事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します

野党6党国会審議拒否は偽計業務妨害ではないか?憲政史上初の暴挙

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2018年4月20日「野党が審議拒否」

今回はそんな表現では済まされない重大な事態。

何が問題なのかを整理します。

魚拓:http://archive.is/UnTj9

野党提出法案の審議を自ら放棄する憲政史上初の暴挙

今回の審議拒否の何が問題か?(普通の審議拒否も十分問題ですが。感覚がマヒしています。)

今日審議する予定だった法案の中には「野党が提出した法案」が含まれていたのです。

自分で出した法案の審議を自ら拒否するという異常事態です。

しかも公約無視です。

野党提出の生活保護法等の一部を改正する法律案もそうですが、内閣提出の法案も生活者のための法案。選挙の際に例えば立憲民主党は以下のようなポスターで政策を宣言しています。

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今日の野党の行為は有権者をバカにしています。

国会議員の仕事は行政・法律の精査と法律案の提出・審議です。こんな人間に日本国民の血税から支払われる歳費(国会議員の給料)を渡したくありません。

野党の審議拒否は偽計業務妨害罪に該当しないか?

刑法
(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 刑法233条には偽計業務妨害罪が規定されています。

「業務」は「職業その他の社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務」ですが、ここに国会審議は含まれるはずではないか?と思います。

「業務」に「公務」が含まれるのかは争いがありますが、少なくとも判例上は「強制力を行使する権力的公務」でなければ業務性を肯定しています*1。国会審議が強制力の行使でないことは明らかなので業務性は肯定できます。

「偽計」とは、人を欺罔、誘惑し、あるいは人の錯誤・不知を利用することです。判例上、人に対する行為に限られていません*2

法案提出時点では審議をする意思はあったと思われますが、当日になって与党議員が野党のボイコットを知らなかったので、その時点で偽計が成立するのではないでしょうか?

「妨害」の意義は諸説ありますが「機会損失」のような場合も含まれている裁判例があります。*3。今回の場合に引き直せば、虚偽の法案審議の予定さえなければ遂行されたはずの本来の国会議員の公務の遂行が困難ならしめられたことが業務の妨害であると言い得る*4

野党の法案に対する質疑のために、相当の準備をしてきたと思われます。関係書類の印刷代もかかるし、人の動きも拘束されます。野党の法案提出がなければ、他の法案の審議ができたかもしれません。国会審議に1日3億円かかるとも言われています。

国会一日あたり約3億円??どういう理屈か計算しました。 - おぎの稔 | 大田区議会議員 公式サイト

党そのものには刑法は適用できないので、個人名で提出した者や野党の党首或いは国会対策委員長に適用されるべきではないか?

偽計業務妨害の具体例

  • 通話料金計算を誤認識させる機器(マジックホン)を電話に取り付けた事件
  • 中華そば店に無言電話をかけまくった事件
  • 警察に対して犯罪予告の虚偽通報がなされた事件

などがあります。

野党の審議拒否に国会議員の免責特権は適用されない

憲法51条にて「議院で行われた演説、討論又は評決」について院外で責任を問われないとあります。

今回の野党の審議拒否は上記いずれにも該当しません。

よって、国会議員の免責特権は適用されません。

財務省に対応不可能な時間帯に大勢で押しかけてパフォーマンスをする立憲民主党、希望の党、社民党、共産党などは「法的な責任」を問われるべきだ。

まとめ:先例のない事態

正直、国会審議という適法行為を寝坊などで「すっぽかした」というだけで刑法に処すのは無理筋だと思います。

しかし、今回は自分たちから要請し、行われるはずの国会審議を故意に且つ組織的にボイコットしており、被害も3億円をかけて行われる国会審議にかける資源が無駄になったという悪質なものですが、どうでしょう?

検察は自分から立件するとは思えないので、国会議員から告発していただきたい。

追記:議院警察権との関係

国会法114条で、議院内は議長の警察権の範囲にあるとされています。そのため、一般警察権は議会には及びません。この議院警察権との抵触の疑義があるため、検察は絶対に自らは起訴しません。したがって、一般国民個人からも告発するのは控えるしかないです。

しかし、議長が告発すれば良いのです。良識ある国会議員は各議院の議長に対して告発を要請して欲しいと思います。

なお、「東京地方裁判所 昭和31年(刑わ)第3221号 公務執行妨害、傷害等 昭和41年1月21日」では、議長のネクタイを引っ張って頸部圧迫をした等の国会議員の行為が公務執行妨害罪の構成要件に該当するが、超法規的違法性阻却事由によって無罪とされています。

ここでも議院警察権と国会内での行為であるという点を考慮した判断がなされていますが、注意点は、このときの議事進行も違法ではなかったもののやや妥当性を欠くと思われるものであったこと(本来の開会よりも早めて強行採決しようとしたため、野党議院が入場できず締め出された)がかなり影響している。

ただ、この裁判例は東京地裁の判断に過ぎない(最高裁判決ではないので「判例」という語は使わないこととする)ので、控訴してればわからない。

政治闘争だからという理由で無罪とした判断は疑問である。

以上

*1:最決平成12年2月17日

*2:最高裁決定昭和59年4月27日

*3: 東京高判平成21年3月12日

*4:井田良 講義刑法学各論