事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

国会会議録(議事録)が検索できない理由:国立国会図書館に聞いてみた

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国会会議録が見れない場合があります。

「あの質疑から時間が経っているのになぜ議事録が見れないんだろう?」

「しかも、同じ日の別の委員会は見れるのに、この委員会だけがUPされてない」

こういう思いをした経験がある人もいるのではないでしょうか?

現時点でも複数の会議録がUPされていないものがあるので、その原因や傾向について国立国会図書館に聞いてみたので整理していきます。

国立国会図書館の国会会議録検索システム

国会の議事録は国立国会図書館が提供している国会会議録検索システムで衆参すべて過去分をさかのぼって見ることができます。

こちらにUPされていない場合でも、衆議院には委員会ニュースというページがあり、ここで質問者がどういう内容について質疑したのかの概要が分かります(政府答弁の内容は無し)。

会議録がUPされるのは通常、約2~3週間とされていますが、簡略なものについては数日でUPされることもあるようです。

また、3週間以上経っても会議録がUPされない場合も極一部でありますが存在します。それは国立国会図書館がサボっているということではなく、衆議院、参議院の側でタスク未処理となっているからです。そちらから国立国会図書館の事務の方に会議録が送られないといけません。

衆議院、参議院での議事録処理

本会議や委員会が開かれると速記が行われます。

「速記を止めて」と議長が発言するのを聞いたことがある人も多いと思います。

細かいことは分かりませんが、閉会後、衆参の議院の事務方が速記等から議事録を起こすようです。「あー」とか「うー」とかは省き、途中の言い間違いも必要があれば排除して意味が通るようにします。

その上で、発言の内容が正しいか、同音異義語の表記はこれで良いかなどを確認するために発言者に確認するという流れになります。

発言者が必ず中身を見るのかは分かりませんが、議事録の元となる紙は発言者が属する会派に渡されるようです。

したがって、議事録がなかなか出来上がらないという場合は、ここで止まっているということです。ちなみに、誰のせいで止まっているかは教えてくれませんでした。

早く質疑の内容を把握したい場合には衆議院、参議院のインターネット審議中継では日を置くことなくすべてが視聴可能なので、そちらで見るしかありません。

なお、衆議院の場合は第151回国会(平成13年1月31日召集)以降の衆議院の会議録の議事部分を掲載しています。

参議院の場合は30日以内に開催された会議・委員会は各議院のWEBページから閲覧可能です。

中には国会の会期を挟んだり1年以上かかる例も

国立国会図書館や各議院の事務方に聞くと、1年以上経っても議事録が発言者から来ないという例も過去にはあったと言います。

選挙や解散があった場合に発言者が国会議員ではなくなったりする場合もあります。このときは流石にペンディングにはせず、公開に踏み切るそうです。最悪の場合でも選挙・解散があった後のタイミングで議事録は公開されるそうです。

いずれにしても、議事録が隠蔽される、公開されない、ということは在り得ません。

最近で止められている国会会議録の例

いくつか興味深い例があるので挙げてみます

第196回国会衆議院内閣委員会第2号平成30年3月9日

国会議事録杉田水脈パチンコ

2018年7月31日時点魚拓:

https://web.archive.org/web/20180731071844/http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/0002_l.htm

この日は杉田水脈議員が質問に立ち、韓国ソウル市で捏造フィルムが上映されたことに西早稲田2-3-18を拠点とするWAMが関与していることや、ヒューマンライツナウなどが関与しているAV強要問題、ギャンブル依存症の主要因としてパチンコが原因であるという答弁を引き出した回です。

委員会ニュースで質疑内容はわかります。

具体的には、まずWAMで日本を断罪する裁判の真似事が行われた際に検事役を務めたのが今のソウル市長であるということが杉田議員の発言で述べられています。

次に、毎年3月にニューヨークの国連で女性の地位向上委員会が開催されるところ、400のNGOがパラレルイベントを開催しているようですが、2015年は「慰安婦問題の真実と正義 日本軍慰安婦」というものをWAMの代表のわたなべみな氏が作成し、主催者はヒューマンライツナウでその事務局長が伊藤和子であることが指摘されています。

そしてアダルトビデオ出演強要問題について、実際は強要ではない例もあるということが指摘されています。この問題を取り上げたのがイ・ミカという挺対協の代表だということにも触れています。

日付を見るとわかるように、3月のものが7月末になっても未だに議事録がUPされていないということで、いったいどこが止めているのか、それはなぜなのかが気になるところです。

動画から関係部分を文字起こししたものはこちら

第196回国会参議院内閣委員会平成30年7月17日

和田政宗国会参議院IRカジノATM

2018年7月31日時点魚拓:http://archive.is/t3lI4

この日は和田正宗議員がIRカジノ規制について詳細に質問をくわえている回です。

IRの中にカジノがあるという位置づけの必要性、重要性、IRカジノにおけるギャンブル依存症対策に関してATM設置規制(預貯金の引き出しも含む)の提案をするなど、内容が詰まったものだと思います。

実は、ATM設置禁止については競艇、競馬など公営ギャンブル施設内では禁止する方向で議論が進んでいます。しかし、なぜかパチンコだけがATM設置禁止の議論がなされている形跡がありません。

これはギャンブル等依存症対策関係閣僚会議の資料からうかがえます。

和田政宗議員をはじめとしてATM規制については各議員が質問しており、ギャンブル等依存症対策基本法も成立しましたので、今後、パチンコ敷地内のATM完全禁止の議論がなされるのでしょうか?

第196回国会衆議院本会議平成30年7月20日

2018年7月31日時点魚拓:https://web.archive.org/web/20180731071635/http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/0001_l.htm

この日は枝野幸男議員が2時間43分の演説をし、それが書籍化されたという事実があります。

他方、この日は他になんと45もの会議・委員会が開かれてるのですが、それらの会議録は既にすべて国立国会図書館で公開されています。なぜ衆議院本会議のみが公開されていないのでしょうか?

邪推ですが、議事録が直ぐに公開されたら枝野氏の演説を書き起こした書籍は「商売にならない」わけです。そのため、そこで止まっているのではないか?と思ってしまいます。

8月10日に店頭に並ぶとのことですが、通常はその頃までには議事録は公開されるのであり、それでも公開されないとなると、ビジネスを疑ってしまいます。

発言内容の著作権は発言者本人にあるため、事後的なビジネスは何ら問題はありません。しかし、枝野発言の書籍ビジネスを有効かするために国会会議録の公開が遅れているのであれば、他の発言者の発言内容の公表が妨げられていることになります。一部のビジネスを優先することで情報公開が損なわているとすればこれは正当性に欠ける行為であると思います。

まとめ

上記の例は、いずれもパチンコ・ギャンブル関係の質疑や発言がある場合だということに気付いたでしょうか?

なぜかこのような話題のときだけ議事録の公開が遅い、ということは類型的に言えるのでしょうか?

サンプル数が少なすぎてなんとも言えず断定は避けるべきですが、議員が議事録のチェックを止めているのは何かしらの理由があるはずです。ましてや(何の議題があったかは不明ですが)過去1年以上も止めている例があるというのは、当該議員(或いは支援組織、業界)にとって都合が悪い内容の質疑が行われていると考えざるを得ません。

議事録の公表が遅いという事案を発見したらSNSで共有していただきたいです。発言者の党に問い合わせるなりしてどこが止めているのか絞り込みをかけるということも可能でしょう。そして、データが蓄積すればどういう話題のときに公表が遅れるのかということが分かるはずです。

それを分析すれば、何かおもしろいことがわかるのではないか?そう予想しています。

以上

「パチンコ業界が北朝鮮の資金源として送金」という武藤嘉文外務大臣発言その他のソース

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「パチンコ収益が北朝鮮の資金源になっている」

この情報の発信源はどこでしょうか?

実はこの情報は錯綜していて整理がされていないので、改めてここにまとめようと思いました。IRカジノの正当性やパチスロへの影響を考える上で重要です。

武藤嘉文外務大臣の国会答弁ではなく記者懇談会

当時の外務大臣である武藤嘉文(むとう かぶん)氏の発言が「国会答弁」と伝えられることがありますが、実は国会答弁というのは間違いであり、記者懇談会の場で発言されたということです。

新聞報道は1993年7月29日付読売新聞朝刊で確認できます。

国会議事録を検索しても出てこないのは当然です。

丸山穂高(まるやま ほだか)氏の国会質疑

上記で指摘した事実は「第193回衆議院予算委員会3号平成29年01月27日」における維新の丸山穂高(まるやま ほだか)氏の質疑でも触れられています。

○丸山委員 冒頭省略
 パチンコの件でもう一つ、お話を聞いていかなければならないのがこの観点です。パチンコのお金、我が国にミサイルの問題でいろいろある、そして我が国の国民を拉致している、その北朝鮮に対してお金が流れているんじゃないかという話がたびたび出てきます。
 それで、いろいろ調べていると、特に例えばインターネットなんかだと、当時、九三年に、武藤外務大臣の時代に国会答弁で、今このフリップを上げさせていただいています、朝鮮総連の北朝鮮への送金について、パチンコのお金が大分北朝鮮に行っているようだ、何千億円と行っているという発言があるんじゃないかという情報がいろいろあるんですけれども、実はこれは調べましたら国会答弁ではなくて、当時、九三年、シンガポールに行ったときに武藤外務大臣が記者懇で述べているということでした。これは国会答弁ではなく、正式な答弁ではないという、記者懇ですからね、それが記事になっているので、では、改めて正式な答弁を聞きたいというふうに思います。
 外務省はパチンコ業界等から北朝鮮にお金の流れがあるとお考えかどうか、外務大臣、答弁いただけますでしょうか。

つまり、当時の武藤外務大臣の発言は正式答弁ではなかったということです。

この質問については当時の外務大臣である岸田文雄氏が以下述べています。

○岸田国務大臣 北朝鮮への資金の流れ等については、さまざまな観点から実態を把握するべく努力をし、そして我が国独自の措置を講じているわけですが、今御指摘のような点について、具体的な情報については、私自身、ちょっと承知はしておりません。
 引き続き、さまざまな情報については強い関心を持って、情報収集には努めたいと考えます。

このように、パチンコ収益がパチンコ業界から北朝鮮に送金されているかどうかについては具体的な認識がオフィシャルに示されているとはいえないという現状があります。

それにしても、岸田大臣の答え方が「私自身」と言っているのが気になりますね…

万景峰号(マンギョンボンゴウ):で現金を北朝鮮へ

「パチンコ収益が業界からそのまま」ということとは異なりますが、別ルートでの送金手段が複数存在していました。こちらについては元朝鮮総連の中央本部の幹部であった韓光熙が「わが朝鮮総連の罪と罰」という著作の中で暴露しているものがあります。

そこでは全国各地のパチンコ業界や商工関係者から集めた数十億円を朝鮮総連中央本部の新潟出張所に集め、目立たないように2~3千万円を紙袋に小分けしたとあります。その上で親族訪問などの名目のもと、万景峰号という船で北朝鮮に渡航する同胞に持たせたとあります。

これは届出が必要な金額なので、要するに密出国していたということです。

韓光熙は別の場面でも北朝鮮への送金情報を話していました。

なお、北朝鮮への送金ルートとしてはかつて足利銀行もあり、国会でも数回質疑がなされています。

パチンコ協同組合が外務省の認可団体を通して北朝鮮へ食糧援助

155 衆議院 安全保障委員会 7号 平成14年12月05日
○渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。
 それでは、早速でございますが、広い意味での安全保障の中で大変重要な問題であります今回の社団法人日本外交協会の米支援、この点につきましてお尋ねをいたします。
 この日本外交協会が、ある団体の要請によって、人道支援の名のもとに東京都の非常食を北朝鮮に送っていたということが明るみに出ました。この問題をぜひただしたいわけでございますけれども、この点につきまして、まず、この社団法人日本外交協会というのはホームページもございまして、見ました。
 これは一体どういう団体なんですかね。これは外務省の委託事業を受けている団体、しかも、この会の会長は衆議院議長綿貫民輔さんが務めていらっしゃった。その点をかんがみますと、これは大変重大な問題なんですが、この日本外交協会というのはどういう団体なのか、外務省、お答えいただけますか。

ここで言及しているのは、熊谷遊技業協同組合(パチンコ店の協同組合)が「社団法人日本外交協会」という民間NGO団体に対して北朝鮮支援物資を供給したいと申し出た結果、外交協会が45万トンの食糧援助をしたと言う事案についてです。

これは小泉内閣時代に拉致問題が取り上げられていた時期に万景峰号を利用してなされたのですが、外務省が認可した団体であるため問題視されました。読売新聞も大きく取り上げました。

この質疑は神回と言ってよい政治・法制度の不手際をよく炙り出したものだと思います。同日に複数、この件に関して質疑がありましたが、渡辺(周)議員の質疑がもっとも強力です。

○高島政府参考人 お答え申し上げます。
 日本外交協会は、今委員御指摘のとおり、外務省の認可を受けた公益法人、社団法人でございまして、定款では、世界平和と民主主義を基調とする国民外交の実現を図ることを目的とする団体だというふうにうたっております。
 会長は、今御指摘がありましたとおり綿貫衆議院議長が務めておられましたけれども、十二月三日付で、今回の北朝鮮への食糧支援問題の責任をとって辞任届を提出されております。
 定款の定めによって、会長のもとに副会長、理事長、副理事長、専務理事などが置かれておりまして、ことしの三月末現在で、個人会員が二百三十六人、また法人会員が六十三団体となっております。
 この協会でございますけれども、外務省からの委託を受けた事業を含めて、いろいろな事業を行っております。
 主なものを挙げてみますとー省略ー

外務省の認可を受けたというだけではなく、外務省と関係の深い団体であるということがこの後の質疑でも明らかにされます。

○渡辺(周)委員 そうしますと、これは外務省の委託を受けて、そして歴代の会長を見ますと、歴代の外務大臣が会長を務めていらっしゃる、あるいは経済団体のトップを務められた方が会長を務めていらっしゃる。これは大変な公益団体であります。
 この団体が四十万食分、これを北朝鮮に送った。ある意味では、我が国の政府がかかわっている、外務省がかかわっている団体が、このような状況下にもかかわらず向こうに寄附をしていた、その点について弁明をホームページ上で載せているわけであります。
 このホームページを見ますと、今回の件について十二月二日に、「北朝鮮向け食糧援助について 日本外交協会の見解」ということで、その見解を載せておりますけれども、この中に書いてあることは、例えば、後にちょっと説明をいたしますけれども、「政府間交渉とは全く別次元の「人道援助」に徹した行為であり、このささやかな支援行為が現在進行中の日朝交渉に何らかの影響を及ぼすとは考えられません。」というふうに言っているんです。
 それで、日本外交協会というのは、今お話がありましたように外務省の事業を委託してやっている団体でありながら、政府間交渉とは全く別次元だ、こんなことを言っていますけれども、この点についてはどういう御見解を持っていらっしゃいますか。外務大臣、いかがですか。

歴代の外務大臣が会長を務めておきながら、政府の方針(物資供給ストップ)と異なる行動を取っているということがありました。

○川口国務大臣 これは別な委員会の場でも私が申し上げたことですけれども、細かい話は後で説明があると思いますけれども、もう少し違う対応があったのではないかというふうに私としては思っております。
○渡辺(周)委員 違う判断があったのではないか、当然そうですね。
 これはまたここに書いてあるんですけれども、「外務省の意向を代弁する立場でもありませんし、外交政策に影響を及ぼす活動もしておりません。」というふうに言っているんです。しかしここに、この団体の事業の中身を見てみますと、この日本外交協会の概要をホームページより見ますと、この団体の「当面の重点活動」の中には、「真に国益に合致した内外政策を研究し、国の外交政策に反映させるため、」これが当面の重点活動だと書いてあるわけなんです、日本外交協会の概要について。
 ところが、ここの現在の見解では、いやこれは外交政策に影響を及ぼす活動もしておりません、外務省の意向を代弁する立場でもないと。ということは、何をしてもいいということになるんですか。こういうことを言わせておいていいんですか、どうなんですか。この御見解をお尋ねします。
○茂木副大臣 まず、今回の日本外交協会の支援の問題でありますけれども、支援を実施するに当たりまして、事前に外務省の方にも連絡がございました。
 そのときに外務省から協会に申し上げましたのは、北朝鮮に対する食糧支援に関する政府としての基本的な立場を説明申し上げました。今政府としては北朝鮮に対して食糧支援等々を全く検討していない、こういう立場であります。それから、たとえ民間が行う支援であっても当面実施を見合わせる等慎重に対応してほしい、その旨は申し入れをさせていただいております。
 公益法人といいましても民間の団体でありまして、政府として個々の活動について許可するとかしないとか、そういう立場にはありませんが、先ほど大臣の方からもございましたように、同協会としてはもう少し配慮があればよかった、このように考えております。

こうした経緯があったことから、2008年には人道目的(食糧支援等)の北朝鮮船舶の入港禁止措置が為され、その解除も相当限定的にしか認めないという方針が決定されています。 その後の日本外交協会がどうかはわかりませんが、現在も存続・活動しています。

パチンコ業界の脱税割合について

第116回衆議院予算委員会5号平成01年10月17日

○浜田(幸)委員 それでは、余り同じ質問をして苦しめては気の毒ですから次の質問に入らせていただきますが、パチンコ業界は常に脱税のワーストの上位に入っているということですけれども、というのはどういうことかというと、とにかく日本の国の企業の中で一番脱税を的確にしているのはパチンコ業界である、こう言われておりますが、その点いかがでしょうか。

パチンコ業界の脱税についておそらく国会で初めて詳細を明らかにした質疑がこれでしょう。政府答弁もつづきます。

○岡本政府委員 最近の我々の調査の結果から見ましたパチンコ業界の状況について一言申し上げさせていただきますと、例えば法人税関係で申し上げますと、昭和六十三年度におきまして六百八十四件の調査を実施したところでございますけれども、その結果、百五十九億の申告漏れの把握をしております。
 その中で不正申告のあった一件当たりをとってみますと、その不正の金額といいますのは一件当たりで三千八百七十四万円ということで、他の業種に比べますと非常に多額な不正脱漏所得になっております。ちなみに、その同年度の次の業種を見ますと二千八百七十万でございますので、一件当たりで見ますと約一千万円程度の差があるわけでございます。それから六十二年度、今のは六十三年度でございますが、六十二年度の調査実績で見ましても、パチンコ業界が不正一件当たり三千四百十二万円、その一年前の六十一年度を見ますと三千百二十六万円と、いずれも六十三年度と同様に多額の不正が把握されているわけでございます。今のは法人税でございます。
 それから、所得税につきましても、例えば六十三年度におきまして百七十四件調査しておりますけれども、その結果約六十六億円の申告漏れの所得を把握しているわけでございます。これも、一件当たりの漏れ所得で見てみますと三千七百八十一万円ということになっておりまして、これは他の業種に比べますと多額の漏れになっております。ちなみに、次の業種を見てみますと一件当たり千六百十二万円ということでございますので、倍以上の漏れになっているわけでございます。ちなみに、この三千七百八十一万円、これを六十二年度で見てみますと三千三百七十三万円、その一年前の六十一年度では二千百七万円と、まあ六十三年度に比べまして、やはり他の業種に比べますと多額の漏れが出ているということでございます。
 なお、我々の調査の中で、特に強制調査の査察をやってございます。その査察の対象になりましたのが、例えば六十一年から六十三年の三カ年で見てみますと六十二件、これは検察庁の方に告発させていただいております。これは一件当たりで見ますと二億八千万の所得の漏れになっております。この漏れ額につきましては、企業規模とかとの関連もございますけれども、またすべてのパチンコの業者の方が漏らしているわけでもございませんのも御案内のとおりでございますけれども、まあ調査結果から見ますと、平均的には、現実的にはこういう姿になっている、こういうことでございます。

これは平成元年の話なのですが、最近でもパチンコという業種は法人税の脱税の割合が多い業種として毎年のように上位10位以内にランクインしています。

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こちらは国税庁平成28事務年度法人税等の調査事績の概要の引用です。

平成元年当時から約3000万円という脱税額はそれほど変化がないのが分かります。

なお、所得税についてはパチンコ業界が特段多く脱税が発見されているというわけではないようです。

パチンコ業界の経営者の国籍割合は?

 

経営者の国籍比率が北朝鮮、韓国、日本で3:3:3であると言われていたりしますが、こちらは国会議員が国会質疑の場で発言することはあっても、政府がそのような情報を認める答弁も存在せず、信頼に足るソースが見当たりません。

ただし、参考となるものとして2008年1月10日のハンギョレ新聞の記事においては以下のような記述があります。

재일동포들의 단체나 각종 활동에 드는 자금의 상당 부분이 파친코 수익에서 조달된다는 점에서, 파친코 불황은 동포사회의 위축으로 이어지고 있다. 현재 동포들이 운영하는 파친코 업소는 전체의 60%에 이른다.

在日同胞の団体や各種活動に要する資金の相当部分がパチンコ収入の調達という点では、パチンコ不況は同胞社会の萎縮につながっている。現在の同胞が運営するパチンコ店は、全体の60%にのぼる。

こうすると、少なくとも「朝鮮半島系」が少なくとも60%であるというのはそれなりに信憑性のある数字なのだろうと思われます。

なお、Wikipediaソースではありますが【『AERA』(2006年2月13日号)では「全国のパチンコ店オーナーの出自の内訳は、韓国籍が50%、朝鮮籍が30〜40%、日本国籍、華僑が各5%】という記述があり、中央日報では「在日韓国人と朝鮮総連系がパチンコ業界の90%ほどを掌握している」と書かれてします。

しかし、これらはおそらくその手の者達の性癖を考えると「力を誇示」するために話を盛っているものと思われます。

以上を考えれば、パチンコ業界が北朝鮮に利益を送金しているということは、その背景を考えれば在り得ないことではないということが分かります。

追記:金融庁が北朝鮮合弁企業に対して報告命令

記事の魚拓:http://archive.is/29vXq

産経新聞平成30年6月22日

金融庁が北朝鮮との間で不正送金やマネーロンダリング(資金洗浄)行った疑いのある企業10社との取引について、国内すべての銀行、信用金庫、信用組合に対し、取引の確認と報告を求める命令を出したことが22日、分かった。命令は18日付。10社の口座情報や平成28年3月以降の取引記録の提出を命じた。

パチンコ店がダイレクトに北朝鮮に送金するよりは、金融機関を通して行うと考えるのが現実的です。この点について金融庁も本腰を入れ出したので、今後の報道に注意すべきでしょう。

まとめ:パチンコを資金源として送金という公的認定はぼやかされているが

パチンコ業界から北朝鮮に資金が流れている、ということについて公的な証明はなされていません。しかし、ここで示したような事件の数々や営業主の属性などを考えれば、そのおそれは高いを言わざるを得ないでしょう。

その上で、IRカジノに反対する勢力からは信じられないようなデマが流されており、いったいどこがIRカジノが設置されると困るのだろうか、という事例には枚挙に暇がありません。

IRカジノができることでパチンコ業界にどのような影響があるのか。このエントリはその前段として北朝鮮との関係について簡単に整理しました。今後、少し踏み込んだ考察を書く予定です。

以上

IR政策の基本:IRカジノとパチンコ・スロットに関するデマ

カジノIR

2018年7月20、特定複合観光施設区域整備法=IR整備法(IR設置法とも)が成立しました。

この法律が「カジノ法案」として専らカジノに焦点が当てられ、ギャンブル依存症との関係でしかほとんど報道されていない状況は、はっきり言って異常です。

IR=総合型リゾート施設という政策の主要な一部としてのカジノという立ち位置が重要であること、その理解によって何が変わるのか、既存のギャンブル等に与える影響などを簡単に整理していきます。

関連法規や資料については以下の記事でまとめたリンク先が重要です。

本エントリでは特に特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光立国」の実現に向けて~を参考にしています。

IR=総合型リゾート施設政策の基本構造

世界のIRとカジノ、日本におけるIRとカジノの関係を確認しましょう。

この項で図示するものは全て特定複合観光施設区域整備推進会議の取りまとめからのものです。

諸外国におけるIR・カジノ

特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光立国」の実現に向けて~では以下のようにまとめられています。

シンガポールやアメリカ、オーストラリア等の諸外国では、民間事業者が統合型リゾート、いわゆるIR(Integrated Resort)と呼ばれる、「観光振興に寄与する諸施設」と「カジノ施設」が一体となった施設群を設置・運営している。ー中略ー

このIR を公共政策として位置付けるコンセプトは、2005 年のシンガポールにおいて登場する。ー中略ー

同国においてIR とは、国際的に魅力ある観光資源として、「レジャーやエンターテイメント、ビジネスの場」であり、「ホテル、レストラン、ショッピング、コンベンション施設、劇場、美術館、テーマパークといったありとあらゆる施設が立地」するものと概念づけられている。
その中で、カジノについては、あくまで「プロジェクト全体の経済的継続
性を支える」相対的に「小規模な施設」として位置付けられ、「カジノの導入について検討しているのではなく、IR の導入について検討している“Not a Casino,but an IR”」と明言されている。このように、カジノの導入そのものを目的としているものではない旨が明確に示されている

報道では殊更に「カジノ」と「ギャンブル依存症」がクローズアップされていますが、カジノはあくまでも「IRの一部」であるという位置づけが無視されています。

施設群については「MICE施設」と呼ばれ、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Insentive Travel)、国際機関・団体、学校等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)などのビジネスイベントの総称が意識されています。

日本におけるIR・カジノと諸外国との違い

上記のようなIRの構造は日本においても目指されています。

他方、諸外国のIRと日本のIRの違いとして以下述べられています。

諸外国のIR は、カジノ以外の施設が併設されている場合であっても、カジノのライセンス制度を含むカジノ規制法に依っており、カジノ以外の施設は法制度により管理されているものではない。他方、我が国のIR 制度は、MICE 施設や宿泊施設、レクリエーション施設等の集客施設にカジノを加えた統合型リゾート施設を一体として、その設置・運営等を法制度の中に位置付ける世界初の取組である。

IR法制度の中にカジノを法的に位置づけるというのは世界初みたいです。

この仕組みがあることで、カジノ収益の再配分・徴収においてメリットがあります。

IRは民間事業者が設置運営、都道府県等が選定、国(国交省)が許認可

IR事業開始までの手続、プロセス

現時点からIR運営に至るまでのプロセスの概要は以下の通りです。

  1. 国土交通大臣が区域整備の基本方針を策定
  2. 都道府県等が上記基本方針に即して実施方針を策定
  3. 民間事業者がIR事業計画を都道府県等(政令市含む)に提案
  4. 都道府県等(政令市含む)がIR事業者を公募
  5. 都道府県等(政令市含む)が関連地域や組織と協議
  6. 都道府県等(政令市含む)がIR事業者を選定
  7. 都道府県等とIR事業者が区域整備計画を策定
  8. 都道府県等が国に対してIR区域の申請
  9. 国(国土交通省)がIR区域の認定
  10. 都道府県等とIR事業者が実施協定を策定、締結
  11. IR事業者が施設等を設置運営

IR整備法の5条~14条を読むと、この流れはわかります。 

その後のIR事業全体の実施状況については、国土交通大臣が都道府県等から報告を受け、内閣総理大臣が本部長であるIR推進本部からの意見を聞いて評価をしていきます。IR事業全体については、国土交通省が所轄であると言えます。

都道府県(政令市含む)がその領域内の特定の区域をIR区域に指定するので、例えば「船の上のカジノ」などは認められません。

IR事業者の単一性・一体性と収益の還元の仕組み

IR事業者の一体性

一つの「IR区域」の中(地理的一体性がある場所)に「IR施設」がなければならず、そこにおいて管理運営をする「IR事業者」は単一でなければならないという規制がかけられています。カジノ事業を行う者は、IR事業者と同じでなければならないとされています。
(ただし、一定の業務については第三者への委託を認める余地がある)

土地や施設の所有者はIR事業者と別の主体となる場合も認められていますが、その場合にはカジノ事業免許とは異なる許認可を受けることとなっています。

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こうした一体性を確保するようにしているのは、主な収益源と考えられているカジノ収益をIR事業内に還元し、IR事業全体の相乗効果を発揮させるためです。

要するに、カジノ事業による収益が専らカジノ事業に投資されたり、「外部」に流出することがないようにする仕組みが担保されることになっています。

この仕組みは、実は他の点においても効果を発揮することになるので後述します。

カジノについては、カジノ管理委員会(内閣府)が許可・監督する

カジノ管理委員会はIR整備法213条により、内閣府設置法49条3項に基づいて内閣総理大臣の所轄に属します。

IR区域認定が国交省という省庁であったのに対し、これは内閣府の外局に設置される独立した行政委員会です。
政府系機関では「内閣府設置法に規定された機関としての三条委員会」と言われる。「三条委員会」とは国家行政組織法3条に基づく機関という意味が主だが、名称と実態にズレがある。実質的な意味での「三条委員会」とは、その権限行使について上級機関(例えば,設置される府省の大臣)からの指揮監督を受けず,独立して権限を行使することが保障されている合議制の機関と言われる(実態は多少の揺らぎがある)。IR整備法216条には「カジノ管理委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う」とあり、職務執行に際して内閣総理大臣に建議することなどは求められていないため、カジノ管理委員会は三条委員会であると言えるだろう。IR推進法の附帯決議13項では「独立した強い権限を持ついわゆる三条委員会としてカジノ管理委員会を設置」することとされている。このようにして「三条委員会」とは、単に国家行政組織法3条を根拠法令とする機関を指すにとどまらず、上級機関からの独立性が制度として確保されている或いはそのように運営されている国家機関を指す用語として使用されているのが実態である。)

納付金・入場料制度

IRカジノギャンブル

IR整備法ではカジノ利用者に対して入場料を徴収する事となっています。

国に3000円、都道府県等に3000円の計6000円という名目です。

入場から24時間以内の再入場には更に3000円が徴収されることになっています。

そして、「カジノ行為粗収益」の15%ずつを国庫納付金として国と都道府県等に納付する形になります(一次的には国が徴収し、国が都道府県等に払い込む)。

国は納付金を一般財源として扱えるため、IRとは無関係の政策に対しても利用できることになります。都道府県等に払い込まれた納付金の一部は、都道府県等がIR区域の自治体に対して交付できるような制度設計が推奨されています。

「カジノよりも学校にエアコンを」などという横断幕を掲げて反対していた野党議員がいましたが、これがどれだけ無意味なことかが分かるでしょう。

ギャンブル依存症対策

ギャンブル等依存症対策基本法が2018年7月13日に成立しています。

ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議で議論が重ねられてきました。

これをベースとして、IR整備法では以下のような項目が義務とされています。

  1. 入場料の徴収
  2. 入場回数制限
  3. コンプ禁止
  4. クレジットカードによるチップ購入制限
  5. チップの譲渡・持ち出し禁止
  6. 入退場時のマイナンバーによる本人確認
  7. 広告規制

入場回数制限は、週に3回、月に10回までという制限です。

クレジットカードによるチップ購入は日本人や日本在住の外国人は利用不可能です。

細かい決まりはカジノ管理委員会規則で決められることになりますが、大枠としてはこのような規制がかけられているということです。

小括:IRと一体のカジノと言う位置づけが大切

IR制度の基本中の基本の理解を整理しました。

「カジノは一般国民とは関係がない」という意見が散見されますが、カジノという木しか見ずにIR政策全体という森を見ていないがために起こる理解不足が原因でしょう。

ここの理解があるだけで、以下に指摘するデマ、誤解、誤魔化し、印象操作を見抜くことが容易になります。

IR、カジノに関する誤解とデマ

IR制度に関する正確な報道が欠けていることに加えて、ネット上で誤解されている点や意図的に誤解させ、不安を煽る者がいます。

一つ一つ確認していきましょう

1:「カジノ法はトランプ法ダー!」というデマ

7月21日、TBSの「新・情報7days」の中でIR整備法を「トランプ法」と紹介。

「成立を急いだのはトランプ政権への配慮ダー」と言っていました。

IR整備法ができたのは「IR推進法」でIRについて整備する法律を早く作りなさいと規定されたからです。IR推進法は2015年4月28日に提出されました。

トランプ大統領就任は2016年11月。時系列からしておかしいですよね。

如何に【テレビ界隈がカジノが成立しては困る】かというのが理解できるでしょう。

2:カジノ議連(IR議連)に小沢一郎が居りパチンコ換金合法化が目的?

「カジノ議連の最高顧問は小沢一郎だからカジノを推進するのは危険だー!」
「カジノ議連はパチンコの換金合法化を狙っているからカジノは危険だー!」

これらの意見が2018年7月現在もありますが、これは誤解に基づいています。

IR議連=国際観光産業振興議員連盟と特定複合観光施設区域整備推進会議

カジノ議連とは国際観光産業振興議員連盟(略称:IR議連)のマスメディア上の呼称です。

元民主党の小沢一郎が最高顧問を務めていた時期は確かにあります。

しかし、最高顧問は4人いた時期があり、小沢一郎の他に安倍晋三、麻生太郎、石原信太郎が名を連ねていました。途中、最高顧問の数には変遷があります。

また、平成27年3月27日の時点での最高顧問は維新の会の片山虎之助です。

IR推進法が国会に提出されたのが平成27年4月28日(同12月15日成立)ですが、この法律にはIR整備についての議論は内閣の特定複合観光施設区域整備推進本部で行う(1条、14条)と規定されましたので、それ以降の議論は特定複合観光施設区域整備推進会議で行われ公開されています。IR議連の議論は一定程度こちらに持ち越されています。

したがって、現在のIR議連の最高顧問がどうであるかはあまり意味のない話というわけです。むしろ、これから設置されるカジノ管理委員会の構成員がカジノ管理委員会規則を決めるのですから、そちらの委員の構成がどうなるかがより重要です。

IR議連はパチンコ換金合法化を目的として設立されたからヤバい?

パチンコスロットの三店方式の仕組み構造

IR議連はパチンコ合法化を目的としているというのは、2010年4月14日の産経新聞の報道が確認できます。

しかし、実は既にパチンコの換金は実質的に合法であるという公的な意見が出ています。平成28年11月18日、緒方林太郎の質問主意書に対する答弁書、同月29日の再質問主意書に対する答弁書において、政府から以下のように回答されています。

客がぱちんこ屋の営業者からその営業に関し賞品の提供を受けた後、ぱちんこ屋の営業者以外の第三者に当該賞品を売却することもあると承知している。

風営法の規制の範囲内で行われるぱちんこ屋については、関係法令の規定に基づいて適切に行われるものであって、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条に規定する罪に該当しないと考えている。

ぱちんこ屋の営業者以外の第三者が、ぱちんこ屋の営業者がその営業に関し客に提供した賞品を買い取ることは、直ちに風営法第二十三条第一項第二号違反となるものではないと考えている。もっとも、当該第三者が当該営業者と実質的に同一であると認められる場合には、同号違反となるほか、刑法第百八十五条に規定する罪に当たることがあると考えている。

要するに、いわゆる三店方式(「パチンコ店」「景品換金所」「問屋」の三店)と呼ばれる換金方法が行われていることについて政府は認識しているということ、それは直ちに違法になるのではなくパチンコ事業者と換金業者が実質的に同一である場合には風営法違反であり、刑法で禁止する賭博罪に当たる場合があるということです。

こうして既にIR議連とは無関係なところでパチンコ換金が実質的に合法化であるという認識が示されています。しかも、緒方林太郎はIR議連に居ません。

それに、IR議連の役職者の推移を見ればわかるように、当初は民主党が力を持っていましたが、最終的には自民と維新などが議連内部での地位を確立していたという力関係の変遷が分かります。

さらに、「PCSA(Pachinko Chain Store Association)の政治分野アドバイザーにIR議連のメンバーが居るからパチンコ業界の利益を誘導しようとしている」という人がいますが、アドバイザーに就任しているからといってパチンコ業界の利益をIRカジノに持ち込もうとしているかは不明です。そういう議員は一部は居るでしょうがIRカジノの法制度に影響を与えることができるのはどの程度居るかはかなり怪しいです。

ちなみに、元民主党の議員らは結局IRカジノ推進法、IRカジノ整備法案に反対しました。

したがって、IR議連についての古い情報に基づいて「カジノは危険」と思うのは勘違いに過ぎません。 

3:「カジノはパチンコ業界によって推進されている」というデマ

IR議連の項でも触れましたが、IRカジノを推進している議員がパチンコ業界に一定の関係を持っていることは確かです。しかし、それがパチンコ業界の意向を受けて利益誘導しているというには無理があるということは示しました。

運営企業とソフト開発、機器製造会社、カジノ運営企業を混同させる

他の手法でカジノはパチンコ業界によって推進されていると印象操作する者が居ます。

出井康博デマ

プレジデントオンライン:出井康博:http://president.jp/articles/-/24677?page=3

ここで行われているのは【パチンコ運営企業とパチスロ機器製造・ソフト開発企業の混同】です。

「セガサミーホールディングス」 はパチンコ業界の企業ではありますが、エンターテイメント会社のセガと経営統合した企業です。事業内容はパチンコ・パチスロのソフト開発、機器製造、販売であり、パチスロ店の営業は行っていません。

将来的にカジノ機器の開発製造は、現時点でパチスロ機器の開発製造をしている企業が多くを担います。これらの企業はパチンコ・スロットを行わせるという営業形態で収益を得ているのではなく、機器の提供・販売によって収益を得ているだけです。要するにソフトウェア会社、製造業であって、いわゆるパチンコチェーンではありません。先に引用したPCSAにはセガサミーは入っていません

したがって、パチスロ店が廃止されたとしても、代替的な仕事が存在していれば全く痛くもかゆくもないわけです。セガサミーは海外でカジノ運営も行っていますが、ということは他のパチスロ運営企業の意向を受ける必要が全く無いわけです。自社でやれるのですから。

既存のパチンコ・スロット機器はカジノに使われるのか

パチスロをやったことがある人は分かると思いますが、現在のパチスロは単に球が打ち出されたりスロットが回ったりするだけではなく、アニメーションなどの凝った演出が施されています。ソフトウェアが入っているということです。利用者が勝つ確率が変動する「設定変更」が行われることもあります。

こうしたパチスロ機器は、カジノにおいて使われません。

特定複合観光施設区域整備推進会議では、公正なカジノ運営の確保のためにカジノ行為の結果に影響を及ぼす不正な行為を禁止するべきだとされ、パチスロのような風俗営業適正化法(風営法)の「遊技」として認められているものをカジノ施設内で導入するのは適切ではないという方針が示されています。

パチスロ機器がカジノに導入されないということは、パチスロ機器設計製造の業界の利益誘導もIRカジノにおいてはできないということになります。

もちろん、パチスロ機器の設計製造で得た技術をカジノ機器に転用することは在り得るでしょうから、カジノが出来ることでそうした企業に需要が生まれ、利益になるでしょう。しかしそれは健全な市場競争なのであって、殊更問題視するのはおかしな話です。

パチスロ業界が食い込もうとしているかもしれないが…

もちろんパチスロ業界もカジノ利権に食い込もうとしているかもしれません。それは否定しきれないでしょう。しかし、パチスロ業界が先導して推進してる、などという事実はありません。

そこまでしてカジノを成立させたくない勢力って何なんでしょうね?

4:「外資に乗っ取られる」という妄想

IRカジノ

新制度が検討されると「外資に乗っ取られるぅー!」と叫ばれるのは良くある話(笑) 

「日本国内にカジノを単独運営できる企業は無い」はその通りでしょうが、日本国外でカジノ経営をしている日本企業も居る上に、 現存の日本企業がノウハウを寄り添ってジョイントベンチャーを作ることもできるわけですから、まず外資が必ずIRカジノをやるという前提がおかしい

その上で、外資がIRカジノ事業者になったとしても、その利益は国内に残るわけです。しかも、そこで働く人は現地の方が相当数いるでしょうから、外資だろうが雇用は創出されるわけです。

カジノ収益がIR事業に再配分されるという仕組みはすでに説明しましたし、納付金30%が国と都道府県に納められるということも説明しましたから、こういうところで「利益が外部流出するうぅー!」といったような不安を感じることは無いでしょう。

「外資ガー!」はもっとも頭の悪い陰謀論でしょう。

マネーロンダリングに関して外資の危険が言われることがありますが、それはまた別の話。

5:「カジノ収益の試算が無い」「収益は低い」というデマと印象操作

カジノはパチンコとの比較で論じられることが多いですが、市場規模と収益、税収に関するデマが横行しています。

「カジノ収益の試算が無い」という印象操作

IRカジノ政策を行った場合にどの程度の収益が見込まれるのかというのは、IRカジノ政策の議論の当初はシティグループなどがパチンコ業界の収益から試算を報告しています。

これに対して、「カジノ収益の試算が無く、いいかげんな計画だ」という主張がなされることがあります。これはIR制度の理解不足から来る誤解を元に政策を批判するレトリックです。

思い出しましょう、IR区域は都道府県等が決定します。そして、区域整備計画も出します。ということは、地域によって収益の予想が異なるのであり、将来的な施設拡充によっても変動するのです。よって、正確な試算がIRカジノ政策の議論の当初でできるハズもなく、それを求めるのは筋違いということになります。

シンガポールのような狭い地域に国家のファシリティが全て揃っている場合には試算は可能でしょうが、日本のIRではパチンコを参考にするのが最も適切でしょう。

カジノ専門家の木曽崇もブログで以下のように述べています。

私自身、カジノの市場性調査を己の主たる業務の一つとしているワケですが、特定地域における市場規模予測を行うにあたっては、最低限の前提要件として1)カジノ税率、2)域内競合施設数、3)各競合施設の立地の3つが確定していなければ数値が弾けません。

こうした試算は条件が決まってくるごとに何度か行われ、複数調査を参考にすることになるので、過去の一つの調査結果だけを取り上げて「精度が低い」と言うことには何も意味が無いどころか有害な言説です。

「カジノの市場規模はパチンコよりもかなり低くて税収が見込めない」というデマ

そして、「日本のパチンコ市場は世界のカジノ市場と同等」「同等なので、カジノを1つ2つ作った程度では大して税収に貢献しない」というデマも酷いものがあります。

日本のパチンコ市場の規模の算出に使われている会計基準は「顧客が賭けた額=貸玉料」で計算されるグロス方式。

一方、世界のカジノ市場は「顧客の負けた額=カジノ事業者が勝った額」で計算されるネット方式です。詳しくはこちらをどうぞ。

国内産業における規模として約20兆円という数字を持ち出すことはまだいいですが、会計基準の異なるものと比較するのはデマ拡散の目的以外に考えられません。

カジノの会計基準に引き直すと、日本のパチンコの規模は2~3兆円です。

対して、IR整備法の大枠が固まった後に3地域における市場規模を試算した一例としては、7850億円というものがあります。

パチンコはパチンコ税などというものは現時点では存在せず、法人税等のみが企業に課されているだけなのに対して、カジノは「カジノ行為粗収益」に対して30%の税収(国は15%)が発生しますから、「税収が見込めない」という批判はもはや通用しないということになります。

6:ギャンブル依存症に関する誤解

IRカジノ

カジノの運営方針について、ギャンブル依存症との関連で誤解が広められているケースがあります。

特定金融業務で「貸金業法が無適用で貸付上限が無いから依存症になる」というデマ

これらは全てデマや間違った考えです。IR整備法が成立した後なのにこれ。

IR整備法85条以下に、特定資金貸付業務の規制について規定されています。

  1. 本法内に住居を有しない外国人
  2. カジノ管理委員会規則で定める金額以上の金銭をカジノ事業者の管理する口座に預け入れている者

1番又は2番に該当する者にしか貸付はできないようになっています。

では、2番の金額はいくらになるか?整備推進会議のとりまとめでは、シンガポールの例では日本円にして約800万円とされており、この金額を参考に日本のGDP等に照らして決定するのが良いのではないか?という議論がされていました。

貸金業法で年収の3分の1以上の貸付制限がありますが、それが適用されないということは確かです。しかし、IR整備法86条では貸付にあたって返済能力に関する調査等をすることとされています。

利息については85条3項で無利息とされています。返済期限を超えても支払いがない場合の遅延損害金が14.6%と規定されているだけです。 

上記の妄言がデマや間違いであるということが明らかというのが分かるでしょう。

カジノ敷地内に消費者金融機能を持つATMが並ぶというデマ

カジノ施設内でのATM設置は禁止され、カジノ周辺施設でも貸付機能が無いATMのみの設置が認められるとされています。 

細則の制定過程が不透明だ!IR整備法はザル法だ!331項目ガ―!

これはあながち間違いではない可能性も十分にあるのが注意です。

というのは、IR整備法で規制をかけるとされている項目の詳細については、カジノ管理委員会規則に委ねるなど、未だ内容が確定していないからです。しかも、政令を制定するのは国会ではなく内閣における閣議決定で行われます。

閣議決定は事後的に公開されますが、議論の様子は国会中継のように逐一公開されるわけではありません。ですから、手続が(相対的に)不透明であると言われたりします。

ただ、「331項目も政令に委任している」という批判は意味不明で、政令に細目をゆだねている法律はいくらでも存在しています。むしろ法律レベルで全てを規定することに無理があります。

たとえば憲法で選挙制度の全てが規定されていませんが、それが問題だと主張する者はいません。

規定の抽象レベルを合わせることや改正の難易など、様々な要素を考慮して立法は為されるのですから、批判する者が法律に盛り込む必然性を説明しなければなりません。しかしそうした議論は国会でほとんど行われませんでした。

実質週6回ダー

週3回という規制を、2週間でみるとそういう期間ができるという話に過ぎません。

金土日で区切るとして次週の月火水もカジノに行けるだろうということです。

しかし、その場合は当該月で残っているカジノ入場可能日数は4日のみです。

こうやって目先の数字で騙そうとしているのは何が目的なんでしょうか?

魚拓:http://archive.is/MrFNu

7:「持統天皇が双六を禁止したからカジノはダメ」という無知

IRカジノ

2018年7月20日の内閣不信任案趣旨説明における枝野幸男の演説内で出てきた主張です。7世紀末に持統天皇は双六禁止令を出したからカジノはダメだという意見です。※追記:それ以前の質疑においても別の議員や参考人から同じ話が持ち出されたことがありました。

しかし、天皇のお言葉を重視するというのならば、歴代天皇のお言葉をもまた重視しなければなりません。

11世紀の白河法皇は「双六は思うようにならない」と言っているように、天皇が双六をプレーしていたということです。また、元禄時代(17世紀終盤から18世紀初等)に朝廷が寺社における富くじを解禁したという記録もあります。これは幕府の財政不足によって寺社の修繕ができない状況を改善するために、規制がかけられた上で許可されたものです。

ここで、賭博がなぜ違法とされているのか?という基本的な理解が重要です。 

「射幸心を煽る」よく使われる表現ですが、これが賭博が禁止される根本的な理由です。これによってギャンブル依存になり、仕事をしなくなる、お金を使い果たす、生活が荒れる、種々の弊害が生じるという因果関係にあります。

つまり、逆に言えば射幸心を煽る程度に比例して適切なギャンブル依存対策を講じた上であれば賭博の悪性は払しょくされるのであり、だからこそ競馬、競輪、競艇などの公営ギャンブルが存在しているのです。

基本的な考え方も知らず、スポット的な知識としてだけ天皇のお言葉を引用して自己の主張の正当化を図るというのは不敬極まりない行いです。

未来予想:マスコミカケキャンペーンと同じ構図に?

「カジノ事業者は内閣総理大臣のトモダチだー!だから利益誘導ダー!」
(おそらくIRカジノが運営される頃には安倍晋三は総理大臣ではないでしょう)

カジノ管理委員会が内閣の外局であり内閣総理大臣が所轄であることからこのようなマスコミのキャンペーンが貼られる未来が見えるのですが、今から言っておきましょう。頭狂ってますよ。

IR事業者を選定するのは都道府県や政令指定都市なのですから、内閣総理大臣が選べるという仕組みではないのです。

なんだか国家戦略特区の「マスコミカケキャンペーン」に似てますよね?

まとめ

元々この記事でIRカジノの設置がパチスロ業界やオンラインカジノ業界に与える影響まで書きたかったのですが、あまりにもデマが膨大過ぎて1記事で扱うのは適切ではないと判断しました。

そちらについては別稿を書く予定です。
※追記:書きました。

それにしても、ここまでデマが横行するのは、いったい誰にとってIRカジノの設置は都合が悪いのでしょうね?(すっとぼけ) 

この行為もカジノ法案の採決にあたって行われましたし。

以上

音喜多駿都議が公職選挙法違反(寄附)の告発義務違反?「有権者にお金やビール券をばら撒く議員は珍しくない」

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魚拓:http://archive.is/IR3TO

音喜多駿都議が「夏祭りで町会役員などの有権者にお金やビール券をばら撒く議員は珍しくない」とツイートしていることに驚きました。

「エッ!?見て見ぬ振りしてたの!?」こう思わざるを得ません。

しかも音喜多氏は都議なのですから、告発義務があるのではないか?

この点について情報を整理しました。

発端となった報道:公職選挙法違反の寄付行為

ライブドアニュース:http://archive.is/iTWSN

青森県議会の関良議員が自ら施設長を務める障害者支援施設主催の夏祭りで、参加児童に対して千円札を配ったということです。これは議員本人が自分の選挙区内で寄付をする行為について原則禁じている公職選挙法違反に抵触する疑いが強いとされ、問題視されました。

公職選挙法で寄附についての規定を見てみましょう

(公職の候補者等の寄附の禁止)
第百九十九条の二 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。
ただし、政党その他の政治団体若しくはその支部又は当該公職の候補者等の親族に対してする場合及び当該公職の候補者等が専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会(参加者に対して饗きよう応接待(通常用いられる程度の食事の提供を除く。)が行われるようなもの、当該選挙区外において行われるもの及び第百九十九条の五第四項各号の区分による当該選挙ごとに当該各号に定める期間内に行われるものを除く。以下この条において同じ。)に関し必要やむを得ない実費の補償(食事についての実費の補償を除く。以下この条において同じ。)としてする場合は、この限りでない。

自身の選挙区内における寄附行為は原則禁止、但書きで例外が認められている、という立てつけになっています。

今回の事例では例外に当たらず、禁止されている寄附行為にあたるだろうということでした。

「有権者にお金やビール券をばら撒く」について

では、音喜多都議がツイートしたような「お金やビール券をばら撒く」は「寄附」にあたるのでしょうか?定義規定を見てみましょう。

(収入、寄附及び支出の定義)
第百七十九条 この法律において「収入」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の収受、その収受の承諾又は約束をいう。
2 この法律において「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいう。

「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付」にあたることは間違いないですね。

したがって、音喜多都議は公職選挙法違反の事実を知っていたということになるのでしょうか?このような事実は一般的であり、特定の事象に遭遇しなくとも知識として知っていただけなのでしょうか?

音喜多都議と夏祭り

議員の方でもショックが隠せないようなので、一般的な知識かどうか不明です。田中慧さんも議員秘書さんでしたし。

おときた氏はブログをやっているので、そこで夏祭りについても記述していないかと思い、調べてみたら結構エントリがありました。

http://archive.is/IF6DD

これらのブログエントリを見ると、音喜多氏は都議になってからも北区(選挙区内)の夏祭りに度々参加していることがわかります。

したがって、他人から聞いた一般的な知識として寄附行為の事実を把握しているにとどまらず、選挙民に対して「顔を売る」行動の一環としての祭り運営の中で、寄附行為を把握した可能性が高いのではないでしょうか?

刑事訴訟法上の公務員の告発義務

刑事訴訟法には公務員の告発義務が規定されています。

刑事訴訟法239条第2項

第二百三十九条 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
2 官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。

音喜多都議は都議会議員ですから、地方公務員法上の特別職の公務員です。

したがって、刑事訴訟法上の告発義務がある「公吏」に当たります。

ところで、「特別職の公務員に告発義務が課されていると解すべきか」という解釈問題があるようですが、告発義務を認めるべきだというのが通説です。

解釈の仕方がどのようなものか知りませんが、議会や議員には調査権や質問権があり、上級職の指揮命令系統下にあるわけではないので、一般の公務員よりも「告発を求めるのが酷な種々の事情」は存在しないから(期待可能性がある)、という理由づけが可能なように思います。

告発義務の内容

「思料するときは」告発をしなければならないとあることから、単なる訓示規定ではないか、法的義務規定と解しても公務員の裁量に任されているのではないかという議論があります。

実務で参照されることが多い「条解刑事訴訟法」では、「本項は、単なる訓示規定とは解されない」としながらも、「告発を行うべきか否かは、犯罪の重大性、犯罪があると思料することの相当性、今後の行政運営に与える影響等の諸点を総合的かつ慎重に検討して判断されることになり、これらの理由に基づいて告発をしないこととしても、直ちに本項に違反するものではない」としています(参考ページ。農林水産大臣の記者会見参照)

「その職務を行うことにより」にあたるか

※ここは後に追記するかもしれません。

地方議会議員の職務行為って何でしょうか?祭りに参加したり、祭りの準備を行うことが地方議員の「職務を行うこと」になるのでしょうか?

国家賠償法上の「職務を行うについて」は外形標準説が採られており、客観的に職務行為の外形を備えていれば職務行為と判断されます。ただ、法律が違うので同様の判断を行うのかどうかは分かりません。

夏祭りに私服で参加する行為が地方議員の職務行為にあたるとは思えません。

音喜多駿都議は告発義務違反ではなさそうだが

したがって、法的な義務に違反しているとして音喜多都議を非難するのは無理筋ではないかということになります。

しかし、法的な義務はなくとも、少なくとも道義的な意味において「悪いことを見過ごしてはいけない」という一般的な通念があるはずであり、それに反しているのではないでしょうか?

おときた氏はこれまでもあまり表に出ない内部事情っぽい情報を出しては炎上してきました。そうやって「自分は一般人が知らない情報を知っている」という雰囲気を醸し出し、有権者の支持を得ようとしているのではないでしょうか。

今回のツイートもそうした一面が表出したものと考えざるを得ません。

そもそも、音喜多氏の言っていることは本当なのでしょうか?

わざわざ書く必要のないことを敢えて書き、 一般国民に政治不安を感じさせるツイートを行うのはいかがなものかと思います。

まとめ:東京都北区の都議会議員選挙有権者へ

  1. お金やビール券をばら撒く行為は公職選挙法で禁止されている寄附行為にあたる
  2. 音喜多氏は一般的な知識ではなく具体的場面で寄附行為を把握した可能性が高い
  3. そうではないなら政治不安をいたづらに広める行為である
  4. 音喜多氏には告発義務はなさそう
  5. 法的な告発義務はなくとも、道義的には違法行為を見過ごしているとして非難されるべき

東京都北区の有権者の方々、夏祭り等でお金やビール券をばら撒く議員が居たら告発する前に注意してあげてください。有権者が気づかせてあげることも大切だと思います。

以上

沖縄弁護士会が国民の懲戒請求を萎縮させる声明:「実質的に懲戒請求ではないが、違法な懲戒請求」という矛盾

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沖縄弁護士会が天方徹会長名義で大量の懲戒請求書と題する書面に対して非難の声明を公表しました。

内容は沖縄弁護士会会長と在日コリアン弁護士協会所属の弁護士2名に対する懲戒請求がなされたが、その懲戒請求は違法行為を構成するというものであり、更には差別行為でもあるというものです。

この主張はどう考えてもおかしいので、何がおかしいのか指摘していきます。

懲戒請求制度と大量不当懲戒請求については以下の記事でまとめています。

沖縄弁護士会に届いた「懲戒請求書と題する書面」

沖縄弁護士会会長声明大量懲戒請求

http://www.okiben.org/modules/contribution/index.php?page=article&storyid=176

同じ内容の懲戒請求書と題する書面が961件届いたということですが、その内容は「日弁連会長声明」が「利敵行為」であり、沖縄弁護士会と沖縄弁護士会所属の弁護士がこれに賛同することが「犯罪行為」であるというものです。

日弁連会長声明」とは以下のものです。

朝鮮学校補助金日弁連会長声明

https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2016/160729.html

日弁連会長声明とは要するに、朝鮮学校に補助金を支給しないようにと自治体に要請した文部科学大臣の通達は憲法違反のおそれがあるので通達を撤回しろということです。

この声明の是非はともかく、これが何らかの違法行為を構成しないことは確かです。

ただ、このような強制加入団体である日弁連の名称を使った政治的意見の表明については、弁護士から不満の声もあります。事案は違いますが声を紹介。

沖縄弁護士会は懲戒請求として扱わないと決定

沖縄弁護士会は961件の書面の性質について以下述べています。

本件各懲戒請求は,当会会員を対象とする懲戒請求の形式をとるものの,実質的には,日弁連の活動に対する反対意見の表明にほかならない本件各懲戒請求書には対象会員についての具体的な懲戒事由の説明が記載されておらず,日弁連の意見表明が当会会員の非行行為となるものではないことからすると,本件各懲戒請求は,当会会員弁護士の非行行為を問題とするものではない。

要するに、961件の書面は懲戒請求書と題する書面として懲戒請求の形式は備えているものの、実質的には会員(弁護士)の懲戒を求めるものとはみなせないと言っています。結局は日弁連の声明に対する反対の意見表明に過ぎないと言っています。

ところで、沖縄弁護士会は冒頭で下図の緑枠のように言っています。

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http://www.okiben.org/modules/contribution/index.php?page=article&storyid=176

懲戒請求の流れとして、書面が届いたら綱紀委員会が調査をして懲戒委員会に付するかどうかを決定するという自動的な処理が行われているのが一般的です。沖縄弁護士会もそのように処理をしたということです。

弁護士全員に対するものは手続を止めているのに

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上図は日弁連会長による大量の懲戒請求書と題する書面に対する扱いについて各弁護士会にあてた談話です。

いわゆる「大量懲戒請求事案」は二層構造となっていました。

  1. 弁護士会に所属する弁護士全員に対する懲戒請求
  2. 個々の弁護士に対する懲戒請求

このうち、弁護士会に所属する弁護士全員に対する懲戒請求は、綱紀委員会の調査を自動的に行うというこれまでの運用を採らないことが要請されたということです。全ての弁護士会に確認を取ったわけではないですが、これはどの単位弁護士会もそのようにしているようです。

そうしたことが出来るのですから、個別の事案においてもその内容が主張自体失当であったり、懲戒請求であると認めるに足らない表現の場合には綱紀委員会の調査を走らせないという扱いをすることもできたはずです。

沖縄弁護士会は、懲戒請求として扱うまでもない単なる怪文書に過ぎないものについては、弁護士会所属の弁護士全員に対する懲戒請求に対する扱いと同様の対応をすればよかったのです。それをせずに綱紀委員会の調査のために弁護士が負担を強いられたというのは、マッチポンプに他なりません。

今回の事案も記載されている事実(朝鮮学校に補助金を支給するべきとの日弁連の声明に加担したこと)が真実として存在していても懲戒事由を構成しえないということが分かりますから、主張自体失当と言える事案です。

この点については既に過去のエントリで触れています。

懲戒請求ではないと言いながら不当懲戒請求と言う矛盾

最初に指摘した通り、沖縄弁護士会は961件の懲戒請求書と題する書面は弁護士の非行行為を問題とするものではないと言い切っています。

にもかかわらず、懲戒請求が違法となる場合について判断した最高裁判決の判断基準を引用し、それに即して今回の事案を判断しています。

最高裁の判断は以下の通りです。

最高裁判所第3小法廷 平成17年(受)第2126号 損害賠償請求事件 平成19年4月24日

「懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において,請求者が,そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに,あえて懲戒を請求するなど,懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには,違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解するのが相当である。」

さて、沖縄弁護士会は「実質的には,日弁連の活動に対する反対意見の表明にほかならない」と言っておきながら、なぜか懲戒請求が違法となる場合についての最高裁の基準を持ち出しています。

これは甚だ矛盾ではないでしょうか?

そもそも、なぜ懲戒請求が違法と評価され、賠償の対象となるのか?

上記引用判決文における、裁判官田原睦夫の補足意見を紹介します

弁護士に対して懲戒請求がなされると,その請求を受けた弁護士会では,綱紀委員会において調査が開始されるが,被請求者たる弁護士は,その請求が全く根拠のないものであっても,それに対する反論や反証活動のために相当なエネルギーを割かれるとともに,たとえ根拠のない懲戒請求であっても,請求がなされた事実が外部に知られた場合には,それにより生じ得る誤解を解くためにも,相当のエネルギーを投じざるを得なくなり,それだけでも相当の負担となる。それに加えて,弁護士会に対して懲戒請求がなされて綱紀委員会の調査に付されると,その日以降,被請求者たる当該弁護士は,その手続が終了するまで,他の弁護士会への登録換え又は登録取消しの請求をすることができないと解されており(平成15年法律第128号による改正前の弁護士法63条1項。現行法では,同62条1項),その結果,その手続が係属している限りは,公務員への転職を希望する弁護士は,他の要件を満たしていても弁護士登録を取り消すことができないことから転職することができず,また,弁護士業務の新たな展開を図るべく,地方にて勤務しあるいは開業している弁護士は,東京や大阪等での勤務や開業を目指し,あるいは大都市から故郷に戻って業務を開始するべく,登録換えを請求することもできないのであって,弁護士の身分に対して重大な制約が課されることとなるのである。

補足意見を簡潔に整理すると以下です

  1. 弁護士は反論や反証活動のためのエネルギーが割かれる
  2. 懲戒請求がなされた事実が外部に知られた場合は誤解を解く必要がある
  3. 綱紀委員会の調査に付されると法律により転職等ができなくなる

これらの負担は、弁護士会が書面を懲戒請求であると判断した上で綱紀委員会の調査に付すことで生じるものです。

しかし、沖縄弁護士会は本件の961件の書面は実質的に懲戒請求を求めるものではないと判断しているのですから、本来は綱紀委員会の調査にすべきでないものをわざわざ取り上げて弁護士に無用な負担を負わせているということになります。

この負担を生じさせているのは沖縄弁護士会自身です。

弁護士会には弁護士の品位を保つとともに弁護士を不当懲戒請求から守るために弁護士自治によって広範な裁量が与えられているのですから、それを怠った結果に過ぎません。

弁護士法上も、懲戒請求があった場合には綱紀委員会の調査に付さなければならないと規定されており、「懲戒請求書と題する書面」をすべて懲戒請求として扱わなければならないとは規定されていません。

したがって、沖縄弁護士会は、懲戒請求として扱うべきではないものについて懲戒請求として扱ったという不手際があるということ、仮に今回の事案で懲戒請求として扱わなかった場合、違法懲戒請求としての実質が無い(反証活動のためのエネルギーが割かれるということが発生しない)ので、懲戒請求者に対して違法懲戒請求の基準に照らして違法であると主張する立場には無いということになります。

 

「人種差別的な懲戒請求」という無理筋

沖縄弁護士会声明は次いで以下述べます

さらに,LAZAK所属の当会会員に対する本件各懲戒請求については,日弁連会長声明の内容,当該会員が当会の役員等に就任していなかったこと,当該会員が個別に日弁連会長声明につき何らの関与する行為に及んでいないこと及び当会の他の一般会員に対しては同様の懲戒請求がなされていないこと等を総合的に勘案すると,当該会員のバックグラウンドを根拠に狙い撃ちしたものであることが明らかである。

他の一般会員に対して懲戒請求をしていないから差別的な懲戒請求であるとしています。こんな理屈が通用するとでも思っているのでしょうか?

同様の理屈で懲戒請求者に対して訴訟提起したのは金竜介弁護士がいます。

既にご存知の方にとっては当たり前なことですが、大量懲戒請求事案と呼ばれている事象は、「余命ブログ」を起因とした懲戒請求であり、沖縄弁護士会に対するものに限られません。全国の弁護士会に対して行われているのです。

その中では明らかに在日コリアンではない弁護士も懲戒請求対象となっており、人種・民族を理由に狙い撃ちをしたということは窺えません。

そもそも、狙い撃ちしたとしてヘイトにあたると評価してよいものなのでしょうか?

懲戒請求の対象として誰を選ぶのかは懲戒請求者の自由です。それは、通常の訴訟提起の場合も当てはまります。「特定の集団に対しては訴訟提起や懲戒請求をしてはいけない、人数制限が課されている」などという法規範はありませんし、訴訟提起や懲戒請求を受けた場合に被る負担は、日本人と変わりありません。

一人の人間が外国人・外国人団体ばかりを訴えていたとしても、それを封殺する法制度は存在していません。対象選択の自由が個人には認められています。なぜ国家から「お前は外国人に対する訴えはこれぐらいに控えろ」と言われなければならないのでしょうか?およそまともな思考であるとは思えません。

沖縄弁護士会の主張を再掲します

本件各懲戒請求は,当会会員を対象とする懲戒請求の形式をとるものの,実質的には,日弁連の活動に対する反対意見の表明にほかならない本件各懲戒請求書には対象会員についての具体的な懲戒事由の説明が記載されておらず,日弁連の意見表明が当会会員の非行行為となるものではないことからすると,本件各懲戒請求は,当会会員弁護士の非行行為を問題とするものではない。

最初に沖縄弁護士会は「懲戒請求ではなく実質的には日弁連の活動に対する反対意見の表明であるとし、当会会員弁護士の非行行為を問題とするものではない」 とはっきり明言しています。

そうであるならば、特定の弁護士への狙い撃ちであると評価することは出来ないはずであり、沖縄弁護士会の声明文の中でまたしても矛盾が生じていることになります。

特定の弁護士に対する懲戒請求なのか、日弁連の活動に対する反対意見に過ぎないのか?

論旨が一貫していない文章の典型例です。

まとめ

  1. 沖縄弁護士会は961件の書面について、実質的には日弁連の活動に対する反対意見の表明にほかならないと言った
  2. ということは、懲戒請求として扱うべきものではないと認めたことに
  3. にもかかわらず、沖縄弁護士会は懲戒請求として扱った
  4. 実質的には懲戒請求と評価できないと言及したものについて、懲戒請求が違法となる場合の判断基準を用いて論難しているのは自己矛盾である
  5. 狙い撃ちによる人種差別的な懲戒請求であるという主張も、実質的には日弁連の活動に対する反対意見の表明にほかならないという主張と矛盾する
  6. 狙い撃ちをしていたとしても違法になるという根拠はない

弁護士会はまず最初に自らの懲戒請求手続のスキームを見直し、無用な争いをわざわざ発生させることがないようにしなければならないと思います。

また、差別に名を借りたスラップ訴訟を弁護士会(会長)が率先して主導することは許し難い行いです。大量に懲戒請求書と題する書面を送った者は、自身の行いによってこうした動きを発生させてしまったということを反省すべきであり、懲戒請求をするのであれば相当の根拠をもって事に当たらなければいけません。

「外国人に対する訴訟提起(懲戒請求)は年に〇〇回まで!」
「同じ組織の外国人を同時に複数提訴(懲戒請求)しちゃダメ!」

このような例と同様の態度を国家が国民に強制させるべきである、というのが沖縄弁護士会の主張に思えて仕方がありません。

「大量懲戒請求の歯止め」に名を借りた国民の懲戒請求権への抑圧】にならないようにしていただきたいですね。

以上

立憲民主党枝野幸男が加計学園理事長に経営権譲渡を要求:弁護士の懲戒請求対象?

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2018年7月20日の衆議院本会議で立憲民主党の枝野幸男氏が民間企業の私人に対して暴言を吐きました。

本来は内閣不信任案の決議に対して提出者の趣旨弁明をする場なのですが、2時間43分に渡る演説を行ったことで有名です。

国会議員からこのような攻撃を受けた場合に国民としては何ができるのかについて整理していきましょう。

立憲民主党、枝野幸男氏の衆議院本会議演説での発言

衆議院インターネット審議中継

演説は動画の4分あたりから始まり、加計学園に関する問題発言は1時間40分20秒あたりから始まります。発言の前後もきちんと聞きましょう。

ここまでに加計学園の許認可が問題であるという視点から縷々意見表明をしてきたという流れの中での発言です。

加計学園の加計理事長は今も理事長のままでおられます。まったく矛盾に満ちたまさに出まかせとも言っていい説明を繰り返し、逆に百歩譲ってもしこの加計理事長の言っていることが本当だとすれば、総理の腹心の友ってあまり日本語聞いたことがないんですが私は、相当親しい御友人がトップである法人が、総理の名をかたって、かたったわけですからね、愛媛県や今治市に対しては。しかも勝手にかたって獣医学部の設置を有利に進めようとしたことになるわけですねぇ。

総理とのご友人であったのは事務局長ではありませんねぇ。事務局長が言ったと百歩譲って言ったとしても、総理と加計理事長がご友人であったことを奇貨としてやっているわけですよね。なんらの責任も感じる姿勢も示さず、説明責任をまったく果たしていない、もう記者会見はやらないなんて言っているわけですよ。こんな方が教育機関のトップをやらせてていいんですか。この認可過程に決定的な問題があります。ありましたが学校として現に出来上がってしまい、そこに学んでいる学生さんたちがいらっしゃいます。そうした現実を踏まえるならば、やるべきことは加計理事長は加計学園の少なくとも獣医学部の経営から手を引かれ、第三者に経営権を委譲すべきであると思いますし、友人であるならば安倍総理にはそれを促す責任があると私は思います。そうでなければ、こんないいかげんな無責任な人間が教育機関のトップをやっているという教育におけるモラルの崩壊に繋がっていくと私は思います。

民間に口出すなとかって野次ってるのが居ますから、聞いてください。総理が友人として促すべきだと私は申し上げております。それが日本の社会の秩序モラルを維持すべき責任を持っている日本の政治のリーダーとしてのご友人に対する真摯な姿勢ではないでしょうか皆さん。

まぁ、総理の仰る友人というのは、同じような高い志を持って違う道だけど頑張っていこうね、というのが私は友人というものの定義だと思っていますが、一緒に楽しくゴルフをやるというのがお友達なのかなぁと思いますので、しょうがないのかもしれませんね。

この後も加計学園の許認可に対して疑問を呈する演説が続いていきます。

加計学園理事長の経営権譲渡を安倍総理から促す要求?

まずは加計学園に対するマスメディアと野党の主張についておさらいしましょう。

加計問題と言われていた主張

まず、許認可には何らの法的瑕疵は存在しないということについては以下の記事で言及しています。

なお、外形的公正性に疑義があるという橋下徹氏の主張がありますが、それは既に行われた行為に対する非難ではなく、制度変更の主張です。

 

「加計理事長と安倍総理が友人である事」はどのように言及されたか

加計理事長が記者会見を行った際に説明した内容は以下の通り

  1.  「渡辺事務局長が誤った情報を愛媛県と今治市に与えた」として謝罪
  2. 誤った情報とは、獣医学部新設に関連して安倍総理と会ったかのような発言があったこと
  3. 加計氏は「事を前に進めるためにそのような発言をした」という報告を受けた
  4. 本日の加計学園の理事会で渡辺氏が減給1割を半年間、加計氏が監督責任として減給1割を1年間とする処分を決定した
  5. 加計氏は「安倍総理と獣医学部について話したことはない」「昨年2月25日に会ったということはない」と発言。安倍総理とは仕事の話はやめようというスタンスで会っている。

枝野氏は演説で「総理の名をかたって」と言っていました。

ところで、「他人の名を騙る」とは、本来は「他人の名まえを名乗ってなりすます」という意味です。加計理事長や渡辺事務局長がそのようなことをした事実はありません。

流石にそのような意味で使っているとは考えられないので、枝野氏の発言は現時点では「総理の名を語って」と捉えるべきだと思います。そうすると、「総理の名まえをちらつかせて」「虎の威を借りて」というような意味合いだったものと思われます。(議事録がどのような表現になるかわかりませんが、議事録は本人が内容を確認するので公式にUPされたものが正式なものとなります。)

渡辺事務局長が、加計理事長が総理の友人であり国家戦略特区の申請中に面会したことを「匂わす」ことで、「相手に総理の意向を感じさせ、許認可に前向きになってもらおうとした」。というのは事実でしょう。

しかし、それは「まったく矛盾に満ちたまさに出まかせとも言っていい説明を繰り返し」と言えるものでしょうか?

まったく矛盾に満ちたまさに出まかせとも言っていい説明を繰り返し」

以上の通り、枝野氏のこの発言は加計理事長が主体となって説明をしたことが前提となっており、そのような事実は無いということが明らかです。枝野氏は「百歩譲って」と言っているので、基本的には加計理事長が「総理の名をかたって」いたという趣旨ですから、虚偽の事実を適示していることになります。

「なんらの責任も感じる姿勢を示さず」と言えるのか?

加計理事長はこれが渡辺事務局長の行ったことであるからこそ、それは「誤った情報を与えた」と表明し、監督責任として加計理事長も減給処分を受けたわけです。それは理事会での決定事項です。

では、「なんらの責任も感じる姿勢を示さず」とは、何を持ってそう言えるのか?

経営権譲渡という結論に向かわせるためにこのような無理な言及を敢えて行ったと言わざるを得ません。

私人に対して経営権譲渡を促すよう公人に要求する行為について

ここまでの主張は「内閣総理大臣の不信任決議案について提出者の趣旨弁明をする場」で行われたと言う点に注意すべきでしょう。

安倍総理の「これまでの行為」について資質を問題にするのであればそれはこの場にふさわしい内容でしょう。それは内閣総理大臣の不信任決議案を提出する理由になり得るからです。

では、安倍総理に対して「これからの行為として」私人への働きかけを要求することが、不信任決議案を提出する理由になるでしょうか?なり得ないということは明らかです。そのような言及は不要であり、無関係です。

その上で、友人関係に基づく意思表明について国会議員という公的な立場である枝野衆議院議員が要求するというのはどういう意味があるのでしょうか?私人間の関係について、公的な場で公的な役職の者が要求するのは「自己の意思決定の自由」たるプライバシーに配慮がない言動ではないでしょうか?

また、加計理事長という私人に対して安倍総理大臣が公人の立場からの経営権譲渡を促すというのは、これもまた国家による職業の自由や意思決定の自由の侵害に繋がりかねない、私人の権利利益について配慮の無い言動でしょう。

形式上、枝野氏は安倍総理に対して要求していると言っていますが、そうであるとしても上記のような問題が生じるのです。

ましてや、実質的には私人に対して直接経営権譲渡を要求していると言えるとすれば、それは明らかに職業の自由や意思決定の自由に配慮のない言動です。

枝野氏が内閣不信任決議案の趣旨説明の場で意見表明しただけでは何らの法的拘束力は発生せず、権利侵害があるとも思えないため違法ではないと思います。しかし、枝野氏は弁護士であり、公的な場で何等の必然性も無いのに私人間の意思決定に介入しようとするのは、問題ではないでしょうか?

私人たる民間企業(個人)に説明責任?

法的な説明責任は国家に求められます。

それはなぜかと言うと、国民と政府の関係を信託関係と捉え、国民主権の行使の信託を受けた政府が信託上の義務として説明責任を負うと考えられています。

しかし、私人はそのような信託を受けていません。無関係です。

愛媛県や今治市に対して加計学園が説明すべき道義的責任はあるかもしれませんが、私人が国に対する説明責任などという法的な義務は存在しないのです。

枝野氏がどういう意味で「説明責任」という語を使っているかは定かではありませんが、仮に法的な意味であれば弁護士としての品位を疑わざるを得ません。

また、道義的責任を言っているのであるとしても、それを主張する適格があるのは愛媛県や今治市の住民でしょう。無関係な枝野氏個人や国会議員としての枝野氏、一般国民には主張適格はありません。

全国的な国家戦略特区の申請の話だから一般国民に対しても道義的説明責任はあるという主張が出てきそうですが、国民の側としては国に対して「なぜ加計学園を認可したのか説明せよ」と言えば良い話です。その説明はこれまでの国会等で尽くされています。

具体的な場面において私人が逐一何を言ったのか、その理由を全国民に対して説明しなければならないという道義的責任があるのかどうかは、かなり怪しいと言わざるを得ません。

そもそも、いったい何を説明せよと言うのでしょうか?記者会見は既に開いています。

「こんないいかげんな無責任な人間が教育機関のトップをやっているという教育におけるモラルの崩壊に繋がっていく」

これは私人に対する名誉毀損ではないでしょうか?

既に述べた通り「まったく矛盾に満ちたまさに出まかせとも言っていい説明を繰り返し」「なんらの責任も感じる姿勢も示さず」「説明責任をまったく果たしていない」などという事実は無いのですから、真実性も何もないわけです。

騒がれていた当初は「真実であると信ずるにつき相当な理由」はあったと思いますが、現時点では情報が整理されていますから、相当性は無いと言えます。

したがって、「無責任な人間」「モラルの崩壊に繋がる」という論評の前提を欠いていますから、違法性阻却されるはずがありません。

 

国会議員の免責特権

国会議員には憲法51条で免責特権があります。

これに当たる場合、国会議員個人が演説等を理由に賠償請求されることはありません。

 

国会議員の発言によって名誉毀損等があった場合には、国家賠償請求として「国」に賠償金を求めることが可能ですが、そのハードルは高いです。

最高裁判所第3小法廷平成6年(オ)第1287号 損害賠償請求事件平成9年9月9日判決 

国会議員が国会で行った質疑等において、個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても、これによって当然に国家賠償法一条一項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が生ずるものではなく、右責任が肯定されるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とすると解するのが相当である。

しかも、重要なのは、その賠償金は私たちの税金から出ていくものだということです。

どうも、このような関係を意識して国会で個人を攻撃する言動が横行しているような気がします。

国賠請求をするにしても加計学園側に主張適格があるのですから、私たちが騒いだところで無意味です。

弁護士の懲戒請求について

枝野氏は弁護士登録をしています。弁護士には懲戒請求制度ががあり、これは誰からでも請求可能です。

国会議員としての責任が免責されるとしても、弁護士の品位を保つ自治の観点から懲戒請求がなされることまでは否定されないのではないか、という意見もあると思われます。

ただ、国会議員の免責特権が自由な意見表明による使命遂行を保つために認められているのですから、そのような場における発言を取り上げて懲戒処分をするというのは憲法違反の可能性が高いと思われます。

仮に懲戒処分が可能だとしても、それは上述のような名誉毀損による国家賠償が認められるような極めて限定的な場合に限られると思われます。しかし、その場合は加計学園側が提訴しなければならず、国家賠償の分については我々の税金から成る国庫の負担となります。

名誉毀損の国賠請求が認められる場合ですらこうなのですから、それ以外の発言部分が懲戒事由を構成するとは思えません。

したがって、第三者たる一般国民からの懲戒請求はあまり現実的ではないと言えます。

まとめ

  1. 枝野氏の加計理事長に関する主張には問題点が多くある
  2. しかし、免責特権により個人に責任を求めることはできない
  3. 賠償が認められるとしても国に対してであり、主張適格は加計学園側にしか無い
  4. 弁護士の懲戒請求が可能だとしても、国賠訴訟で枝野氏が敗訴となるような事情が必要と思われ、その場合に支出されるのは我々からの税金負担となる

結局のところ、政治家の発言の評価は選挙の投票結果によって決まるということでしょう。有権者が枝野氏の発言を支持しなければ別の候補者に投票するだけであり、無関係の外野が殊更に何かできるような仕組みではないということでしょう。

ただ、「発言の妥当性」については、上記に示した通りではないでしょうか。

以上