事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

オウム真理教にはなぜ破壊活動防止法が適用されなかったのか

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オウム真理教には、破壊活動防止法が適用されなかったので解散指定処分がされませんでした。代わりに無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律が適用されて観察処分がなされ、後継団体についても現在までその状態が更新されています。

なぜオウム真理教には破防法が適用されなかったのか、各所は破防法適用についてどのように動いていたのかを簡単にまとめます。

公安調査庁が破防法適用請求(解散指定処分請求)

オウム真理教の一連の事件が終息しつつあった1996年(平成8年)7月11日、公安調査庁は破壊活動防止法に基づき教団の解散指定処分請求を公安審査委員会に行いました。

これは破壊活動防止法においては解散指定処分(7条)は公安調査庁の請求があった場合にのみ行う(11条)のですが、処分を行うのは公安審査委員会であるとされており、公安調査庁の請求の審査を行う(22条)と定められているからです。

この辺りの経緯は公安調査庁のHP過去の魚拓)でも詳しく書かれています。

宗教法人法上の解散事由には該当し、宗教法人は解散済み

公安調査庁の請求の前に、オウム真理教は宗教法人法81条の解散事由に該当するとして、検察官及びオウム真理教の所轄官庁たる東京都知事鈴木俊一が解散命令を請求しました。

この顛末は【平成8年1月30日 最高裁平成8(ク)8 宗教法人解散命令に対する抗告棄却決定に対する特別抗告】において解散命令の決定がなされ、宗教法人としてのオウム真理教は解散され、税法上の優遇措置は受けられなくなりました。

ただし、解散されたのは「宗教法人オウム真理教」であり、一団体としてのオウム真理教は存続しているため、破防法が適用されるかが注目されていたのです。

オウム真理教への破防法適用を反対していた団体等

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公安調査庁の破防法適用請求に対して、各界から反対意見が相次ぎました。

容易に確認できるものとしては、自由法曹団日本弁護士連合会(日弁連)の一部弁護士らがその筆頭でしょう。※適用棄却決定後の日弁連の声明はこちら

また、反天皇制問題連絡会、立川自衛隊監視テント村、アジア太平洋資料センター、国連・憲法問題研究会、明治大学駿台文学会などの連名による 破防法の適用に反対する声明(サイトは市民の意見30の会・東京)も出されています。

これらの反対声明は「人権」「民主主義」「法治国家」などのお題目を掲げてなされました。具体的な構成要件の検討を加えた上での反対意見を目にすることはありません。

結局、法務省直下の公安審査委員会が破防法適用棄却決定を行い、オウム真理教の解散指定処分はされませんでした。

では、なぜ公安審査委員会は破防法を適用しなかったのでしょうか?

公安審査委員会は「暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれ」を認めず

公安審査委員会は1997年(平成9年)1月31日「団体の危険性が消失したとはいえないが,今後ある程度近接した時期に,暴力主義的破壊活動に及ぶ明らかなおそれがあるとまでは認められない」として解散指定処分請求を棄却しました。

これは破防法7条の構成要件該当性判断を行っています。

第七条 公安審査委員会は、左に掲げる団体が継続又は反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があり、且つ、第五条第一項の処分によつては、そのおそれを有効に除去することができないと認められるときは、当該団体に対して、解散の指定を行うことができる。
省略
二 団体の活動として第四条第一項第二号イからリまでに掲げる暴力主義的破壊活動を行い、若しくはその実行に着手してこれを遂げず、又は人を教唆し、若しくはこれを実行させる目的をもつて人をせヽ んヽ動して、これを行わせた団体
省略

破防法4条の規定も一応確認のため必要部分のみ示します。

第四条 この法律で「暴力主義的破壊活動」とは、次に掲げる行為をいう。

省略
二 政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する目的をもつて、次に掲げる行為の一をなすこと。
省略
ヘ 刑法第百九十九条(殺人)に規定する行為

要件を整理すると

  1. 団体性(7条)
  2. 政治目的(4条二号柱書)
  3. 暴力主義的破壊活動(4条に定める刑法が規定する行為)
  4. 明白性(明らかなおそれ)(7条)

公安審査委員会の決定は「武器としてのサリンの効果を試すとともに、松本市への進出の障害と考えた裁判官や地域住民を排除・抹殺するために行った」と認定し、破防法適用の要件のうちの2つである「団体性」と「政治目的」を満たすとしました。
※暴力主義的破壊活動が行われたことは明らかだったため最初から争点ではない(が、一応は検討、認定している)。

その上で、地下鉄サリン事件以降の強制捜査や宗教法人格のはく奪、破産手続きなどによって、「教団は人的・物的・資金的能力を弱体化させつつ、隔離された閉鎖集団から社会内に分散した宗教生活団体に移行している」と述べ、状況の変化を評価において考慮しました。

最終的に「公安調査庁提出の証拠では、近接した時期に暴力主義的破壊活動に及ぶ明らかなおそれがあると認めるに足りるだけの十分な理由があると認めることはできない」と結論づけました。

この「明らかなおそれ」というのは他の分野でも要件として登場することがありますが、これが認められる場面は相当限られてきます。要件レベルでかなりの困難があったということです。

さらに、明白性判断において状況の変化が考慮される点も問題視されました。

破壊活動防止法の問題、そして無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律へ

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第145回国会予算委員会第二分科会第1号平成十一年二月十七日では、破防法の問題点とその後の方向性について端的に言い表している質疑があります。

○堀込分科員 
 決定文を見ますと、人的、物的、資金的能力、これが縮小、弱体化しつつあり云々、こうあるわけでありまして、つまり、危険性が低下した、将来の危険性が薄らいでいる、こういうことを理由にしながら棄却決定をした、こういうことなのだろうと思います。しかし、実態は、棄却決定後、人的、物的、資金的能力を増大させているのは、先ほど答弁にあったとおりであります。
 私は、破防法の欠点というものが、そういう意味ではやはりこの過程の中で明らかになっているのだろうと思うわけであります。つまり、摘発が進まないと危険性は低下しないわけでありますが、証拠を集められないという事情が一方にあって、摘発が進むと今度は危険性が薄まってくるという矛盾があるわけでありまして、なかなか請求決定するにはその条件を満たすに難しいといいますか、そういう事情が働くのだろうというふうに思うわけであります。それで、どうしても、そういう意味では集団的な組織犯罪に対して機敏に対応できる法整備というものが必要なのだろう、こういうふうに考えるわけであります。
 私は、破防法を読んでみて、今度勉強してみて、問題点は、第一には、手続の簡素化、迅速化、あるいは、規制処分が六カ月以内の活動制限と解散指定の二つしかありませんから、保護観察処分的なものを入れるとかいう検討が必要なのだろうと思います。二つ目に、政治目的という問題、やはり無思想のテロ集団にこれでは対応できないという現代社会の犯罪に対する問題点を抱えておるのだろうというふうに思います。三つ目に、問題になりました将来の危険性、この規定はやはり緩和ないしは削除するというような検討がなされるべきだろうというふうに私自身は考えておるわけでありますが、現行破防法の組織犯罪に対する有効性についてどのような認識をお持ちなのか、伺っておきたいと思います。

中段の指摘は重要だと思います。

公安審査会の理屈で言えば、摘発が進まないと危険性は高いままだが証拠が集められない、しかし、摘発が進むと証拠が集まっても危険性は薄まってくるということになってしまいます。

法務省の公安審査委員会はオウム真理教に破防法を適用させないための理屈を使っているとしか思えません。

質疑の後半部分の「保護観察処分的なもの」というのはまさに「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」における「観察処分」につながっていきますし、同法には「政治目的を持った団体」という要件が課されていません。

そして、同法には観察処分の要件として危険性はありますが、「明白性」はなくなっています。

(観察処分)
第五条 公安審査委員会は、その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体が、次の各号に掲げる事項のいずれかに該当し、その活動状況を継続して明らかにする必要があると認められる場合には、当該団体に対し、三年を超えない期間を定めて、公安調査庁長官の観察に付する処分を行うことができる。
一 当該無差別大量殺人行為の首謀者が当該団体の活動に影響力を有していること。
二 当該無差別大量殺人行為に関与した者の全部又は一部が当該団体の役職員又は構成員であること。
三 当該無差別大量殺人行為が行われた時に当該団体の役員(団体の意思決定に関与し得る者であって、当該団体の事務に従事するものをいう。以下同じ。)であった者の全部又は一部が当該団体の役員であること。
四 当該団体が殺人を明示的に又は暗示的に勧める綱領を保持していること。
五 前各号に掲げるもののほか、当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があること

破防法が適用できなかった結果、新法で手当てをし、公安調査庁が後継団体であるアレフ等の観察をしているということですが、解散指定処分を出せない現状で果たして良いのでしょうか。破防法においてもこの明白性要件を削除するべきだと思います。

まとめ

外国の主な団体規制、解散適用組織等

外国の主な情報・団体規制機関の所属組織等:解散処分適用団体:https://www.kantei.go.jp/jp/gyokaku/houmu616.html

クリックで拡大。またはURL部分から政府のページに飛びます。

  1. オウム真理教は宗教法人としては解散命令がなされた
  2. しかし、一団体としてのオウム真理教は破防法による解散指定処分ができなかった
  3. 破防法の解散指定処分は明白性要件が厳し過ぎた
  4. 公安審査委員会の採った理屈が明白性要件の否定方向に働くものだった
  5. 現在は「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」における「観察処分」が公安調査庁によって後継団体に対して行われている

「破防法適用団体」と「破防法に基づく調査対象団体」は意味が違うので注意、以下にまとめてあります。

以上

「安倍総理が小山佐市に選挙妨害依頼」というデマ:裁判所の判決文に見る火炎瓶を投げ付けた犯人の主張

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魚拓:http://archive.is/yZ1yC

安倍総理に対してまたもデマによる誹謗中傷が為されています。

発信源は過去に安倍総理宅へ火炎瓶を投げ入れて懲役刑を受けた小山佐市、彼に取材した山岡俊介、山岡の論を載せているリテラ、溝口敦などです。ツイッター上では"#ケチって火炎瓶"などというタグがつけられてトレンド入りまでしました。

これは刑事裁判で既に決着がついている話であり、事情も判決文からも読み取れますが、その判決文の理解を誤解させる言説がネット上に蔓延しているので、ここで改めて整理していきます。

「安倍総理が下関市長選の選挙妨害依頼」というデマ

デマの概要は以下のようにまとめられます。

  1. 平成11年、安倍総理陣営が下関市長選の対立候補の選挙妨害依頼をした
  2. 対立候補が怪文書を配布されるなどの選挙妨害を受けた
  3. 安倍総理の秘書が妨害依頼した小山佐市に対して報酬300万円を渡した

この件についてはネット上で「裁判記録でも認定されている」と言われていますが、そんなことはないので公開されている判決文を見ていきましょう。

安倍総理が火炎瓶を投げられた事件の判決文

平成19年3月9福岡地裁小倉支部判決に事件の概要があります。

これがネット上で「裁判記録」と言われているものですが単なる「判決文」です。

裁判記録と言うと起訴状や証拠の標目など事件の捜査から公判、判決に至るまでの審理経過が分かるものなので、そういうものを見ているわけではないということです。

刑事事件の事件記録を閲覧できる者は当事者など限られているので、ネット上で「裁判記録によると」と言っているのは、単に上記の判決文を指して言っているだけです。

小山佐市=被告人Bの行為

安倍火炎瓶選挙妨害依頼と言うデマ

被告人B=小山佐市は、指定暴力団の組長らに依頼して、安倍総理宅に火炎瓶を投げ付けさせたことが共謀共同正犯とされています。火炎瓶投げ付けは数回行われました。

では、なぜ被告人B=小山はこのような行為をしたのか?

その動機も含めて判決文には記載があります。

「ケチって火炎瓶」の「根拠」と誤解されている部分

安倍火炎瓶選挙妨害依頼と言うデマ

被告人B=小山は「自分が下関市長選挙でG議員=安倍晋三と対立するX候補を当選させないように活動した」と主張して、それを理由にG議員の秘書であるWに対して金員の支払いを要求し、実際に300万円の提供を受けたという事実があります。

しかし被告人B=小山は上記の行為が恐喝であるとして起訴猶予処分を受けています。
※起訴猶予とは「犯罪事実があるのは明らかであるが諸般の事情を考慮して起訴まではしないという検察の処分」です。前科はつきませんが、前歴はつきます。

要するに「安倍総理の秘書から300万円の金員が小山に渡された」というのは事実だが、それは恐喝によるものだったということです。被告人B=小山が本当にX議員の選挙妨害をしたかは分かりませんが、300万円が選挙妨害に対する報酬であるとの因果関係があるとは認定されていません。

恐喝で通報されたことに対する逆恨みで火炎瓶を投げつけたと言うことです。

これが山岡らによると「選挙妨害の依頼をしていて、その報酬として300万円を渡した」と歪めて伝えられているのです。

さらに、以下の文が「裁判所が認めた」と言われている「根拠」とされています。

裁判所が事実認定した内容「小山は信用できない」

安倍火炎瓶選挙妨害依頼と言うデマ

被告人Bは,…下関市長選でX候補をG議員側から頼まれて当選させないよう活動したのに,G議員の秘書にはめられて警察に逮捕された,決まっていた仕事も流れてしまった,その点の補償もさせる,許せんなどと恨み言を言っていた

これは「被告人Bがそのように言っていました」という事実認定をしているだけで、その言っている内容が事実であると事実認定したものではありません

この文章は、なぜ被告人B=小山がG議員=安倍晋三に対して怨恨を持つに至ったのかの経緯を示しているので、小山が言っている内容がどうであれ、何を言っていたかということは重要なので判決文で触れているというだけに過ぎません。

この後に被告人B=小山の発言の信用性を裁判所が評価を下している部分があります。

安倍火炎瓶選挙妨害依頼と言うデマ

被告人Bの供述は…その細部を子細に検討するまでもなく、信用性が認められない

裁判所がここまで言い切っています。

つまり、裁判所は被告人B=小山の供述内容は信用できないと認定しているのです。

山岡俊介はこのような被告人B=小山の発言を信用し、検証もせずそのまま垂れ流しているということです。

山本太郎が国会で小山の発言を事実として発言

第196回国会内閣委員会第28号平成三十年七月十七日において山本太郎議員が小山の「下関市長選でX候補をG議員側から頼まれて当選させないよう活動した」という発言部分について、判決文にあるから事実であるという前提で発言しています。

これに対して安倍総理は

私が関わりがあるということでは全くなくて、私は一切の関わりを断ってきた

と明確に否定しています。

この件で本当に安倍事務所側が依頼していたというなら、被告人B=小山が恐喝で逮捕されたときの捜査で贈収賄で秘書も起訴されていたでしょう。

山岡俊介が「新証拠」と主張する「確認書」

魚拓:http://archive.is/yaUKx

この【願書】と書かれたものは単なる面談依頼であり、それだけでは何らも意味しません。

魚拓:http://archive.is/KfD0S

「確認書」と題されている書面の日付は平成11年5月17日となっています。

下関市長選挙が行われたのは、同年の4月です。

仮に選挙妨害の依頼をしていたとすればその前にもろもろの「確認」をするはずなのに、後の段階の書類しかないということは疑問です。

また、当時警察や弁護士にもこの書類を出さずに今更出してきたのは意味不明ですし、内容もなぜわざわざ確認書という形式をとったのか首をかしげざるを得ないものです。

「竹田力」の署名と印影がありますが、これだけでは文書が本物かどうかは決まりませんし、仮に本物としても安倍総理が関与していたかどうかはまた更に遠い話です。

追記:竹田秘書が選挙妨害依頼の念書にサイン?

「竹田力秘書が選挙妨害依頼を匂わす文言がある念書にサインしたと認めている」という取材記事や、取材時の音声データが存在していると言われています。

ただ、取材したという記事中にあっても『竹田氏は「中身は見ずにサインした」と言っている』とあります。相手は恐喝で300万円を出させる者ですから、サインの経緯はどうだったのかは気になるところです。

「中身は見なかった」という説明には納得できないという主張がありますが、逆にそこまでの「証拠」がありながら今まで沈黙していたのはなぜか?告発できなかったのはなぜか?竹田氏へのインタビューは12年以上前の事柄について竹田氏が高齢になってからのものであり、取材結果自体の信憑性も問題になります。

まとめ:火炎瓶投擲犯を信用するのだろうか?

  1. 安倍総理の秘書が火炎瓶を投付けた被告人B=小山に300万円を渡したのは事実
  2. しかし、それは恐喝によるものだった
  3. 「裁判所が下関市長選で安倍総理側が被告人B=小山に選挙妨害依頼したことを認定した」というのはデマであり、被告人B=小山がそう発言しているだけに過ぎない。
  4. むしろ、裁判所は被告人B=小山の供述は信用性が無いと明言する部分がある
  5. 「安倍総理が選挙妨害を依頼した」と言っている発信源は、被告人B=小山
  6. 被告人B=小山自身が暴力団に報酬をもって安倍総理宅に火炎瓶投下を依頼していた

モリカケ冤罪キャンペーンであれだけ騒いだマスメディアがまったくこの件にノータッチなのは、このような人物の発言を信用するわけにはいかないという矜持(?)があるからでしょう。

以上

朝日新聞が慰安婦訂正記事の検索回避設定は「削除漏れ」と苦しい回答:サイト検索では未だ出てこず

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朝日新聞が慰安婦報道に関して間違いを訂正した記事の英語訳を書くも、検索回避のためのメタタグを設定していたということが明らかになりました。

これに対して朝日新聞が苦しい回答をしていますので紹介します。

メタタグについて検証した先駆者様たち

ぼやきくっくり | 朝日の英語版慰安婦検証記事は人目につかない場所に埋めてある

私の方でもまとめています。

朝日新聞:慰安婦訂正記事の検索回避は削除漏れ

朝日新聞の慰安婦問題にからむ英語版記事2本がインターネットで検索できないような設定になっていたことが分かった。朝日新聞広報部は産経新聞の取材に対し、「記事を最終確認するため社内のみで閲覧できる状態で配信し、確認を終えてから検索可能な状態にした。その際に2本のタグ設定解除の作業が漏れてしまった」と説明し、24日までに設定を解除した。

「2本の設定解除の作業が漏れてしまった」

嘘ですね。

この2本とは以下のものです。

Testimony about 'forcible taking away of women on Jeju Island': Judged to be fabrication because supporting evidence not found
魚拓:http://archive.is/Ug2ln
日本語版:「済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断
日本語版魚拓:http://archive.is/MvW6D

 

Confusion with 'volunteer corps': Insufficient research at that time led to comfort women and volunteer corps seen as the same
魚拓:http://archive.is/ZbCku
日本語版:「挺身隊」との混同 当時は研究が乏しく同一視
日本語版魚拓:http://archive.is/iEfVh

 

これらの記事は「慰安婦問題を考える」という記事群の中の一部です。

Thinking about the comfort women issue 
魚拓:http://archive.is/rX3Pe
日本語版:慰安婦問題を考える
日本語版魚拓:http://archive.is/kznzs

この記事群のうち、訂正記事はこの2つの記事だけです。

こんな都合のいい「削除漏れ」はあるのでしょうか?

削除忘れという回答が信用できない証拠

以下略ちゃん@ikaryakuchan の記事によれば、朝日新聞デジタルの一般記事における「訂正・お詫び」ページにおいても、すべて検索避けのメタタグ(noindex,nofollow,noarchive)が設定されていたということです。

これも削除漏れなんでしょうか?

最初から訂正する記事は検索回避のメタタグを設定する方針が社内にあったという以外に考えられません。

なお、訂正された元記事のページでは、タイトル部分に「訂正あり」などの文言が付加されており、検索避けのメタタグはありませんでした。

検索回避のメタタグを削除しても…

こちらでは"noindex,nofollow,noarchive"以外にも、「期限を過ぎたら検索にかからない設定」も存在していることを検証しています。つまり、"noindex,nofollow,noarchive"を削除しただけではグーグルのクローラが巡回しない可能性があり、朝日新聞が自主的にクローラの巡回を促さない限りは検索結果に表示されない可能性があるということが指摘されています。

この設定のせいで、朝日新聞デジタルのサイト内検索では、2014年に書かれた慰安婦問題を考えるという特集ページは日本語でもヒットしません。

一般記事も試してみましたが、やはり1年以上前の記事はサイト内検索でもヒットしませんでした。

福島原発の「吉田調書」だけは別扱い

魚拓:https://web.archive.org/web/20180825010813/http://www.asahi.com/special/yoshida_report/list/

URLを見ると、"http://www.asahi.com/special/yoshida_report/list/

"となっており、朝日新聞日本語版の通常のURLの下部に特別なページとして作成されています。こちらは2014年のページなのに、グーグル検索でヒットします。

御存じの通り、福島原発の吉田昌邦所長の吉田調書の内容を捏造した事件の訂正は、吉田清治の証言が偽証だとした日と同じタイミングでなされています。

吉田調書の扱いは特別扱いで、日本国に甚大な被害を与えた吉田証言については特別ページも作らずに一般ページと同じ扱いにしている時点で、朝日が吉田証言だけは多くの人の目に留まってほしくないと思いそのように仕組んだということは明らかでしょう。

なお、グーグル検索ではヒットするのに、朝日新聞デジタルのサイト内検索ではヒットしません。これも何か設定が組まれているのでしょうか?

慰安婦訂正記事の英訳版の現在:サイト内検索は未だ

ためしに2018年8月25日の午前11時40分頃に「Testimony about 'forcible taking away of women on Jeju Island': Judged to be fabrication because supporting evidence not found」で検索をかけると、1位に表示されました(人によって見え方が違う可能性があります)。

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ただし、朝日新聞デジタルのサイト内検索では未だにヒットしません。

以上

国政調査権の限界:浦和充子事件等の関係者を証人喚問した参議院法務委員会と司法権の独立

憲法62条の国政調査権の限界のうち、司法権との関係での限界を推し量る事例として参議院法務委員会が取り上げた浦和充子事件が挙げられます。

ここでは参議院法務委員会の動きとそれに対する最高裁判所や世間の反応をまとめていきます。 

国政調査権の根拠規定等は以下参照 

参議院司法委員会:「裁判官の刑事事件不当処理に関する調査」

浦和事件と参議院法務委員会の国政調査権の限界、司法権の独立
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当初は「司法委員会」という名称であった法務委員会ですが、昭和23年5月6日に「裁判官の刑事事件不当処理に関する調査」を開始する決定がなされました。

目的は「裁判官及び検察官の封建的観念及び現下日本の国際的国内的立場に対する時代的識見の有無並びにこれら司法の民主的運営と能率的処理をはばむ残滓の存否を調査し、不当なものがあるときは、その立法的対策を講じ、又は最高機関たる国会の立場で司法部に対しこれを指摘勧告する等適切な措置をとること」とされていました。

参議院法務委員会:「検察及び裁判の運営等に関する調査」

昭和23年6月29日付で参議院法務委員会から「現在の日本の実情を前提とする憲法第62条の解釈論としては、各議院は所謂国政調査権にもとづき、司法作用の全般に関し、必要に応じて調査批判することが出来」るとの見解に立っていました。

昭和23年10月15日には調査の名称を「検察及び裁判の運営等に関する調査」(※検索注意:「檢察及び裁判の運營等に関する調査」)とし、同年11月18日には浦和充子事件を取り上げることを決定しました。

浦和充子事件とは

浦和充子は夫語助との間に三女をもうけたが、語助が賭博に手を出して生業も身につかなくなり、居宅まで売り払ってしまった。充子は実兄方に子と一緒に住んでいたが、悲観のあまり母子心中を図り、殺鼠剤を魚とともに煮込んで子に与えたが苦悶を始める様子もなかったので絞殺し、自首した事件。

昭和23年4月17日に殺人罪で起訴、浦和地裁で7月2日の検事の求刑懲役三年に対して懲役三年執行猶予三年の判決が下された。検事は翌3日に上訴権を放棄して充子は直ちに釈放された。

懲役三年執行猶予三年という判決が軽すぎるのではないか?として参議院法務委員会が問題視しました。

最高裁判所が司法権の独立を脅かすとの警告するも続行

参議院法務委員会は事件関係者を証人喚問して(昭和23年11月26日昭和23年12月7日※今では考えられない)、関係者の来歴から事件の内容にわたる質問を繰り返していました。上記リンクから証人喚問でどういう質問がされていたのか確認すれば、その歪さがわかると思います。現代であれば動画アーカイブが残りますからね。

そこに昭和23年12月9日、最高裁判所がこの調査は憲法に規定された調査の範囲を逸脱するものとして警告を発しましたが、参院法務委員会は押し切って調査を続行。

浦和事件以外にも複数の事件を調査対象として取り上げており、そちらも証人喚問を行っています。

浦和事件の調査報告書をきっかけに議論が湧き起る

翌年の昭和24年3月24日の参院法務委で浦和事件の調査報告書を参議院議長に提出する決定がなされ、同年同月30日付の報告書では以下のような内容の報告がなされました。引用元は法律時報21巻7号61頁。

参議院法務委員会は裁判所が「事実認定」「にあたって犯罪の動機と認めた⑴『生活苦』に対しては、充子自らの責任はなかったか、その打開の途はなかったか、⑵『他の援助を求め得なかったこと』に対しては、夫語助より犯行の前日にまで、一カ月間に八千円を貰いながら、死ぬより外、途がないと迄、語助を見限らねばならなかったか。社会厚生施設や福祉施設を利用する方法をなぜとらなかったか。⑶『死が子供たちの不幸を免れしめると考えたこと』に対しては、充子ははたして母子心中を図ったものかどうか、を疑問として、裁判所がその裏書証拠をも収集していないことを杜撰と非難し、裁判所の「事実認定」と量刑には、"子は親のもの"という封建的思想を情状酌量の要件となしたものであり、かかる残虐なる犯行に対しては、懲役三年執行猶予三年の判決は、当を得ないものとの趣旨の結論を下している。

最高裁判所では、この報告書について裁判官会議を開き、議決に基づいて次項の意見書を参院議長に送付しました。

最高裁判所が参議院議長に意見送付

意見

憲法第六十二条に定める議院の国政に関する調査権は、国会又は各議院が憲法上与えられて行う立法権、予算審議権の適法な権限を行使するにあたり、その必要な資料を集取するための補充的権限に他ならない。

昨年五月六日貴参議院法務委員会は、裁判官の刑事事件不当処理等に関する調査を行うことを決議し、ついで同年十月十七日、これを検察及び裁判の運営等に関する調査と改め、※省略:調査の目的の指摘※、従来裁判所に係属中の及び確定の刑事事件につき調査を行い、裁判の当否を論じ、最近においては判決の事実認定及び刑の量定の当不当を云爲するに至った。

しかしながら司法権は、憲法上裁判所に専属するものであり、他の国家機関がその行使につき容啄干渉するが如きは憲法上絶対に許さるべきではない。この意味において、同委員会が個々の具体的裁判について事実認定若しくは量刑等の当否を審査批判し又は司法部に対し指導勧告する等の目的を以て前述のごとき行動に及んだことは、司法権の独立を侵害し、まさに憲法上国会に許された国政に関する調査権を逸脱する措置と言わなければならない。

裁判官に対する民主的監視の方法は、自ら他に存するのであって、すなわち、憲法の定める最高裁判所裁判官に対する国民審査及び裁判官に対する弾劾の各制度の如きがそれである。

憲法は国の最高法規であり、国会もまたこれを尊重しなければならないこと論を待たず、ここに深甚な反省を求める次第である。

最高裁の国政調査権の性質について述べた冒頭の部分は「補助的権能説」と呼ばれており、憲法学会もこの見解を支持している者が多いです。

この意見書に対して、参院法務委が反ばく声明書を出すことになります。

参議院法務委員会が上記意見書に対する反駁声明書

声明書
参議院法務委員会
一、最高裁判所に違憲法令審査権は具体的な各個の事件に付憲法違反の法令の適用を拒否するという消極的な機能を持つに過ぎない。従って最高裁判所が具体的事件の裁判としてではなく、裁判所以外において国会や内閣の行動に関し、憲法問題につき意見を発表することは越権である。

二、国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関であることは、憲法の明定するところである。従って、憲法第六十二条の国会の国政調査権は、単に立法準備のためのみならず、国政の一部門たる司法の運営に関し、調査批判する等、国政全般に亘って調査できる独立の権能である

三、所謂司法権の独立とは、裁判官が具体的事件の裁判をするに当たって他の「容啄干渉」を受けないことであって、いかなる批判をも免がれうるというものではなく、この国政調査権による調査批判は、却って国権作用の均衡と抑制の理論からも必要である。

従って既に確定判決を経て裁判官の手を離れた事件の調査の如きは毫も裁判の独立を侵すものではない。

四、しかして本委員会の検察及び裁判の運営等に関する調査の目的は「裁判官、検察官の封建的観念及び現下日本の国際的国内的立場に対する時代的識見の有無、並びにこれら司法の民主的運営と能率的処理をはばむ残滓の存否」である。唯このためには裁判の過程を調査しその資料とするは当然である。

浦和充子事件においても、調査の目的は「抵抗力なき子供の生命権の尊重及び封建的思想に関する係検察官及び裁判官の認識」と「その判決が社会人心に及ぼした影響」であり、その調査の方法も判決の確定をまって着手し裁判官に対しては最高裁判所を通じて書面による回答を求めたのである。

五、裁判官に対する民主的監視の方法として国民審査及び弾劾の制度があるが、前者は、最高裁判所裁判官のみについて「十年毎」に一回であり、後者は個々の裁判官に非行のあった場合にのみ行われるに過ぎない。この両制度のみでは司法の民主的運営と能率的処理を図るために十分でない。これ国政調査権による調査批判を必要とする所以である。

昭和二十四年五月二十四日

「二」の部分の国政調査権の性質についての理解は「独立権能説」と呼ばれています。

翌日の五月二十五日には、最高裁判所が裁判官会議をひらいて協議した結果、同日の午後に参院声明書に反対する次項のような最高裁判所事務総長談話を発表しました。

最高裁判所事務総長談話と衆院法務委の懇談会

昭和24年5月26日朝日新聞

過日参議院への申入れは同院法務委員会の行為によりまさに侵害されつつある司法権の独立を護るためにした当然の行為で、決して越権行為ではない。浦和事件を同委員会が問題にした際、最高裁判所は文書をもって調査の限度方法を誤ることのないように注意を喚起したのだが、委員会はそれに耳をかそうともせず、多年の知識と経験とをもつ裁判所が、厳格な訴訟法の規定に従って判決で認定した事実や刑の量定を妥当でないと判断し、まるで見当違いのことをやってしまった。こんなことが度重なると、国民のなかには参議院の法務委員会は裁判の再審査をするところだと誤解する人も多く出てくるだろう。そのようなことをされては裁判の独立を害することになるし国民の権利、自由の保障も危機にひんするだろう。それでやむにやまれず参議院の反省を求めた次第だ

衆議院法務委員会でも五月二十七日、国政調査と司法権独立に関する懇談会を開き、最高裁判所判事眞野毅、東大教授宮澤俊義、弁護士小松一郎の意見を求め、「参議院の行為は行き過ぎであるとの意見を表明(昭和24年5月28日 読売新聞)

参院議員の中野重治は5月28日の参議院運営委員会小委員会において(当時について小委員会の議事録はウェブ上には無いらしい。)、この件について29日に本会議で質問をし、吉田首相や参院法務委員長らを出席させて答弁を行う事を要求したが、松平議長は大要以下述べて慎重な扱いを求めました

昭和24年5月29日 東京新聞

私個人としては法務委員長等の意見を徴してそのうえで議長として回答すべきものと考えたが、重大問題であるので慎重に扱わぬと妙な方向に走り国家全般のためにならぬと想を練っていた。その間に法務委員長から見解発表が行われてしまったのであるがこれは参議院の意見ではない。自分としてはまだ成案が出来ていないが、これはいま早急にやる必要もないと思っている。

こうした政府内での応酬があった一方で、各界からも参院法務委の行為について非難する見解が主張されていました。

各界の反応からみる国政調査権の限界と司法権の独立

東大教授の宮澤俊義の意見の抜粋

司法権がおびやかされるという意味は決して裁判所以外の、国会なら国会がある法律判断をしたことが法律的に拘束する、という意味ではなくて、通常の人間が裁判官になった場合にその裁判官がその与えられた社会において、通常の条件の下において自由に自分の信ずるところに従って裁判をすることが出来る、そのことに対して何らの事実上の影響を与えないというのが司法権の独立を保障するという事である。

第二に参議院の委員会にそういう事件を調査する権能があるかということであるが、そこには限界があって、国会の権限というものが限られている以上はその調査権も限られていることは当然である

法務委員会で前の(浦和事件の)刑事被告人を証人として尋問しているが法律形式的には必ずしも違法でないと言えるかもしれないが、そういう行動を国家機関が権力を以てとるということは、憲法の(一事不再審の)規定の精神に反することは明白ではないかと思う。

宮澤氏の「調査権も限られている」という部分は、参議院法務委員会が採った国政調査権の独立権能説と、最高裁判所の採った補助的権能説のいずれの立場でも認めているところです。

宮澤氏の司法権の独立が害される場合というのは、法的効果を主張することにとどまらず、裁判についての事実上の影響が与えられる場合も含まれるという立場です。これは程度問題になりそうなので外縁が不明ですが、確かに既に裁判負担を被った関係者に対して証人喚問をするというのは酷であるし、裁判結果が変更されるべきであると言う考えでなければ行わない行為ですから、それについて裁判を覆す法的効果が無いからといって是認されるべきとは思えません。

以下は金森徳次郎の意見の抜粋

金森徳次郎 国会図書館長 昭和24年5月28日朝日新聞

司法権というのは法律の議論をするということではない、法律が確定的な効力を以て、世の中に働いてゆくという途中の働きである。従ってせまい意味において司法権の独立はおびやかされていない、ただ、それがために社会的に司法権の尊重が影響を受けるのではないかと言う点についてはこれは程度問題であって、場合によっては是認してもいいという見解です。

日本の裁判所の運営の仕方がわるければ裁判制度に関する何らかの法的措置も必要になる。それがためには調査する必要が起こってくる、あるいはそればかりでなく裁判と政治との関係もあってそれも考えなければならんということになれば、その主旨からー単純に裁判を批評するというのはおかしいが、広い見地から裁判に関する調査をするということは必要な場合もあると思う。ちょうど学者が自ら裁判問題について判例批評なんかをするのと一面においては同じような意味で、権力の働きを生ぜずして調査をするということは十分許されているのじゃないかと思っている。またそれは国会の如く力のそろったところでなければ証人を集めたり事件を掘り下げることはほとんど不可能で、どうしてもこういうところに権能がありそうな気がする。そう考えると結局参議院の方ではある範囲を越えない限り憲法上の調査権の範囲で裁判の適否問題も研究できるということになる。そして裁判官の方も法律的には独立をおびやかされるということはないというように考える、ただ行き過ぎかどうかということになると、実際の事情を知らないから言葉を慎まなければならんと思っている。

国立国会図書館長は法律の専門家じゃないので一般から述べていますが、国政調査権に一定の限界があるという見解ではあるようです。司法権の独立に影響するかということについては程度問題であると言っている点は、宮沢氏と同種の見解であるということでしょう。

ただ、証人喚問はまさに国政調査権という権力の働きから生じているので(しかも宣誓させることになる)、その限りで受け入れられないものです(というか論旨が矛盾していることに)。

鈴木安蔵 政治学研究会理事 昭和24年5月27日 読売新聞

国政調査権は、それ自体独立な憲法上の権能なのである。

裁判自体については、最高裁判所に終局の決定権をみとめることが、法の公平な解釈・宣言上妥当であるとされており、司法権の独立の意義はみとめなければならないが、そのことが判決に対する国民一般の批判・論議を禁ずる趣旨でないことも、ひろくみとめられていることである。国家機関の一つであるとはいえ、国会各院の司法委員会の判決批判といえども、それが何ら直接に司法的効果を主張するものでもないかぎり、越権であるとか、司法権の侵害であるという批判はそのままでは成り立ちえないのである。

以上は一般論である。参議院の司法委員会が、必要以上に裁判訴における覆審的行動に出なかったか、あるいは現に継続中の裁判にたいしてはなはだしく影響を及ぼすごとき行動をとらなかったかどうかの点は、その活動の個々のケースについて論断すべきことがらである。

鈴木氏は独立権能説に立った上で、司法権の独立を害するとは、一般的には法的効果を主張するものであるかどうかで判断されるべきという見解です。 

ただし、後半部分では司法権の行使に対して影響を与える行動があったかどうかを問題視する立場であることを明言しており、具体的事案においては「法的効果を直接主張」に至らない行為であっても「法的効果に影響を与えることになる」行為かどうかを見ると主張しており、司法権の独立を害するかどうかの判断を緩和させています。

その後の動きと浦和事件の教訓

その後、「檢察及び裁判の運營等に関する調査」は徐々にその開催日数を減らしていき「参議院法務委員会昭和61年10月23日」を最後に同一名称では行われなくなりました。

また、「檢察及び裁判の運營等に関する調査」の中で確定裁判或いは裁判進行中の事件関係者を証人喚問して具体的事件について検討することも「参議院法務委員会昭和25年04月25日」以降は行われなくなったようです(上記は五井産業事件について裁判進行中に事件関係者の証人喚問がなされました。検察や弁護人が裁判において要求した証人と重なりがあるかどうかは確認していませんが)。

結局、浦和事件等について参議院法務委員会が行った行為の教訓は以下でしょう

  1. 判決確定前後において判決内容を批判したり審理に影響を与える調査をなすことは許されない
  2. 起訴不起訴の判断や公訴の内容、捜査の続行に重大な障害をきたす方法による調査は許されない
  3. ただし、これらに抵触しない限りで事実について裁判所と異なる目的で並行調査することは許される

こうした教訓があってこその佐川氏の証人喚問があったのでしょう。

結局不起訴になりましたが、捜査に対する重大な支障が出ないよう、注意が払われていました。

以上

衆参議院・委員会の国政調査権とその手続規定:愛媛県、今治市の加計問題関連文書を例に

 

議院の国政調査権の発動方法について整理します。

「司法権の独立に対する限界は~~」などと観念的な話をするのもいいですが、その発動方法の種類、具体的な事例を確認していきましょう。

具体的な事案としては、2018年5月に参議院予算委員会が愛媛県(と今治市)に対して加計問題に関連して行政組織内の文書を提出するよう依頼した件を取り上げます。

議院の国政調査権の根拠:憲法62条

日本国憲法62条

両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる

「議員」という個人ではなく、衆議院、参議院に独立して認められている権能です。

具体的な手続規定は国会法104条議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(議院証言法)衆議院規則参議院規則などがあります。また、これらの規定に基づかない方法での国政調査権の発動方法や、国政調査権に基づかない任意の調査要求が存在しますが、それについては後述します。

衆参議院の国政調査権の行使は、会議録を見ればわかります。

たとえば浦和事件について国政調査権を行使するとした参議院内閣委員会の決議について。

国政調査権の根拠の構造:委員会による国政調査権の行使

国政調査権:衆参議院、委員会

日本国憲法では衆参両議院について証人喚問や記録提出を要求することができるとありますが、委員会にもその権限があることを明確にしたのが国会法です。

国会法

第百三条 各議院は、議案その他の審査若しくは国政に関する調査のために又は議院において必要と認めた場合に、議員を派遣することができる。
第百四条 各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。

国会議事録を見ると分かりますが、国会は本会議だけではなくて各種委員会があります。本会議には議長がいるのに対して、法務委員会や予算委員会などには委員長が居ます。

ただ、国会法は原則として会期中についての定めであるということから、閉会中は議長にその権限があるという規定があったり、閉会中の国政調査権の行使としての議員の派遣については規定されていません。また、国会法で委員会に付与されている国政調査権は、議院に付与されているものよりも項目としては少ないです。

そこで、衆議院規則や参議院規則で委員会の国政調査権行使の項目を増やしています。

しかし、衆議院規則や参議院規則においても、国政調査権の行使のためには議長に権限があるとされており、委員会単独の判断で国政調査権を行使することはできません。

議長を経由した委員会の国政調査権の行使の確認方法

委員会による証人出頭要求については、たとえば「学校法人森友学園に関する決裁文書書換え問題について佐川宣寿」を証人喚問した場合などがあります。

このようなものについては会議録を見れば分かりますが、中にはこうした方法に依らない手続を踏む場合があります。それが委員会の先例による国政調査権行使です。

委員会先例録による国政調査権の行使

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国政調査権の手続的根拠としては先に挙げたもの以外に【委員会先例録】というものがあります。参議院については、「平成25年版参議院委員会先例録」がWEB上で確認・ダウンロードできます。衆議院について最新のものはWEB上で確認できてませんが、過去のものではありますが「衆議院先例集」「衆議院委員会先例集」というものは存在します。

参議院委員会先例録によると、以下の説明があります。

委員会が、審査又は調査のため、内閣、官公署(地方公共団体を除く。以下同じ。)に対し報告又は記録の提出を求めるには、理事会の決定により要求する場合又は委員会において委員の要求がありこれに別段異議もない場合には、成規の手続を省略して、委員長から直接これを行うのを例とするが、委員会において議決し、議長を経てこれを行った例もある。

この先例により、省略した手続下において議長を通さず委員長から直接内閣、官公署(地方公共団体を除く)に対して報告、記録提出要求ができるということになっています。多くはこの形式に拠って行われているようです(立法と調査2018. 6No. 401(参議院常任委員会調査室・特別調査室)(秋山啓介・委員部調整課)

ここで、「地方公共団体を除く」と書かれてありますが、この点が問題になったのが2018年5月10日、加計問題に関して参議院予算員会が記録提出の「依頼」を愛媛県に対して行い、愛媛県がこれを受けて今治市に記録提出を依頼した事案です。

加計問題に関する愛媛県と今治市の対応と地方自治

国政調査権ではなく任意での愛媛県に対する要求文書

加計学園問題としてマスメディアが騒いでいたころに、参議院予算委員会から与野党合意のもと、愛媛県に対して以下のような「依頼」がなされました。同様の要求が今治市に出されたようですが、今治市は拒否。愛媛県は依頼に応じたということで、「国政調査権に基づく要求なのになぜ対応が異なるのか?今治市はおかしい!」「これは国政調査権に基づくものではないから中村知事は嘘をついているのでは?」などと議論になりました。

結論から言うと、これは国政調査権に基づくものではなく、単なる任意の依頼文書です。

参議院委員会先例録、報告又は記録の提出要求

委員会からの国政調査権の行使の場合、議長を通して行うというのが正式な手続きです。この先例録ではそれによらず、委員長から直接国政調査権の行使が行える例があるということは既に示しました。

しかし、報告又は記録の提出要求に関する例では「地方公共団体を除く」とされています。よって、委員会の理事会の決定を根拠としているこの文書は国政調査権の行使としては扱うことができません。

ネット上にある論評はこの先例録を無視したものが多いですが、委員会で決めて議長を通して要求するパターンと、委員会の理事会(理事会は議事録に載らない)で決まったものや、委員会において委員の要求がありこれに別段異議もない場合に委員会から直接要求するパターンがあるということです。

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一方、愛媛県からの回答書には「国政調査権に基づいて」とあります。

これは参議院予算委員会が愛媛県に対して国政調査権の行使であるかのように伝えたためか、愛媛県側が「事実上の国政調査権」であるとして扱ったということでしょう。事実、参議院予算委員会の側は国政調査権の行使であるとは言いませんでした(愛媛県側が前者と思い込んでいた可能性は知事の記者会見録に表れています)

参議院予算委員会が愛媛県に国政調査権の行使であるかのように装ったとすれば、それは法治主義や行政を歪める行為でしょう。

いずれにしても、任意に愛媛県が応じることには国と地方との関係上、何ら問題は無いわけで(個人情報保護との関係は後述)、中村知事の対応は何も間違っていません。

なお、中村知事のスタンスは「自分たちが関わったものについては、可能な限りオープンにする」というものでしたが、これに別組織である今治市が拘束されることはありません。

今治市が提出拒否をした理由:今治市の情報公開条例

5月10日付で参院予算委から依頼された事項については、今治市は「市は4枚の書類を提出する一方、出張時の服務状況を記した「出張復命書」に関しては情報公開条例に基づき非開示文書としている」としました。ビジネスジャーナルの記事によると今治市の菅良二市長は『非開示の理由を「国や県は一緒に取り組んできた仲間だから、迷惑は掛けられない」と説明』したとあります。

どの項目か知りませんが、4枚の書類は提出してるんですね。

このように、参院予算委からの任意依頼に対して情報公開条例を基準にして考えるという判断基準は、一つの方向性だと思います。

今治市情報公開条例の規定を見ると、今治市長の説明内容となり得る規定は複数ありますが、中でも7条8項は近いと思われます。

(8) 実施機関と国等との間における照会、回答、依頼、委任、協議等に基づいて作成し、又は取得した情報であって、公にすることにより、国等との協力関係又は信頼関係を損なうおそれがあるもの

また、参議院予算委の依頼は情報公開条例が規定している「公文書」の開示にとどまらないため、そのような記録については価値判断となります(情報公開条例の規定を参考にして判断することもあり得るが、基本的に自由)。

このときに、任意依頼に対してすべてオープンにするという対応については慎重になるべきです。行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律があるように(地方公共団体はこの法律の規制を受けないが、情報公開条例の中に個人情報への配慮が具体化されている)、情報公開は個人情報の保護の観点と切っても切れない関係にあるからです。

また、次の項に述べるような問題もあると思います。

中央の任意の調査要求に地方自治体は応じるのが基本?

中村知事の対応は本件限りで正当ですが、仮に「中央から任意に要求されたものは出来る限り対応するべきだ」(「尊重するべきだ」という態度を超えている場合)という準則がスタンダードになったとすると、それは地方自治(憲法92条以下)との抵触の可能性を生じます。

文書提出の必要があるのであれば、参議院予算委員会で決議を採って議長を通した正式の手続で行えば良いのに、それをしなかったのはなぜでしょうか?

「加計問題」などと野党とマスメディアが騒いでいるだけで、まったく法的に瑕疵がない(その疑惑すらいいがかりに過ぎない)事項についてなぜわざわざ今治市の手を煩わせるのか。そのような必要性のない要求には応じないという判断もあり得ると思います(もちろん中村知事のように本件限りで全部オープンにするという態度は一つの正解だと思います。)

しかし、「オープンにしない今治市はやましいことがあると疑われても仕方がない」とは思いません。「加計問題」のような野党とマスメディアが創作した話題についてわざわざ対応し、オープンにすることがスタンダードになってよいとは思いません。これを許したら行政事務はいくらでも妨害できてしまいます。

現に参議院の先例録が報告・記録提出について官公署から地方公共団体を除外したのも、地方自治に配慮したものと考えられます。要求するのであれば手続に従って行うのが筋です。そのために国政調査権は憲法のみならず国会法、衆参議院規則、先例録をわざわざ作って手続を定めています。

「地方は中央(政府)に従わなければならない」というような観念がありますが、実際上はともかく、原則としてはそのような「上」と「下」のような関係ではありません。

※今回の事案は「国政調査権の限界」ではなく、単に国政調査権の行使ではなかったということに留まります。

※「議会制民主主義だから国会の与野党の合意は重い」という観念的な主張をするのもいいですが説得力に欠けます。今治市は国会議員によって運営されているわけではないからです。

国政調査権に基づく要求を否定した事例:浦和事件

今回は国政調査権の行使であるかのような任意依頼でしたが、過去にはまごうことなき国政調査権の行使が司法権の独立に抵触するため控えるべきであるとされ、参議院法務委員会の行為が非難を受けました。

参議院法務委員会が裁判所が扱った複数の刑事事件の裁定が妥当かを検証していたのですが、代表的な事件が「浦和事件」です。国政調査権の限界の論点として有名なので調べてみるといいでしょう。

このように、国政調査権だからといってホイホイ従う(或いは自発的積極的に協力するとしても)ということが正しいかは、常に問題になるということは理解しておくべきでしょう。

まとめ

  1. 国政調査権の手続は国会法だけでなく、衆参議院規則、先例録にもある
  2. 2018年5月に愛媛県、今治市に行われた調査依頼は参議院予算委員会の任意依頼
  3. 依頼に応じた愛媛県、一部拒否した今治市、いずれの対応も間違いではない
  4. 今治市が全部拒否したかのような印象があるが、間違い
  5. 参議院予算委員会が愛媛県に国政調査権の行使であるかのように装ったとすれば、それは地方自治を歪める行為
  6. 中央からの報告・文書提出の任意依頼に地方自治体はすべて応じるべきであるという考えも、地方自治との抵触が懸念される

以上

【全魚拓】朝日新聞が吉田清治の慰安婦強制連行デマの英語訳隠蔽工作:noindex等のメタタグ付加

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2014年8月。朝日新聞はいわゆる従軍慰安婦の強制連行について、日本共産党の吉田清治の証言がでっち上げだったということを発表しました。

日本語では。

しかし、「英語で書かれた」の朝日新聞の記事を分析すると、記事が見つからないように隠蔽工作が行われているということがわかりました。

また、この記事以外にも問題がある記事が見つかったので合わせて紹介します。

※追記:朝日新聞は「削除漏れ」と回答したとのことですが、それが実に苦しい言い訳であることにつき

山岡鉄秀、ケントギルバートの指摘からnoindexメタタグ

朝日新聞英語版では慰安婦の強制連行はでっち上げであるという修正がなされていないのではないか?という山岡鉄秀、ケントギルバート両氏の申入れに対して、朝日新聞からは2014年8月5日に日本語で吉田清治の証言が虚偽であったという記事があり、その英訳がサーバー上に残っていると回答がありました。

しかし、ケント氏は該当する英語版が見つからなかったと言っていました。

山岡氏の番組で該当URLを紹介すると、そのページはグーグルなどの検索エンジンで検索結果に表示されないような細工が施されていたという視聴者からの情報提供があり、発覚したという経緯です。

では、そのページとはどういう内容なのか。

吉田清治の慰安婦強制連行デマの訂正記事の英語訳

朝日新聞が吉田清治の慰安婦強制連行というデマについて訂正した記事の英語訳は、以下のものです。元の日本語版と併せて魚拓も置いておきます。

Testimony about 'forcible taking away of women on Jeju Island': Judged to be fabrication because supporting evidence not found
魚拓:http://archive.is/Ug2ln
日本語版:「済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断
日本語版魚拓:http://archive.is/MvW6D

この記事は慰安婦問題関連の記事群がまとまっているページから飛ぶことができるものです。それが以下です。

Thinking about the comfort women issue 
魚拓:http://archive.is/rX3Pe
日本語版:慰安婦問題を考える
日本語版魚拓:http://archive.is/kznzs

吉田清治の慰安婦強制連行証言がデマだったと指摘する記事にnoindex等が付加

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再掲しますが、noindex:ページをインデックスに登録するな、nofollow:ページのリンクを追跡するな、noarchive:ページを検索エンジンDBに保存するな、という指示です。

詳しくは以下のサイトを見てほしいのですが、検索エンジンは「クローラ」というbotに世界中のWEBページを巡回させているところ、クローラが巡回しないと検索結果に表れてこないのです。

要するに検索結果に出てこないようにする仕掛けのことです。
(なお、yahooでもBingでもヒットしませんでした。)

挺身隊との混同があったとする記事にもnoindex等が付加

朝日新聞メタタグnoindex隠蔽工作

挺身隊との混同があったとする記事にもnoindex等が付加されていることが判明。

Confusion with 'volunteer corps': Insufficient research at that time led to comfort women and volunteer corps seen as the same
魚拓:http://archive.is/ZbCku
日本語版:「挺身隊」との混同 当時は研究が乏しく同一視
日本語版魚拓:http://archive.is/iEfVh

こちらも英語版のみ、noindex,nofollow,noarchiveが付加されています。

以上の2つの英語版のみがnoindex等が付加されている記事です。

それ以外の英語版の慰安婦関係の記事にはnoindex等は付加されていません。

したがって、これらは意図的に隠ぺい工作が行われているという事です。

朝日新聞の他の隠蔽工作:noindexメタタグ以外にも

慰安婦強制連行記事における朝日新聞の工作は、Googleで検索できなくする隠蔽工作だけではありません。記事を読むと、あらゆる仕掛けが施されているということがわかります。

また、記事の内容以外の面においても朝日新聞の誤報から目を逸らせる手法が惜しげもなく用いられています。

慰安婦訂正記事のURLは「日本語版」

英訳記事のURLは「.com/articles/」の下に書かれています。

これは日本語版のURLです。

対して、本来の朝日新聞英語版のURLは「.com/ajw/articles/」となっています。

要するに「英語版ではなく、英語で書かれた日本語版」でしかないというわけです。

ここまで徹底して海外の目に曝さないための工作が行われている事に唖然とします。

2014年8月の慰安婦関連ページはサイト内検索でもヒットしない

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これは英語訳の「慰安婦強制連行吉田証言は虚偽」「挺身隊との混同」だけの話ではなく、日本語版での記事も含めて、2014年8月に慰安婦問題を考えるThinking about the comfort women issue )という特集ページが組まれた中での記事の全てが朝日新聞のウェブサイト内であるにもかかわらずサイト内検索でヒットしません。

ソースから細工が施されているのかを判別できるか分かりませんので調べてませんが、有料記事ですら検索でヒットするのに、この姑息な手段は何なんでしょうか。

「慰安婦問題は創作ではない」と宣言する記事が強調されている

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クリックで拡大。

英訳の吉田証言が虚偽であるという記事は中段の一番見出しが小さいところに収まっています。代わりに、Look squarely at essence of 'comfort women' issueという杉浦信之が編集担当する署名記事が一番上に来ています。これは日本語版も同じです。
魚拓:http://archive.is/WsRsz
日本語版:慰安婦問題の本質 直視を
日本語版魚拓:http://archive.is/66XL2

中身は以下、次項で見ていきます。

Look squarely at essence of 'comfort women' issue慰安婦問題の本質 直視を

長いので省略しながら指摘していきます。

日本軍の関与を認めて謝罪した「河野談話」の見直しなどの動きが韓国内の反発を招いています。

慰安婦問題が政治問題化する中で、安倍政権は河野談話の作成過程を検証し、報告書を6月に発表しました。

言うまでもなく河野談話(慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話)は『慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。』という部分が日本軍による計画的な強制連行を表していると「解釈」され、その解釈が世界に広まっています。

慰安婦問題に光が当たり始めた90年代初め、研究は進んでいませんでした。私たちは元慰安婦の証言や少ない資料をもとに記事を書き続けました。そうして報じた記事の一部に、事実関係の誤りがあったことがわかりました。問題の全体像がわからない段階で起きた誤りですが、裏付け取材が不十分だった点は反省します。似たような誤りは当時、国内の他のメディアや韓国メディアの記事にもありました。
 こうした一部の不正確な報道が、慰安婦問題の理解を混乱させている、との指摘もあります。しかし、そのことを理由とした「慰安婦問題は捏造」という主張や「元慰安婦に謝る理由はない」といった議論には決して同意できません。

具体的にどういう誤りがあったのかを示さず、さらには『「元慰安婦に誤る理由はない」といった議論には決して同意できない』などと開き直る始末です。 

さらに朝日新聞の杉浦信之は続けます。

戦時中、日本軍兵士らの性の相手を強いられた女性がいた事実を消すことはできません。慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質なのです。

1990年代、ボスニアでの戦闘中、国際社会の関心は民兵メンバーによるレイプに集中していた。戦時中に国家が女性に対する性的暴力をどのように見ているかは、現在、国際的に女性に関する人権問題とみなされています。慰安婦問題はまた、そのような現代的なテーマに関連しています。

この文章を何ら疑問を差し挟むことなく読み進めると、まるで慰安婦問題は日本軍がレイプをしていた問題であると錯覚してしまいます。

文章を読むと決してそうは書いてませんが、このような文の構成によって読者にそのように想像させる罠が張られているというのが分かります。

このような記事を慰安婦問題の特集ページのトップに持っていっているということで、朝日新聞はこの問題を収拾する気は無いようです。

要するに日本人への「英語で発信しました」というアリバイ作り、日本語版を普段読んでいる英語圏の方への再工作でしょう。

本来の英語版では慰安婦デマ訂正記事無し、むしろ再拡散している

朝日新聞英語版の検索窓で検索しても、慰安婦問題の訂正記事はヒットしません。

むしろ、以下のように主語を避けることで日本軍による強制という表現は避けつつも、言外にそのような意味があるかのように読み手に誤解させる記事を再拡散しています。

記事魚拓:http://archive.is/RZGwk

記事魚拓: http://archive.is/qHXzl

「吉田調書」で印象を薄める手口

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それから、これも忘れてはならないと思うのですが、慰安婦強制連行があったとする吉田清治による「吉田証言」の記事の撤回と同じタイミングで、福島原発の吉田昌邦所長の「吉田調書」の記事も取り消されていました。

これらはまったく関連性のないものであり、いずれも重大な誤りなのですが、一面を見ると明らかに「吉田調書」の方が扱いが大きいです。

「吉田調書」の方に意識を向けさせる工作が行われているということは当時から指摘されていましたが、改めて朝日新聞という組織は「世間の印象」がどうなるかを熟知しているなと思います。

まとめ:メタタグ以外にも工作、英語では現在も誤解を拡散

  1. 慰安婦特集ページは英語訳も朝日新聞日本語版のURLである
  2. よって、日本語版の英語訳ページに過ぎず、英語版ではない
  3. 慰安婦強制連行デマ訂正ページの英語訳は検索サイトで表示されないメタタグが付加
  4. よって、検索サイトでもヒットしない
  5. 慰安婦特集ページは日本語版も英語訳もサイト内検索(すべての言語のページで)でヒットしない。
  6. 慰安婦特集ページにアクセスしても、誤報訂正ページは目立たず、むしろ開き直っている記事のページが目立っている
  7. 朝日新聞の英語版では慰安婦強制連行デマ訂正記事が存在しない
  8. 朝日新聞の英語版では慰安婦強制連行について日本軍が組織的に行っていたと錯覚させる記事が2018年の現在でも配信されている
  9. 他の記事訂正と併せて発表することで吉田証言の撤回を埋もれさせていた

朝日新聞に改善の期待可能性は無いので最初から諦めていましたが、ここまでとは思いませんでした。

もはや収入源を絶つ以外に無いという思いを改めて強くしたので、危機感を持った方は以下のページも合わせてご覧になって頂ければと思います。上念司さんの「解約団」のWEBバージョンと言えるかもしれません。

以上