事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

内閣改造で元検察官の山下貴司が法務相に:憲法改正へ安倍総理は本気か

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内閣改造で石破派の山下貴司が法務大臣に就任しました。

山下貴司氏の経歴と過去の発言、他人からの評価について調べました。

安倍総理は、憲法改正に本気ですね。

山下貴司の経歴

政界進出前は大きく3つの仕事をしていたと言えるでしょう。

参考:衆議院議員山下たかし公式サイト

首相官邸:第3次安倍第3次改造内閣 大臣政務官名簿

捜査・公判検事

山下貴司氏は、東京大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後、検事(検察官)に任官しています。

捜査・公判検事は、一般的な検察官の仕事のイメージである事件捜査・刑事裁判を担当するものです。東京地検特捜部にも複数回勤務経験があります。

ここまでなら、「普通の検事」です。

同じ検察官出身である山尾しおり(現:菅野しおり)はここの職域のみ経験しています。

政府の法律家

一言で言い表す適当な言葉が見つからないのですが、政府の法律家として公式サイトでは以下のように説明されています。

国際捜査や知的財産権にかかわる条約交渉、法務省関連の法律の改正などを担当したほか、農林水産省所管法令の審査も担当。農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS 法)や農地法の改正では、食の安全や農地利用の促進の流れを作るお手伝いをしました。

2010年に退官する前には法務省刑事局国際課国際刑事企画官として勤務していたということで、法律に従って刑事手続を行うというにとどまらない活躍をしていたということになります。

法務省で勤務する者の中でも法律の改正等にかかわるということは、実質的には「立法」に近い仕事をするということです。法的に深い知見が必要とされるポジションですので、単に「検察官経験者です」という人と比べて高い能力があると言っても過言ではないでしょう(捜査や公判も重要なのは変わりないですが)

元検察官の郷原信郎や若狭勝も法務省や公正取引委員会で勤務経験がありますが、彼らよりも幅広い領域で実績を残していると言えます。

なお、フルブライト奨学生として米国コロンビア大学ロースクールを卒業しています。

外交官

平成14年7月から平成17年8月には外交官(一等書記官兼法律顧問)として在ワシントン日本大使館に勤務。

従軍慰安婦訴訟や戦時捕虜訴訟で勝訴しています。

外交官となる検察官は少数、しかもアメリカですから、エリート中のエリートです。

法務相就任までの政界進出後の実績

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http://yamashita-takashi.jp/pdf/newsletter_08.pdf

平成24年の衆議院選挙で初当選した山下氏ですが、お世辞でもなんでもなく、ウルトラマンです。議員立法で8本の法律の起案をし、成立させたというのは文句なしの実績です。成立した法律についての解説書も出版しています。

山下貴司の評価

「黜陟幽明(ちゅっちょくゆうめい)」とは、功績に応じて人の評価をして登用することです。丸山穂高氏がここまで言うのですから、相当なものなんでしょう。

三原純子氏も心酔しているかのようです。

山下氏は慶應義塾大学法学部でゼミを担当していた時期もありますから、その関係で彼を知っている者も非常に期待しているようです。

特定の法案の成立を待ち望んでいた人たちにとっては、かなり評価が高そうです。

山下法相の過去の発言等

「正しい政治と歴史の知識だ。そのためには小中高校で偏りのない教育をやらなければならない。『アンチ巨人』ではないが、『アンチ政府』の立場を取ることが知識人の証しだというような教育をやれば、純粋な子供たちは将来の選択を誤ってしまう。中立・公平な教育をやっていく必要がある。それがあって初めて正しいモノの見方ができる」

政府や政治に対して斜に構えるような教育をしている人もいる。『将来を決める者としての教育』を実施することが必要だ」 

石破派に属する山下氏

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ツイッターアカウントも持っており、自民党総裁選の期間は石破茂の応援ツイート一色です。ただ、メインはフェイスブックで投稿しているので、最近の状況についてはそちらで発信していました。

石破派の議員の1人として、本気で石破茂を応援していたことがうかがえるツイートです。

政治家の目線で見ると、ここまで「義理を果たす」(本心ではあるだろうが)人間であれば、内閣に登用しても方針通りに行動してくれるだろうと期待するんじゃないでしょうか?

石破4条件については、確かに閣議で決めたものであるのは事実ですし、実際上は挙証責任が規制省庁側に課せられているという運用なので、実は嘘を言っていることにはならないのではないか?と思います。
参考

なお、菅義偉(すが・よしひで)官房長官にも近いとされているので、安倍内閣との親和性は高いのではないでしょうか。

山下貴司を法務大臣に起用した安倍総理は改憲に本気か?

憲法改正をするということは、法務大臣の国会答弁が重要であり、法的素養抜群の山下氏が最適任であることは間違いないでしょう。

ただ、如何に実務家として実績を積んできたとはいえ、山下氏はまだ3回生です。

あの小泉進次郎ですら4回生であり、大臣職の就任は未だないのですから、実績以上の政治的な思惑が無ければ抜擢はしないでしょう。報道の中には「石破派から重用して党内融和」などと書いているものもありますが、そんなものではないハズです。

まとめ:内閣改造でどうなる

山下氏は「石破派」であるというだけで、かなり懐疑的に見られていますが、逆に期待値がそれほど高くないのが幸いするのでしょうか?

マスメディアも叩きにくいと思います。

実務家としての能力と大臣としての能力は別なので、今後の発言次第であるとは思います。

以上

裁判所が認定した朝鮮学校と朝鮮総聯・北朝鮮との関係

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朝鮮学校無償化訴訟で大阪高裁の判決が出た結果、朝鮮学校が敗訴しました。

一連の訴訟の中で、各裁判所は朝鮮学校と朝鮮総聯・北朝鮮との関係が朝鮮学校の教育・運営に「不当な支配」を及ぼしていると認定しています。

ここではどのような事実関係が認定されているのかを整理します。

朝鮮学校無償化訴訟の全体像

こちらでも書いていますが、訴訟が各地でなされています。

朝鮮総聯は破防法に基づく調査対象団体

朝鮮総聯は、破壊活動防止法に基づく調査対象団体です。

公安調査庁の【内外情勢の回顧と展望】には、朝鮮総聯の活動の調査結果が報告されています。※破壊活動防止法が「適用された」ではないことに注意。

要するに、日本共産党やオウム真理教(その後継団体であるアレフやひかりの環など)などと同じ扱いであるということです。

朝鮮学校無償化訴訟の展開

朝鮮学校無償化訴訟は、主要都市の朝鮮学校関係者によって為されています。

時系列順にいうと、広島(平成25年(行ウ)第27号)、大阪(平成25年(行ウ)第14号)、東京(平成26年(ワ)第3662号)、名古屋(平成25年(ワ)第267号、平成25年(ワ)第5590号)の地方裁判所の判決が出ています。

既に判決が出ている東京、名古屋、広島では朝鮮学校側の敗訴となっています。2018年9月27日に大阪高裁で朝鮮学校側が逆転敗訴しましたが、高等裁判所レベルで判決が出たのは初めてのことです。

東京と名古屋は朝鮮学校の元生徒らが原告、広島と大阪は朝鮮学校の運営法人が原告です。

福岡でも同種の訴訟が行われており、福岡は2019年3月14日に判決が出るようです。

東京地裁が認定した朝鮮学校と朝鮮総聯・北朝鮮との関係

東京地裁判決はエビデンス毎に項目が分かれており、把握しやすいです。

公安調査庁による【内外情勢の回顧と展望】から

  1. 朝鮮総聯が「高校無償化」に関して朝鮮人学校生徒への適用を実現すべく朝鮮人学校の教職員・父兄・生徒らを動員して各地で街頭宣伝活動を行った
  2. 平成23年7月に「総聯の新たな全盛期を開くための中央熟誠者大会」において朝鮮人学校への生徒勧誘活動に取り組み、来年度の学生数増加が確定
  3. 朝鮮総聯は「多数の在日韓国・朝鮮人と関わりを有する朝鮮人学校を『活動の拠点』と位置づけ
  4. 朝鮮総聯は,我が国政府の『高校無償化』措置に関し,朝鮮総聯中央に『対策委員会』を設置
  5. 朝鮮総聯は,(中略)北朝鮮建国60周年に際しては,幹部活動家,若手活動家,商工人など各階層別の代表団を総勢数百人規模で北朝鮮に派遣し,(中略)これら代表団の一部は,朝鮮労働党幹部から,思想教育の徹底などを図るよう指導を受けた

国会答弁から

  1. 平成22年11月17日の参議院予算委員会において公安調査庁長官が「朝鮮総聯の影響は,朝鮮人学校の教育内容,人事,財政に及んでいること,このように承知しております。」と答弁
  2. 平成24年11月7日の衆議院文部科学委員会において警察庁長官官房審議官が「朝鮮総聯は,朝鮮高級学校等の朝鮮人学校と密接な関係にあり,同校の教育を重要視し,教育内容,人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識しております。」と答弁

朝鮮総聯のホームページから

  1. 「朝鮮総聯と在日同胞は,幼稚園から初級学校,中級学校,高級学校,大学校にいたる120余校の各級学校を日本各地に設立して,在日同胞子女に民主主義的民族教育を実施している。」,「朝鮮総聯は,日本の都道府県ごとに47の地方本部をおいている。」,「地方本部は,中央本部の決定と方針にしたがって管轄地域の諸般の活動を企画,組織,推進し,管下の階層別団体,事業体,学校を指導する。」,「朝鮮総聯の地方本部は,当該地域を区分して支部をおいている。」,「地域の集団的指導機関である支部常任委員会は委員長,副委員長,専門部署役員,管下の団体責任者,学校長などによって構成される。」などの記載がされている
  2. 「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている。」との記載

この時点で、公安調査庁の資料や国会答弁で示された事実は、すべての朝鮮高級学校(朝鮮学校の高校レベルに位置する学校)に共通するものと評価しても不合理ではないとしています。

裁判所認定の事実

広島地方裁判所平成19年4月27日判決で認定された事実も引用されています。

事案:C信用組合(以下「C」という。)の学校法人D(以下「D」という。)等に対する貸金債権を譲り受けたとする者が貸金の支払等を求めた事案についての判決。

  1. Dの実印が「朝鮮学校」の日常の管理運営を行っていた「教育会」の金庫で保管されていたこと
  2. CとDは,朝鮮総聯E県本部の強力な指導の下にある傘下組織のようになっており,両者一体となって学校移転のためのプロジェクトを進めていたこと
  3. Dが学校法人の形態をとったのは,日本社会において行政の補助や助成を受けられる地位を確保するためであり,学校の日常的な管理運営は学校単位で設けられている「教育会」が行っていたものであると学園関係者が認識していたこと
  4. 平成4年4月及び5月に,Dが学校の移転・建設のために設立した組織名義の預金口座から,朝鮮総聯E県本部への融通金ないしその関連で合計5000万円が出金されたこと

などが認定されています。

新聞等の報道があったという事実

  1. 平成22年2月11日の産経新聞において,北朝鮮が過去半世紀以上にわたり日本国内の「朝鮮学校」に対して合計460億円の資金提供を行っていた旨の報道がされた
  2. 平成22年2月21日の産経新聞において,「朝鮮学校」において学費納入時に朝鮮総聯傘下団体の活動費を同時に徴収していた旨報道された
  3. 平成22年3月11日の産経新聞において,「朝鮮学校」で使用されている教科書には故金正日氏の決裁が必要である旨報道された
  4. 平成22年9月26日の産経新聞において,「朝鮮学校」の生徒のうち朝鮮総聯の幹部等の子供は学費が免除されており,朝鮮高級学校の場合には,朝鮮総聯が学費と同程度の額を教育手当として出すこととされており,同手当は,生徒や保護者が受け取らず,学校側の会計上で学費と相殺する形で処理されている旨報道された
  5. 平成23年10月26日の産経新聞において,「朝鮮学校」の校舎や敷地が朝鮮総聯の関連する金融機関の債務の担保となっており,そのうち高級学校を含む13校の校舎及び敷地が,同金融機関の破たんを受けて,仮差押えがされている旨報道された
  6. 平成23年11月1日の産経新聞において,朝鮮総聯が朝鮮学園の理事会議事録を偽造した旨報道された
  7. 平成23年11月18日の産経新聞において,「朝鮮学校」への自治体からの補助金が朝鮮総聯に流用されている疑いがある旨報道された
  8. 平成24年10月17日の産経新聞において,朝鮮総聯が高級学校を含む関係団体等に対して,故金日成氏及び故金正日氏の肖像画を新しい肖像画に交換するよう指示し,同肖像画は朝鮮総聯中央宣伝広報局が一括して準備し,費用は対象機関が負担する旨報道された

これ見ると、産経新聞以外は報道したのか?と思ってしまいますが、証拠として提出された記事がそれだけだったというに過ぎないのでしょうか?

また、国外の新聞報道も引用されています。

  1. 在日本大韓民国民団発行の「民団新聞」(平成22年3月17日)には,朝鮮高級学校の「高校3年」では全科目週30時間のうち7時間が民族教育に値しない思想教育もしくはそれに準じることに割り当てられており,そのような問題は「朝鮮学校の上部団体が朝鮮総連であり,人事や配置まで朝鮮総連の指示を受けるという『垂直支配』に起因している」との記載がされている
  2. 在日本大韓民国民団発行「民団新聞」(平成23年1月1日)には,NPO法人の代表が「総連の新たな内部文書」を公開し,「朝鮮学校は金日成-金正日親子へ『忠誠の電文』を送るという思想・政治運動を学校ぐるみで展開している」と批判したとの記事が掲載されている
  3. 北朝鮮の「労働新聞」(平成24年4月4日)には,「総連は,我が共和国の堂々たる海外同胞組織であり,在日朝鮮学校は,総連組織が運営する合法的な民族教育機関である。」との記載がある
  4. 在日本朝鮮人総聯合会中央常任委員会発行の「朝鮮総聯」(平成3年2月1日)には,「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の指導のもとに,教育会が責任をもって進めている。」との記載がある

これらの事実のすべてが存在していると東京地裁が明確に認定したわけではありませんが、これらの疑いを払拭するのに十分な確証を得ることができないとしています。

各種団体からの申入書の記載

  1. 北朝鮮による拉致被害者家族会連絡会及び北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会作成が作成した、平成22年8月25日付け「朝鮮学校への国庫補助に反対する要請文」
    ⇒「朝鮮学校の生徒らは,学内で組織運営されている『在日本朝鮮青年同盟(朝青)という政治組織に全員加盟して,北朝鮮の金正日政権を支える政治活動に参加」「総連は世論喚起のデモや集会に朝鮮学校生徒を『朝青』組織を通じて大々的に動員」「朝鮮学校は純粋な教育機関ではなく,拉致被害者をいまだに返さない朝鮮労働党の日本での工作活動拠点なのです。」などの記載
  2. 在日本大韓民国民団中央本部が作成した、平成22年7月27日付け「朝鮮学校『高校無償化』に関する申し入れ書」
    ⇒「朝鮮学校は運営面においても教科内容の面においても,また教育全般面においても朝鮮総連の指導を通じ北朝鮮政府の完全なコントロール下にあり,日本社会一般の常識をはるかに越えるような教育,指導が行われています。」「就学支援金が(中略)本来の趣旨から外れて実際には朝鮮総連への迂回支援につながることを本団は憂慮する」との記載

これらの事実についても、そのすべてが存在していると東京地裁が明確に認定したわけではありませんが、これらの疑いを払拭するのに十分な確証を得ることができないとしています。

名古屋地裁が認定した朝鮮学校と朝鮮総聯・北朝鮮との関係

名古屋地裁判決は、朝鮮学校と朝鮮総聯・北朝鮮との関係がある事を確定した上で、それが「不当な支配」にあたるかどうかを段階的に記述しています。

また、「不当な支配」の疑いについて、原告による反論が示されていますが、すべて疑いを払拭するに足りないと判断されています。

「不当な支配」と言えるための合理的疑念

名古屋地裁はまず、以下を指摘しています。

愛知朝鮮高校が,北朝鮮から財政上の援助を受け,朝鮮総聯との間で密接な人的関係を有するということのみをもって,朝鮮総聯や北朝鮮から「不当な支配」を受けていると合理的に疑うべき事情が存在するとはいえない。

その上で、以下の判断枠組みを示して検討しています。

朝鮮総聯や北朝鮮が愛知朝鮮高校に対して及ぼす影響が,外国本国や在日民族団体が在日外国人学校に対して行う一般的関与を超える介入であり,人間の内面的価値に関する文化的な営みとして,党派的な政治的観念や利害によって支配されるべきものではない教育本来の目的をゆがめるようなものに至っている合理的疑念があるかを,さらに検討する必要がある。

「不当な支配」の合理的疑念の事実:学校の運営

  1. 朝鮮総聯のホームページには,平成24年3月まで,「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている」との記載が存在していた
  2. 準学校法人が学校の運営費のために行う借入金は,評議員会に諮問した上で,理事会において決すべき事項であるところ,平成23年時点で愛知朝鮮学園がRCCに対して負っていた約14億円の借入債務は,学校運営費のための借入金であるとの説明がされているにもかかわらず,その多くが教育会名義での借入れとなっている。
  3. しかも,支援室からの確認に対し,愛知朝鮮高校は,上記借入債務について,理事会・評議員会の意思決定の有無を確認できない旨の回答をしているほか,借入れの詳細が分かる書類も学園内には存在しない旨を回答するなど,理事会・評議員会において意思決定を自律的に行っている準学校法人とは考え難い回答をしている。
  4. そして,上記借入れが行われたのは平成9年から13年頃のことではあるが,愛知朝鮮学園は,現在の理事会の開催状況についても,理事会開催を裏付ける書類(出欠票や欠席者の委任状等)は特に存在しないと回答している上,役員名簿と理事会等の出席者が一部合致していないことも確認されており,平成24年3月時点で前記のとおりのホームページの記載もあった

「不当な支配」の合理的疑念の事実:教育内容について

  1. 朝鮮高校が使用している教科書は,平成22年以前まで朝鮮総聯中央常任委員会に置かれた「教科書編纂委員会」によって編纂されており,総聯中央副議長が責任者になるなど,朝鮮総聯の意向を色濃く反映した教科書編纂がされていたことがうかがわれる。
  2. その後,教科書の編纂者は「学友書房 教科書編纂委員会」と改められたが,学友書房も朝鮮総聯の事業体である上,学友書房が朝鮮総聯中央の指導の下で教科書編纂を行っていた
  3. 朝鮮高校で使用されている教科書には,北朝鮮の最高指導者を絶対視し,これを賛美・礼賛する表現が多数見られる
  4. 朝鮮総聯は,朝鮮学校において,北朝鮮の最高指導者を崇拝し,その考えや言葉を絶対視するような教育を行うべきことを,教職同等を通じて,校長や教員に繰り返し指導している
  5. 朝青は,青年期の在日朝鮮人によって構成される朝鮮総聯の傘下団体であるところ,愛知朝鮮高校においては,生徒全員が朝青に加盟し、朝青の各種活動に参加している
  6. 公安調査庁の平成22年1月の「内外情勢の回顧と展望」では「朝鮮総聯は,朝鮮人学校での民族教育を『愛族愛国運動』の生命線と位置付けており,学年に応じた授業や課外活動を通して,北朝鮮・朝鮮総聯に貢献し得る人材の育成に取り組んでいる。」「朝鮮総聯は・・・教職員や初級部4年生以上の生徒をそれぞれ朝鮮総聯の傘下団体である在日朝鮮人教職員同盟(教職同)や在日本朝鮮青年同盟(朝青)に所属させ,折に触れ金総書記の『偉大性』を紹介する課外活動を行うなどの思想教育を行っている。」と記載されている。
  7. 東京都における調査時において,朝青のホームページに掲載されていた「朝青規約」には,朝青の目的,義務,組織について,以下のとおり規定されていた
    1条 朝青は,朝鮮民主主義人民共和国政府の政策を高く奉じ,在日本朝鮮人総聯合会の綱領を固守し,総聯の諸般の決定執行において先頭に立つ。朝青は,自己の全ての事業を総聯の指導の下に進める。
    5条 朝青員の義務は次のとおりである。
     ① 朝青員は,共和国政府の路線と政策,それを具現した総聯の決定を深く学習し,それを先頭に立って擁護貫徹し,広く解説宣伝しなければならない。
     ③ 朝青員は,祖国を熱烈に愛し,主体社会主義祖国を内外反動らの策動から堅実に擁護するために献身しなければならない。
     ⑭ 朝青員は,内外の敵の策動から総聯組織を堅固に守らなければならない。
    38条 朝鮮高級学校(中略)内には,朝鮮中央委員会の批准を受けて,朝青朝高委員会を組織する。朝青朝高委員会は,学内の朝青事業に責任を負い,該当地方県本部団体に直属する。

これらの疑念に対して、原告側が反論しています。

原告側の反論

事実関係そのものについての反論とそれについての判断だけをピックアップします。

  1. 「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている」との朝鮮総聯のホームページの記載は誤っていたことから,その後に訂正されている
    ⇒訂正は事実だが疑念払拭できず
  2. 教育会は,日本の学校でいうとPTAのようなものであり,寄付金の声掛けなど学校に対する支援を行っているにすぎず,愛知朝鮮学園の運営は理事会により行われている
    ⇒PTAが何億円にものぼる学校運営費を金融機関から借り入れるとは考え難いし、なぜ朝鮮総聯中央責任副議長が出席して「指導」を行うのかも不可解
  3. 教科書は,朝鮮学校の教員らの意見も反映して改訂を繰り返している
    ⇒教員によって自主編纂していると認めることは困難
  4. 朝青は,地域の在日同胞青年たちのコミュニケーションを図ったり,様々な催しをしたりする団体であるところ,朝鮮高校内の朝青は生徒会のような活動をしており,高校の朝青活動と高校外の朝青活動は相互に関係がない上,朝青が朝鮮総聯から指示を受けることはない
    ⇒朝青の機関紙において、朝青の課業の筆頭項目が「青年同盟を金日成-金正日主義化」することとされていること(「金日成-金正日主義化」とは,金日成主席と金正日総書記の思想を指針として運動を推進することを意味する。)からして,採用し難い。
  5. 教職同についても,朝鮮総聯からその活動等について指示を受けることはない
    ⇒朝鮮新報や公安調査庁の調査結果から証言は信用できない

結局、これらの反論はすべて、信用できないか、事実があったとしても疑念が払拭できないとしています。

広島地裁が認定した朝鮮学校と朝鮮総聯・北朝鮮との関係

広島地裁の判決文でも、東京地裁が引用した広島地方裁判所平成19年4月27日判決、その控訴審である広島高等裁判所平成20年12月26日判決で認定した事実を引用しています。

  1. 原告法人(朝鮮学校)は,朝鮮総聯本部の強力な指導の下にあること
  2. 原告法人が設立した組織である委員会があるが,同委員会の事務局長は,朝鮮総聯G県本部からの要請により,同委員会が管理していた口座から,朝鮮総聯G県本部への融通金として,あるいは,融通金に関連して合計5000万円を出金した

上記各判決書の記載からは,朝鮮総聯の強力な指導の下にある者の中には,原告法人の理事長が含まれ,それら指導の下にある者は,朝鮮総聯の指導によって朝鮮総聯のために原告法人の名義や資産を流用した過去があり,そのような事態が今後起こり得ると考えることに理由がないとは言い難い。

さらに朝鮮総聯のホームページの記載を取り上げます。

  1. 朝鮮総聯の平成23年11月9日頃のホームページには,「朝鮮総連の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている。教育会は,中央,都道府県,学校単位で,専任,学父兄を中心に組織されている。教育会は同胞学父兄の愛国心と熱意を呼び起こし,学校運営に必要な財政をまかない,学校の施設や設備,環境をととのえている」との記載がある
  2. 平成25年5月2日付のホームページには,「地方本部は,中央本部の決定と方針にしたがって管轄地域の諸般の活動を企画,組織,推進し,管下の階層別団体,事業体,学校を指導する。」との記載があったことが認められる。

そうして、以下のように評価しています。

「平成20年12月26日以降,本件不指定処分がなされた平成25年2月20日までの間、朝鮮総聯において,朝鮮学校に対する強力な指導を変更したり,見直しをしたりしたなどの報道は見当たらず,一方,原告法人理事長の陳述書には,朝鮮総聯による不当な支配はなく,朝鮮総聯との協力関係は続くとの記載があるにとどまるため,朝鮮総聯の強力な指導に何らの変化もなく,再び指示がでるのではないかと考えたとしても理由がないとも言い難い。」

これに対する原告法人(朝鮮学校)の反論がありますが、採用できない、或いは判断する必要がないとされました。

大阪高裁が認定した朝鮮学校と朝鮮総聯・北朝鮮との関係

こちらについては確認次第UP予定です。

 

以上

沖縄県知事選での玉城デニー側の違法行為疑惑まとめ

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出典:産経新聞https://www.sankei.com/politics/news/180902/plt1809020015-n1.html(春名中撮影)

玉城デニー陣営或いは応援者の違法行為と違法疑惑をまとめます。

告示日前に選挙運動用ポスターの掲示?

これは誰が貼ったものか分からないので、公職選挙法違反とは断定できませんが、このような事実はあったということです。

玉城デニー氏を応援する者が行ったと言う推定は働くでしょう。

公務員たる市議が特定候補者を応援するTシャツを着用して公共空間に

※この部分は違法の内容を誤って記載していたので修正しています。
一般職の公務員は特定候補を応援する如何なる態様の行為も禁止されています。

ただ、特別職の公務員は一般職とは異なります。市議は特別職です。

しかし、特別職であっても、規制されている選挙運動等があります。

公職選挙法

第百四十三条 選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号のいずれかに該当するもの(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては、第一号、第二号、第四号、第四号の二及び第五号に該当するものであつて衆議院名簿届出政党等が使用するもの)のほかは、掲示することができない。
一 選挙事務所を表示するために、その場所において使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
二 第百四十一条の規定により選挙運動のために使用される自動車又は船舶に取り付けて使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
三 公職の候補者が使用するたすき、胸章及び腕章の類
四 演説会場においてその演説会の開催中使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
四の二 屋内の演説会場内においてその演説会の開催中掲示する映写等の類
四の三 個人演説会告知用ポスター(衆議院小選挙区選出議員、参議院選挙区選出議員又は都道府県知事の選挙の場合に限る。)
五 前各号に掲げるものを除くほか、選挙運動のために使用するポスター(参議院比例代表選出議員の選挙にあつては、公職の候補者たる参議院名簿登載者が使用するものに限る。)

中略

16 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この項において「公職の候補者等」という。)の政治活動のために使用される当該公職の候補者等の氏名又は当該公職の候補者等の氏名が類推されるような事項を表示する文書図画及び第百九十九条の五第一項に規定する後援団体(以下この項において「後援団体」という。)の政治活動のために使用される当該後援団体の名称を表示する文書図画で、次に掲げるもの以外のものを掲示する行為は、第一項の禁止行為に該当するものとみなす
一 立札及び看板の類で、公職の候補者等一人につき又は同一の公職の候補者等に係る後援団体のすべてを通じて政令で定める総数の範囲内で、かつ、当該公職の候補者等又は当該後援団体が政治活動のために使用する事務所ごとにその場所において通じて二を限り、掲示されるもの
二 ポスターで、当該ポスターを掲示するためのベニヤ板、プラスチック板その他これらに類するものを用いて掲示されるもの以外のもの(公職の候補者等若しくは後援団体の政治活動のために使用する事務所若しくは連絡所を表示し、又は後援団体の構成員であることを表示するために掲示されるもの及び第十九項各号の区分による当該選挙ごとの一定期間内に当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)内に掲示されるものを除く。)
三 政治活動のためにする演説会、講演会、研修会その他これらに類する集会(以下この号において「演説会等」という。)の会場において当該演説会等の開催中使用されるもの
四 第十四章の三の規定により使用することができるもの

※文書図画について
公職選挙法における文書図画とは、文字若しくはこれに代わるべき符号又は象形を用いて物体の上に多少永続的に記載された意識の表示をいい、その記載が象形による場合を図画といい、文字又はこれに代わるべき符号による場合を文書というものとされています。

よって、特定選挙における候補者名の入ったTシャツを着用して公共空間に出る行為は「掲示」にあたるとして禁止対象となります。

なお、143条に当たらないと解する場合でも、さらに禁止を免れる行為が制限されています。

文書図画の頒布又は掲示につき禁止を免れる行為の制限)
第百四十六条 何人も、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義をもつてするを問わず、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として、公職の候補者の氏名若しくはシンボル・マーク、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布し又は掲示することができない。
2 前項の規定の適用については、選挙運動の期間中、公職の候補者の氏名、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者の推薦届出者その他選挙運動に従事する者若しくは公職の候補者と同一戸籍内に在る者の氏名を表示した年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これに類似する挨拶状を当該公職の候補者の選挙区(選挙区がないときはその区域)内に頒布し又は掲示する行為は、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為とみなす。

したがって、いずれにしても、候補者名の入ったTシャツを着用して公共空間に出る行為は規制対象となります。

 

証紙の貼付が無い選挙運動用ビラ

選挙運動用ビラに関するQ&Aでは【選挙運動用ビラの表面には必ず頒布責任者の氏名・住所、印刷者の氏名(法人名)・住所(所在地)を記載し、かつ選挙管理委員会が交付する証紙の貼付が必要です】とあります。

よって、このポスターは違法です。

公立学校の教員への候補者名入りビラ配布行為

上記記事でまとめていますが、ある公立学校の職員会議において、玉城デニー後援会からのものと書かれているビラが配布されました。

内容は、玉城デニーに関するビラを配布する人員を募集するものです。 

もちろんこのような行為も「候補者の名を記載した文書」なので規制対象です。

小泉進次郎による佐喜眞淳候補の応援演説を妨害

これは小泉進次郎の機転によって、笑いに変りました。

該当部分は動画の1分30秒以降です。

未成年者を選挙運動に利用

 アウトです。

3台以上の街宣車を同時に走らせる?

選挙カーとは、演説等のために上に人が登れる構造のものです。

街宣車(選挙カー)については公職選挙法141条以下に規定があり、県知事選挙の場合は公職の候補者一人につき1台とされています。

選挙カーの使用方法について過去に選挙管理委員会に確認した結果は以下です。

  1. 公選法上、候補者個人が使用できる街宣車は1台のみの使用となっている
  2. しかし、団体として申請して許可を得れば、確認団体の車両として追加で1台の使用が可能である
  3. 確認団体の車両として事前にナンバーの届出をするのではなく、使用車両に標札を掲示して使用すれば良いこととなっている
  4. よって、車両を乗り換えて標札を掲示して使用することは公選法上問題はない

確認団体とは、所定の要件を充たすことによって選挙運動期間中に特定の政治活動を行うことを認められた公職選法上の政党その他の政治団体です。

また、「拡声機」についても自動車毎に割り当てられたものが使用可能です。
(会場において別個用意したものを利用する場合はOK)

つまり、同時に3台以上の拡声機をつけた選挙カーを候補者(とその応援団体)が走らせていた場合には公選法違反となるということです。

市の担当課を名乗ってデニー陣営のビラを配布

これについては現時点では「何者かが行った」ことしか判明していません。

当然、公務員による特定候補の当選を目的とした行為なので違法です。

違法ではないがフェイク情報であるもの

魚拓:http://archive.is/thiD9

参議院議員の伊波洋一は新都心公園で行われた集会で「8000人が参加」と書いています。

しかし、新都心公園の広さは7.56haですが、地図上で7.74haの末吉公園と比べると分かるように、施設がある区域はせいぜい3haくらいです。
沖縄県公園管理課魚拓はこちら

f:id:Nathannate:20180930131708j:plain

http://www.city.naha.okinawa.jp/cms/kakuka/kouen/kouenhaichizu(H23-3).pdf

そのうち、集会が行われたのがどこかは不明ですが、多目的広場のAB両面や円形部分の面積はせいぜい0.5ha程度でしょう。新都心公園の野外ステージは0.254haで1300人収容とありますから(これが多目的広場や円形部分を指すのかは不明)、2500人よりも多くなることはないはずです。

f:id:Nathannate:20180930131922j:plain

したがって、「8000人」というのは明確にフェイクです。

まとめ:これだけではない玉城デニー側の違法行為

ざっと取り上げたものだけでも、これだけの違法行為や違法疑惑、フェイクがありました。沖縄の現地で観察していれば、もっと沢山の違法行為を目にするのだろうと思います。

その他、玉城デニー氏に直接関係しないものの、彼の庇護者である小沢一郎による土地取得が看過できない背景があるとして問題視されています。

玉城氏本人の大麻吸引は否定されていますが、政治資金収支報告書の記載漏れは修正申告をしたものの、刑事告発されています。

「公職選挙法特区」などと呼ばれないよう、沖縄の選挙も正常化して欲しいものです。

以上

沖縄県知事選:玉城デニー候補が沖縄を「一国二制度」にすると発言:雨傘革命と香港の末路

f:id:Nathannate:20180927164027j:plain

沖縄県知事選に出馬している玉城デニー候補が沖縄を「一国二制度」にすると発言したことが物議を醸しています。

「一国二制度」という言葉の成り立ちと、この制度が敷かれた香港の末路について整理しました。

玉城デニー氏の国会での発言

196回衆議院内閣委員会17号平成30年05月17日

○玉城委員 最後に総理に要望を申しつけたいと思います。
 沖縄を一国二制度にして関税をゼロにし、消費税をゼロにする、そのぐらい大胆な、これからの沖縄の将来を見越した、そういう提案もぜひ行っていただきたい、そのことを申し上げて、質問を終わります。
 ありがとうございました。ニフェーデービタン。

動画

いっそ沖縄に一国二制度というツイート 

同内容のツイートもしています。

魚拓:http://archive.is/Hkhnv

このツイートに対してチャイナの影響を心配するリプライがつきましたが、それに対して反論しています。

魚拓:http://archive.is/bSbLY

玉城氏が一般人のリプライに対してリプライをつけるというのは非常に珍しいことです。

ところで、玉城氏は「一国二制度は比喩的表現で用いた」趣旨の発言をしていますが、そういう気持ちで内閣総理大臣に「要望を申しつけ」たんでしょうか?

言葉を軽々しく使っていないでしょうか?

一国二制度は支那の言葉

一国二制度という言葉は支那(中華人民共和国)がマカオと香港の返還と台湾の統一を目指して使用したものです。

また、有本香氏によれば、以下のような背景を持つ言葉でもあると言うことです。

【有本香の以毒制毒】沖縄知事選に衝撃… 玉城氏発した「一国二制度」という言葉の恐ろしさ

この言葉を沖縄に最初に使ったのは「誰か」という点だ。答えは次の文章にある。

「『自立・独立』『一国二制度』『東アジア』『歴史』『自然』の5つのキーワードが、沖縄の真の自立と発展を実現するための道しるべになると考えている。つまり、沖縄において『自立・独立』型経済を作り上げるためには、『一国二制度』を取り入れ、『東アジア』の拠点の一つとなるように…」

 これは、今はなき民主党という政党が2005年8月に出した「民主党沖縄ビジョン【改訂】」の中の一文だ。玉城氏はここから引いたと考えられる。

言葉の持つ背景だけでも、その「嫌な予感」を感じざるを得ません。

税制の話なら、わざわざ「一国二制度」という言葉を持ち出す意味がわかりません。

元々、日本では使われてこなかった言葉ですし、支那の言葉が有名なのは自明なのに意味内容が異なる言葉として使っているなら著しく不注意ではないでしょうか?

実際の一国二制度の末路:香港の「雨傘革命」

「雨傘革命」で検索すると分かりますが、2014年に大学生がデモをしたことを思い出す人も多いかと思います。このデモはまさに「一国二制度」に伴う不合理に不満を持った者が起こしたものです。

簡単な把握は上記記事で良いですが、一国二制度の問題はハフィントンポストの記事がまとまっています。

「雨傘運動」で何が変わったか:「香港第一才子」インタビュー

香港は香港基本法に基づき、1997年以来、1人1票の民主選挙の導入に向けて準備を進め、2017年に実現することになっていました。
ー中略ー

 香港には1200人からなる選挙委員会が現在もあり、法律やエンジニア、医療などの業界代表が入っています。中国が公布した香港の選挙方法は、候補者になるにはこの1200人の半分の支持が必要だとしました。

しかし、香港の各業界の代表たちはすでに中国によってコントロールされています。たとえば漁業や農業の団体からも何人かの代表を出していますが、彼らは中国の言いなりです。実際にいま香港で農漁業はないに等しいほど小さな産業なのですが、選挙委員会には60人から70人の委員が送り込まれています。選挙委員会の半数以上はなんでも中国の言うことを聞く親中国の人たちで、中国が選挙委員会をコントロールできるようになっています。

 ですから、中国に反対する人、不満を言う人は、行政長官の候補者になれない仕組みなのです。民主派が候補を送り込みたくても「愛港、愛国(香港を愛し、中国を愛する)」の人物ではないから認められない、と言われます。

一国二制度によって、香港住民のイニシアティブが奪われているのだということがわかります。

2014年6月10日に公表された中国国務院新聞弁公室の白書では、香港特別行政区における一国二制度について「香港固有のものではなく、全て中央政府から与えられたものである」と明文で定義されました。

つまり、「一国二制度」とはあくまで支那共産党による香港支配のために設けられた制度であるということです。

結局、雨傘革命という抗議のデモやハンガーストライキは、警察によって強制排除されて終了しました。

香港「普通選挙」白紙に 17年長官選、議会が政府案否決 :日本経済新聞

2015年には、普通選挙が白紙になりました。少なくとも2020年までは、普通選挙は行われないことになりました。

玉城デニーの「一国二制度」は沖縄県知事にふさわしいか

民主党や玉城氏は本来の「一国二制度」の意味を知っていたのでしょうか?これでは沖縄の自立どころか、中央政府によって主導権を奪われることを容認するかのようです。

もちろん、玉城氏のツイートからも分かるように、そのような意図で「一国二制度」という語を使ってはいないということが分かります。しかし、元々の意味と異なる意味で用いるというのは甚だ誤解を生じさせるものであると思います。

そして、本来の意味と香港の現状も把握せずに「ノリ」で安倍総理に対して国会の場で「一国二制度」という言葉を使っていたということになり、公的な立場にある人間としてどうなのかと思います。

「ノリ」がいいのは元DJの気質だからでしょうか。

「一国二制度」という語を発信したとき、支那共産党はどのように受け止めるでしょうか?

沖縄の自立を訴えるのであれば、一国の首長としての言葉の遣い方、振る舞いをしなければならないでしょう。当然にして外国に対する発信も、誤解を与えないようにしなければなりません。

以上

朝鮮学校無償化訴訟・大阪高裁判決:教育の自由と各種学校?

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大阪高裁で朝鮮学校無償化訴訟の控訴審判決が出され、文部科学大臣が無償化対象指定をしないとしても違法ではないという結論が出されました。

この訴訟と周辺知識について概略を整理していきます。

朝鮮学校無償化事案に関係する法規

これまでの朝鮮学校無償化事案に関係する法律は【公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律】(以下、支給法)という法律です。こちらの2条1項5号に「専修学校及び各種学校」も本法にいう「高等学校等」に含まれるとあります。

これを受けて【公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則】(支給法の施行規則)では、現在は削除されていますが1条1項2号ハ(平成25年改正前)において各種学校が適用対象となる場合の一つとして「文部科学大臣が指定したもの」が定められていました。各朝鮮学校は、この規定に当たるとして無償化申請をしました。

しかし、文部科学大臣が指定をしないので、朝鮮学校の生徒が国賠請求訴訟をし、さらには各朝鮮学校が国に対して無償化対象の指定をするよう義務付ける事を求める訴訟を各地で起こしました。これに対して国側は、朝鮮学校は学校教育法16条1項の「不当な支配」を受けているため不指定の判断をしたとして、適法であると反論しています。

他の関連法令は文部科学省のこちらのページからどうぞ

なお、上記に挙げた支給法は旧制度です。平成26年4月以降入学者についての場合は新制度です。

新制度は【高等学校等就学支援金の支給に関する法律】という法律に基づいています。

一条校じゃない各種学校だから?

朝鮮学校無償化補助金一条校と各種学校

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/17420100331018.htm

ネット上ではよく「朝鮮学校は一条校じゃないから」と言われます。 

朝鮮学校は学校教育法1条の「高等学校等」に当たらないということですが、上述の通り、無償化や補助金支給の対象となるための要件は学校教育法とは別の法律に基づいていますから、各種学校だから直ちに支給されないことになるとは言えません。

確かに各種学校の場合には要件が別個に定められているため、一般的な高等学校に比べると対象になるハードルは高いのかもしれませんが(少なくともより面倒ではあるハズ)、区分が異なることから無償化や補助金支給の対象になる「資格」が無いということにはなりません。

たとえば各種学校であっても補助金支給を受けている学校は数十校あります。

一条校でないことを取り上げる人は、ハードルが高いことを指して言っているか、理想論として「そうであるべき」と言っていることが多いのだと思います。「一条校じゃないから対象ではない」と言い切ってしまうと、それはフェイクになります。

朝鮮学校無償化訴訟事案の全体像

朝鮮学校無償化訴訟は、全国各地の朝鮮学校関係者によって為されています。

大阪(平成25年(行ウ)第14号)以外では東京(平成26年(ワ)第3662号)、名古屋(平成25年(ワ)第267号、平成25年(ワ)第5590号)、広島(平成25年(行ウ)第27号)、福岡で同種の訴訟が行われており、既に判決が出ている東京、名古屋、広島では朝鮮学校側の敗訴となっています。高等裁判所レベルで判決が出たのは初めてのことです。福岡は2019年3月14日に判決が出るようです。

大阪での事例は以下の点が特徴的です

  1. 原告が生徒ではなく、朝鮮学校を運営する学校法人
  2. 支給法施行規則1条1項2号ハの削除が違法無効であることを判示
  3. 「不当な支配」判断における文部科学大臣の裁量を認めず
  4. 「不当な支配」判断における文部科学大臣の裁量の逸脱濫用を認定
  5. 「不当な支配」の客観的事実は不存在であると認定

原告が朝鮮学校であるというのは、広島地裁の事例が同じでした。

大阪地裁の判決内容

細かいところを突っ込んでも意味がないので重要なところだけ。

この訴訟は、結局は朝鮮学校が支給法の要件に該当するかが問題ですから、上記の5番の「不当な支配」の 客観的事実があるかどうかを避けて通ることはできません。東京地裁は先に5番を判断し、支給法施行規則の削除の適法性を検討しませんでしたが、それはそういう論理構造になっているからです。

大阪地裁は以下の事実を認めませんでした。

  • 朝鮮学校が朝鮮総聯に対して寄附等を行っていること
  • 朝鮮総聯が朝鮮学校に対して金日成、金正日の肖像画を太陽像に交換するよう指示したこと
  • 朝鮮学校の補助金を朝鮮総聯の直轄組織である教育会が管理して流用されていること
  • 文部科学大臣に提出された書面に「朝鮮学校は朝鮮労働党の日本での工作活動拠点である旨、朝鮮学校の学校運営及び教育は朝鮮総聯の指導を通じて北朝鮮政府の完全なコントロール下にある旨」が記載されていることからそのような事実の存在

他方で、以下の事実は認められるとしましたが、「不当な支配」が認められるとはしませんでした(すべてではないですが抜粋)

  • 大阪朝鮮学校とは異なる朝鮮学校の校舎及び敷地が朝鮮総聯の関連する金融機関の破綻を原因として仮差押えされていること
  • 東京都内の朝鮮学校において不適切な財産管理が見られたこと
  • 神奈川県で朝鮮総聯と関係が深い教育会が朝鮮学校の生徒等の保護者に対し生徒等に支給された学費補助金を教育会に納付させたケースがあること
  • 朝鮮学校では北朝鮮の国家理念を賛美する教育を行っていること

特に、全国一律に判断するべきではなく大阪朝鮮学校においてどうだったのかを検討するべきだという判断方法が採られているのが他の地裁と異なるところです。

他の朝鮮学校における事例でもって大阪の朝鮮学校の判断をするべきではないということや、朝鮮総聯と北朝鮮との関係が朝鮮学校全体に一定程度あるにしてもそれを大阪の朝鮮学校に推し量ることはできないという旨の判示が見られました。

他の地裁の判示内容を見ても、当事者が主張している内容や提出された証拠はズレがあるようであり、単純比較できません。ただ、大阪地裁は「不当な支配」の事実認定にあたって、他の地裁よりも国側により一層高い証明度を求めているような印象を受けます。

大阪地裁判決の西田隆裕元裁判長は:判決代読

大阪地裁判決を読み上げたのは、西田裁判長の後任である三輪方大裁判長です。西田氏が判決を書き上げた後に異動したため「判決代読」という手続を行っているだけです。

ネット上では三輪裁判長の顔写真でもって西田裁判長であるとしているものがありますが、明確に間違いなので注意しましょう。

なお、西田元裁判長は「判検交流」で裁判官の身分ではなく検察官の身分になっていますが、この制度が持つ問題は別稿を書くかもしれません。

とりあえず以下のツイートのツリーに問題点を書いています。

大阪高裁の判示内容

大阪高裁については判決文が手に入ってから記述したいと思いますが、報道にあらわれているものを見ると、大阪地裁よりも国側に求められる証明度が下がっている印象です。

「北朝鮮の指導者を絶対的な存在として礼賛し、朝鮮労働党や朝鮮総連を褒めたたえる」教科書を朝鮮総連の傘下事業体が発行していること、朝鮮総連が財政面での支援をしていることなどを挙げ、朝鮮総連は「教育内容にかなり強い影響力を行使している」

無償化によって学校側が窓口となって受け取る就学支援金について、大阪朝鮮学校では「管理が適正に行われないことを疑わせる」としています。

こうした事実は地裁でも認定されていたので、高裁で判断が覆るとすれば新たに証拠が出されたのか、高裁の判断手法が地裁と異なっていたことが予想されます。 

教育を受ける権利の侵害?

朝鮮学校の側から聞こえてくるのは「子どもたちの教育を受ける権利を守れ!」という言葉ですが、これはまったく事実に反します。

彼らは朝鮮学校で学ぶことを妨げられていませんし、教育内容を変更しなくとも朝鮮学校で教育を受けられることは変わりありません。単に無償化のためのお金が学校に下りてこなくなるだけです。教育内容が現在のままであっても、朝鮮総聯との関係次第では無償化が認められる余地があります。

それに、朝鮮学校に通っている生徒は、他の学校に進学・転校することも妨げられているわけではありません。自らの意思で朝鮮学校に通うことを選び取って来ています。

教育を受ける権利が侵害されているという事実は不存在です。各地裁の判示においても、教育を受ける権利の侵害を認めているものはありません(侵害が正当化されると言っているかのような微妙な言い回しをしている地裁はあるが)。

駅前の予備校に通っている者が「塾代を無料にしていないから浪人生の受験教育を受ける自由の侵害だ」などとは言わないでしょう。それと同じことを言っていることになります。

なお、朝鮮学校の生徒の教育を受ける権利を殊更に強調している弁護士が大量懲戒請求を受けた者にも居るようです。

まとめ:朝鮮学校無償化のためには朝鮮総聯を切れ

反社会的組織との関係があったら、一般企業であればアウトです。

そのような状況に朝鮮学校の生徒を置かせているのは、朝鮮学校の運営者です。

重要なことですが、各地裁の判決は、教育内容が反日的であるという認定はしていません。朝鮮総聯という組織との関係性を問題にしています

子どもたちに不利益を負わせるべきではないというならば、コンプライアンスとして健全な学校運営を促すのが筋ではないでしょうか?

以上

玉城デニー後援会から教職員への候補者名入りビラ配布で公職選挙法違反の選挙運動か?

玉城デニー後援会教職員ビラ配布

手登根安則ことボギーてどこん氏によるツイート

これは良いのでしょうか?特に公務員による行為の場合、公選法違反の疑いが濃厚です。事実関係と公選法関連の情報を確認していきます。

玉城デニー後援会と書かれた「ビラ配布勧誘のビラ」

まず、このビラが配布されたのは「公立学校」と言われています。

仮にこれが「私立学校」の場合、教職員は公務員ではないですから、公務員にかかる規制は対象外ということになります。しかし、今回は公立学校であるという前提のようです。

また、このビラの下部を見ると、「玉城デニー後援会」 と書かれ、教職員後援会事務局とあります。てどこん氏が職朝(朝の職員会議のこと)において配布されたと主張していますが、「誰から」配布されたのかはこのツイートでは不明です。

仮にこの学校の職員ではなく第三者の場合はどうか、となりますが、第三者が学校の職員の朝礼でビラ配布ができるということは、他の教員の影響が無いというのはありえません。よって、この場合であっても実質的に誰かしらの教員による配布であると言ってよいと言えます。

ただし、このビラは特定の候補者への投票を呼び掛ける内容ではなく【特定の候補者に関する(プラスの情報かマイナスの情報かも不明)ビラを配布する人員の勧誘のためのビラの配布】です。

このような内容であっても、公務員による選挙運動規制にかかるのでしょうか?

文部科学省通知「教職員等の選挙運動の禁止等について」

まず、公職選挙法第136,137条によると、教育者の地位利用の選挙運動が禁止されています。

第百三十六条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、その地位を利用して選挙運動をすることができない。
一 国若しくは地方公共団体の公務員又は行政執行法人若しくは特定地方独立行政法人の役員若しくは職員

(教育者の地位利用の選挙運動の禁止)
第百三十七条 教育者(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する学校及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)に規定する幼保連携型認定こども園の長及び教員をいう。)は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位を利用して選挙運動をすることができない。

また、公立学校の教職員に適用される人事院規則一四―七(政治的行為)によると「教育上の地位の利用」という要件無しに特定の候補者の支持または反対(つまり、選挙運動のこと)も規制されています。

5 法及び規則中政治的目的とは、次に掲げるものをいう。政治的目的をもつてなされる行為であつても、第六項に定める政治的行為に含まれない限り、法第百二条第一項の規定に違反するものではない。
一 規則一四―五に定める公選による公職の選挙において、特定の候補者を支持し又はこれに反対すること。

次いで、文部科学省の「教職員等の選挙運動の禁止等について」という通知によると

選挙運動の禁止又は制限は、公務員としての身分を有する限り、勤務時間の内外を問わず適用されるものであり(ただし人事院規則一四―七第六項第一六号については勤務時間内に限られる。)、休暇、休職(いわゆる在籍専従も含む。)、育児休業、停職等により現実に職務に従事しない者にあっても異なる取扱いを受けるものではないこと。

よって、教職員が職務上の地位を利用して行う選挙運動は、勤務時間の内外を問わず、育児休業中や停職中であってもできないことになります。

では、今回の【公務員が勤務時間中に特定の候補者に関するビラを配布する人員の勧誘のためのビラを教職員に配布する】行為は公務員の選挙運動として規制されるでしょうか?

候補者名入りのビラ配布は公職選挙法違反か

玉城デニー後援会教職員ビラ配布

(別紙)公立学校教職員に禁止されている選挙運動等に関する行為の具体例をみると

  1. 候補者の推薦等
  2. 投票の依頼又は勧誘
  3. 署名運動
  4. デモ行進
  5. 新聞、雑誌、ビラ等
  6. 広告、ポスター、あいさつ状等
  7. 演説等
  8. 資金カンパ
  9. その他

これらの行為が規制されています。

そのうち、5番の「ビラ等」の欄を見てみると「特定の政党や候補者などを支持し又は反対するために書かれた新聞、雑誌、ビラ等に関して」とあるので、今回のビラは支持・反対のためのものであるかは微妙なところです。下部に「後援会」名があるということは、支持するためのものであると解する余地もあるでしょうが、断定はできません。

他方、6番の「広告、ポスター、あいさつ状等」を見ると「選挙運動員などの名を記載した年賀状、暑中見舞状などのあいさつ状を配ったり」することも禁止されています。

さらに、「以上の例のほか、選挙期間中、文書などについての配布又は掲示の禁止の規制を免れる行為として、いかなる名義をもってするを問わず、政党や候補者の名を記載した文書(推薦お礼のポスターなど)を配ったり、掲示したりすること。」と書いてあります。

これらを見ると、およそ政党や候補者名の名前が記載された文書を配布することは禁止されていると言えると思います。

したがって、今回の【公務員が勤務時間中に特定の候補者に関するビラを配布する人員の勧誘のためのビラを教職員に配布する】行為は公務員の選挙運動として規制されるべき行為であることが濃厚です。

まとめ:玉城デニー後援会が公職選挙法違反の選挙運動?

想像だにしない事実関係が存在する可能性があるため断定はできませんが、おそらくこのような行為は公職選挙法違反の選挙運動にあたる可能性が濃厚です。

てどこん氏のツイートの事実関係を前提とすれば、あとはこの文書が本当に玉城デニー後援会が作成したものであるのか、配布した者が玉城デニー陣営の関係者であるのかどうかが問題になります。

もっとも、玉城デニー候補とは関係なく、配布した者(仮に配布した者が公務員でないならそのような者を教職員の朝の会議に連れてきた教職員)は公選法違反行為です。

以上