事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

東京都がヘイトスピーチ規制条例案のパブリックコメント募集:大阪市との違いからみる問題点

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東京都がヘイトスピーチ禁止条例案(正確ではないですが、さしあたりこの表現を使います。)を今年成立予定としており、現在パブリックコメント募集中です。東京都の総務局人権部企画課にも電話相談したところ、この件では以下の問題があると思います。

  1. 日本人がヘイトの被害者にならない規定になりそうであること
  2. 手続が情報公開を謳っているわりには大阪市に比べて不透明であること
  3. 罰則を付けるよう働きかけが予想されること
  4. そもそもオリンピック憲章が上位にくるような条例で良いのか?

先行してヘイト規制条例を制定した大阪市については憲法違反の疑いがあることを含め、運用面でも問題があることを指摘しています。

このブログでは何度も書いてますが、まずは「ヘイトスピーチ規制法上のヘイトスピーチ」の定義を確認しましょう。

「そんなの分かってるよ」という方は「東京都のヘイト規制法案」の中身へどうぞ。

ヘイト規制法上のヘイトスピーチとは?

特定の国の出身者に対し、「叩き出せ」「帰れ」など、帰国や排除をうながすような文言は、ヘイトスピーチに当たる。これは、2016年のヘイトスピーチ対策法施行後、法務省も明言している。

よく、このような言及のされ方がありますが、これは全くの間違いです。

確かに、法務省は「祖国に帰れ」などの文言がヘイトスピーチにあたると言っていますが、それはあくまでも「典型例」であって、そのような文言を使ったからと言って直ちにヘイトスピーチ規制法の禁止しているヘイトスピーチに当たるなどとは一言も言ってません。

ヘイト規制法にいうヘイトスピーチとは、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」です。

本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律

「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、【専ら】本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するものに対して差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう 

要するに、単に「外国人だから」「外国出身者だから」「外国人の血を引いてるから」という理由に基づいて「帰れ」と言うならそれはヘイトスピーチです。

しかし、例えば違法な行為をした外国人や、迷惑な行為をしている外国人に対してそうした行為を理由に「出ていけ」「帰れ」と言うことは至極当然の表現であるということです。

司法はそこまで杓子定規な判断をしません。

もっとも、外国人が違法或いは迷惑な行為をしているからといって、軽軽に「祖国に帰れ」などと言うことは私も与しませんし、安易にそのような文言を使っているとなると、ヘイトスピーチと認定される可能性は高いと考えられるので注意しましょう。

ヘイトスピーチ解消法の附帯決議の中身とは?

附帯決議とは、法律案を審議した際に議論された事項について、その法律の運用や将来の立法による法律の改善についての希望等を表明するものです。

これは、法的な拘束力を有するものではありませんが、政府はこれを尊重すべきとされており、事実上の法規範となり得るものです。

平成28年5月12日 参議院法務委員会

 国及び地方公共団体は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消が喫緊の課題であることに鑑み、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

1 第2条が規定する「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」以外のものであれば、いかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤りであり、本法の趣旨、日本国憲法及びあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の精神に鑑み、適切に対処すること。

2 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の内容や頻度は地域によって差があるものの、これが地域社会に深刻な亀裂を生じさせている地方公共団体においては、国と同様に、その解消に向けた取組に関する施策を着実に実施すること。

3 インターネットを通じて行われる本邦外出身者等に対する不当な差別的言動を助長し、又は誘発する行為の解消に向けた取組に関する施策を実施すること。

衆議院の付帯決議も同様の記述があります。

1項の指摘はなんかいい事を言ってそうですが、ヘイトスピーチの外縁が曖昧になってしまい、どんな行為がヘイト規制法で規制されるべき行為なのかがわからなくなってしまうものです。

むしろ最近は「いかなる批評的言動であってもヘイトであるとの理解」が広まっているので、拡大解釈の危険の方が大きいと言えます。

附帯決議3項:「等」が加えられていることの意味

附帯決議の3項をみると、本邦外出身者「等」とあります。

  • 本邦外出身者=専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住する者
  • 本邦外出身者等=上記の者に限られない者(具体的に誰かは不明)

「等」の意味合いは不明ですが、以下のような解釈の可能性があります。

  1. 純日本人(尊属が日本人で日本生まれの者)も保護対象となる
  2. 不法に滞在する者も保護対象となる
  3. 滞在していない者も保護対象となる

1の可能性を期待したいですが、2は「不法」というとアノ人たちのことでしょうね。3はインターネットによる不当な差別的言動の場合に限って「等」がつけられていることから可能性を考えてしまいますが、あってはならない運用だと思います。

現実的には日本人は被害者になりにくいが…

ヘイト規制法はマイノリティ保護のための法律です。

マジョリティたる日本人が、外国人居住者から「この地域から出ていけ」と言われることは現在の日本ではあまり想定できないため、このような規定であっても運用上の妥当性があるのかもしれません。

しかし、ドイツのように一部の地域が難民によって占められるような場所が、今後日本においても出てこないとも限りません。

北朝鮮が崩壊した場合、難民が何百万人日本に流れ着くのかわかりませんからね。

そのような場合に「純日本人」も本法の対象となるかどうか?この事態が到来したときに本法が悪法となる可能性もあります。

そこで、行政の側、つまり各自治体がどのような条例を敷くのか、そしてどのような運用を行うのかが重要です。最近は「日本」が嫌いな人たちが攻撃をしている例が目立つので、日本国を護る、日本人を護るという高い倫理観が必要なんじゃないですかね。

東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための条例(仮称)

東京都ヘイトスピーチ規制条例のパブリックコメント

東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための条例(仮称)

東京都が予定している規制対象となるヘイトスピーチは、国のヘイトスピーチ規制法の定義と同じであることがわかります。よって、これまで言及してきた問題点が全て東京都に当てはまるということになります。

パブリックコメントの締切は2018年6月30日です。

こちらのページでは条例のポイントとロードマップ意見聴取者一覧と主な意見が掲載されています。

さて、東京都の手続はこれでよいのでしょうか?

東京都のヘイトスピーチ規制条例の手続について

冒頭で大阪市と比べて東京都は透明性がないと言いました。

大阪市等の法制定・改正審議の手続

大阪市のヘイト規制条例の検討は人権施策推進審議会によって進められ、議事録は公開されていました。

これは審議会が条例で設置根拠のあるものであり、審議会は公開とすると定められていたからです。そのおかげで、個々の委員がどういう発言をしていたのかがよくわかります。

例えば刑法で司法取引の規定が導入されましたし、民法の債権法が改正されて施行待ちですが、これらの場合は法務省の刑法部会民法債権法部会などが設置されて議事録が公開されていました。大阪市の場合はこのような場合と同様の仕組みだったということです。

東京都の情報公開はどこにいったのか?

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東京都の総務局人権部企画課の職員に確認したら「今回のヘイト規制条例については審議会や部会の議事録を公開する予定はない」とのことでした。

都民ファーストでつくる「新しい東京」~2020年に向けた実行プラン~ 冊子・計画内容のページでは政策企画局が運営しており、情報公開を推進するかのようですが、それにしては大阪市よりも条例制定の経緯が分かりにくいものになっていると言えないでしょうか?

もちろん、議事録を公開するべき義務はないですし、全ての場合にそうすることが果たして良いことなのかということは議論があると思います。

時間をかければいいわけではないですが、パブリックコメントを受け付けてから意見を精査・整理して審議会で検討し、条例案を最終的に報告しなければなりませんから、このスケジュールでいいのか。

パブリックコメントの手続そのものの問題

さらにはパブリックコメントの段階で条例案の「概要」だけが示されており、あまり具体的に決まっていない規定をどう評価すればいいのかよくわかりません。

条例案の条文そのものは見れないようになっているのは、多くのパブリックコメントの場合とは異なる状況です。なぜ条文案を隠すのでしょうか?総務局人権部企画課に問い合わせたら、条例案の条文はパブリックコメントを受けてから作成する方針とのことでした。

しかも、パブリックコメントのページへのアクセスが悪く、HP上のナビゲーションも最悪レベルです。私はGoogleからいろんなワードを試してやっとたどり着きました。

どうも東京都は拙速な感が否めません。

総務局人権部企画課によれば、例えば「この段階でのパブリックコメント募集はいかがなものか?」とか「条例案が出来たら再度パブリックコメントをしてほしい」といったような、不随的・手続的な側面についても意見は読んでもらえるとのことでしたので、そういった部分も含めて意見するのもありだと思います。

上記で示したロードマップも案の段階なので、そこについて注文をつけることで変化させることも可能だと思います。

東京都のヘイト禁止条例は都議会議員によるチェックを 

現状のままですと、都民からのコメントは非常に漠然かつ曖昧なものにならざるを得ません。 したがって、実のある議論が審議会で行われず、ほとんど都民のチェックが入っているとは言い難いものが都議会に提出される可能性があります。

都議会議員の方にはこの条例案について厳しくチェックしていただきたいと思います。

大阪市の場合は議会でのチェックが全く行われていないので、これまで指摘してきた行政の手続の不備の分を覆すような働きをしてほしいと思います。

反差別界隈やLGBTから罰則をつけるよう都に働きかけがなされる可能性

東亜日報の6月13日の記事では以下のような文があります。

しかし、ヘイトスピーチ対策法には処罰条項がなく、限界が指摘されている。大阪市の条例にも罰則条項なく、川崎市も問題になる場合、集会を事前に規制できるガイドライン程度の状態だ。東京都も現在、施設利用制限規制といった程度のことを構想している。特に在日韓国人を狙った嫌韓デモが社会問題になっており、確実に根絶するには強力な罰則が必要だという声が出ている。

「反差別」「アンチレイシズム」を標ぼうしている輩がどういうことをしているか、少し調べればわかります。こうした勢力からもパブリックコメントは送られるということを考慮して、予め反対意見をする必要があります。

このような動きを見てかどうかはわかりませんが、保守派が主導権を持ってLGBT施策を積極的に進めることで、「利権屋」に利用されないようにしようという動きもあります。

オリンピック憲章が上位に来るような条例で良いのか?

条例案の仮称や条例の目的を見ると、オリンピックにかこつけるためにヘイト規制とLGBT施策を混ぜている条例案のようです。しかし、なぜ私的団体に過ぎないIOCのオリンピック憲章の「下」にヘイト規制というスポーツに留まらない広範囲な内容の東京都の条例が作られるという議論になっているのか?この点からして既に疑問です。

オリンピックが廃止されたら、IOCが解体されたら、ヘイト規制やLGBT施策は無くなるということですか?東京都はIOCの傘下なのでしょうか?

ここは思想の左右関係なく、法体系の歪さを生じさせるものとして非難されるべきだと思います。

まとめ

  1. オリンピック憲章が上位法という構造はおかしい
  2. ヘイト規制法の問題がそのまま東京都ヘイト規制条例の問題になる
  3. いわゆる「純日本人」が保護対象となるかが問題
  4. 条例制定過程にある審議会の議事録が公開されないのは妥当か
  5. パブリックコメントのための参考情報として十分ではないのではないか
  6. 東京都のWEBページのナビゲーションが雑
  7. 反差別・LGBTを利用しようとする者からの罰則規定追加の要請を考慮するべき

大阪市の施行後の運用面の問題も併せて検討してもらいたいと思います。

以上

新潟県知事選:森裕子議員の花角氏に関する森友発言は公職選挙法等に当たるのか?

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新潟県知事選挙における森裕子氏の演説内容について、以下の記事があります。

以下略ちゃんの書いたこの記事で疑問が呈された内容について検討します。

記事の趣旨は「大阪航空局が違法の疑いがある土地見積りを行った当時、花角氏が大阪航空局長であったかのように言及する森ゆうこ氏の言動は公職選挙法違反の可能性はないのか?」というものです。

裁判例があったのでみていきましょう。

公職選挙法235条2項の「事実をゆがめる」の意味

東京高等裁判所の裁判例が裁判所HPの裁判例情報にも載っているので、規範性は広く認められていると思います。

東京高等裁判所 昭和51年(う)第50号 公職選挙法違反被告事件 昭和51年8月6日

公職選挙法第二三五条第二項は、当選妨害罪の構成要件として、虚偽の事項を公にした罪と事実をゆがめて公にした罪の二類型を規定しているところ、原判示第一の事実、更に遡つて、その訴因は、前者の虚偽の事項を公にした罪ではなく、後者の事実をゆがめて公にした罪を記載したものである。そして、この事実をゆがめるとは、未必的であるにしろ、故意の必要であることはいうまでもないが、これを別とすれば、客観的にみて、虚偽の事実にまでは至らないけれども、或る事実について、その一部をかくしたり、逆に虚偽の事実を付加したり、あるいは、粉飾、誇張、潤色したりなどして、選挙民の公正な判断を誤らせる程度に、全体として、真実といえない事実を表現することをいうと解するのが相当であるからー省略ー

整理すると以下です。

  1. 客観的にみて
  2. 選挙民の公正な判断を誤らせる程度に全体として真実と言えない事実を表現すること(手段として、ある事実についてその一部を隠したり、虚偽の事項を付加したり、粉飾、誇張、潤色したりなどが例示されている)

このように「全体として」判断される場合は個々の指摘する内容が事実であったかどうかが最終的な違法認定を決定するのではないということがわかります。

「表現する」も文脈の前後を考慮するとともに、口調、抑揚などから感ぜられる印象も考慮するということです。

さらに「客観的に」とありますから、本人がどう思っていたかは関係ありません。多くの場合、ある表現について一般通常人の理解においてそう思えるか、という判断になります。

そして重要なのは「虚偽の事実が付加されている必要はない」ということです。

では、具体的な発言から検討していきましょう。

森裕子氏の花角氏に関する演説内容

最初にこの件を検証した以下略ちゃんは上記動画をあげてましたが、実は、森氏は全く同じような内容の演説を別の場所でも行っていました。

元URL

花角氏が大阪航空局長だったことを連呼・強調

書きおこしました。

私はですね、問題点を見つけるのが得意なんですね。

一言だけ言わせて頂きたいのは。今、※※※聞き取りできず※※※秘書官ですよ。秘書官ですよ。秘書官っていうのは、素晴らしい頭のいい人がなるんですけれども、優秀な官僚であればあるほど、記憶喪失になるということがよくわかりました。もう国会最終盤で私も週2回委員会で質問してるんですけれども毎回新たな記憶喪失者が生まれるんですよ。ホントなんですよ。これホントなんですよ。

そして昨日ね、実は驚いたのは、NHKの政見放送、朝新潟の※※※聞き取りできず※※※から十日町に行く最中に早朝のラジオで初めて花角さんの政見放送を聞きました。そしたらNHKのアナウンサーがまず経歴を述べる。そこに……大阪航空局長、大阪航空局長ですよ。大阪航空局長です。わかります?森友問題ですよ。去年の特別国会で私がようやく役所から出させた1枚のペーパー。そこにはもともと森友学園のゴミの値段が8000万円だったと。これ一応NHKのニュースになったんですよ。ところが、それを10倍の8億円に見積もった。これが、大阪航空局なんです。そこの局長さんしてたんですって。あらら…ということで、皆さん、本当に大変な戦いです。どうか、どうか勝たせていただきたい。

動画で見るとわかりますが「これは問題だ」というニュアンスが継続した状態での発言だということがわかります。「問題だ」というのは「何か悪いことが起こっている」という意味を含みますが、国会でも質問で追及したような話である上、財務省の文書書き換えの話と絡めていることから「違法の疑いがある」というニュアンスが含まれていると言えます。※「違法である」というニュアンスであるかは疑問を差し挟む余地があると思われます。

大阪航空局が森友学園の土地を見積もったことと結びつけている

「花角氏が大阪航空局長だった」「大阪航空局が森友学園のゴミの値段を見積もった」

これらは事実です。しかし、花角氏が在籍していた時期はゴミの撤去費用の値段の見積もり時期と異なり、その前の時期です。

森氏の表現では少なくとも「大阪航空局が違法の疑いがある行為をした当時に花角氏は大阪航空局の局長であった」という認識を一般人の通常の理解ではするでしょう。

この程度の違いが「選挙民の公正な判断を誤らせる程度」と言えるのかはグレーだと思います。

違法の疑いがあるという故意はなかったのか

ちょっと検討順序としては前後しますが、補足的に、森裕子議員は国会でこのような発言をしています。 

第196回参議院農林水産委員会 7号 平成30年03月29日

安倍昭恵総理夫人が名誉校長を務めていた森友学園に国有地がただ同然で払い下げられた森友事件、アッキード事件によって、とうとう歴史的公文書が改ざんされ、痛ましい犠牲者まで出してしまったにもかかわらず、安倍総理は地位に恋々として責任を取ろうとしておりません。

国有地の売却について「アッキード事件」という名称を使用しており、かの有名な刑事事件たる「ロッキード事件」を引き合いに出していることが明らかです。このことからは、森裕子議員は森友問題の土地売却については「違法の疑いがある」 という認識で言及していると言えます。よって、土地売却に大きく関連するゴミ撤去費用の鑑定評価についても違法の疑いがあるという認識があったといえます。したがって、大阪航空局の土地見積りは違法の疑いがあるという趣旨で発言したことの故意に欠けないと言えます。

また、森裕子議員は国会で何度も森友問題に関して土地売買について質問していること、少なくとも2度、花角氏にかんする同じ演説をしていることから、花角氏が大阪航空局に在籍していた時期を勘違いしていたということはできず、時系列を混同させる故意が認められます。

公職選挙法235条2項にいう「事実をゆがめた」と言えるのか?

森氏の表現から一般人が通常認識する内容を示しましたが、これが更に進んで「大阪航空局長たる花角氏が違法の疑いのある森友のゴミの見積もりに帰責性のある形で関与した」という表現として受け止めるのかどうか。

これは疑問を差し挟む余地があると思われます。判断は分かれるのではと思います。

更に、そう認定できたとして「選挙民の公正な判断を誤らせる程度」と言えるか。これはそう言えるだろうと予測します。ただ、やはりその前の段階が問題になるということは変わりません。

小括:グレーゾーンか

魚拓:http://archive.is/Qa1tD

確かに、確実にデマであると言い切れるほどの事案ではないと思います。

しかし、これまで検討してきたことからは『「デマを飛ばした」というデマ』と言い切ることもまたできないと思います。

この件は公職選挙法上の視点から検討してきました。

では、名誉毀損の事案の場合、言及された「事実」はどのように判断されるのでしょうか?

名誉毀損表現の事案の場合の「事実の適示」

名誉毀損の「事実の適示」にあたるためには、明示的に指摘された内容にとどまらず、いわば「印象操作」によって認識される事実も該当し得るという裁判例があります。

東京地方裁判所 平成26年(ワ)第21669号 謝罪広告等請求事件 平成28年9月29日

オ 本件記載⑤について
(ア)事実摘示の有無
 前提事実によれば,本件記載⑤は,被告は「米国や日本の権威を利用して騙す」と題する項目の中で,X1集団は退役した日米の軍関係者,元防衛庁長官などに会った写真を見せて,安全保障に関して対話をしたように宣伝するなどを記載した上で,「ちなみに,米国のある政府機関では,すでに『X1集団と接触を避けるように』と職員に注意喚起がなされたという。」などと記載したもので,一般の読者の普通の注意と読み方を基準に判断すると,原告において組織している□□政府が,米国政府機関から接触を避けるべき悪質な集団であると認定されているとの印象を与えるもので,前後の文脈も加味すると,X1集団が米国の行政機関も警戒するような詐欺的な行為を行っているという証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張するものであり,事実を摘示しているというべきである。
 被告は,かかる記載は,諸般の事実を指摘した上で,□□政府は他人の権威を利用するという評価をしたものであり,米国において原告及び□□政府が詐欺集団との認定を受けているという事実を明確に摘示したものではなく,公正な論評をしたものである旨主張する。しかしながら,前記のように,本件記事の前後の文脈も考慮すれば,X1集団が米国の行政機関も警戒するような詐欺的な行為を行っているという事実を摘示しているというべきであり,その判断を覆すに足りる事情はない。

このようにみると、森裕子氏の演説は少なくとも 「大阪航空局が違法の疑いがある行為をした当時に花角氏は大阪航空局の局長であった」という事実の適示をしたということになります。

ただ、名誉を毀損したと言えるには、更に進んで「大阪航空局長たる花角氏が違法の疑いのある森友のゴミの見積もりに帰責性のある形で関与した」と表現したと言えない限り無理です。

結局はあの演説でここまでの事実を通常の一般人が認識したと言えるかどうかに尽きると言えます。

結論:「事実しか言ってないから違法じゃない」は違う

森ゆうこ氏は「私は事実しか言ってません」と言いますが、「文言だけ見れば事実」であっても、そこに「誇張や潤色の表現」や「文脈や印象」によって違法となり得るというのが裁判例です。

森ゆうこ氏自身が違法かどうかはともかく、事実を言うだけなら何をやってもいいという理解は明確に誤りです。

このブログの読者はそのような手法でもって印象操作をすることに注意して頂きたいと思います。

以上

【余命不当懲戒請求】懲戒請求者への請求額・和解額は高額か?:佐々木・北・小倉弁護士の主張の是非

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懲戒請求者に対して懲戒請求そのものが不法行為であるとして訴訟を提起したのが東京弁護士会では佐々木・北弁護士の2人、及び小倉弁護士、神奈川県弁護士会の神原弁護士です。

彼らは懲戒請求者1人あたり30万円以上の請求額を予定しており、和解金額も5万円以上を提示しています。これが過大な要求であり、それこそ弁護士の品位を失うべき非行ではないか?と言われています。

今回は請求額ついて各所の見解を紹介しつつ、「殺到型不法行為」(命名は風の精ルーラ氏)の場合の損害賠償額について考えていきます。

なお、この点を考えるにあたっては懲戒請求があった場合の弁護士会の手続の流れや弁護士にかかる負担を理解しなければ始まらないので、先にこちらを見ておくことをお勧めします。

佐々木・北・小倉弁護士の損害賠償の対象

本件では「大量の」懲戒請求がなされたことが注目されています。

しかし、各弁護士は共同不法行為として訴訟提起することは考えていません。

したがって、損害賠償の対象はあくまで1件1件の不当懲戒請求書が送られた事で発生した事務負担や精神的苦痛となるハズです。「大量」となったのは結果論でしかなく、1件1件の懲戒請求者は他の懲戒請求者と歩調を合わせることを考えていたという情報は今のところ無いですし、実態として歩調を合わせたものではなさそうであることが弁護士の発信からうかがえます。

そういうわけですから、弁護士は損害額についても1件の懲戒請求によってどのような負担が発生したのかという点を考えていることになります。

なお、共同不法行為の法的構成を被告側=懲戒請求者側が抗弁として主張できるか、裁判所が職権でそのような構成を取るのか、訴訟指揮するのかは議論がありますので、可能であればこの点も後日検討したいと思います。

損害額についての考え方

懲戒請求の損害額は慰謝料が認定されてきたということと、懲戒請求の数が増える毎に損害額はどのように算定されると考えるべきなのかを整理します。

1:実損と慰謝料

東京地方裁判所 平成28年(ワ)第1665号 損害賠償請求事件 平成28年11月15日の判示では、精神的苦痛に加えて、不当な懲戒請求に対応するためにとられた時間負担を慰謝料として損害額を算出して損害を認定しました。本件でも精神的苦痛と時間負担による慰謝料という請求がなされる可能性があります。 

上記判例では事件処理の過程の行為が「地上げ屋である」「詐欺・横領である」という主張が懲戒請求者から行われました。また、懲戒請求にかかった時間負担は概ね12時間でした。

認定された賠償額は140万円。このうちの多くは慰謝料であると思われます。

 

ちなみに、「第二弾」の懲戒請求も着々となされているようです。懲戒事由は「懲戒請求者に対して訴訟予告ないし訴訟提起をしたこと自体が弁護士の品位を失する非行である」とするものです。

「第一弾」のときには聞かなかった時間負担が第二弾では発生しているようです。

おそらく第二弾では「それなりの根拠」があるような体裁だったために反論をしっかりとしないといけなかったのではないでしょうか?

2:懲戒請求の数と損害額の算定方法

本件では被害法益は弁護士一人の精神であり、1件の懲戒請求による損害と960件の懲戒請求による損害は単純に数に比例して損害が発生すると考えてしまってよいのでしょうか?

※ここでは960件の懲戒請求について同時に訴訟開始して同時に審理し、1つの社会的事実として把握した場合の一応の思考を記載してみます。

懲戒請求の数毎に新たに損害が発生するという立場

このような場合とパラレルに考えるのは無理がありますが、一定の考慮は必要でしょう。たしかに、2人目以降の損害が全く0になるというのもおかしな話です。

ただ、懲戒事由が被るものについては全く別個のものと捉えるのはなんだかおかしいという感覚は多くの人が持つのではないでしょうか?

懲戒請求における懲戒事由毎に新たに損害が発生するという見解

この見解が妥当ではないかと思います。

ただ、ここで論じているのは『「新たに」損害が発生すると考えるべきなのはどういう場合か』であり、同じ懲戒事由のものが2つ以上存在する場合に全く0になるというのはやはりおかしい話です。

懲戒請求の事由どころか文面まで一緒であるというのなら、実質的に一つの懲戒請求書と扱うことができます。こういう場合は単純比例は不適切でしょう。

3:私見、懲戒事由毎に損害は新たに発生するが、同種の懲戒事由の場合は2つ目以降の損害は漸減すると考えるべき

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※懲戒請求による弁護士の精神的ダメージのイメージグラフ

懲戒請求1件目の損害が1.0だとして、同じ内容の懲戒請求が960件なされた場合の損害が960だと言うのは素朴な感覚からしても違和感があります。

1件目の懲戒請求に対しては0から答弁書を書かなければならないし、事案の把握をして反論を考える負担がかかります。しかし、同じ内容の懲戒請求に対しては同じ反論や反証をすれば良いのだから、後の懲戒請求による弁護士の作業負担は必然的に減ります。

世間からの評価も、1度だけの場合と960件起こされているという場合とで違いはありますが、単に「懲戒請求を受けている」という事実は件数とは無関係に評価されるので、社会的信用が単純比例で減少するとは考えられず、精神的損害が単純比例するというのは実態にそぐわない。

懲戒請求手続に付される事での登録替え、登録取消し、転職の制限も、1件の場合と960件の場合とで全く変わらない。

よって、960件からの懲戒請求の損害が960だというのは成り立たない。 

この場合、2人目以降の損害は漸減し、損害は極限値0に無限に近づく(収束する)という計算方法を採れば良いのではないでしょうか? 

ただ、この見解だと、以下の問題があります。

  1. 懲戒事由が同種であるというのはどのような基準で判断するのか
  2. 「1人が複数件の請求」の事案なら良いが、「複数人が1件の請求」の場合には、自らが関知しない別の者の懲戒請求の有無によって損害額が減ったり増えたりするため不自然
  3. 裁判が個別に訴えられた場合には裁判所が「大量事案」と認識できない可能性がある
  4. 「他にも他人から同種の懲戒請求がある」という被告側の主張がまるで損害額減額のための抗弁のように機能する可能性はあるのか?
    ※共同不法行為を被告が抗弁として主張することが可能か?という話とは異なる。

問題点2,3からは「その懲戒請求が何度目か」を知ることができないと事実上使えない手法ということになると言えます。これに対する再反論もできそうですが、苦しいものになりそうです。

余命「大量」不当懲戒請求事案と類似の過去の裁判例

類似の事案から結論の妥当性を探り、ヒントを得ることは重要です。

これをしないで感覚的に良い・悪いを論じる人が多いですが、何らの物差しが無い状態での論述は説得力がありません。

1人が大量に懲戒請求を繰り返した事案

東京地裁 平成25年(ワ)第29832号 損害賠償請求事件 平成26年7月9日

この事案は1人の者が、平成25年9月16日付けから同年10月26日付けまでの合計37次(原告に対するものは34件)138件に及ぶ懲戒請求書を提出し、その他にもファックス送信を弁護士に対して執拗に行うなどの不法行為について精神的苦痛の慰謝料が請求された事案です。

懲戒請求の内容は次のようなものです。

本件懲戒請求は,原告のC及びDに対する送付文書中の文言等が被告の名誉又は信用を毀損すること,原告がCに対しBの株式を放棄するよう脅したこと成年後見人である原告にはBを解散し清算する権限がないにもかかわらず,原告が本件成年後見業務に及んでいること,本件成年後見業務は,成年後見制度を悪用して会社を乗っ取るものであり,原告が嘘を述べていること,被告,C及びDが,原告により,連日「生殺しの生き地獄」に置かれていることなどを申し立てるものである。

原告が認識する被告が懲戒理由として主張する事由も,そのほとんどが,原告について「成年後見制度を悪用して,Bを乗っ取ろうとしている」旨の内容だったものです。

損害額はその他の不法行為も含めて精神的苦痛に対する慰謝料として100万円が認定されました。これをどう考えるか。

34件の同種の懲戒請求+その他の不法行為があって100万円の認容ということは、懲戒請求のみの損害は多く見積もっても50万円でしょう。そして、懲戒請求の数毎に損害が新たに発生するという見解の場合は、これを34で割るということになり、1件あたり1万4000円程度の損害ということになります。

対して、懲戒事由毎に損害が新たに発生するという見解の場合は件数では割らないので、1事由あたりの損害は高くなることになります。 

再掲東京地裁平成28年(ワ)第1665号 平成28年11月15日 

1人の者からの懲戒請求が3回あり、事件処理の過程の行為が「地上げ屋である」「詐欺・横領である」という主張が懲戒請求者から行われました。また、懲戒請求のための弁護士の時間負担は概ね12時間でした。この訴訟の前にも懲戒請求138件がなされて100万円の損害が認定された事案、懲戒請求5件がなされて196万円余の損害が認定された事案がありました。

本件訴訟における賠償額は140万円と認定されました。

やはり、こうしてみると1人が複数回の懲戒請求を起こした場合(弁護士1人が原告で被告も1人)には、単純に懲戒請求の件数毎に損害が新たに発生するとは考えられていないようです。

多数のメディアが1人に不法行為をした事案:三浦和義氏の複数メディアに対する損害賠償請求額

こちらは懲戒請求ではなく民事訴訟ですが、「原告が1人で被告が多数」という状況は大量懲戒請求事案と同じです。三浦和義氏とは、いわゆる「ロス疑惑」事件において犯人ではないかとマスメディアに報じられた方で、報道が名誉毀損による不法行為であるとして本人訴訟で多数のメディアに不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起した方です。

三浦和義氏が勝ち取った損害賠償額の合計は1億数千万円以上とも言われています。

しかし、三浦氏の場合は各事案によって損害の内容が異なる場合が多いと思われます。

三浦氏の提起した訴訟で私が確認できたのは以下です。

  1. 東京地方裁判所 平成4年(ワ)第1718号 損害賠償請求事件 平成5年5月25日⇒刑事被告人の容姿について表現した記事がプライバシー権侵害にあたるとされた事例:金一〇〇万円認容
  2. 東京地方裁判所 平成元年(ワ)第4925号 損害賠償請求事件 平成3年1月29日⇒保険金殺人の被疑者が取調べに対して弱気になっている旨の新聞記事が名誉毀損に当たるとして慰謝料請求が認められた事例:金一〇〇万円認容
  3. 東京地方裁判所 平成元年(ワ)第4775号 損害賠償等請求事件 平成2年12月20日⇒殺人罪で強制捜査下にある者につき、別の殺人を図っていたとの見出しを付したスポーツ新聞の記事が名誉毀損に当たるとして、慰謝料請求が認容された事例:金一〇〇万円認容
  4. 東京地方裁判所 平成元年(ワ)第13692号 損害賠償請求事件 平成2年3月26日⇒係属中の刑事事件に関する週刊誌上の論述が公正な論評に当たらず、被告人に対する不法行為となるとされた事例:金一〇〇万円認容
  5. 東京地方裁判所 昭和61年(ワ)第13561号 損害賠償等請求事件 平成2年3月14日⇒無修正の全裸写真の写真報道誌への掲載が人格的利益の侵害として、雑誌発行元・編集人・発行人に不法行為責任が認められた事例:金一〇〇万円認容

不思議なことに、不法行為の内容が各事案で全く異なるにも関わらず、損害額が全部100万円だということに気づきます。これはどう理解すれば良いでしょうか?確かに事業者に対する名誉毀損は100万円が上限とされていた時代もあり、それに合わせていたと理解することもできますが、全事案でぴったり同じ金額というのはやはりおかしいです。

これらは全ていわゆる「ロス疑惑」事件報道に関するものです。裁判所も全て東京地裁です。ということは、裁判所は「ロス疑惑」にまつわる名誉毀損の不法行為訴訟を社会的事実として1つのものを原因とする名誉毀損と捉えていたと言えないでしょうか?

三浦氏がロス疑惑に関して提訴した事件で、1つの事件で認容される金額を単純に訴訟提起した数だけを合計すると、非常に高額の賠償金額になるということを懸念したために、1件あたりの損害額を平準化したのではないでしょうか?

つまり、既に他の事案と共通する部分については三浦氏が受けた損害は評価されており、改めて損害を填補する必要はないと考えられていたのではないでしょうか?

例えば保守速報の事案では200万円が認定されました。

近年は名誉毀損・侮辱による損害賠償額が高騰しているという傾向があるとはいえ、保守速報の場合は一般人に対する「悪口」程度のものであり(人種差別的文言が賠償額の算定で考慮されたとはいえ)、事業者たる三浦氏の場合には犯罪者とされたり全裸写真まで掲載されているにもかかわらずそれよりも低額な金額であるということからは、上記のような平準化を行っているのではないかと疑問に思います。

仮にそうだとして、本件の場合にも同様の処理はするのでしょうか?

今回は1つのブログによる呼びかけがきっかけで懲戒請求が大量になったという事案ですが、懲戒請求の内容が同じものと、そうでないものが混在している例があります。三浦氏のケースとの平仄では、そのような懲戒請求も社会的事実として1つの現象から発生したと考えるということになるはずです。

もしもそう考えないとしても、実質的に同じ懲戒事由を主張していると思われる場合には、損害は全く別個のものとは考えられないのではないでしょうか?

三浦氏の事例は後述する争点である賠償額が過大になる、抑止効果が無い、という問題を捉える上で参考になると言えるでしょう。

懲戒請求者1人に対する請求額・和解額について

佐々木・北弁護士は過去の懲戒請求者に対する不法行為訴訟の事例から、比較的低額である60万円(弁護士1人に対して30万円)を請求しているとしています。

また、和解額も5万円から10万円を提示しています。

何等の面識のない一般人からの懲戒請求に対する不法行為訴訟

上記ブログで紹介されている東京地判平成22年9月8日は、何ら面識のない一般人から懲戒請求を受けたが、インターネット上の新聞記事が添付されたり、記事に手書きで悪口が書いてあったという事案です。こちらは単発の懲戒請求です。

「悪口」があったというのが余命大量懲戒請求事案とは異なりますが、認容された賠償額は150万円です。保守速報の200万円に近い金額であり、三浦氏の金額よりも高い水準です。

悪口があるという部分が賠償額の算定に寄与したとすれば、その分を差し引いた賠償額は100万円を下回るのではないかと思います。

一応、余命大量事案で訴訟を起こした弁護士は全員この金額を下回っています。

その他、懲戒請求に対する不法行為訴訟

広島高等裁判所 平成20年(ネ)第454号、平成20年(ネ)第505号 損害賠償請求控訴,同附帯控訴事件 平成21年7月2日 

こちらは橋下弁護士のTV番組での懲戒請求呼びかけ行為によって約600件の懲戒請求が為されたことが問題となりました。最高裁では賠償を認めてませんが、高裁では懲戒請求にかかる精神的損害として80万円の損害賠償額が認定されました。ちなみに広島地裁では200万円でした。

私見:弁護士会のマッチポンプではないか?

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過去記事でも乗せたこの図ですが、上記の裁判例は全てレッドゾーンにある「それなりの根拠のある懲戒請求」でした。だからこそ弁護士会としては懲戒請求として扱わざるを得ず、弁護士としても反論のために時間を割いて対応する必要があったので損害額が高くなったのだと言えます。

しかし、余命大量懲戒事案では、弁護士法58条の「その事由の説明を添えて」をみたしていないとみられるものや「主張自体失当」であるなどの「それなりの根拠すら無い」低レベルの「懲戒請求書と題する書面」が送られてきた事案です。いわば怪文書に過ぎないものを、わざわざ弁護士会が「懲戒請求があった」として扱い、弁護士に負担を負わせています。

これは濫用的懲戒請求を防止するために弁護士会が綱紀委員会を設けている趣旨に反する制度運用です。民事裁判では請求の特定がされないまま被告に訴状の副本を送達して手続を進めたような在り得ない状況であり、刑事裁判では犯罪行為の特定がなされないまま検察官が告発を受理して起訴したような在り得ない状況です。

そうした運用によって弁護士に生じた負担を損害賠償として見積もってい良いのでしょうか?猪野弁護士が指摘するように、全く反論などしなくても弁護士会は懲戒委員会にはかけないでしょう。

認容されるべき具体的な数字の言及は差し控えますが、訴訟提起を予定している弁護士らが主張する数十万円以上の請求金額は、高すぎるように思います。請求金額に連動して決められる和解金額も、高過ぎるということになります。

いずれの立場においても発生する不都合

960人からの請求(件ではない)の損害額の算定の考え方には、大きく分けて1人からの損害を単純合計する見解と(個別にみる見解)、弁護士が受けた損害を960人から受けた損害として見積もる見解(総体としてみる見解)があります。

過去に例のない事案のため、弁護士の間でも見解は分かれていますが、これらのいずれの立場をとっても不都合が生じます。

懲戒請求者全員の合計額が5億円を超え過大となることについて

単純に1人上がりの請求額を懲戒請求をした960人全員に対して要求すると、佐々木・北弁護士の場合、5億7600万円にも上ります。

同じく余命信者960人から懲戒請求を受けながら訴訟は提起しない猪野弁護士は、佐々木・北弁護士の主張する損害額は死亡慰謝料で10~15人に匹敵する額と言っています。

一般的な感覚としても、このような損害があったとは考えられません。

各懲戒請求者の負担が軽くなり将来の不法行為の抑止が働かなくなる懸念 

 

 

現在の不法行為損害賠償の考え方は「損害の填補」による被害者救済ですから、不法行為者への懲罰という観点は入ってません。

ただ、将来の不法行為の抑止という観点は、行為態様の悪質さを考慮している中で読み込まれていると言うことも可能ですから、この観点からの損害額の増加が考えられるかということも被害弁護士からは期待されています。

その他、損害額に影響する論点

後日別稿を書くかもしれない疑問点を軽く記述します。

判決確定後などに従前のものと同じ懲戒事由で懲戒請求された場合

これは別個の損害が発生したとしてよいのではないでしょうか。

いつの時点からそのように考えるのか?基準はどうするのか?という問題が発生しますが、それは訴訟提起の場合は口頭弁論終結時や訴訟提起以後などを基準時点にすればよろしい。

訴訟提起していなければ(或いは訴訟提起したかは無関係に考えるのであれば)、「相当期間」経過後とすれば良い。

ただ、これも「1人が複数回の懲戒請求をした」場合には妥当するかもしれませんが、「多数人が1回の懲戒請求をした」場合には、何らの意思連絡をしていない他人の懲戒請求のタイミングによって自己の懲戒請求による損害額が決定されるという話になってしまうのではないかという疑問があります。

共同不法行為は成立するか

 

共同不法行為とすると、960人からの懲戒請求は総体として扱われ『960人からの大量の不当な懲戒請求によって弁護士に精神的苦痛を与えた』ということが損害賠償の範囲となります。

その金銭的評価がどうなるかはともかく、認定された損害額を960人が連帯して賠償する義務を負うということになります。

これは弁護士にとっては「旨味」がないことになる可能性がありますので、弁護士からは共同不法行為の主張はなされないでしょう。

しかし、裁判所が訴訟指揮で共同不法行為の構成にさせるのか、職権で共同不法行為の構成を認定するということは在り得るのかということは問題になるかもしれません。

訴訟法上の論点について

審理の方法や訴訟指揮はどのようにするべきでしょうか?

今回は共同不法行為が主張されておらず、各人から別個に損害を受けたという法律構成ですから、弁護士としてはそれぞれ別事件として処理することも考えられます。

そうすると、裁判所としては処分権主義の要請があるので、1件1件の個別事案として見るのではないか?という懸念があります(多分それは無いだろうと思いますが)。

仮に弁護士が事件としては同一のものとした場合、被告らの出廷する期日は分けるのでしょうか?

それとも三浦氏の事案のように、別個の事案として960件を処理するとしつつ、損害額の評価において他の訴訟の損害評価を考慮して平準化する対応をするのか?

弁護士からの見立ては以下

 

 

 

まとめ:いずれかに決めるならば

大量懲戒事案の損害額の認定方法においては、懲戒請求者1人による1件の懲戒請求の損害額を個別に把握して認定するのか、それとも事案を総体として捉えて損害額を「現実の損害の填補」に見合うように認定するのか。それとも私見のような手法を取るのか。それとも三浦和義氏の事例にみる東京地裁のような処理をするのか。

損害額の考え方についての私見において示したような方法論は、実体法上も訴訟法上も問題が多く、現実的には採り得ない可能性が大きいです。

三浦氏の事例における裁判所の処理の仮説が当たっているとすればそれによることになるのでしょうが、そうでない場合には個別にみるか総体でみるかの2択になります。

いずれの見解が世の中のためになる、或いは「公平」な事案処理になるでしょうか?

総体として捉えるとすると、安易な懲戒請求の抑止にはなりません。懲戒請求者は「ムーブメント」があれば小さな負担ででいくらでも弁護士に攻撃できます。人数が多ければ多いほど、気に入らない者を安価に叩けるということになります。

他方、個別に把握すると弁護士が金銭的利益を過大に受けます。ただ、この場合はタダで利益を得るのではなく、訴訟を提起するという時間的金銭的負担を負って(金銭負担は一時的と言えるが、時間負担は絶対にある)得た利益であると言えるので、一応の正当性は肯定できます。そして、安易な懲戒請求の抑止にもなります。

したがって、損害額については個別に把握するべき、ということになるでしょう。

ただし、個別に把握するのですから「懲戒請求が大量」であることが損害額の根拠にはなりません。あくまで1件1件の「ダメージ」によって判断されるべきです。
(弁護士の各種対応も「大量だから」という理由を持ち出すのはよろしくないということになります。この点は別稿を書く予定です。)

そうすると、本件は「損害額の計算方法」の問題は争点ではなく、単に1件1件の損害額がどうなのか?という問題に帰着するのではないかと思います。 

以上

米朝会談の合意文書(全文)と会談後のトランプ大統領記者会見の発言

米朝会談の合意文書とその後のトランプ大統領の記者会見の発言について聞き取りをしました。やっつけなので間違いが多々あるかもしれません。

トランプ大統領の記者会見は動画の44分くらいから。52分くらいまでは演説。

元動画は限定公開だったので、そうではない動画URLに差し替えました。こちらは最初から記者会見です。

それ以降に記者との質疑応答です。

米朝会談の合意文書

 

米朝合意文書

 

 

 

米朝合意文書

 

  1. The United States and the DPRK commit to establish new U.S.-DPRK relations in accordance with the desire of the peoples of the two countries for peace and prosperity.
  2. The United States and the DPRK will join their efforts to build a lasting and stable peace regime on the Korean Peninsula.
  3. Reaffirming the April 27. 2018 Panmunjom Declaretion, the DPRK commits work toward complete denuclearization of the Korean Peninsula.
  4. The United States and the DPRK commit to recovering POW/MIA remains, including the immediate repatriation of those already indentified.

自前の日本語訳は以下

  1. 米国と北朝鮮は、両国民の平和と繁栄の願いに応えるために、新しい米朝関係を樹立することを約束する。
  2. 米国と朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮半島における持続可能で安定した平和体制を構築するため努力する。
  3. 朝鮮半島の完全非核化に向けて、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は2018年4月27日ののパンムンジョン宣言を再確認した。
  4. 米国と北朝鮮は、すでに確認されている者の即時送還を含む、戦時捕虜、戦時行方不明者の祖国復帰を約束している。
    ※これを「遺骨返還」と訳すのは現実的とはいえ、文章の精神に鑑みれば誤りだし無礼、侮辱、冒涜に当たると思いました。表現を変更しました。

これといって進展がないですが、青山繁晴さんの指摘を踏まえるべきでしょう。

簡単には絶望しないようにしましょうね。
合意文書と、水面下協議、実務協議、首脳会談それぞれの交渉の中身は、また違います。そもそもアメリカにだけに期待するのなら、わたしたち独立国としての日本の姿勢としては、それは違います。

現に、合意内容の後の文章が重要です。

and for the opening up new future,President Trump and Chairman Kim Jong Un commit to implement the stipulations in this joint statement fully and expeditiously.

新しい未来のために、トランプ大統領と金正恩議長は、共同声明の中の当該規定を完全かつ迅速に履行することを合意する。

The United States and the DPRK commit to hold follwow-on negotiations, led the U.S. Secretary of State, Mike Pompeo, and a relevant high-level DPRK official, at the earliest possible date implement the outcomes of the U.S.-DPRK summit.

米国と北朝鮮は今後も協議を行い、マイク・ポンペオ米国務長官と対応するレベルの北朝鮮高官によって、可能な限り早期に米朝会談での共同声明を履行することを合意する。

 

ポンぺオと同レベルの北朝鮮高官との協議が首脳会談となるということですね。

CIVD (Complete Irreversable Verifiable Denuclearization)=完全かつ不可逆的で検証可能な非核化が盛り込まれていないという批判はありますが、これは今後の協議で詰めていくのでしょう。

記者会見でも質疑応答で拉致問題について言及しています。

米朝会談後のトランプ大統領記者会見

Well thank you very much everybody we appreciate it we're getting ready to go back had a tremendous 24 hours we've had a tremendous three months actually because this has been going on for quite a while that was a tape we gave to chairman Kim and his people his representatives and it captures a lot captures what could be done that's a great a great place has a potential to be an incredible place between South Korea if you think about it and China that's a tremendous potential and and I think he understands that and hi wants to do what's right.

Ii's my honoer today to address the people of the world following this very historic summit with chairman Kim Jongwan of North Korea spent very intensive hours together.

And I think most of you have gotten the signed document or you will very shortly.

It's comprehensive it's gonna happen I stand before you as an emissary of the American people to deliver a message of hope and vision and a message of peace let me begin by thanking our incredible hosts in Singapore, especially Prime Minister Lee friend of mine this is a country of profound grace and beauty and we send our warmest wishes to every citizen of Singapore's to really made this visit so important and so pleasant despite all of the work at all of the long hours

I also want to thank president Moon of South Korea he's working hard in fact I'll be speaking to him right after we're finished.

Prime Minister Abe of Japan friend of mine just left our country and he wants what's right for Japan and for the world a good man

And a very special person President Xi of China who has really closed up that border maybe a little bit less so over the last couple of months but that's okay but he really has and he's a terrific person and a friend of mine and a really a great leader of his people 

I want to thank them for their efforts to help us get to this very historic day.

Most importantly I want to thank chairman Kim for taking the first bold step toward a bright new future for his people our unprecedented meeting the first between an American president and a leader of North Korea proves that real change is indeed possible.

My meeting with chairman Kim was honest direct and productive we got to know each other well in a very confined period of time under very strong strong circumstance.

We're prepared to start a new history and were ready to write a new chapter between our nations.

Nearly  70 years ago think of that 70 years ago an extremely bloody conflict ravaged the Korean Peninsula countless people died in the conflict including tens of thousands of brave Americans.

Yet while the armistice was agreed to the war never ended to this day never ended but now we can all have hope that it will soon end and it will it will soon end the past does not have to difine the future.

Yesterday's conflict does not have to be tomorrow's war and as history has proven over and over again.

Adversaries can indeed become friends. We can honor the sacrifice ot our forefathers by replacing the horrors of battle with the blessings of peace, and that's what we're doing and that's what we have done.

There is no limit to what North Korea can achieve when it gives up its its nuclear weapons and embraces commerce and engagement with the rest of the world that really wants to engage chairman Kim has before him an opportunity like no other to be remembered as the leader who usherd in a glorious new era of security and prosperity for his people.

Chairman Kim and I just signed a joint statement in which he reaffirmed his unwavering commitment to complete denuclearization of the Korean Peninsula.

We also agreed to vigorous negotiations to implement the agreement as soon as possible and he wants to do that. This isn't the past this isn't another administration that never got it started and therefore never got it done.

Chairman Kim has told me that North Korea is already destroying a major missile engine testing site that's not in your signed document. We agreed to that after the agreement was signed. That's a big thing for the missiles that they were testing the site is going to be destroyed very soon.

※合意文書を調印した後に金正恩から「北朝鮮は既に主要なミサイルエンジン実験場の破壊に取り掛かっている」と口頭で伝えられたとのこと。

Today is the beginning of an arduous process our eyes are wide open but peace is always worth the effort especially in this case they should have been done years ago, they should have been resolved a long time ago, but we're resolving it now.

Chairman Kim has the chance to seze an incredible future for his people anyone can make war but only the most courageous can make peace the current stateof affairs cannot endure forever the people of Korea north and south are profoundly talented industrious and gifted these are truly gifted people. They share the same heritage language customs culture and destiny but to realize their amazing destiny to reunite their national family the Menace of nuclear weapons will now be removed in the meantime the sanctions will remain in effect.

We dream of a future where all Koreans can live together in harmony where famillies are reunited and hopes reborn and where the light of peace chases away the darkness of war this bright future is winning with it and this is what's happening it is right there it's within our reach

it's going to be there it's going to happen people thought this could never take place it is now taking place. It's a very great day it's a very great moment in the history of the world.And chairman Kim he's on his way back to North Korea and I know for a fact as soon as he arrives he's going to start a process that's gonna make a lot of people very happy and very safe so it's an honore to be with everybody today the media is a big gathereing of media I will say makes me feel very uncomfortable (笑い声) but it what it is people undrestand that this is something very important to all of us including yourselves and your family so thank you very much for being here.

 

we'll take some questions 

拉致問題についての質疑応答

拉致問題についての質疑について。動画の1時間2分7分50秒あたりからの質問です。

和訳はかなり意訳してるし間違ってるかもしれません。

拉致問題についての質問

What part did Japan play and did the abduction you should come up. also the fate of the Christians and this question is when will you be doing an interview with Japanese TV fifty thousand American troops are in Japan.

※質問がマジで意味不なんですが、なんとなく拉致問題について聞いたと思ってればいい気がします。

トランプの回答

Fifty thousand great troops that's true yeah it did abduction absolutely as Prime Minister Abe's one of his certainly other than the whole the nuking subject certainly his I would say his main point and I brought it up absolutely and they're gonna be working on that it will be. We didn't put it down in the document. But it will be worked on.

50万人のアメリカ兵が居る。その通り。拉致問題は間違いなく安倍総理にとって、核兵器問題以外の、彼にとって…私が言いたいのは、彼の主な関心事だということだ。そして私は間違いなく拉致問題を取り上げ、彼らは実行のために取り組むつもりだ。我々はそれは文書に書かなかった。しかし、うまくいくでしょう。

※この間に何か質問があった?

Christians yes we are brought it up very strongly you know Franklin Graham spent spent and spends a tremendous amaount of time in North Korea. He's got it very close to his heart it did come up and things still be happening.

クリスチャン、そう、我々はこれを強調しますが、ご存じの通り、フランクリン・グラハムは北朝鮮において凄まじく長い時間を過ごしました。彼はそれをすぐにでも思い出します。そうした出来事は過去のものでありますが、今現在も起こっています。

※この返答は前提知識がないとよくわからないかも、フランクリン・グラハムはこの人(@Franklin_Graham)ですが、北朝鮮で何をしたかが情報が見つからない。

 

こちらによると、かれこれ10回以上も北朝鮮に極秘訪問をしているとのこと。

「大量破壊兵器を使って敵を殲滅しようではないか」と言ったことがあるみたいですが、そういう人物をトランプがこの場面で持ち出したのがどういう意味を持つのかよくわからないですね。

以上

【余命大量不当懲戒請求】弁護士懲戒請求の手続と弁護士自治2

余命大量不当懲戒請求と弁護士自治

弁護士の懲戒請求制度はどのようにあるべきなのか?前回に引き続きこの点を考えていきます。

特に、懲戒請求書が送られてきた場面の処理をどうすればいいのかについて検討していきます。

前提知識として、こちらの記事を読んで懲戒請求の手続を知っておくと理解が進むと思います。

また、各弁護士に対する懲戒請求内容や弁護士の主張する請求額や対応も若干異なっているので事案の全体像を把握するためにこちらを読んでおくとよいでしょう。

懲戒請求書の記載が「懲戒請求があった」とみなせない場合

「懲戒請求書と題する書面」が弁護士会に届いたら綱紀委員会の調査をしなければならないのでしょうか?私は、そうは思いません。

弁護士法58条の解釈から

弁護士法58条では「懲戒請求があった場合には」綱紀委員会の調査に付さなければならないことになっています。しかし、今回は弁護士会に所属する弁護士全員の懲戒請求はそうせずに手続を走らせていません。にもかかわらず、弁護士個人に対する懲戒請求はそのまま手続を走らせています。

「必ず綱紀委員会の調査をしなければならない」

というのは、今回のような事案では妥当しないのではないでしょうか?

弁護士法

第五十八条 何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。
2 弁護士会は、所属の弁護士又は弁護士法人について、懲戒の事由があると思料するとき又は前項の請求があつたときは、懲戒の手続に付し、綱紀委員会に事案の調査をさせなければならない。
以下略

その事由の説明を添えて」という要件があると読めます。

余命大量不当懲戒請求佐々木弁護士

佐々木弁護士への懲戒請求書の一例

こんな単なるツイートの文を貼りつけただけの「懲戒請求書」は、「その事由の説明」を添えた事にはならないでしょう。

つまり、このような書面はたとえ懲戒請求書の体裁であったとしても、弁護士法58条1項の要件をみたさず、「懲戒請求があった」とは認められないと考えることができます。

そして、綱紀委員会の調査に付さなければならないのは「懲戒請求があったとき」ですから、このような懲戒請求書と題する書面が届いても、綱紀委員会の調査に付することは法的に求められていないハズです。

現行の弁護士会の手続では、全て懲戒請求書の写しを弁護士に渡して手続を走らせていますが、これはおかしいでしょう。

綱紀委員会の濫訴防止の機能と存在意義から

条文解釈という形式上の問題は以上として、では、実質的にどう考えればいいか。

確かに、最高裁平成23年判決裁判官須藤正彦の補足意見ではこのように言及されています。

『肝腎なことは,懲戒請求が広く認められるのは,弁護士に「品位を失うべき非行」等の懲戒事由がある場合に,弁護士会により懲戒権限が,いわば「疎にして漏らす」ことなく行使されるようにするためであるということである』

しかし、これは懲戒請求権が「何人」にも認められている事を説明したものであり、懲戒請求書と題する書面がいいかげんな場合にも全て綱紀委員会の調査に付するべきということにはなりません。

むしろ、以下の言及が重要です。

前掲最高裁平成23年判決裁判官須藤正彦の補足意見

弁護士自治やその中核的内容ともいうべき自律的懲戒制度も,国家権力や多数勢力の不当な圧力を排して被疑者,被告人についての自由な弁護活動を弁護人に保障することに重大な意義がある。それなのに,多数の懲戒請求でそれが脅威にさらされてしまうのであっては,自律的懲戒制度の正しい目的が失われてしまうことにもなりかねない。

前掲最高裁平成23年判決裁判官竹内行夫の補足意見

弁護士法においては,懲戒請求権の濫用により惹起される不利益や弊害を防ぐことを目的として,懲戒委員会の審査に先立っての綱紀委員会による調査を前置する制度が設けられているのである。 

弁護士会は濫訴防止の要請があるから綱紀委員会が存在するのであれば、綱紀委員会の調査として弁護士に弁明をさせる前に、綱紀委員会が懲戒請求としてふさわしいかの判断をすることは妨げられていないということになります。いや、妨げられていないどころか、前捌きをするべきであるとさえ言えます。

綱紀委員会という機関が行うのが適切ではないというのであれば、常議委員会があるのですから、そこが判断すれば良い。懲戒請求以外のルートとして弁護士会が「懲戒事由があると思料するとき」というものがありますが、これを判断するのが常議委員会であるという解釈があり((弁護士自治の研究、現実にもそのような運用がなされているはずです。

現行の弁護士会の手続でこのような判断がなされていなかったのは、通常の懲戒請求書は懲戒の事由としていろんな事実の説明や証拠も添えてあり、いちいち「懲戒請求として扱うのが適切か?」を判断する必要がなかったからであると思われます。

 

余命大量不当懲戒請求北周士弁護士

北周士弁護士に対する懲戒請求書の一例

自律的懲戒制度を担う弁護士会が、わざわざ弁護士の手間になるような制度設計をしている。その結果生じた負担を「損害」であると主張するのは、マッチポンプと呼んでいいでしょう。弁護士は弁護士会に請求しても良いと思われます。 

弁護士会が独自に懲戒の事由があると思料する(考える)ときに、まさかこの画像のようないいかげんな根拠で綱紀委員会の調査に付することはないでしょう。「それなりの根拠」をもって行うはずです。

そうである以上、懲戒請求書が送付された場合にも、「それなりの根拠」があるかどうかを判断するべきなのは当然ではないでしょうか?

民事訴訟や告訴・告発の場合と比べてみても、弁護士会の対応は異常です。

訴訟の場合の扱い

通常の訴訟の場合や告訴・告発の場合とパラレルに考えてみましょう。

綱紀委員会が弁護士に聞き取りをせずに、懲戒請求書に不備があるとして弾くことには一般的な合理性が認められるということがわかると思います。

民事訴訟の場合:「請求の趣旨及び原因の記載」が必要

民事訴訟法

第百三十三条 訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
2 訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当事者及び法定代理人
二 請求の趣旨及び原因

(裁判長の訴状審査権)
第百三十七条 訴状が第百三十三条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。ー中略ー
2 前項の場合において、原告が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、訴状を却下しなければならない。

以下略

民事訴訟規則

第五十三条 訴状には、請求の趣旨及び請求の原因(請求を特定するのに必要な事実をいう。)を記載するほか、請求を理由づける事実を具体的に記載し、かつ、立証を要する事由ごとに、当該事実に関連する事実で重要なもの及び証拠を記載しなければならない。

以下略

原告から裁判所に訴状が送られると、裁判所の事件係の裁判所書記官が訴状の形式面の不備や誤りが無いかをチェックします。もし見つかったら原告に対して任意に補正・追完を求めます。通常であればここで拒否をするということはないようです。訴状が受け付けられて事件番号が振られると、どの裁判官(裁判体)が担当するかが決められます。

担当裁判部は、訴状審査を行います。実務上はここで不備があったり不明確な記載があると、任意の訴状の補正の促しがなされます。弁護士が訴訟代理人の場合はこの対応が通例のようです。そうでない場合には、訴状の補正命令が行われ、補正されない場合は訴状却下の命令がなされます。

請求の趣旨とは、デフォルメして言えば原告が求める判決の内容、形式の表示のことです(典型的には被告に対して何をしてもらいたいのか)、請求の原因とは、原告の権利主張を基礎づける事実のことです。当然、附属書類として証拠を添付しなければなりません。

要するに、裁判が行われるまでに原告はどんな事実をどういう証拠によって証明し、何をしたいのかを明示する必要があるということです。それができなければ裁判の手続は走らせず、被告に負担はかからないということです。

弁護士会の懲戒請求の場合、懲戒請求者が原告、対象弁護士が被告と考えることができます。

刑事告訴・告発の場合:「行為の特定」等が必要

告発状の例

ネット上にUPされた告発状の一例:奥田隆幸(たかゆき。) @takayuki_okuda氏

まず、検察官が起訴するときは、「罪となるべき事実」の特定が必要です。それは基本的には「何時、何処で、誰が、何を、何故に、如何にして」の内容によって特定されます。 

特に重要なのが「犯罪行為として何をやったのか?」という「犯罪行為の特定」です。例えば「人を殺した」がそれにあたります。この場合、刑法199条に該当することが示されます。そのためにナイフを用いたのかなどの手段・方法は別の話です。

これと同様に、告発状にも「告発事実」として具体的な犯罪行為の特定やその行為と罪となる法律と条文名が対応していないといけません。告訴と告発は捜査機関である検察や警察等に対して行われます。

余命、日本再生大和会の告発状の返戻

余命グループ(日本再生大和会)による大量告発状送付の返戻書の一例

このように、罪名として記載されているものが指す事実が何なのか、犯罪事実としてどのような行為があったのかが書かれなければ、告発状は返戻されます。当然、被告人と告訴・告発人に指摘される者には何等の負担もかかりません。

弁護士会に対する不当懲戒請求も、どのような行為が懲戒事由なのかが不明なものがあるため、このようにして返戻すれば良かったのです。

それをやっていないのは弁護士会の制度の不備であり、「請求が特定されているか」の判断の懈怠でしょう。

懲戒請求が主張自体失当な場合

上記の私の観点とは異なり、「主張自体失当」となる場合には綱紀委員会の調査を走らせず、懲戒請求書を弾く運用が弁護士から主張されています。

主張自体失当とはどういう場合か

 

ただし、現行の弁護士会の運用は異なります。  

 

東京弁護士会は何をやってるんでしょうか?バカですよね。

結局、綱紀委員会で審査したところで「懲戒事由なし」の判断が下されるものを、わざわざ会員たる弁護士の手を煩わせているのは愚かの極みです。弁護士会は弁護士を守る仕事をしていないということになりますね。

何度も言いますが、弁護士法は懲戒請求を何人にも認めていますが、どんな書類も「懲戒請求」と書かれていれば懲戒請求として扱うべきという要請はありません。あると思っているとしたら勘違いも甚だしいです。

高島章弁護士の見解

魚拓:http://archive.is/EdtrM

「主張自体失当」の懲戒請求は「不当懲戒」ではありますが「不法行為 損害賠償」を構成する「違法懲戒」と言えるかどうかは、議論の余地があります。例えば、「民事訴訟を提起したが請求が棄却された」という事例は世の中にいくらでもあります。それは、結論だけを見れば「不当提訴」ではありますが「違法提訴」とは言えません。それと同じことです。

「不当懲戒だが違法懲戒ではない」

このカテゴリが存在するという認識は重要だと思います。

余命不当懲戒請求は主張自体失当か

960件の懲戒請求書は様々あると思われるので、懲戒事由としてどのようなものが述べられているのか、その全ては知りません。しかし、画像に示したような単なるツイートをコピペしたものは別として、概ね「朝鮮学校への補助金停止をした通達を非難し、補助金支給を求める弁護士会声明に加担したこと」が懲戒事由となっていると言えます。

これは主張自体失当でしょうか?

朝鮮学校への補助金は、公の支配に属さない者に公金支出をすることを禁じている憲法89条違反のおそれがあります。そのような行為を行うよう意見表明をしたことは、表現の自由があるので違法ではありません。

しかし『憲法違反のおそれが強い朝鮮学校への補助金支給について、制度変更を求めるということではなく現行の制度のまま求める行為』が弁護士としてどうなのだろう?と思う一般人の意見は、違法だとは思えません。

もちろん、佐々木・北・小倉弁護士は弁護士会の声明とは無関係なので、彼らに対する限度で不当懲戒請求ですが。

民事訴訟の提起が違法になる場合

懲戒請求が違法になるのは、①懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合に、②請求者がそのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払う事によりそのことを知り得たのに敢えて懲戒を請求するなど懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるとき、です。

これは、通常の民事訴訟の場合にも似たような基準で違法となります。

最高裁判所第3小法廷 昭和60年(オ)第122号 損害賠償請求事件 昭和63年1月26日

民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、右訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である。

民事訴訟の場合には「著しく相当性を欠く」という判示に対し、懲戒請求の場合には「相当性を欠く」とあるため、懲戒請求の方が不法行為の成立する余地が大きいと考えられています。*1

このような判示の違いが民事訴訟と懲戒請求をパラレルに考えることに影響するのかはわかりませんが、民事訴訟も「有効ではない訴え提起」と「有効だが違法な訴え提起」というカテゴリーが存在することに鑑みれば、「「それなりの根拠」すらない懲戒請求書と題する書面を弾く「有効ではない懲戒請求」と「有効だが違法な懲戒請求」のカテゴリーは想定されていると考えられます。

小括

弁護士に対する懲戒請求の判断枠組み

  1. 「それなりの根拠」が無いものは弁護士会が前捌きをし、懲戒請求書を返戻する。綱紀委員会の調査に付さない決定をする。(有効ではない懲戒請求)
  2. 「それなりの根拠」がある場合には綱紀委員会の調査を行うが、その過程で相当性を欠くと認められる場合には懲戒請求は不法行為となる
    (有効だが違法な懲戒請求)
  3. 事実上又は法律上の根拠がある場合には有効かつ適法な懲戒請求として扱う
  4. これらは弁護士法58条の解釈と弁護士会が濫訴防止のために綱紀委員会を設けた趣旨から導かれる

弁護士会においては、このような判断枠組みを持つべきではないでしょうか?

なお、この処理枠組みの中では高島弁護士の言う「不当懲戒だが違法懲戒ではない場合」というのは、オレンジのゾーンとグリーンのゾーンの両方にあることになります。

展望:「殺到型」大量懲戒請求をどう処理するべきか 

高島弁護士のフェイスブックに、今回の事案の争点のほとんどが網羅的に書かれています。今後はここで論点とされたものについても言及していきます。

特に、懲戒請求者に対する不法行為訴訟を提起した弁護士の請求額と和解金額が妥当かどうかについては弁護士の間でも議論が分かれていますので、今後の記事ではそれらを整理していきたいと思います。

以上 

*1:潮見佳男『不法行為法1』(信山社,2009年)193頁以下。

黒岩たかひろ衆議院議員が新潟県知事選投票当日に「電話かけ」は公職選挙法129条違反?

黒岩たかひろの投票当日の電話かけ公職選挙法違反疑惑

プルルルル、プルルルル

国民「はい、◎◎です。」

K「お忙しいところ失礼いたします。私、「投票率を向上させる市民の会」のKと申します。」

国民「はいぃ…(なにそれ?)」

K「本日は〇〇県知事選の投票日ですが、投票はお済でしょうか?」

国民「いえ、まだですぅ(そういえばTVでIさん、だっけ?女性の候補がいたような。あとは知らないわ)」

K「そうですか!投票のご予定はおありでしょうか?」

国民「いいえーあまり考えてなかったですねぇ。まぁ、私1人が投票しても結果に影響ないでしょうからねぇ(なんの電話なんだろう?)」

K「そう思われるのももっともだと思います。そこで、私どもがお伝えしているのは、投票率が上がることで、市民の皆様の意見が政治に反映されやすくなる、ということなんです」

国民「…(最近トークバラエティとかで聞く意識高い系かな?)」

K「◎◎さまのお住まいの地域ですと、投票所は△△にございますので、是非とも足を運んでいただければと思います」

国民「そうなんですか、はい、わかりました(さっさと切りたい。でも、投票所ってそんなところにあったんだ、知らなかった、選挙の紙が郵便受けにあったけど中身見てないし)」

K「お忙しいところありがとうございましたー。」

ガチャン

国民「ホントに何の電話だったんだろう?そういえば投票日って今日だったのか。私は今65歳だけど、この歳まであんまり政治には興味ないから投票したりしなかったりしてたなぁ。ちょっとどんな候補がいるかTVでやってないかしら?」

 

15分後

 

国民「なんか女性の候補者Iさんとおじさんが一騎打ちっぽい雰囲気。おじさんは政府側の固い役職を経験してたみたいだけど、女性候補のIさんは県民と一緒の場面が多くてなんかいい感じっぽいから、この人に投票しようかな。朝日新聞の記事をみても、なんか良さそうだし」

************************************

以上は架空の物語です。

これが公職選挙法で禁止されている投票日当日の「選挙運動」に該当するでしょうか?

ということが黒岩たかひろ衆議院議員の行為を考える上で重要です。

黒岩たかひろ衆議院議員のツイート

魚拓:http://archive.is/LtmQM

「本日は新潟県知事選投票日」

「投票箱の閉まる最後の最後まで電話かけをいたしました」

少し知識のある方は、これは公職選挙法上で禁止されている投票日当日の「選挙運動」に該当し、違法な行為なのでは?と考える人も出てくるのではないかと思います。

でも、本当にそうでしょうか?

公職選挙法上の「選挙運動」の定義

総務省によると、判例・実例によれば、選挙運動とは、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされています。

また、各選挙区の選挙管理委員会においてQAが掲載されています。

例えば電話に関して言及している四万十市のHPはこちらです。魚拓:http://archive.is/TqhUP

仮に、単に投票率の向上を呼び掛けるだけであれば、「選挙運動」にはあたりません。しかし、Q5に注意です。

投票日当日の投票率向上の呼びかけや啓発は、選挙管理委員会で行いますので、候補者等が行うことはありません。

これを特定の候補者の支持をしている人等がすると選挙違反のおそれがあります

「特定の候補者の支持をしている人」であることが電話口での名乗りで判断できるかを基準にするのか、それとも客観的にそういう者であれば「支持をしている人」とするのか。そうだとしても違反になるのかどうか。

この判断は検察判断でしょうね。通報は警察が受け取りますが、警察はこのような法的にグレーな事案を判断できません。

黒岩たかひろ衆議院議員の「電話かけ」の内容は?

黒岩議員がどのような内容の電話かけをしたのかは現時点で定かではありませんが、理論上は様々なものが考えられます。

冒頭の寸劇で示したような、単なる投票行動の呼びかけであれば、どうでしょうか?

しかし、そうすると、そもそも何の得があって投票行動の呼びかけをするのでしょうか?

新潟県の人口分布

新潟県はごらんの通り、高齢者の割合が全国平均よりも高い地域です。

高齢者の状況

そして、おそらく18~20代前半の学生は東京の大学に行っており、住民票の異動をしてなくて新潟県の選挙権は持っていても、実際には投票行動をしない者が多いと思われます。

では、高齢者が多いことがどう影響するのでしょうか?

電話と高齢者

上念さんによると、電話による世論調査をすると、電話に出るのは多くは高齢者であって、単なる高齢者ホイホイになるという指摘がなされています。

高齢者とメディア利用率、投票行動の関係は?

不破雷蔵さんの記事によれば、高齢者であればあるほど、マスメディアの利用時間は多いということがわかります。

そして、高齢者であるほど政権側ではない勢力への投票行動が高いということがわかります。

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地方選挙の一例として仙台市長選挙や名護市長選挙の世代別投票行動の図

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黒岩たかひろの「電話かけ」は公職選挙法違反か?

仮に、黒岩議員が上記のような効果を意図して投票行動を促していたとしても、公職選挙法違反で罪に問うのは厳しいのではないでしょうか?

ただ、そうであっても少なくともこのような行為は外形的に国民からの反感を買うと思われるので、これを公言するのはあまり良い行いとは言えないでしょう。

そして、黒岩氏が実際に電話した内容は、投票呼びかけに留まらない可能性もあり、この事実によっては公職選挙法違反かどうかが決まるので、検察・警察の捜査が行われるのか注意していきたいと思います。

※追記:黒岩たかひろ議員は問題のツイートを削除しました

公職選挙法違反ではないと確信していたのであれば、弁明すればいいものを、ツイートを削除するという対応を取ったということは…

新潟県警察ホームページ - ご意見・ご要望【選挙違反に関する情報提供のお願い】

以上