事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します

【NHK受信料】ネット端末所持で受信料発生はウソ?常時同時配信とは?オンデマンドとの区別は

www.nikkei.com

 

TVが無くてもPC・スマホを持ってるだけで受信料を取られるのでは?

 

こういう疑問が提起されており、情報が錯綜しています。

 

なので、NHK受信料制度等検討委員会が公表している諮問第一号「常時同時配信の負担のあり方について」答申を参考にして整理してみました。

 

もっとも、これについてはまだ「方針、検討」段階なので、確定的なことは何一つないということを予め断っておきます。

 

参考:NHK受信料制度等検討委員会 諮問第1号「常時同時配信における負担のあり方」答申(案)概要に関するご意見の募集

 

なお、「常時同時配信」とは何か?については下部で説明していますので、そちらを知りたい方は目次から飛んでいってください。

 

 

結論:PC・スマホ等の所持だけで直ちにネット受信料を取られる運用は、現時点では目指されていないと「言い得る」

 

http://www.nhk.or.jp/keieikikaku/shared/pdf/01toushin.pdfこちらの4ページ

 

受信料型の場合の費用負担者としては、PCやスマートフォン、タブレット等はさまざまな用途を持つ汎用端末であることを考慮すると、PC等のインターネット接続単発を所持・設置したうえで、常時同時配信を利用するために何らかのアクション若しくは手続きをとり視聴可能な環境をつくった者(視聴環境設定者)を費用負担者とすることが適当である(先述のように、放送受信契約者を除く。)

有料対価型の費用負担者としては、一般の取引と同様に常時同時配信を利用する契約を結んだ者とすることが適当である。

赤文字はブログ主の挿入。

 

 

あくまで「現時点」の方針に過ぎず、確定ではありませんが、このような方針で行くことはほぼ間違いないと思われます。

 

 

なので、巷で騒がれているような「ネット端末の所持だけで金を獲られる」ということは現時点では目指されていないと「言い得るということになります。
※この意味深な表現の意図するところは後述します。

 

 

有料対価型」というのは、利用者とNHKが契約を結んだ場合にのみ費用を負担するという方式です。これとの対比で「受信料型」というのは、契約(ある人とNHKが明示的に費用負担の合意をすること)を結ばずとも、一定の条件を満たす場合には自動的に費用負担が発生するというものです。現在のTV受信料もこの「受信料型」です。

 

 

「ネット端末所持だけで~」という懸念は、「受信料型」の場合に問題になります。

 

どうなったらネット受信料対象?「視聴環境設定者」とは?

 

さて、次に気になるのが

 

具体的にどういう状態になったらネット受信料を払わなきゃいけなくなるの?

 

ということ。

 

これについては上記で赤文字で示した通り

 

視聴環境設定者」が対象です。

 

具体例として検討されているのは以下。

 

なお、ここでいう「視聴可能な環境の設定」としては、たとえば常時同時配信を視聴しうるアプリケーションのダウンロードやIDの取得等が現時点では考えられるが、その具体的な方法については、今後さらに検討していくことが必要である。

 

ネット端末所持だけでネット受信料支払いは本当か?

 

さて、ここで上述の『ネット端末の所持だけではネット受信料発生しないと「言い得る」』という意味深な表現をしたことの意義が重要です。

 

 

こういう場合はどうでしょうか?

 

 

【ネット端末購入時にNHK視聴アプリがプリセットされている】

 

 

この場合、「ネット端末を所持するだけでネット受信料が発生する」という疑惑に正当性があるような気がします。

 

 

まぁ、端末販売業者がNHKと結託してしまえば、これは可能ですが、現実的にこのような端末を店頭に並べても売れないと思われるので、あまり考えられません。ただ、NHKが先述の方針を決めたとしても、論理的には一応あり得る展開です。

 

なので、上記では「言い得る」という意味深な表現にとどめています。

 

また、この問題は次の項で述べるように「ネット受信料の支払い義務者をどうやって把握するのか?」という問題と絡んできます。

 

 

NHKはどうやって「視聴環境設定者」を把握するのか?

問題状況

ここまでの話は、「受信料負担者の範囲」の方針についての問題です。

 

この項では、「受信料負担者の範囲内とされた者からどうやって受信料を取るのか?」という問題の方針について説明します。

 

現時点でも、NHKはTVを所持している世帯を100%把握しているわけではありません。私たちが自己申告するか、NHKの調査員(!)が訪問等をして放送受信機の設置の実態を把握しています。

 

インターネット端末については、アプリをダウンロードする方式の場合、それだけでは「誰がNHKのネット配信を視聴しているのか?」ということがわかりません。なので、この把握をどうするかが検討されています。

 

最もわかりやすいのが、NHKの調査員が端末利用者がNHKをネット視聴しているのを現に発見した場合でしょう。しかし、このような場合はほとんど在り得ず、また、発見してもネット受信料を支払わせるまでの対応には困難が予想されます。

 

そこで、以下のような「認証方式」が検討されています。

 

「厳格な認証」と「緩やかな認証」

 

厳格な認証」とは

  1. 視聴環境を設定する
  2. 認証を受ける
  3. 視聴可能となると同時にネット受信料徴収対象として把握される

 

緩やかな認証」とは

  1. 視聴環境を設定する
  2. 視聴可能となる
  3. 認証を受けて初めてネット受信料徴収対象として把握される

 

両者には徴収対象として把握されるのに、以上のような流れの違いがあります。

 

NHKの現時点での方針としては、「緩やかな認証」を採用するとのことです。

 

要するに、現状と同じということです。

 

どういうことかというと、現在TVを設置することでNHKの番組が視聴可能であり、NHK受信料の支払い義務が発生します。しかし、実際に支払うのはNHKに申告した場合(か摘発された場合)であるという現在のNHK受信料の運用と同じような運用が想定されているということです。

 

なお、既にTV電波の受信料を支払っている者については追加で徴収するということは考えられていないので、二重徴収の危険は理論上はありません。ただし、実際上は把握の仕方によってはTV電波の受信料とネット受信料の二重徴収という状況になる可能性は残るので注意が必要でしょう。

具体的な認証方法は?

現時点では詳細は不明です。

 

認証とは異なりますが、緩やかな認証の場合のフリーライダー対策としては、現在のNHKBSで行われているCASメッセージ(左下に「登録してね」っていう文章が表示されて邪魔なアレ)が検討されています。

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  以上、ここまでがネット端末所持だけで受信料が発生するのか?についてでした。

 

「常時同時配信」とは?単なるインターネット配信との違い

 

常時同時配信とは、ここでは「NHKが放送するテレビ番組を、原則としてそのまますべて、放送と同時にインターネットを通じて配信すること」を指す

 

要するに、【TV放送+同じ内容のインターネット配信】です。

 

現在の制度で喩えると

 

NHKの国会審議生放送と国会審議インターネット中継(各議院が配信)を1社でやるようなもの

 

これが「常時同時配信」、という捉え方で間違いではないでしょう。

 

これを行っている事業者は現在ありません。

 

例えば、DHCが提供している「DHCテレビ」は「テレビ」の名称が冠されていますがインターネット配信のみです。また、テレビ朝日サイバーエージェントが出資して作ったのAbemaTVはネットで番組配信していますが、テレビ朝日で放送している番組とはラインナップが異なります。

 

冒頭で問題になっているインターネット端末所持のみで受信料発生か?という疑惑は、「常時同時配信」システムの導入に関連した問題なのです。これは放送法を変える等、立法措置を取らないと実施できないとされています。

 

つまり、「現状の制度の枠組みの中で、いきなりNHKがネット料金を徴収してくる」というような問題ではないのです。ネット受信料関連の情報には、この点の誤解もかなり多い気がしています。

 

常時同時配信の概要図

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NHK オンデマンドと何が違うの?

 

これも受信料体系などの制度設計によって流動的なので確定的ではないですが、

 

  • 「常時同時配信」は現在進行形
  • NHKオンデマンドは過去形

 

とりあえずの把握の仕方としてはこのような理解でいいでしょう。
電話でNHKの担当者に確認しても大体そのようだとのことでした

 

いわゆる見逃し配信(1週間などの期間限定で過去の番組を無料視聴可能)とも異なります。両者は最終的に一つの制度に統合される可能性が高いと、私は見ていますが、この点の制度間の差異も慎重に検討されているとのことです。

 

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他のネットTVとの違い

 

例えばNHKオンデマンドで配信される場合は

 

  1. 過去に電波放送されたNHKのテレビ番組を
    (ネットだけで限定配信される特別番組は確かないはずです)
  2. 基本的に有料で配信する
    (いわゆる見逃し配信は各社が無料で提供しています)

 

これに対して、DHCテレビやAbemaTVなどは、インターネット限定配信の番組(テレビ電波では放送されない)に限られています。ただし、過去の番組のアーカイブはDHCテレビについては未だ設置されていません。

 

NHKが「常時同時配信」を行うことで、NHKがネット限定番組の作成・配信を行うということはあり得るのでしょうか?参考資料として冒頭に掲げた「答申」を見る限り、それは現時点では検討されていないと思われます。
※わざわざ作っておいて電波に乗せないというのはもったいない気がします。

 

ただし、今後の展開によっては、そのような番組の作成・配信も検討される可能性は十分にあるでしょう。

 

結語:視聴者の利益を伝えるべき

 

冒頭にも述べましたが、ネット受信料の問題は未だ検討段階です。

 

現時点での方針としては、視聴者にとって不利益となる制度変更ではないのではないかと考えられるものの、制度の運用実態によっては、国民に大きな負担となる可能性のある制度設計となり得るものです。

 

したがって、「ネット端末所持だけで受信料発生は許せない!」という意見は、今後も重要な視聴者の見解として流通すべきものです。ただし、そうなることが確定していない現段階では安直にNHK批判の道具として使うべきものではないでしょう。

 

放送メディアは「第四の権力」です。これに対する牽制として国民が意見を言うことを継続していくべきだと思います。