がかかる分、費用がかさむということになります

なので、実務上は通常、以下のようになっています。

裁判所「原告は訴状を陳述しますね?」

原告「はい、陳述します」

裁判所「被告は答弁書を陳述しますね?」

被告「はい、陳述します。」

これ傍聴人は何言ってんのかよくわからないんですよね(笑) 

なので、今回の高須クリニック名誉毀損裁判の第一回口頭弁論期日も、このようなことがあって、裁判実務を知らないと思われる高須院長は、相手は何も言ってないのでは?と思ったもです。

答弁書を提出しないということ

答弁書を提出していないということは、相手方の主張に対して反論をしていないということになりますから、擬制自白が成立するのが法律上の原則です(民事訴訟法159条1項本文)

要するに、その時点で裁判は原告の勝訴!ということになるのです。

したがって、答弁書を提出していないという可能性は考えにくいです。 

なお、裁判には本人が出席しなくても、代理人(つまり弁護士)が出席していればよいので、その点は問題ありません。

答弁書の提出はあったのか

とは言ったものの

弁護士ドットコムが答弁書を入手したとのことですから、高須院長と裁判所に送付されており、それを「陳述します」と言っていたということが真実でしょう。

簡易的な答弁書を作り、「追って」答弁書を作る場合

簡易的な答弁書の提出でも許されるそうです

ただし、仮に今回が簡易的な答弁書の提出だとすれば、大西側が「原告の主張が認められないことを詳細に明らかにした」などとは言えません。

よって、正式な答弁書が送付されていたということになります。 

新たな裁判?:浅野史郎からの名誉毀損に対する裁判

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浅野史郎と大西議員の違い:免責特権がない

大西議員は国会議員なので、免責特権があります。
これがあることによる、名誉毀損裁判での勝訴の難しさは、上記過去記事にて解説しています。

これに対して、浅野史郎さんは現在一般人です。免責特権はありません。 

なので、名誉毀損の不法行為があったとして浅野史郎さんが裁判で負ける可能性は、極めて高いと思われます。

これらの裁判は、また追って記事にしていきます。

以上

追記:浅野史郎には慈悲が与えられる

浅野史郎は直接謝罪してませんが、高須院長はミヤネ屋に監督責任があるとして、ミヤネ屋の謝罪で許す、ということにしたようです。

高須院長は、過去に部下の不始末を監督責任として被った経験がありますからね。また、大西議員への訴訟もこの経験から民進党と蓮舫代表を被告に入れるということに繋がっています。

2018年4月23日追記

高須院長側が敗訴しました。判例の壁にあたるかあたらないかの以前に、「そもそも社会的信用を毀損しない」ということですね。

以上