事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します

TOKIOの山口達也メンバー書類送検でRの法則終了、ジャニーズ謝罪:非親告罪化で検察は起訴するか?

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TOKIOの山口達也メンバーが女子高校生に強制わいせつとして書類送検された件。

山口メンバーが出演していたNHKのRの法則という番組が終了しました。

ジャニーズ事務所も謝罪しましたが、この件は考えるといろいろ疑問に思う点があることに気づきますのでそれについて整理していきます。

書類送検は軽い処分ではない

勘違いされていることですが、「書類送検」は軽い処分を意味しません。

書類送検とは、捜査の主体が警察から検察に変わったことを表すマスコミ用語です。

警察や検察が被疑者の身柄を拘束せずに事件の捜査が行われる場合に使用されます。

したがって書類送検となっても起訴されて刑事裁判になる可能性はあるという事です。

ただ、一般的にこのような表現がなされるような場合には起訴猶予などの軽い処分になる場合が多いような気がします。

TOKIOの山口達也メンバーは起訴されるのか?

では、本件の場合に山口氏は起訴される可能性はあるのでしょうか?

強制わいせつ罪や強制性行等罪は、刑法の改正によって非親告罪化(被害者の告訴がなくても検察が起訴できる)していますから、この点がどうなるのか気になります。自宅に招いた女子高生に飲酒を進めていた点、山口氏が女子高生が反抗できない立場にあることを利用して関係を迫った可能性がある点からも気になります。

示談が成立している:ジャニーズも謝罪

こちらの記事が見通しも含めて詳しく書いてあるのですが、示談が成立し、被害届は取下げられています。

親告罪とは、被害者の処罰感情や被害者が様々な不利益のおそれを考慮して加害者を告訴するという判断をするのが適当だと考えられて設けられる罪です。

裏返せば、非親告罪は論理的には被害者が処罰の意思を示さなくても検察が起訴可能であるということです。

しかし、たとえ非親告罪であったとしても、示談が成立しているということは、たとえ非親告罪に該当する容疑であってもかなり大きい意味合いがあります。

非親告罪でも示談後に検察が起訴する可能性は極めて低い

法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会において、最高検察庁検事の森悦子氏がこう述べています。

検察官としましては非親告罪化されたとしましても,被害者の意思を尊重して処分を考えていくという点は,何ら変わるところがないと考えております。ですので,ー中略ー例えば被害者がもういいですと言って告訴しませんと言って不起訴になった事案につきまして,検察官の方がそれを新たに掘り起こして,被害者の意思に関係なく起訴してしまうというようなことはまずないと思っていただいていいと思います。

第五回会議議事録:http://www.moj.go.jp/content/001183730.pdf

法務省:法制審議会-刑事法(性犯罪関係)部会

このように、被害者の意思は非親告罪化しても大切にされることはこれまでと変わりないということです。私も性犯罪に関する裁判例を検索してみましたが、示談後の起訴の事例というのを見つけることはできませんでした。 

むしろ、示談の意思があった被害者に対して起訴をするから示談を取りやめるよう伝えた検察官が公訴権の濫用であると裁判で判示されているケースもあります。

なお、性犯罪以外での非親告罪の事案では、示談成立後も起訴される例があるようです。法制審議会の議事録でもこのことは出てきます。

また、検察官が起訴しない理由として以下のような指摘があります。

○宮田委員

起訴されて,事実関係がもしも争われるということになれば,被害者の方はその意思に関わらず,証人尋問を受ける場合があり得るわけです。証人には証言拒絶権はありません

○角田委員

示談が成立すると,もちろん内容によるでしょうが,検察官は起訴という選択はされないと思いますし,それから,被害者が証人になるのは嫌だということを明確にしているのに起訴して,検察官御自身が公判の途中で立ち往生するような,そういう愚かな選択はあり得ないのではないか

法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会 第4回議事録

http://www.moj.go.jp/content/001176870.pdf

以上の指摘はもっともだなぁと思います。

したがって、本件での起訴の可能性は極めて低いと予想されます。

起訴猶予の可能性

ただ、起訴猶予の可能性はあると思われます。

起訴猶予とは、不起訴処分の一種であり、犯罪の嫌疑は明白だが諸般の事情により訴追を要しないと認められる場合に行われる検察官による処分です。

例えば立憲民主党の参議院議員の有田芳生氏などが公職選挙法違反でこの処分を2回受けています。

今回の場合、諸般の事情とは被害者と示談が成立し、被害届が取下げられていることが考慮されるということになるはずです。

起訴猶予となっても、それは猶予が与えられたに過ぎませんから、後に新たな証拠がみつかって起訴に至ると言う可能性は残ります。また、前歴がつくため再犯時には不利に扱われることもあり、世間的には犯罪者という見方がなされるおそれもあります。

「Rの法則」報道は女子高校生の特定を誘発しないか?

この件を最初に報じたNHKは女子高生と知り合った経緯について「仕事を通じて知り合った」としか報じていませんでした。

しかし、他の報道媒体では「NHKの番組で」と報じており、毎日新聞などは「NHKのRの法則という番組を通じて」と具体的な指摘をしている始末です。

テレビ朝日女性記者の二次被害が問題になっているにも関わらず、毎日新聞などは被害女性の特定を誘発するかのような報道を行っており、その姿勢はおおいに疑問です。毎日新聞はテレビ朝日の件でネット民という何か自分たちとは別の主体に責任をなすりつけるかのような言動をしている点も気になります。

まとめ

  1. 示談が成立しているため起訴される可能性は極めて低いと予想される
  2. ただし、起訴猶予の可能性はある
  3. 具体的な番組名を指摘する報道姿勢は疑問、問題視するべきでは?

特に報道の在り方については、この件ですらエンターテイメントと思っているふしが感じられ、なんとも嫌な気分になってしまいます。女性の人権を守る活動をしていると言っている#Me too運動をしている方々は、こういうところでもっと主張するべきではないでしょうか?

以上