事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

挙証責任論から振り返る石破4条件:実は岩盤規制突破に貢献(笑)

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石破4条件とは何だったのか?

半世紀にもわたって獣医学部新設がなされなかったのは【平成15年文科省告示45号】が原因です。

この岩盤規制を突破する効果を持つのが「4条件」だったのです。

え?逆じゃないか?

いえいえ、石破茂と文科省と獣医師会は「規制を突破させないための4条件」と思っていたが、実は逆だったんですよ(笑)

先駆者「大師100」様:@Daishi_hundred

石破4条件については相当早い段階で「大師100」様が詳細にまとめていました。
※私が存在を知ったのは2018年10月16日です。今回改めて検索していたら見つかりました。

その後の議論の推移も、このブログを見れば詳細に書いてあります。

私がこれから書く内容は、別の角度から論評するものであると言えるでしょう。

諸悪の根源:文科省告示45号

【大学、短期大学、高等専門学校等の設置の際の入学定員の取扱い等に係る基準】 魚拓:http://archive.is/9DVVo

医師、歯科医師、獣医師、教員及び船舶職員の養成に係る大学等の設置又は収容定員増でないこと。

この【文科省告示45号】の1条2号(加計学園申請時に適用された最新のものでは1条4号がこれに該当)が獣医学部設置認可申請を阻んできた違法行政です。

これは要するに、獣医学部の設置認可申請は、その中身を審査するまでもなく「門前払いする」という規定です。法的な根拠はおそらくありません。

この告示が作られる前までも、長年に渡って新たな獣医学部の設置認可が拒まれてきており、その方針に沿って行政が動いていたのです。

内閣府は、文科省が一向にこの告示を改めないため、新たな告示と閣議決定で回避するようにしました。

最新の国家戦略特別区域法26条に基づく内閣府・文科省が出した告示では、平成15年文科省告示45号の獣医学部の設置を認めないとする規定は適用しない(平成29年と30年は1校限り、という条件で)としました。

これにより、国家戦略特区に指定されているところの申請者は門前払いはできなくなり、実質的な認可の審査をすることができるようになりました。

この「中身の審査」において基準となるのが石破4条件です。

石破4条件とは

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石破4条件とは獣医師養成系大学・学部の新設に関する以下の条件を指します。

  1. 現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し
  2. ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり
  3. 既存の大学・学部では対応が困難な場合には
  4. 近年の獣医師の需要の動向も考慮し

この記述は平成27年6月30日 日本再興戦略改訂2015-未来への投資・生産性革命-の中の、本文第二部の121頁「獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討」にあります。

この内容は閣議決定されていますので、内閣の行動を拘束します。

つまり、国家戦略特区における獣医学部の認可判断において、この4条件が適用されるということです。

4条件の(不存在の)挙証責任は文科省にある

しかし、この4条件の挙証責任は申請者である今治市・加計学園ではなく、文科省にあるということは周知の通りです。

なぜなら、4条件が閣議決定されるよりも前に、国家戦略特区の基本方針が閣議決定されており、4条件は基本方針を下敷きにして解釈・適用される性質のものだからです。

平成26年2月25日閣議決定の国家戦略特別区域基本方針(平成29年7月7日改正前のもの)には以下の記述があります。

23頁

(新たな規制の特例措置の実現手続)
新たな規制の特例措置の実現に向けた規制所管府省庁との調整は、諮問会議の実施する調査審議の中で、当該規制所管府省庁の長の出席を求めた上で実施する。その調整に当たり、規制所管府省庁がこれらの規制・制度改革が困難と判断する場合には当該規制所管府省庁において正当な理由の説明を適切に行うこととする。

「当該規制所管府省庁において正当な理由の説明を行う」

この部分が、4条件=「4条件に示された事情が不存在であること」の挙証責任が文科省に課せられているということの根拠です。

4条件の文脈と申請者側の立証

そもそも、もう一度、4条件が記載された文書を読んでみましょう

文章構造から判断すると、これは規制を強化する目的で設けられたものとは考えられません。

(3)新たに講ずべき具体的施策
 (ⅱ)残された集中取組期間における国家戦略特区の加速的推進
  (b)更なる規制改革事項等の実現
   (医療イノベーションの推進、持続可能な社会保障システムの構築)
    ⑭獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討

このような構造の中で、規制改革を進めるという文脈の下に4条件が記述されていました。決して規制を強化する目的ではありません。

4条件はクリアされていたか?

とはいえ、まったく申請者が4条件をクリアすることを示さなくても良いということにはなりません。

この場合、申請者(今治市・加計学園)が一定の事実を示せば、あとは規制省庁(文科省)が規制・制度改革が困難である「正当な理由」を説明する義務が発生することになるということです。

実際に国家戦略特区ワーキンググループ委員の原英史が4条件をクリアしていることを証言しています。具体的な審査をしていない、などということはありません。それを言ったら、岡山理科大学獣医学部以外に認可されたものについても、同じことをいわなければなりません。

193 衆議院 文部科学委員会内閣委員会連合審査会 1号 平成29年07月10日

○原参考人 ー省略ー いわゆる四条件について、私は特区のワーキンググループの委員としてかかわってきた立場での認識を手短に申し上げたいと思いますが、まず一点目、既存の獣医師養成でない構想の具体化について、今治市の提案では、新たな分野での人材の育成、また感染症の発生拡大などの危機管理時に学術支援拠点として機能させるといった具体的な構想が示されていました。
二点目、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要について、今治市の提案に加え、その後、京都府からもライフサイエンス研究や水際対策強化に係る提案があり、より具体的な需要は明確にあったと認識をしておりました。また、製薬業界から、創薬の最先端分野で獣医師のニーズが拡大しているが十分に確保できていないといった声があることも認識をしておりました。
三点目、既存の大学、学部では困難かについてですが、ライフサイエンス研究、水際対策強化などの新たなニーズについては、既存の大学、学部だけでは応え切れておらず、だからこそ新たな需要が生じていると認識をしておりました。
 また、文部科学省に設置された専門家会議が平成二十三年にまとめた意見でありますが、既存の獣医学部の教育内容について、非常に厳しい指摘がなされています。口蹄疫や鳥インフルエンザ、BSEの発生など、獣医療が多様化、高度化する中で、新たな分野への対応が十分とれていない、また、最低限共通的に教育すべき内容を十分に教育できていない大学がある、獣医師として求められる実践的な力を育む教育、これは実習などですが、に課題がある、大学ごとの分析として獣医師養成課程の規模の小さい大学に課題が多いといった指摘がなされていたわけであります。
 その後の改善はもちろんなされていると思いますが、残念ながら、これまでの経緯として、既存の大学、学部が必ずしも最先端の課題に応えていなかった、それどころか、基礎的な要請にさえ応えていなかったこともあったというように認識をしております。
四点目、近年の獣医師の需要の動向も考慮という点であります。産業動物獣医師の確保に困っている地域が現実にあるということは、これまでも認識は共有されていたと思います。それから、新たな分野でのニーズも含めて、需給管理の観点からどうしても新設禁止を維持すべきということであれば、その根拠となる見通しを示していただきたいということを、平成二十六年以降、これは私ども特区のワーキンググループで文部科学省さんに繰り返しお願いをしてきたわけですが、結果として、これは示されませんでした。
 以上から、いわゆる四条件は満たされていると考えておりました。

門前払いはできなくなりましたが、認可の審査を規制省庁が行う必要があります。

しかし、文科省はそれを主体的に行っていません。

そうやって「主務官庁は審査していない」という詭弁でもって、認可申請を無効にする狙いだったのでしょう。

しかし、国家戦略特別区域法の基本方針では、規制省庁に「正当な理由」の説明を求めることで挙証責任を転換していますから、国家戦略特区諮問会議とのやりとりの中で審査がなされたと考えることになります。

基本方針は国家戦略特別区域法という、国民の信託を受けた国会を通して成立した法律に基づいています。

一方、告示45号は、憲法上認められている職業の自由を侵害する規制を文科省が勝手に決めたものであり、法律上の根拠はありません。

したがって、どちらが根拠のある対応であるかは明らかです。

石破茂が4条件成立に大きく寄与したソース

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もちろん、4条件は閣議決定されたものであり、石破茂個人が勝手に決めたものではありません。

しかし、石破4条件と言われているのは、石破茂がその成立に大きな寄与をしたからです。

平成27年度第2回理事会平成27年6月22日

日本獣医師政治連盟の活動報告
(1)北村日本獣医師政治連盟委員長から次のとおり説明がなされた.
ー省略ー
内閣府では,4 月末から 6 月 5 日までの間,成長戦略特区の公募をしていたが,愛媛県今治市に新設を望む岡山の学校法人が文部科学大臣にも説明をし,内閣府に申請したという.藏内会長は麻生財務大臣,下村文部科学大臣へ,担当である石破大臣へは私が折衝を続けている.内閣府では,方針の最終案を公表していないが,藏内会長の強い政治力等により,財務省の担当主計官が文部科学省担当官へ対応のあり方を指摘した.石破大臣は,ライフサイエンスなどは獣医師が新たに対応すべき分野なのか,その需要があるのか,これら基礎データが示されなければ検討できないとしている.しかし,新設希望側は,5~ 10 年間の計画でデータを作り上げることも視野に置きながら,藏内会長は麻生大臣,下村大臣に,私は石破大臣と折衝をし,一つ大きな壁を作っていただいている状況である.

平成27年度全国獣医師会事務・事業推進会議平成27年7月10日(金)

3 日本獣医師政治連盟活動報告

省略

石破担当大臣と相談をした結果,最終的に,「既存の大学・学部で対応が困難な場合」という文言を入れていただきました.

平成27年度第4回理事会平成27年9月10日(木)

なお,昨日,藏内会長とともに石破茂地方創生大臣と 2 時間にわたり意見交換をする機会を得た.その際,大臣から今回の成長戦略における大学,学部の新設の条件については,大変苦慮したが,練りに練って誰がどのような形でも現実的に参入は困難という文言にした旨お聞きした.

現在、獣医師会の理事会会議録は、なぜか平成26年度のものまでしか現在はUPされていません。

よっぽど後ろ暗いものがあったのでしょうね。

石破茂の主観としては4条件は規制強化のためのもの

石破茂は平成27年9月9日の発言(「練りに練って…の部分」)について否定しています。

しかし、そうであったとしても、①彼が4条件成立に関与したこと、②4条件の存在を立証しなければ獣医学部の新設はできないと理解していたこと、③他に4条件成立を主導した者の指摘は存在しないことは明らかですから、参入を困難にするという意図を持って4条件成立に向けて行為していたのは間違いありません。

190 衆議院 地方創生に関する特別委員会 13号 平成28年04月26日

○石破国務大臣

(前略)今文科省からお答えを申し上げましたように、平成二十七年六月三十日に閣議決定がございます。「日本再興戦略」改訂二〇一五というものでございます。そこは今文科省が申し上げたとおりの内容ということになっておりまして、これをきちんと満たしたかどうかということはやはりきちんと検証されてしかるべきであろうというふうに思っております。
 閣議決定でございますので、この趣旨は極めて重いものでありますから、実際にそれでも必要だということになれば、それはそれを拒むものではございません。この閣議決定の意味をよく理解しながら私どもは今後進めてまいりたいと思っております。

一連の発言からは、石破茂が4条件の存在を立証しなければ獣医学部の新設はできないと理解していたことは明らかです

石破茂らの主観と現実の運用

文科省、獣医師会、石破茂。

この三者は国家戦略特区の基本方針を無視していたために、4条件の(不存在の)挙証責任が文科省にあるということに気付かなかったのでしょう。

石破らの主観としては、4条件はそれらの事情が存在することの挙証責任が申請者側にある、という認識だった。

しかし、現実には4条件に示される事情が不存在であることの挙証責任が規制省庁にあった。

この食い違いが加計学園が運営する岡山理科大学獣医学部の設置認可にかかわる騒動の原因でした。

このように、石破派である現法務大臣の山下貴司議員も、4条件は「内閣全体で(岩盤規制に)穴を開けた」ものであると明言しています。

これは自民党総裁選の最中のツイートですが、単に石破茂を擁護するなどという目的に出たものではなく、現実の4条件の運用を端的に示したものであると言えます。

まとめ:実は岩盤規制突破に貢献していた4条件

  1. 「石破4条件」そのものが悪い
  2. 「石破4条件」の存在の挙証責任を申請者(今治市)に負わせる理解が悪い

上記のうち、2番が正確な理解です。

そして、石破茂・文科省・獣医師会は、規制強化をしたつもりで、その真逆の効果になってしまっていたことに気付かなかった、という大変お恥ずかしい話だったのです(笑)

振り返ってみると、まさに「挙証責任論」こそがこの問題を解く本質だったと言えます。元検察官や弁護士グループが騒ぎ立てたところで、国家戦略特区の基本方針を意図的に無視しているので全く説得力に欠けます。

文科省告示45号は生きています。

このままでは国家戦略特区指定を受けなければ、平成31年以降は認可申請が受けつけられないことになります。その都度新たな告示を出すのも面倒です。

文科省はいいかげんに平成15年告示45号の問題部分を廃止していただきたいと思います。

以上

加計学園に愛媛県が求める「説明責任」は本来の説明責任とは別種類である

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加計学園は説明責任を果たせ」

このような報道がなされており、マスメディアの読者・視聴者もそう思っている者が居ます。

だがちょっと待ってほしい。

その「説明責任」、意味分かって使っていますか?

国民主権に由来する国家の説明責任

上記で詳しく書いてますが、元々の「説明責任」は国家・政府の側に対する国民の要求に対応する言葉です。

政府の説明責任は、憲法が国民主権の立場であることから導かれる政府の責任であると言われます。

まず、国家は国民に対して情報を公開する「必要」があります。

なぜなら、国民は国家統治のために選挙で国会議員を選びますが、このときに行政が行ってきた諸活動や内閣の政策を判断できる情報が公開されなければ、候補者の誰が国会議員としてふさわしいのかの判断ができないからです。

国民の信を得て職にあたっている国会議員によって構成される「議院」(議員ではない)の国政調査権(憲法62条)も、この国民主権を確保・行使するためにあると言う事ができます。

では、政府が国民に情報を開示する必要があるとしてもその「根拠」はどこから導かれるのか?

現在の通説と政府見解は、国民と政府の関係を信託関係と捉え、国民から主権行使の信託を受けた政府が信託上の義務として説明責任を負うと考えられています。

これはアメリカの政治信託理論を参考にしているとも言われます。

行政法学者の塩野宏氏の見解(第136回国会内閣委員会第7号平成八年五月十六日)が参考になります。

これが一般的な見解であることの傍証として、「説明責任 国民主権」で国会議事録で検索をかけるとそれなりにヒットします。
ちなみに、内閣の国会に対する政治責任を定めた憲法66条3項が説明責任の根拠になるという説もあるようですが、「説明責任 憲法66条」で国会議事録に検索をかけてもヒットは0でした。文言上も、説明責任を導くにはほど遠いと思います。間違いと言い切るのはやや危険だと思いますが、おそらくあまり受け入れられていない説か、議論の途中で淘汰された見解かと思われます。

情報公開法に規定される説明責任の根拠

こうした議論を踏まえて制定されたのが情報公開法1条の目的規定です。

第一条 この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。

このように「政府の有するその諸活動」が対象となっています。

注意すべきは、国会での追及の際に必ずしも情報公開法が適用されるのではないということ。議院の国政調査権に基づく証人喚問等の発動は議決で可能というだけであり、それ以外に法的な要件があるというものではありません。
※資料提出要求等では簡便な手続きで行われている慣習がある点につき、参議院委員会先例録281を参照。

そして、「国民の的確な理解と批判の下」とありますが、これは目的でもあり、「前提」でもあると考えるべきでしょう。前提とはすなわち、いいかげんな根拠や必要性の説明だけで、何でもかんでも情報を公開しなければならないということにはならないということです。

情報公開請求は国民主権の根幹をなす選挙・投票に資するのであるから、それ自体「国民の政治参加」の一環であると考えられます。情報公開請求の根拠を導いたのが政治信託理論であったとすれば、一度は信託によって国民主権の行使を政府に投げたものを一部自己の側に引き戻すのが情報公開請求と捉えることが可能です。そのような「国民の政治参加」である以上、その行為もまた(一定程度は)的確でなければならないとするのは法理論上も肯定できると思われます。

地方自治の本旨に由来する地方自治体の説明責任

法体系上、地方自治体は政府・国家とは別個の主体として規定されています。

地方自治体の説明責任についても各自治体の情報公開条例に規定があります。

宮城県情報公開条例

(目的)
第1条 この条例は,地方自治の本旨にのっとり,県民の知る権利を尊重し,行政文書の開示を請求する権利及び県の保有する情報の公開の総合的な推進に関して必要な事項を定めることにより,県政運営の透明性の一層の向上を図り,もって県の有するその諸活動を説明する責務が全うされるようにするとともに,県民による県政の監視と参加の充実を推進し,及び県政に対する県民の理解と信頼を確保し,公正で開かれた県政の発展に寄与することを目的とする。

地方自治体に説明を求める場合、それは「地方自治の本旨」が根拠となります。

条文の書きぶりも、なんとなく情報公開法と似ているというのが分かると思います。

政府の説明責任の「地方自治体バージョン」と言えるでしょう。

こちらも「県民による県政の監視と参加の充実」とあるように、県民が「監視」「参加」をすることに資するために情報公開条例があるということです。

この「監視」「参加」がいいかげんなものであっていいはずがありません。

なお、宮城県は注釈も公開しています。

岡山理科大学獣医学部を運営する加計学園の「説明責任」

加計学園は政府や国家機関ではありません。

単なる「一私人」(民間法人)です。

したがって、上述で指摘したような意味での説明責任を負うハズがありません。

ただし、「説明責任」と表現することが間違いであるわけではありません。

加計学園が愛媛県との関係で言われている説明責任とは、『加計学園は国家戦略特区申請にあたって愛媛県に協力してもらった関係にある。そのような関係の中で、渡辺常務が愛媛県の担当者に話した内容が誤解を招くものだったので、なぜそういう事を言ったのか動機を明確にしてよ』という素朴な意味での説明責任に過ぎないのです。

基本的には赤の他人にお金の使い方を説明する必要も根拠も無いですが(税の申告等の場合には別の話)、配偶者に対しては使途を説明する責任はある、といったような日常的な感覚で言うところの説明責任とほぼ一緒と言えるでしょう。

税金が投入されているから直ちに説明責任があるのか?

「獣医学部の設置認可は省庁、つまり国民の税金によって行われるし、国家戦略特区認定は国民の代表たる内閣総理大臣が決定する事項だから、国民主権の話だ!」

⇒『加計学園は省庁でもなければ内閣総理大臣でもありません、以上』

「岡山理科大学獣医学部には愛媛県の協力があって設立した支那、今治市から補助金が出ている、つまり住民の税金が投入されているから、地方自治の話だ!」

⇒「加計学園は愛媛県でもなければ今治市でもありません、以上」

これで終わる話です。

『「省庁や内閣総理大臣、自治体が関係して受益を受けたある主体」という属性を持つ者であれば私人であっても国民主権や地方自治に基づく説明責任があるはずだ』

こんなことを言うと、おそらくおよそ世の中の私人全員が記者会見を開いて国民全体との関係で説明する責任があるということになりますね。

たとえば、「子ども手当」によって得たお金の使い道や、その金額の子ども手当を得る根拠となっている情報を赤の他人が「地方自治の話だから俺にも説明しろ!」などと言うのはおかしな話です。

これは自治体からその家庭に対して「あなたが申告した子ども手当の基本情報に疑義があるので説明してください」と言うのは正当です。これは地方自治の話でもなんでもありません。素朴な意味での説明責任です。

同じように、愛媛県から加計学園に対して要求されている「説明責任」は、そのような二者間の関係で成立している説明責任に過ぎません。

それを国会議員や全国民が殊更に取り上げて問題視することはまったく理解不能です。

そして、先にも書きましたが、いいかげんな根拠で説明を求めるというのは、日常的な感覚からしてもおかしいということは常識でしょう。

加計学園の説明責任は「安倍総理との面会」ではない

少し前の報道状況では「首相案件」という言葉がクローズアップされていましたが、「なぜ愛媛県の担当者が首相案件という言葉を使ったメモが残っているのか?」という疑問が6月の加計学園の記者会見で明らかになりました。

それは「渡辺常務が安倍総理の名前を出したから」になります。

だからこそ加計学園に説明責任が生じています。

加計学園が愛媛県に果たすべき説明責任とは何か?

これをしっかりと枠づけているメディアはあったでしょうか?

【加計学園の渡辺常務が、安倍総理の名前を持ち出して総理の意向が背後にあると匂わせることで国家戦略特区認可申請、獣医学部設置認可申請を通すことを有利に進めようとしたことの動機・理由は何なのか?】

これが加計学園が愛媛県に負っている説明責任です。

決して「安倍総理との面会について」ではありません。

そもそも面会の事実があったとしても認可過程の違法事実ではありません。

文科省の違法行政が「総理の意向」の原因か

大学、短期大学、高等専門学校等の設置の際の入学定員の取扱い等に係る基準】 
魚拓:http://archive.is/9DVVo

この【文科省告示45号1条2号】が獣医学部設置認可申請を阻んできた違法行政です。※最新のものでは1条4号がこれに該当。


医師、歯科医師、獣医師、教員及び船舶職員の養成に係る大学等の設置又は収容定員増でないこと。

これは要するに、獣医学部の設置認可申請は、その中身を審査するまでもなく門前払いするという規定です。

長年に渡って設置認可が拒まれてきており、更に平成15年にこの告示が作られ、告示に沿って行政が動いていたため、愛媛県側も腰が重かったという現実があります。個人的な推測になりますが、渡辺常務が安倍総理の意向を匂わせた背景には、「そうまでしないと行政が動かない」現実があったのだろうと思われます。※これは告示45号による認可行政という事実に基づく推測です。

文科省告示45号と国家戦略特区の挙証責任

国家戦略特区があることによって、申請を受け付けることが可能になり、さらに認可の可否判断にあたっては挙証責任が省庁側に転換されました。

「挙証責任が省庁側に転換された」 というとなんだか分かりませんが

要するに省庁の側が合理的な理由を示さなければ、申請を認可することになるのがデフォルトの対応になるということです。

もちろん、申請者側も要件を満たすことを説明しますが、それは挙証責任が最初から申請者に課されているという意味ではありません。
参考

まとめ:「説明責任」を混同して告示45号を誤魔化すな

「説明責任」 には国家主権に基づくもの、地方自治に基づくもの、素朴な意味でのものがあることを示しました。

これらを混同させて、さも加計学園に法的な義務があるかのように言及している者はまったく信用できません。

そして、「加計学園問題」といわれているものの元凶は文部科学省告示45号とそれを放置してきた歴代行政にあるのであって、決して「安倍政権」のみの問題ではありません。

石破茂も、「石破4条件」と言われていましたが、まったく「ラスボス」でもなんでもありません。

国会には岩盤規制と既得権益の問題に焦点を当てた質疑を求めたいですね。

以上

政府専用機に加計孝太郎理事長が同行していたのは問題か?

政府専用機

出典:航空自衛隊ホームページ:http://www.mod.go.jp/asdf/special/download/index.html

政府専用機に加計孝太郎氏が同行していたことについて報道があります。

加計理事長、政府専用機で首相の外遊に同行していた - 社会 : 日刊スポーツ魚拓:http://archive.is/9v7LM

結論から言ってこれは名古屋大学や立命館大学、その他数十社の企業の者も同時に同行していたときの話なのですが、なぜかこれを問題視する輩がいます。

この話題がどう騒がれているのかということと、どう問題ではないのかについて整理していきます。

「加計孝太郎理事長が政府専用機に同行」で騒ぐ輩

魚拓:http://archive.is/Qx83H
上記の日刊スポーツの記事を引用している町山氏はフォロワー26万人なので影響力は高いです。

魚拓:http://archive.is/8IA7t
同じく日刊スポーツの記事を引用しているのは朝日新聞記者の鮫島浩。日常的に変なツイートをすることで有名です。

こういったアカウントにつられて妄想するアカウントも後を絶ちません。

魚拓:http://archive.is/A2HGV

さて、加計孝太郎理事長が同行したという政府専用機、どういう経緯だったのでしょうか?

希望する関係者が同行し、運賃を支払っている

政府専用機加計理事長同行

日刊スポーツ:https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/1835409.html

日刊スポーツhttp://archive.is/9v7LM

外務省側は、一部の首相の外国訪問では「希望する(企業)関係者の方に、経済ミッションとして同行してもらっている」と説明した上で、「加計学園はミャンマーに支局を持ち、留学生の受け入れを積極的に進めていたことから同行してもらった」と述べた。「所定の運賃を支払ってもらった上で、専用機に乗ってもらった」とも話した。

彼らが引用している日刊スポーツの記事内に、ちゃんと書いてあります。

これを違法ではないか?と疑問に思うのはどういう神経をしているのでしょうか? 

日刊スポーツも、なぜこれをわざわざ記事にしたのでしょうか?

そういえばwikiでは主要株主として朝日新聞社が14%の株式を保有していると書いてありますが。

政府専用機への民間人同行の法的根拠の答弁書

平成二十九年三月二十八日付の参議院議員有田芳生君提出日本政府専用機に関する質問に対する答弁書において、以下回答しています。

政府専用機による輸送については、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八十四条の四又は第百条の五の規定に基づき実施しており

元の質問はこちらですが、同行記者が搭乗することは従前からあるようであり、それ以外の者が政府専用機に同行することはあるのか?という旨の質問内容でした。

自衛隊法の規定は以下です。

(在外邦人等の輸送)
第八十四条の四 防衛大臣は、外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があつた場合において、当該輸送において予想される危険及びこれを避けるための方策について外務大臣と協議し、当該輸送を安全に実施することができると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる。この場合において、防衛大臣は、外務大臣から当該緊急事態に際して生命若しくは身体の保護を要する外国人として同乗させることを依頼された者、当該外国との連絡調整その他の当該輸送の実施に伴い必要となる措置をとらせるため当該輸送の職務に従事する自衛官に同行させる必要があると認められる者又は当該邦人若しくは当該外国人の家族その他の関係者で当該邦人若しくは当該外国人に早期に面会させ、若しくは同行させることが適当であると認められる者を同乗させることができる。
以下略

(国賓等の輸送)
第百条の五 防衛大臣は、国の機関から依頼があつた場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、航空機による国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者(次項において「国賓等」という。)の輸送を行うことができる。
2 自衛隊は、国賓等の輸送の用に主として供するための航空機を保有することができる。

この場合は自衛隊法100条の5の規定に基づいていたのでしょう。

なお、国賓等の範囲は自衛隊法施行令に規定されています。

希望する関係者が政府専用機に搭乗と政府答弁

日刊スポーツの記事は平成29年06月05日の決算行政監視委員会の政府答弁を元にしています。

193 衆議院 決算行政監視委員会 6号 平成29年06月05日

○志水政府参考人 お答え申し上げます。
 加計孝太郎氏は、平成二十五年、二〇一三年五月の安倍総理のミャンマー訪問時に同行したと承知しております。
 総理の一部外国訪問におきましては、訪問先の国への協力の効果を上げるために、民間企業、大学、自治体等に幅広く声かけを行い、希望する関係者の方に経済ミッションとして御同行いただいております。
 さきに申し上げましたミャンマー訪問時におきましても、ミャンマーへの協力に関心を持つ方に御同行いただいたところであります。
 加計学園は、ミャンマーに学園の支局を設置し、ミャンマーから留学生受け入れに努めるなど、ミャンマーとの協力を積極的に進めていたことから、加計孝太郎氏にも御同行いただいたと承知しております。(宮崎(岳)委員「専用機」と呼ぶ)
 なお、ミャンマーにおきましては、ヤンゴンに各自が集合し、そこから首都ネピドーまで団体としての行動になりましたが、総理日程に同行する必要があり、かつ団員の安全に万全を期することが不可欠であったため、ヤンゴンとネピドーとの間に限り、主要参加者全員に所定の運賃をお支払いいただいた上で政府専用機に御搭乗いただいたと承知しております。

国賓である内閣総理大臣が外国訪問する際に「同行する者」として搭乗していたということです。この際には幅広く声掛けを事前に行っており、希望者が参加したということです。

記者ですら同行で搭乗できるのですから、それ以外の者が運賃を支払って搭乗することが違法・不当なわけがありません。

なお、「国賓等」には民間企業、大学、自治体等の人間は該当しませんが、政府専用機に国賓等が搭乗する際に「同行する者」としての搭乗なので問題ありません。

例えば天皇陛下が搭乗するが、スタッフや宮内庁の職員が搭乗できないというのでは意味不明ですからね。

「加計孝太郎理事長だけ優遇」はフェイク

「加計学園理事長だけ優遇している」というのは明確にデマです。

どこから入手したのか知りませんが、政府専用機に同行して搭乗した関係者のリストが公開されています。

【14.02.11】安倍総理が外遊するとき同行した企業・団体リスト:日本共産党前衆議院議員 佐々木憲昭オフィシャルサイト

https://web.archive.org/web/20181014092355/http://kensho.jcpweb.net/hunsenki/140211-105721.html

http://kensho.jcpweb.net/hunsenki/140211-105721.html

大学関係者だけでも他に名古屋大学や立命館アジア太平洋大学が居ましたし、企業も含めて43もの主体が参加しています。

なぜ「加計優遇」と騒ぎ立てるのか意味不明です。

2017年の記事を2018年に再度拡散する謎

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日刊スポーツ:https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/1835409.html

実はこの話、2017年の話なんですよね。

f:id:Nathannate:20181014183859p:plain

1年以上前の話をわざわざ持ち出すなんて。しかも全く問題ないものを。

どれだけ岡山理科大学獣医学部が成功すると困る連中が多いのだろう?と思います。

まとめ:加計学園への執拗な嫌がらせは誰が行っているか

  1. 政府専用機は希望者が「同行」することで利用している
  2. 利用の際には運賃を支払ってもらっている
  3. 特定の企業・団体が占有的に政府専用機を利用しているわけではない
  4. 自衛隊法に根拠がある

これだけの事実があるのに問題視するなんて、よっぽど加計学園や安倍総理はクリーンなんだなとしか思えません。

以上

国立市マンション訴訟事件の上原公子の妨害行為:小池百合子都知事の先例か

国立市マンション訴訟事件

国立市マンション訴訟とは、①平成11年~13年に、当時の国立市長であった上原公子が景観利益を保護するとの名目の下、明和地所が建設するマンションの高層化を防ぐために行った種々の行為が違法とされ、②さらに市長であった上原個人が賠償責任を負うことになった事案です。

ここでは裁判所で認定された上原公子が行った「妨害行為」がどういうものだったのかを紹介します。

明和地所と上原公子のその後

先に顛末をざっくりお伝えします。

明和地所はマンションが係争物件となって運用できなくなった結果、現実に被った被害額は数十億円とも言われていました。

その中で明和地所は4億円の損害賠償請求を国立市に行い平成20年3月11日に最高裁で勝訴しますが、遅延損害金含めて3000万円余しか損害が認定されませんでした。

しかし、明和地所はこの3000万円余の支払を受けた後に、同額を国立市に寄附します。(実はこれに先立って国立市から明和地所に債権放棄の打診があったが拒否している)

明和地所は「訴訟の目的は金銭ではなく会社の活動の正当性を明らかにすること…寄付は教育、福祉の施策に充てて欲しい」と取材で述べました。

この後に住民から国立市に対して、支払った金額を上原公子に「請求することを求める請求」を申立てました(住民の税金からの出費のため求償権を行使しろということ)

東京地裁で国立市が敗訴し、平成23年5月30日に市長交代を機に控訴取り下げをしたことで判決が確定しました。これで国立市は上原個人に損害賠償請求をする義務が発生しました。

この後、国立市議会で国立市の上原への債権を放棄する旨の議案が可決され、東京地裁はこの状態で請求を続けるのは「信義則に反する」として国立市が敗訴しました。

ところが、選挙で議会議員の構成が変ったことで債権放棄はしないということになり、平成27年12月22日の東京高裁判決で国立市が勝訴し、これが確定判決となりました。

上原公子に課せられた賠償金は遅延損害金も含めて約4500万円に上りましたが、カンパが集まったことで全額返済されています。

上原公子の妨害行為

東京高等裁判所平成26年(ネ)第5388号 損害賠償請求控訴事件 平成27年12月22日から抜粋します。固有名詞部分は改変しています。

第一行為~第四行為が認定されています。

第一行為:内部情報暴露により反対運動のきっかけを作った

  1. いまだ業界の噂程度にすぎなかった段階で、内部的な情報である明和地所の建築計画をマンション建設に反対する住民集会に集まった不特定多数の前でその事実を話した
  2. その目的はマンション建設を妨害するために,これに反対する住民運動が起こることを企図するものであった
  3. 上原市長のこの発言が反対運動のきっかけとなった

「行政の公平性に反するものである上,市長の本来の職務を逸脱したものであって,手段としての社会的相当性を欠くもの」として違法と認定されました。

内部情報を外部に漏らしている時点で相当ヤバいということを認識しないといけません。

第二行為:執拗な行政指導

  1. 上原市長は明和地所に対して「改正予定の新しい指導要綱に基づく事前協議を行う」との文書を送付した(行政指導)
  2. 明和地所がこれに従わないため、建築予定マンションの高さを低くさせるため、事後法的な条例制定で規制しようとした
  3. 上原市長は、条例を早期に成立させるため,平成12年1月28日と同月31日に臨時市議会を招集。平成12年1月31日の国立市議会において議長及び副議長が開会宣言をしない中、出席議員において臨時議長により開会を宣言し、選出された仮議長によって議事を進行し、本件条例の条例案を可決し、仮議長において本件条例を被控訴人に送付した

明和地所は条例改正前の法令に従って建築確認を得ていたのに、規制条例を後から作って狙い撃ち規制をかけようとしたということです。

しかし、この条例制定自体は都市計画法に基づき、市長ではなく議会の議決によるものであったため手続的瑕疵は無く、職務上の義務違反となるものではないとされました。

ただ、東京高裁は行政指導によって執拗にマンション建築の進行をやめるよう求めたことは職務上の義務違反となる余地があったとしています。

第三行為:議会での誤った判例理解の答弁

東京高等裁判所平成26年(ネ)第5388号 損害賠償請求控訴事件 平成27年12月22日 ※固有名詞は改変

上原元市長は、平成13年3月6日,国立市議会第1回定例会における一般質問に対する答弁として,平成12年の東京高裁決定を根拠に,本件建物が本件条例に違反する違法なものである旨の認識を述べ,同月29日の同定例会においても同旨の答弁をしたこと

ここで問題になっている東京高裁決定の判断は「建築禁止仮処分の申立てを却下すべきであるとした保全訴訟における下級審の決定の理由中の判断にすぎず」と言われている通り、一般的に通用する規範となる判示部分ではなく、平成12年のまったく別の事案におけるその事案限りの判断理由でしかなかったということです。

そして、そうであることは市長の立場にある者であるならば容易に分かるのであって、「マンション建設が違法であるとする司法判断がされていることを注釈なしに引用してこれが違法な建築物であるとの印象を与えることを意図して答弁したものと認めるのが相当である」とされました。

第四行為:妨害行為を要請・公言し、報道される

  1. 上原市長は平成11年12月27日、テレビ朝日の報道番組におけるインタビューにおいて、マンションを「建てさせないための手段を,市が持ってるものを使っていろいろ講じていく」「例えば下水をつながないとか。ま,可能性としてはそういうこと考えられますけど」などと発言し、これがテレビで放映された
  2. 上原市長は平成12年12月27日、建築指導事務所長に対し、本件建物(マンション)に関する平成12年の東京高裁決定を尊重した指導を求める旨の文書を送付した
  3. 上原市長は、東京都知事に対し、住民らが建築指導事務所長らを被告として東京地方裁判所に提起した本件建物の除去命令等を求める行政事件訴訟の結論が出るまで、本件建物のうち、高さが20mを超える部分について、電気及びガス供給申込み承諾の保留を電気事業者及びガス事業者に要請すること、並びに控訴人が受託している水道の供給について、上記部分についての給水の申込みの承諾の保留を承認するよう働き掛け、このことが翌日の新聞で報道された
  4. 上原市長は、平成13年12月20日、マンション建設に反対する住民らと共に東京都多摩西部建築指導事務所を訪れ、建築指導事務所長に対し、本件建物に係る検査済証の交付について抗議をし、このことが新聞で報道された

マンションを購入しようと検討している明和地所の顧客が「ライフラインが繋がれないおそれがある」という情報を聞いたらどうなるか?

裁判所はこの影響が営業妨害であるとして上記行為を不法行為であると認定しました。

市長権限とまったく関係の無い行為まで市長の名で行って圧力をかけたり、適法に交付された検査済証に抗議したりするなど、およそ考えられない行動ですね。

明和地所の寄附行為を利用した上原公子の主張

その他、上原元市長は一審の東京地方裁判所平成23年(ワ)第40981号 損害賠償請求事件において、「国立市が明和地所から寄付を受けたから市の損害は補填されており、損益相殺が認められるべきである」という旨の主張をしていました。

法的主張としては当然行う主張でしょうが、普通に見ると明和地所の好意を利用した「ゲスの極み」でしかないと思います。

東京高裁はこの主張も退けています。

東京高等裁判所平成26年(ネ)第5388号 損害賠償請求控訴事件平成27年12月22日 ※固有名詞は改変

本件寄附は,国立市による本件損害賠償金の支払を契機としてされたものであり,本件損害賠償金(遅延損害金を含む。)と同額のものではある。しかし,明和地所は,国立市からの債権放棄の打診に対し,これを明示的に拒否し,本件損害賠償金を受領したことを前提とした上で,改めて,国立市民のための教育・福祉の施策の充実に充てて欲しい旨の寄付金申出書を提出して本件寄附をしていること,国立市側も,本件損害賠償金の返還ではなく,一般寄附として受け入れたものであることに照らすと,本件寄附をもって,国立市の本件損害賠償金の填補とみることは困難である。また,本件寄附がされた経緯に照らし,本件寄附は明和地所が本件建物建築に関連した一連の紛争により低下した企業イメージを回復するための営業判断としてされたことがうかがわれ,本件損害賠償金の支出による国立市の損失と本件寄附との間に,いわゆる損益相殺を相当とする因果関係があるともいうことはできない。そうすると,本件求償権は,本件寄附によって消滅するものではなく,損害填補又は損益相殺によって本件求償権が消滅している旨の上原元市長の主張は採用することができない。

冒頭のざっくりとした顛末でも触れましたが、仮に国立市からの債権放棄の打診を明和地所が承諾していたら、損害は発生していないことになるので、結果は変っていたことでしょう。

小池百合子東京都知事はどうなるか?

現在、小池百合子東京都知事も、豊洲移転延期判断に関して、生田よしかつさんらが提起した住民訴訟の対象になっています。

こちらは東京都が小池個人に求償権行使をしているのではなく、住民が直接、小池個人に請求するようになっているようです(詳しいことが分かったら追記します)

生田さんらは豊洲市場の運営費のみを請求していましたが、今後は(本来不要であるはずだった)補修費等も請求する予定であると発言しています。その総額は数十億円をくだりません。

上原公子の事案と比べると、どうしても金額以外は「見劣り」する小池百合子の豊洲移転延期判断ですが、首長としての行為に対して個人が損害賠償責任を負った事例として参考になるのは間違いありません。

以上 

加計学園の岡山理科大学獣医学部の図書費用水増し疑惑について

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黒川敦彦らの「今治加計獣医学部問題を考える会」が、岡山理科大学獣医学部を運営する加計学園を刑事告発する「予定」だと言っています。

加計学園:理事長と学園を詐欺容疑で刑事告発へ 市民団体 - 毎日新聞

加計学園側は事実無根であるとして不正を否定しています。

黒川らの主張は刑事告発をするには不十分であり不自然なところがあるので指摘します。

また、テレビ朝日は黒川らの主張を全面的に採用してニュースを報道している点も紹介します。

黒川敦彦らの主張:「本代が水増しされている」

加計図書費水増し

今治加計獣医学部問題を考える会

魚拓:http://archive.is/5DYAE

以下の図に示すように、加計学園が平成29年度の図書費に9928万円を見積もって補助金を受けているのは事実です。

黒川らは、独自の計算方法で図書の平均額を算出し、その総数をかけた数値が3417万円である、だから水増し請求である、という主張です。 

加計学園の岡山理科大学獣医学部の図書費見積もり

加計学園の図書費見積もり

http://www.dsecchi.mext.go.jp/1710nsecchi/06kake.pdf

文部科学省のサイトでは加計学園が岡山理科大学獣医学部の諸経費を見積もったものがあります。

このうち、黒川らが問題視しているのは「設備経費ー設備ー図書」となっている項目の平成29年度の金額9928万円についてです。

しかし、この「図書」項目は「図書の整備に要する経費」として計上されています。

「図書費」とは「図書の整備に要する経費」

加計図書費水増し請求というデマ

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/09/26/1334531_1_1.pdf

これは単なる「図書購入費」のみを指すものであるとは一般的に考えられません

「整備」に要する「経費」ですからね。

「校地の整備に要する経費」が学校敷地の購入費のみを指すでしょうか?

「校舎の整備に要する経費」が学校の建物の購入・建築費用のみを指すでしょうか?

図書館で本を借りた方なら、誰もが背表紙や裏表紙にラべルやバーコードが貼り付けられているのを見たことがあるハズです。たとえば以下の画像です。

加計図書費水増し請求というデマ

当然、この処理をするということは、データベースに登録する必要があります。

よって、このような作業に要する費用も含まれていると考えられます。

他にも図書に要する費用はあると思われます。

f:id:Nathannate:20181013101402j:plain

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/09/26/1334531_4_1.pdf

形式上、経費の見積もりを記入する様式の記載例では図書欄は「〇〇冊」という記述の仕方になっています。

しかし、それは図書の量に応じて上記のような作業も増えていくことが分かるからであり、「〇〇冊」という書き方になっているからといって直ちに図書購入費用のみを指すとは到底思えません。

こんなことはまともな常識があれば思いつくハズですが、黒川らはなぜか「図書購入費」のみを計算して「それとズレているから水増しである」と断定しているのですが、不思議で仕方がありません。

自動車を購入したことはありますか?

自動車を購入したことがある方なら理解できると思いますが、「自動車の車体の価格」だけでは自動車は買えませんよね?

自動車の車体本体価格に加えて、車検費、整備費、ディーラー登録費、自動車税、自動車重量税…etc…を含めたものが自動車の購入価格の全体を構成します。

黒川らが言っているのは、300万円の自動車を購入している者に対して「車体の市場価格は200万円だから100万円が水増しされている!」と言っているようなものです。

テレビ朝日がモーニングショーで「黒川説」に基づく放送

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ちなみに、このニュース番組をyoutubeに丸々UPしているのは、立憲民主党の福田つよし議員。許可は取っているのだろうとは思いますが…

魚拓:http://archive.is/AdWwq

テレビ朝日のモーニングショーでは10分以上にわたって「黒川説」を紹介し、更に図書が少ないことを取り上げて問題視しています。

岡山理科大学獣医学部の図書数は1学部の開学初年度のもの

テレビ朝日の番組内では、加計学園の図書が8700冊「しか」無い事をも問題視していました。

比較として帯広畜産大学の21万冊や日本獣医生命科学大学の9万4000冊を取り上げていました。

しかし、帯広畜産大学は約70年、日本獣医生命科学大学は前身も含めれば約120年の歴史があります。

帯広畜産大学は獣医学部以外の農業系の学部もあります。

こうした比較は意味がありません。

しかも加計学園は来年には1万2000冊、6年後には10万冊を揃える予定であるとしています。

現状が不十分であるというのはその通りだと言えますが、わざわざ全国ネットで問題視するのはなぜでしょうか?

また、「獣医学部に無関係な本も置かれている」と言っていますが、そんなものどこの大学の図書館にもありますよ。オープンアクセスになっている大学図書館を利用してみれば直ぐに分かる話です。

まとめ:岡山理科大学獣医学部の図書費水増し疑惑は根拠薄弱

  1. 加計学園が文科省に申請した図書費とは「図書の整備に要する経費」である
  2. 単に「図書購入費」のみを指すとは常識から言って到底考えられない
  3. 黒川らは図書購入費のみを算出し、それとの乖離のみを持って水増しと断定している
  4. テレビ朝日は黒川らの主張を取り上げるが検証していない
  5. 黒川らは刑事告発は未だ行っておらず、「予定」だと言っているに過ぎない

なぜ根拠薄弱であることが濃厚である主張をテレビ朝日は取り上げたのか?

なぜ告発すらしていない段階でテレビ朝日は取り上げたのか?

疑惑は深まるばかりです。

以上

あたらしい党:音喜多駿(おときたしゅん)の東京都議会での業績を確認しよう

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コラじゃありません。

元都民ファーストの会の東京都議会議員のおときた駿都議が新党を設立しました。

さらには東京都北区の区長選挙について出馬の要請があると言います。
※出馬の「意向を固めた」ということではないようです。

これを機に、おときた都議の都議会での所業を振り返りましょう。

元都民ファーストの会の音喜多駿:「土壌Xデー」という妄想

水面下交渉の新事実「土壌Xday」。安全・安心の政治利用は、浜渦・石原都政から始まっていたのでは | 東京都議会議員 おときた駿 公式サイト

都議会の百条委員会が紛糾したのはおときた都議のこの質疑が大きいです。

東京都議会豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会速記録第五号 2017年3月11日(土)

おときた駿
「東京ガス側から提出された資料から、我々都民ファーストの会は驚くべき新たな事実を発見いたしました。
それは、浜渦副知事が都の環境確保条例と国の土壌汚染対策法の成立を、ある意味では利用して東京ガスに圧迫あるいは脅迫ともとれる交渉を行って、強引に土地の売却を承諾させていた可能性を示唆するものです。」

「東京都と東京ガスの交渉において、都側の赤星理事は、浜渦副知事からの指示として、土壌汚染 X デー、あるいは、 Xデーという単語を用いて、この日、これは土壌Xデーですね、を迎えれば、土壌問題が噴出し、東京ガスが所有する土地の価格が下落する。結論さえ出せば、石原知事が安全宣言で救済するから、早急に結論を出すように、などと伝えている様子が克明に記録をされています。」

これに対して関係者はそのような事実を否定しました。

また、音喜多都議が「東京ガスから提出された資料」と言っているものは一体何なのかについては河野ゆうき議員が指摘しています。

豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会速記録第八号平成二十九年三月十九日(日曜日)

○河野委員

「Xデー」・・・「これは東京ガスの HP に載っている資料で・・・・ X デーというのは、私はどう見ても、この東京ガスが自分たちでこれからやろうとする、要するに東京都の環境確保条例を先取りして、これから自主的に土壌調査結果及び汚染土壌対策を発表する日のことをいっていると思います。
・・・土壌対策法・・・あたかもそれによって土地の値段が下落して、それを使っておどしているかのようなストーリーは、私にとってはまるでこれは小説でありました。
・・・このメモは、東京ガスの提出の段ボールの中に入っておりました。しかし、いつ、どこで、誰が出席して、誰が書いたのか、出どころも不明です。ほかの東京ガスの書類とは違い、異質なものでした。・・・・このメモを、ことさら取り上げるようなメモではないと。」

土壌Xデーという音喜多都議の見立て(妄想)については、同じく都議の川松真一郎氏が以下の記事で詳細に検討しています。

音喜多氏が提起した「土壌Xデー」は一体何だったのか – アゴラ

事実はむしろ、真逆で、東京ガスが、法の制定に先んじて、自ら策定する土壌対策を、自らの判断で発表する日のことである。 そして、この X デーという言葉は東京ガスの中で使われていた用語であり、東京都の担当者は知らない用語であって、そのことを赤星証人に念のため確認したのです。

したがって都の職員が知りもしない「東京ガスの用語Xデーという言葉で東京ガスを脅す」ということなどあり得なかった、このことを4月4日の証人尋問で、赤星証人に確認するためにメモを引用したに過ぎません。

また、メモについては「いつ、どこで、誰が出席して、誰が書いたのか、出どころも不明」なため、東京ガスに確認を依頼したのですが「不明」という回答であったと漏れ伝わります。東京ガスが提出した資料であることは間違いないのですが、資料としての信頼性は他のものとは異なる事は揺るぎないファクトと言えるでしょう。

要するに怪文書に過ぎないものを立派な資料として「証拠」と呼び、その「証拠」に基づいて「土壌Xデー」なる事実が存在していたかのように振る舞っていたということです。

これは、現在加計学園問題とマスメディアが騒いでいるように、怪文書に過ぎないものを「証拠」と称して「追及」する報道が為される先駆けとなった事案です。

ちなみに、河野ゆうき議員はおときた氏によって懲罰動議が出され、可決されました。

都議会での偽証罪認定

豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会速記録第十三号平成29年5月24日(水)

おときた委員
確かな公的記録の存在、加えて百条委員会における証人の証言、この二つがそろったことで、濱渦氏がもっともらしく主張していた発言の数々は、偽証の疑いが極めて濃厚であると断じざるを得ません。
 同様に、交渉の責任者として証人尋問された赤星理事も確認書の存在を否定していることは、記録の存在から、その矛盾、偽証の疑いは極めて強いといえます。

メモを確かな公的記録の存在と言い、濱渦武生、赤星経昭両氏に対して偽証認定をすることに賛成の立場でした。

さらに、おときた都議は以下発言しました

  また、調査、尋問の過程において、一部の議員から公的記録の存在を疑問視する発言があったり、あろうことか、委員会をつかさどる委員長がその職責を放棄して任を投げ出すなどといった信じがたい行いも発生しました。これらの行為は、都議会の総意で設置された本特別委員会の権威を著しく毀損するものであり、その責任は極めて重いということを、ここで改めて申し述べておきます。

その結果↓↓↓↓↓↓↓↓

濱渦武生、赤星經昭両氏の不起訴決定(嫌疑不十分)

本人は反省しているようです。

激減した報道量…百条委員会の告発における浜渦・赤星氏の「不起訴処分」について | 東京都議会議員 おときた駿 公式サイト

「あたらしい党のおときた駿」になるか?

魚拓:http://archive.is/3UUwV

おときた都議自身、都民ファーストの会での言動については反省している面もあると言っています。

過去の失敗から学んで健全な政治を行うことができるのか?

「あたらしいおときた駿」になることを祈念して本稿を締めたい。

以上