事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

沖縄県辺野古米軍基地建設の県民投票条例の不実施は違法か?

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沖縄県の県民投票条例に基づく投票事務について、41の基礎自治体のうち5つの自治体が執行を拒否している問題。

  1. 市町村側が投票事務を拒否することは可能か、それは違法・憲法違反か
  2. 県側が地方自治法上の「協議」をしておらず違法か

1と2は2が前提問題なのか、別個の問題なのか分かりませんが、ちょっと備忘録的に整理していきます。

沖縄県の県民投票条例と地方自治法

県民投票の事務は県ではなく基礎自治体たる市町村が行うこととされています。

沖縄県の県民投票条例(辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例)

(県民投票事務の執行)

第3条 県民投票に関する事務は、知事が執行する。
ー省略ー
第13条 第3条に規定する知事の事務のうち、投票資格者名簿の調整、開票及び投票の事務の実施その他の規則で定めるものは、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の17の2の規定により、市町村が処理することとする。

これは地方自治法上、「条例による事務処理の特例」と呼ばれています。

地方自治法 第四節 条例による事務処理の特例
(条例による事務処理の特例)
第二百五十二条の十七の二 都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部を、条例の定めるところにより、市町村が処理することとすることができる。この場合においては、当該市町村が処理することとされた事務は、当該市町村の長が管理し及び執行するものとする。
2 前項の条例(同項の規定により都道府県の規則に基づく事務を市町村が処理することとする場合で、同項の条例の定めるところにより、規則に委任して当該事務の範囲を定めるときは、当該規則を含む。以下本節において同じ。)を制定し又は改廃する場合においては、都道府県知事は、あらかじめ、その権限に属する事務の一部を処理し又は処理することとなる市町村の長に協議しなければならない。

【条例の制定に際して市町村の長に「協議」をしなければならない】とあります。

最初にこの「協議」があったのか?について調べてみます。

条例による事務処理の特例における「協議」

これに関しては何か判例があるかどうか見つけられませんでした。

ただ、少なくとも解説書には以下のように書かれています。

新版 逐条地方自治法 第9次改訂版 [ 松本 英昭 ]

1355頁
八 第二項は、事務処理の特例を定める「条例」を制定し又は改廃する場合においては、あらかじめ市町村の長に協議することを都道府県知事に、義務付ける規定であり、ー省略ー
この場合、都道府県知事は事務を処理することとなる市町村の長と誠実に協議をする必要はあるが「協議」は、市町村長の同意までを必要としない。これは、条例による事務処理の特例の制度が、住民の身近な事務は地域の実情に即し、市町村の規模能力等に応じて、基礎的な地方公共団体である市町村に対して、可能な限り多く配分されることが望ましいとの考え方に立って設けられたものであり、個々の恣意等によりこの制度の実行が決定的に左右されることとなることは必ずしも適切ではないと考えられることによるものである。

1358頁
四 [解釈]の八において述べたように、第二項の「協議」は、市町村長の同意までを必要としないものであるが、運用上は、都道府県と市町村との間で十分協議し、両者の合意の上で市町村が処理することとなると思われる。なお、協議を行う場合は、都道府県の事務権限の配分先である市町村との個別の協議が必要である。

  1. 知事は市町村長と誠実に協議をする必要がある
  2. しかし、同意までを必要としない

「誠実に」がどこまでのものを要するのかは不明ですが常識的に判断されるでしょう。

同意が不要であるというのはその通りだと思います。

この記述ぶりを見ると単なる「努力規定」ではなさそうな雰囲気がありますが、そこは明言されておらず、解釈の余地が残っているようです。

なお、ここでは「個別の協議が必要」とありますが今回はあてはまらないと思います。

解説書の説明は都道府県から一つの市町村に対する関係で書いてあるからです。

沖縄県の県民投票事務は、県内41の全ての市町村が対象ですから事情が異なります。

物理的にすべての市町村と面会しての協議は困難です。

よって、この場面では書面等の形にならざるを得ないと思います。

県側は誠実に協議をしたのか?

沖縄県の玉城デニー(玉城康裕)知事はどう言っているか?

沖縄県民投票:デニー知事のコメント全文「市町村は執行義務がある」 | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス

4 そのため、条例の制定にあたり、県民投票に係る事務の一部を市町村に移譲するため、県は、直接請求を受けた平成30年9月5日と同日付けで、地方自治法第252条の17の2の規定に基づき、市町村長への協議を行ったところです。

こちらのコメントは今のところ沖縄県の広報課や県民投票推進課、知事室のWEBでは確認できません。

では、市町村側はどう考えているのか?

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平成31年1月11日八重山日報

石垣市の中山義隆市長は条例制定前に地方自治法の「協議」が無かったとしています。

地方自治法第252条の17の2違反の違法だが…

玉城デニー知事の『9月5日に協議を行った』とは、具体的に何をしたのでしょうか?

この点の情報が無いので推測ですがおそらく書面を送っただけでしょう。

41の市町村が一堂に会したわけでもないのですから。

既述の通り、同意は不要ですが、「誠実な協議」が必要と考えられています。

仮に書面を1回送っただけなら「誠実な協議」とは言えないでしょう。

何度かやりとりをする、或いは返信が無いなら催促する。これくらいはやるべきです。

よって、沖縄県側が地方自治法上の「協議」を怠っているのではないでしょうか?

しかし、「協議」が無いことが違法だとしても、それによって市町村が投票事務の執行を拒否できるかどうかは別問題のような気がします。

次に、市町村側が投票事務を拒否することは可能か、それは違法・憲法違反かについて情報を整理していきます。

不実施の違法確認と憲法違反の指摘について

県民投票「適切な措置を」 沖縄県が市町村に「助言」 - 産経ニュース

沖縄県は19日ー中略ー県内市町村に投開票事務を行うよう求める「技術的助言」を行った。地方自治法に基づく措置でー中略ー関連予算を可決していない21市町村に通知した。

 技術的助言では「県民投票の円滑な実施に向け、適切な措置を講じるようよろしくお願いします」とした。また、県民投票の関連経費を予算に計上し、支出することが「適当であると考える」と説明した。

技術的助言に法的拘束力はないが、市町村が従わなければ是正要求や違法確認訴訟を提起することができる

投票事務を行うためには予算が必要ですが、その予算を計上しなさいということです。

この技術的助言の法的根拠は木村教授や井上教授が指摘しています。 

木村草太氏が緊急寄稿 「県民投票不参加は憲法違反」 | タイムス×クロス 木村草太の憲法の新手 | 沖縄タイムス+プラス

宮崎氏解釈を疑問視 法専門家「予算執行は義務」 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース

地方自治法177条と予算原案の執行

第百七十七条 普通地方公共団体の議会において次に掲げる経費を削除し又は減額する議決をしたときは、その経費及びこれに伴う収入について、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付さなければならない。
一 法令により負担する経費、法律の規定に基づき当該行政庁の職権により命ずる経費その他の普通地方公共団体の義務に属する経費
ー省略ー
○2 前項第一号の場合において、議会の議決がなお同号に掲げる経費を削除し又は減額したときは、当該普通地方公共団体の長は、その経費及びこれに伴う収入を予算に計上してその経費を支出することができる。

地方自治法177条2項の「長は…経費を支出することができる」という規定。

予算原案の執行」と呼ばれることがあります。

「できる」という文言。「しなければならない」ではありません。

当該規定は任意に支出しない=投票条例による投票事務の執行を拒否することが可能かどうかで見解が分かれています。

木村教授や井上教授は不可能だという主張です。

今回の投票事務は市町村の【義務に属する経費】に当たりますから、この点に市町村の裁量は無いだろうと言われています。

また、玉城デニー知事もコメントで以下指摘しています。

沖縄県民投票:デニー知事のコメント全文「市町村は執行義務がある」 | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス

9 県としては、自治法第177条第2項の解釈について、義務に属する経費として再議に付したものであること、また、「できる」とされている規定は、権利等を与えられていると同時にその権利等を一定の場合には行使する義務をも負う、という意味も含むものと考えられ、市町村の長に裁量権を付与したものではない旨をご説明をしているところです。

10 県民投票条例の施行により、県及び市町村は、同条例の規定に基づき、県民投票に関する事務を執行する義務があるものであり、仮に当該事務を執行しない場合には、同条例及び地方自治法の規定に違反することになると考えております。

「できる」はあらゆる場合において首長が任意に原案執行したりしなかったりすることが可能なものではないという見解が示されています。

私見

私は、当該規定は義務に属する経費の場合においては、議会と首長の見解が異なって議会が予算案を否決したとしても首長は経費を支出できるという、予算執行方向の規定だと思います。177条は県の事務を市町村に委譲する際の予算取りの場面について、直接は想定していないのではないかと思われます。

なぜなら、義務に属する経費について、わざわざ議会が否決した補正予算を「再議」で検討させておいて、それが再度否決されたら市長がやっぱり「予算執行やーめた」と言い出すのは、なんだか『馴れ合い』『茶番』のような気がするのです。

形式論からも県民投票条例13条は、地方自治法252条17の2に基づき「市町村が処理することとされた事務は、市町村長が管理し執行するものとする」と規定されているので、義務に属する経費の場合には、裁量が生じると考えることはできないのではないでしょうか?

なので、条例13条、地方自治法252条の17の2、177条からは【その他の法的瑕疵が無い限り】市町村が県民投票の事務の予算執行を拒否することはできないことになるのではないかと思います。

留保をつけたのは冒頭で示したように「市町村側が投票事務を拒否することは可能か、それは違法・憲法違反か」という問題が「県側が地方自治法上の「協議」をしておらず違法か」という問題と別個なのか、後者が前提問題としてあって、そちらが違法なら予算執行義務が無くなるのか、ということがよくわからないからです。

今のところは後者が違法だとしても前者の判断に影響しないのではないかと思います。

まとめ:法的には市町村側が苦しい…気がする

  1. 県側は条例制定に際して地方自治法上の「協議」をしておらず違法
  2. しかし、この違法が市町村の投票事務を執行する義務を免除するものかは不明
  3. そうでないなら、市町村側が投票事務を拒否することは違法・違憲と思われる

これはあくまで法的な話です(しかもちゃんとした検証ではない)。

政治的な妥当性という観点からは、また別の評価がなされても良いと思います。

以上

「元徴用工弁護士有志声明」呼びかけ人:岩月浩二弁護士の誘導

「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」

こちらの呼びかけ人弁護士の岩月浩二氏から異常な主張が飛び出ています。

中には判決の内容と齟齬が生じる記事もあるので無視できません。

「元徴用工弁護士有志声明」呼びかけ人の岩月弁護士

「徴用工」「女子勤労挺身隊」訴訟に対する韓国最高裁判決に寄せて「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」呼びかけ人・弁護士 岩月浩二氏による特別寄稿! 2018.12.29

日韓請求権協定(以下、「請求権協定」とする)の解釈という、優れて高度な法律問題について、一国の法律専門家の超エリート集団が、そうそう容易に論破されるような軽率な判決を下すはずがない。頭から間違っているとする、韓国最高裁判決に対する非難には、韓国を下に置く、近代日本に深く刻まれた朝鮮差別意識が透けて見える。

何かがあるとすぐに「日本人の差別意識」を原因にして逃げる。

こういった姿勢は関東大震災関係の記述で多く出くわしました。

出鼻からこのような態度なので、この後の論もさもありなん、というものでした。

岩月浩二弁護士:不法行為の内容が事実と異なる

岩月弁護士は「人生被害」=挺身隊が慰安婦と混同されて発生した諸々の不利益も含めた事情を「総じて」名古屋高裁が不法行為であると断罪したと言っています。

「徴用工」「女子勤労挺身隊」訴訟に対する韓国最高裁判決に寄せて「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」呼びかけ人・弁護士 岩月浩二氏による特別寄稿! 2018.12.29

韓国では「挺身隊」がほぼ「慰安婦」の意味で使われており、日本での報道でもそうした用法が一般的であった。植村隆『真実――私は「捏造記者」ではない』(岩波書店、2016年)134-135、222―223頁を参照されたい。なお、特定の用語の混同を集中的に批難し、あたかも被害の事実まで否定しようとする歴史修正主義者の「包括否定」の主張は看過できない。こうした行為は、「正確さ」を持ち出しながら、かえって歴史の真実から目を背けるものであろう。この点は高橋哲哉『戦後責任論』(講談社、2005年)137-146ページで指摘されている。

 純潔を失った女性は「汚れた女性」と分類され、「遊ぶ相手」と見做されて、社会や家庭から排除され、婚姻生活に入ることは許されなかった。帰国後まもなくこれを知った原告らは、「挺身隊」に動員された過去に固く封印し、過去を知られることに怯える人生を送ることを余儀なくされた。固く封印しても秘密は漏れる。挺身隊の過去を知られた原告らは、離婚を強いられ、あるいは夫から虐待を受け、夫が家を出た。甚だしくは夫が、外で「汚れていない女性」ともうけた子どもを実子として育てることを強いられた原告もいた。提訴後に、初めて夫に「挺身隊」の過去を打ち明けた結果、離婚された原告もいた(こうした人生被害は「慰安婦」とされた女性も共通して被った人生被害である)。

 彼女たちの日本訴訟にかけた思いがひときわ深かったのも、被害者とみなされず、「汚れた女性」として社会や家庭から排除されるという、こうした人生被害のまさに、ただ中にいたからでもあっただろう。

(6)重大な不法行為
 上記名古屋高裁判決は、こうした事情を総じて、彼女たちに対して日本国と三菱重工が行った行為を「個人の尊厳を否定し、正義・公平に著しく反する不法行為」であったと断罪したのだ。

これは明白に事実に反します。

名古屋高裁判決

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名古屋高裁平成19年5月31日判決 平成17年(ネ)第374号

 イ)控訴人らは,大規模な軍「慰安婦」連行と,これと類似した状況と態様のもと勤労挺身隊の動員を行ったことを先行行為とし,同一視被害の予見可能性と結果回避可能性がある以上,被控訴人らは,調査,公表,責任を認めたうえでの謝罪をすべき義務があり,これを怠っている以上,被控訴人らの不作為については,本件協定の対象とはならない別個独立の国家賠償法上の違法行為や民法上の不法行為を構成すると主張する。
       しかし,控訴人らの主張する「勤労挺身隊」(さらには軍「慰安婦」を含めて)の実態に関する調査,調査結果の公表義務というのは,法令等によって規定されているものではない。また,先行行為に基づくものとして主張される義務内容も広範で抽象的なものであるうえ,結果回避の可能性の面においても抽象的な可能性に止まるものであること,加えて,控訴人らの主張する同一視被害についても本件協定の対象になるものと解すべきことからすれば,上記義務は政治上・道義上の義務・責任であるに止まり,強制連行・強制労働とは別個独立の違法行為や不法行為を基礎付ける作為義務を構成するものとはなお認め難いところである。控訴人らの上記主張は採用できない

「同一視被害」は先述の記事中の「人生被害」=挺身隊なのに慰安婦と同視されることでの諸々の不利益を指します。そのような被害が生じることまで雇い主=三菱が気を付けろという意味不明な主張がなされていたのです。

これが不法行為であるというのは、控訴人=韓国人側が主張した内容です。

しかし、裁判所の認定としては不法行為の成立を認めませんでした。

IWJの記事は岩月弁護士本人の寄稿文ですから、インタビューで勘違いした内容が掲載されてしまったという類の話ではありません。この記事は「字数制限がない依頼だった」(魚拓はこちら)ということで、紙幅の関係でまとめた、などという理屈もあり得ません。

この事実と異なる記述は、単なる誤認によるミスや形容不適切だったのでしょうか?

日韓請求権協定では日本側の義務は消滅しないというデマ

韓国大法院判決に対する安倍総理・河野太郎外相の反論は外交史に残る大失敗である!2007年、日本の最高裁は徴用工個人の請求権を認めている!! 徴用工を酷使した暗い歴史に目を背け、現代において奴隷的外国人労働力として再現しようとする安倍政権~岩上安身による岩月浩二弁護士インタビュー 2018.11.2

さらに岩月弁護士は、「日本が韓国に支払った5億ドルについて、『韓国政府が勝手にインフラ整備に流用して被害者に渡さなかったのだから、韓国政府が悪い』との言説は明らかにデマである」とし、「5億ドルは経済協力資金で、被害者救済に充ててはならないと日韓請求権協定に書いてある」と指摘した。

この内容は岩月弁護士のブログと思われるページでも確認できます。魚拓はこちら

しかも、「名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟弁護団」の名義で同様の内容の主張をしています。PDF付き

2 日韓請求権協定における「5億ドル」について
 まず、多くのメディアが、事実関係として誤解を生みかねない報道をしていることを指摘したい。
 多くの場合、強制労働被害者の問題が解決したとされる根拠に日本が日韓請求権協定に従い、韓国政府に3億ドルを供与し、2億ドルを低利で貸し付けたことが挙げられる。5億ドルの提供と引き換えに被害者の請求権問題は解決したとする論調であるが、この点は多分に誤解を招きかねないことを懸念する。
 5億ドル提供の事実は、韓国政府が責任を負うべき立場にあることを指摘する理由にはなるが、個々の被害者に対して、加害企業や日本政府の責任を免責する十分な理由にはならない。
 日韓請求権協定では5億ドルは現金で払われるものとされていない。「日本国の生産物及び日本人の役務」で提供するとされている。5億ドル相当の円に等しい「日本国の生産物及び日本人の役務」が提供され、あるいは貸与されるとしている。しかも、「前記の供与及び貸付けは、大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない。」とされており、少なくとも法的には、5億ドルは被害救済に充ててはならない経済協力資金である。被害者に対する賠償に充てられる余地のない「経済協力資金」の枠組みは日本政府が主導したと言ってもよい。

ー以下省略ー

「韓国政府が責任を負うべき立場にある」と認めながら、日本側の責任を免責する理由にはならないと曲解しています。

日韓請求権協定の文面と韓国政府の方針を確認しましょう。

「文言解釈」に拘泥する法匪

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日韓請求権協定:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/A-S40-293_1.pdf

日韓請求権協定(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定)の該当部分はこちら

岩月弁護士は3億ドルが生産物や労役であることから「5億ドルは経済協力資金で、被害者救済に充ててはならない」という主張ですが

これが直接的に補償金となるとは誰も言ってませんよ。

賠償請求権については日本が韓国に供与した無償3億ドルに「包括的に勘案された」のであって、それは韓国の政権も公式に認めています。

参考:徴用工訴訟 歴代韓国政府見解は「解決済み」、現政権と与党困惑:イザ!

韓国国内的には【請求権資金の運用及び管理に関する法律】によって個人に対して処理されることとなっていました。補償金として金銭を用意するかどうかは韓国政府の仕事です。

3億ドルの拠出と日本側の義務免除に対価性・牽連性を持たせ、韓国民の補償は韓国政府が行うという法的効果を生む合意がなされたという事実が重要であって、協定の文言解釈のみを行うのは事実を文字の解釈によって歪める法匪です。

交渉過程でも韓国側が韓国政府が支払うと主張

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第五次日韓会談予備会談 一般請求権小委員会会議録 第13次会談

何度も言いますが、日韓両国がどのような法的効果を発生させる合意をしてきたのか?という【事実の問題】 がすべてであって、解釈の問題にすり替えてはいけません。

まとめ:韓国側の主張は筋悪の者の典型例

【レーダー照射】北村晴男氏「論点を増やし、訳分らない状態にしようというのは嘘を言う人間の一番典型なパターン」

論点を増やして解釈を言い出すのは、筋悪の者の行動の典型パターンです。

それは北村晴男弁護士が一般的な傾向として指摘した通りです。

同じことは、レーダー照射事案における韓国政府にも言えます。

なお、日韓請求権協定の経済協力金について「賠償金ではない」という昭和45年11月19日参議院本会議での国会答弁を持ち出す者が居ます。これは賠償金という性質を否定し(韓国という国は存在していなかったのだから「賠償」になり得ない)たことに重点があり、日韓両政府が請求権協定によって国家間(政府・企業・個人レベルそれぞれで)の問題は解決されたという認識でいたということはその後の展開からも明らかです。

以上

「日本人と韓国人は双子の兄弟」は誰が言ったか?のアンケート結果

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日本人と韓国人は"双子の兄弟"」に言及した記事が一部で話題になりました。

この記事の理解についてアンケートを実施しましたのでアンケート結果を分析します。

これはマスメディアの印象操作の手法を考える上で示唆に富む結果となりました。

「日本人と韓国人は双子の兄弟」について書いた記事

日本人と韓国人は“双子の兄弟”“互いに劣等感”?元駐日韓国大使の発言に異議あり(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース:魚拓はこちら⇒target="_blank"1ページtarget="_blank"2ページ3ページ

アンケートツイートのリプライ欄に、元記事のURLリンクを貼りました。

ただ、この記事は3ページに跨っているのですが、敢えて2ぺージ目を貼りました。

正解を見る前に、是非とも記事内容を確かめてみてください。

アンケートの設問と結果

質問は【『日本人と韓国人は"双子の兄弟"』は誰が言いましたか?】でした。

選択肢の順番と選択率は以下のようになりました。

  1. 政治評論家・屋山太郎⇒12%
  2. 元駐日韓国大使・柳興洙(ユ・フンス)⇒65%
  3. 政治学者・サミュエル・P・ハンティントン⇒8%
  4. アメリカの生物地理学者⇒15%

さて、正解は何でしょうか?

元駐日韓国大使・柳興洙(ユ・フンス)の回答について

記事表題に『日本人と韓国人は“双子の兄弟”“互いに劣等感”?元駐日韓国大使の発言に異議あり』とあり、元駐日韓国大使の発言ということが示唆されています。

また、1ページ目の最後に「私の持つ知識から判断すれば理解不能だが、その謎を解く2つの発言をしている」と書かれています。

それは元駐日韓国大使に関する言及の流れでした。2ページ目冒頭も柳氏が主語になっているため、元駐日韓国大使についての言及が続いてることが分かります

したがって、正解は2番になります。

アメリカの生物地理学者を回答した方の分析

4番のアメリカの生物地理学者と答えた方がそれなりに居ました。これは2と迷った方が相当数居ると思われますが、ここでの正解からは外しました。

もっとも、元駐日韓国大使はアメリカ生物地理学者が書いたものに「日本人と韓国人は双子の兄弟」とあったものを引用したわけですから、アメリカ生物地理学者が初出です。

そして、社会的事実としてアメリカ生物地理学者がそのような発言をしていたと言っても差し支えないものであるでしょう。

よって、4番のアメリカ生物地理学者を解答した方も、誤りではありません

このアンケートですが設問にも問題があるということに後で気づきましたが、厳密にするとクイズにならない(質問で答えが分かってしまう)のでそのまま行いました。

テストであれば複数回答可能にし、4番も正解にしていたでしょう

ただ記事の言及の中心は2番という事が大切なのでここでは2番を正解にしています。

サミュエル・P・ハンチントンと回答した方の分析

3番の政治学者サミュエル・P・ハンティントン(ハンチントン)について。

この解答者は文章構造が分かりづらいため勘違いしたものと思われます。

この勘違いは2パターンあり得ると思います。

一つは「双子の兄弟」の引用の後に「しかし」などの接続詞が無いままハンチントンの名前が出ているのでその者の言葉と誤認したというもの。

もう一つは、直前の「アメリカ生物地理学者」と「政治学者のサミュエル・P・ハンティントン」が同一人物だと誤認した可能性が考えられます。

ただ、紹介されているハンチントンの見解を読めば「双子の兄弟」の認識を否定する内容なので、それをきちんと読めば気づけたはずです。

政治評論家・屋山太郎を回答した方の分析

1番の屋山氏を解答した方は、予想される一部を除いてかなり注意が必要です

記事文章を書いたのは屋山氏ですが、記事の1ページ目冒頭だけを見て判断し、引用された言葉であるという可能性を考えていなかったものと思われます。

しかし、記事タイトルには「""」つきで「双子の兄弟」が書かれており引用であることが示唆されていますから、記事を読んでなくとも判断保留にできたはずです。

そして、記事を読めば屋山氏がそう考えているわけではないということは分かりますから、それを怠った可能性があります。

さらに、記事を読んでも1を解答した方はアンケートの質問が「誰が言ったか」で「誰の主張・意見か」ではないから解答が複数あるものと考え、屋山氏も含まれる(引用した事が発言だ)と考えた可能性があります。

この解答者の中でも上述の解説の通りの思考過程を経た者であればいいと思います。

しかし、そうでなく短絡的に「屋山氏でもあり」と考えて解答した方は、日頃からそのように考えていると危険です。

意地悪な問題でない限り、最もありうるものを選ぶのが選択肢のある質問ですから、その思考過程をすっ飛ばして屋山氏を解答するとコミュニケーションが成り立たなくなります。

特に穿った見方もせず全部読んでも屋山氏だと考えた方はじっくり読めば正しく理解できるはずなので飛ばし読みをしていたのだと自覚すればいいでしょう。

この記事は確かに読みにくくあまり良い文章とは言えないと思いますので、ある程度仕方がない面があると思います。

タイトル詐欺等の印象操作事案への示唆

さて、回答者全体の80%が正しい理解を示してくれましたが、逆に言うと20%の方が誤解してしまったということは、どう考えれば良いでしょうか?

読解能力があるツイッターユーザー

まず、ツイッターのユーザーというのは文字を読む習慣がある人たちです。

一日中TVを見てるような人ではなく、アプリを利用しない老人は含みませんから、日本人の平均よりも読解能力が高い方であると推認されます。

そして、このアンケートは記事の内容を見てみようと思った方が回答されました。

そのような知的好奇心のある方であっても、(おそらく飛ばし読みをして)誤解してしまったというのは情報発信について考えさせられます。

わざわざ執筆者を確認するユーザーも居た

特に1番の屋山氏を選んだ方は、わざわざ1ページ目に飛んで記事の執筆者を確認するということまでした方です。屋山氏が書いた記事であるということが分かるのは1ページ目の冒頭のみです。

私が意図的に2ページ目のリンクを貼ったのは、そうした確認を取る必要を生じさせるためでした。

そうした「労力をかけた方」が誤解してしまったというのは、ある程度予想していたものの、ハンチントンよりも多いという事実に驚いています。

操作されていない印象で語られた例

上記の2つ記事は、報道機関のWEB記事が言及している内容とは異なる内容が、タイトル等からの印象で決めつけられて語られ、その認識がSNS等で拡散された事案を扱っています。

「岩屋防衛相はけしからん!」「河野太郎は弱腰だ!」

このような声が少なくない数ありました。

しかし、私が上記記事をUPしたところ、その内容を見た方の中にはそういった認識を改めた方もいらっしゃいました。

上記の事例は「マスメディアの印象操作」と言うには難しいものでした。

私もこうやって自分で検証してみて気づいた点は多くありましたが、実際の内容と異なる印象を持ってしまう可能性は誰しもがあり得るのだということに気づかされます。

人間は簡単に誤解するし、メディアは簡単に誤解させる構成を作れる

朝日新聞を読めば恐ろしいことに気づきます。

読者の認識がどうなるかを計算し文章構成によって読者自身に想像させているのです。

それは明らかに意図的なものです。

決して事実と異なる内容は書いていないけれども、新聞の読者には事実と異なる認識を植え付ける。そういうことはできてしまうのだと。

今回のアンケート結果は、そのような手法に絡め取られてしまう可能性のある人がどれくらいあるのか、ということを示唆するものとして興味深いものでした。

まとめ:誰もが誤読の被害者にも「加害者」にもなる

  1. 正しい回答をした方は80%だった
  2. ツイッターユーザーは平均的な日本人より読解力があると思われる
  3. 本アンケートに参加した方は文章に親しんでいると思われ、読解力が比較的高いと思われる
  4. そのような方であっても20%が誤解してしまった

私は題材にした記事を一度流し読みをしたのですが、誰の言葉なのか?が分からなくなったので改めて冒頭からペースを落として読み直しました。

それをしなかったら、もしかしたら私も「日本人と韓国人は双子の兄弟」と言ったのは屋山氏やハンチントンと思い込んだかもしれません。

その認識で「〇〇はけしからん」など、人に対する否定的な評価を含む情報をツイートで拡散してしまったら、比喩的に言えば「加害者」となってしまいます。

それは気を付けようと思いますし、老獪なメディアは読者の一定数はそういうものだということを見越して記事を構成している場合があるので、そのような記事は卑怯なものとして指摘していきたいと思います。

以上

サンゴ移植発言:新聞各社は大久保教授の発言を悪用か?

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琉球新報や毎日新聞の「安倍総理の「サンゴ移植発言は事実誤認だ」とする印象操作。

報道の中で東京経済大学の大久保教授の発言が悪用されている可能性が高まりました。

この点に絞って書いていきます。

琉球新報と毎日新聞の印象操作

この件は安倍総理の発言「あそこのサンゴは移植している」の受け止めの話です。

安倍総理は辺野古埋め立て予定区域全体か、その内の埋め立て承認撤回部分を除く区域を対象に「あそこのサンゴ」と言っていたに過ぎません。

それを琉球新報の社説や毎日新聞が曲解し、「辺野古2-1」という現在進行形で土砂投入をしている極一部の区域に限定した発言であると騒ぎ立てているということです。

大久保教授の発言は、そのような記事の中で引用されていました。

サンゴ移植しても生き残るのはわずか

辺野古埋め立て 首相が「あそこのサンゴは移植」と発言したが…実際は土砂投入海域の移植はゼロ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース

サンゴの生態に詳しい東京経済大学の大久保奈弥准教授は「発言は事実と異なる。サンゴを移植しても生き残るのはわずかで、そもそも環境保全策にはならない」と指摘した。

こちらは1月8日の琉球新報の記事です。

大久保教授の「発言は事実と異なる」というのは、どういう発言に対してでしょうか?

実は「サンゴ移植しても生き残るのはわずか」との発言は昨年の記事にもありました。

【辺野古から】サンゴ移植に疑問 研究者「生き残る可能性低い」 - 共同通信 | This Kiji魚拓はこちら

 だが、そもそもサンゴ移植に対して異論もある。大久保氏は、移植によるサンゴ保全の効果は低いと指摘する。那覇空港の滑走路増設事業では、移植されたサンゴの8割超が死滅したエリアがあるなど、移植で生き残る割合は少ないという。

 サンゴは動物で、サンゴ礁は地形。サンゴ礁には多様な生き物が生息し、サンゴ礁生態系を形成している。大久保氏は「サンゴを移植しても元の生態系は回復できない」と強調する。

辺野古移設に限らず、沿岸部の大規模開発が繰り返されてきた沖縄では、官民が環境保全策としてサンゴ移植に取り組んできた経緯がある。大久保氏は「移植がサンゴ礁生態系を再生するというのは幻想であり、移植が埋め立て開発の免罪符となっている」と指摘。「辺野古のサンゴを守る方法は移設工事を中止する以外にない」と言い切る。

2018年5月の記事です。

これを読むと「サンゴ移植をしてもサンゴ保全の効果はあまりない」という主張です。

つまり、「サンゴ移植の場所」ではなく「保全の効果がある」という意見に対して「それは幻想である」と言っているのです。これが「事実と異なる」の元となっている可能性が高いです。

1月8日の琉球新報の記事にある大久保教授の発言も、そのような意味で使われているとしか思えません。「辺野古2-1のサンゴを移植した」かどうかという質問に対する回答としてはありえない内容の言及だからです。

大久保教授発言を「サンゴ移植をした場所」と錯覚させる

先述の琉球新報の記事の全体を引用します。
全体を引用しないと検証にならないので、引用の必然性があります。

辺野古埋め立て 首相が「あそこのサンゴは移植」と発言したが…実際は土砂投入海域の移植はゼロ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に伴う埋め立てに関し、安倍晋三首相は6日に放送されたNHKのテレビ番組「日曜討論」で事実を誤認して発言した。安倍首相は「土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移植している」と述べたが、現在土砂が投入されている辺野古側の海域「埋め立て区域2―1」からサンゴは移植していない。

 埋め立て海域全体では約7万4千群体の移植が必要だが、7日までに移植が終わっているのは別海域のオキナワハマサンゴ9群体のみにとどまっている。

 沖縄防衛局は、土砂投入の海域付近にあった準絶滅危惧のヒメサンゴ1群体を当初移植する方針だった。県から移植に必要な特別採捕許可が得られなかったことから、特別な装置を用いてサンゴを囲み、移植を回避するよう工法を変更した経緯がある。

 首相の発言について玉城デニー知事は7日、ツイッターに「安倍総理…。それは誰からのレクチャーでしょうか。現実はそうなっておりません。だから私たちは問題を提起しているのです」と投稿した。

 サンゴの生態に詳しい東京経済大学の大久保奈弥准教授は「発言は事実と異なる。サンゴを移植しても生き残るのはわずかで、そもそも環境保全策にはならない」と指摘した。

 沖縄防衛局は、サンゴの移植は1メートル以上の大きさを対象とし、1メートルより小さいサンゴは移植していない。

 これまでに移植したオキナワハマサンゴ9群体はいずれも「埋め立て区域2―1」ではない場所に位置していた。

 移植に向けて沖縄防衛局が県に特別採捕許可を申請している約3万9千群体のサンゴも現在の土砂投入海域にはない。県は申請を許可していない。

 首相は「砂浜の絶滅危惧種は砂をさらって別の浜に移す」とも発言した。沖縄防衛局の事業で、貝類や甲殻類を手で採捕して移した事例はあるものの、「砂をさらって」別の浜に移す事業は実施していない。

記事中には「サンゴ移植によるサンゴ保全の有効性」に触れるものはありません。 

「サンゴ移植をした場所」についての言及しかありません。

その中で突然大久保教授の「発言は事実と異なる」が出てきます。

それは先ほど指摘した通り「サンゴ移植によるサンゴ保全の有効性」に関するもの。

大久保教授の発言が、まったく別の内容について語っていると誤認させるように悪用されていると言えます。

「いや、今回改めて大久保教授に意見を求めた結果、サンゴ移植をした場所についての安倍総理の発言を事実と異なると言った後にサンゴ保全の有効性に触れたのでは?」

こういう可能性は論理的には残りますが、「サンゴ移植の場所」がどこかについて詳しい者は、サンゴの生態に詳しい教授なんかではないということは明らかなので、その可能性は極めて低いと見るのが筋でしょう。

上記は推論です。しかし、傍証があるのです。

実は毎日新聞は大久保教授の発言の扱いを変えている

安倍首相のサンゴ移植発言が波紋 政府、打ち消しに懸命 - 毎日新聞

サンゴの生態に詳しい東京経済大の大久保奈弥准教授は「サンゴを移植しても長期生存率は低い。環境保全措置としては不十分だ」と政府の対応を疑問視している。

 「発言は事実と異なる」という部分がありません。

毎日新聞の記事の内容は、環境保全措置=サンゴ移植によるサンゴ保全の可能性についても触れているため、そのような文脈で読み取ることも可能です。

決して安倍総理の「あそこのサンゴ」に対する反論としては扱っていません。

琉球新報のような扱いはマズイと思って削ったのか、当たり前の扱いをしただけなのかは定かではありませんが、同じ印象操作をしている新聞同士であっても大久保教授の発言の扱いが違うというのは、この場合は琉球新報の扱いが不適切であるという傍証になるでしょう。

もっとも、大久保教授は移設反対の意見のようなので、このような扱われ方をしてもさほど気にしないと思われますが。大久保教授が追認する可能性もありますし

※追記:大久保教授と思われるツイッターアカウントで「安倍総理の発言は嘘だ」と「移植対象のサンゴが居た場所」の問題として言及していました。

しかし、当該アカウントは辺野古2-1に移植対象のサンゴが存在していないことを知らず、本人確認も取れなかったので、現時点で大久保教授の発言として扱うことは避けます。

他人に語らせる・他人の言葉を利用する者に騙されるな

【他人が語っていない内容を想起させる印象を、他人の言葉を使って創出する】

これは朝日新聞などのマスメディアがよく行う手法です。

過去には以下のような事例を分析しています。

私は、新聞メディアが誰かの発言を引用している際に、その発言は本当にその人が言ったことなのか?この文章から想起される印象は、この人の発言から読み取れるのか?それとも紙面の構成によって創出されたものではないか?と一歩引いて考えるようにしています。

印象操作の手法はありとあらゆるものがあるなぁと、しみじみ思います。

以上

日立造船にも賠償命令:朝鮮人労働者(徴用工)訴訟で確認したいこと

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日立造船にも賠償命令 ソウル高裁、徴用工訴訟控訴審 - 産経ニュース

新日鉄住金、三菱重工に続き、日立造船にも韓国の司法が賠償命令を下しました。

この展開は見えていたので基本的にどうしようもないのですが、朝鮮人戦時労働者(徴用工)訴訟について、確認すべきことを整理します。

個人の請求権は残っているが協定で日本側に請求できない

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日韓請求権協定によって、外交保護権は相互放棄されました。

財産的価値が認められる実体的権利は、日本においては財産権措置法で消滅しました。

個人の請求権=訴訟提起できる地位は、協定によっても残存しています。

ただ、一方の政府・団体・国民からの請求に対する相手国側の義務が協定によって消滅した結果、裁判による救済は受けられないという帰結(=そのような法的効果を発生させるという合意)となるのです。

要するに韓国民の補償は韓国政府が行いましょうという合意があったのです。

なんか「人格権に基づく請求権を国家が勝手に放棄できるのか」と言ってる弁護士が居ますが、そもそも「放棄」(=請求権の消滅)してませんので主張自体失当です。

韓国政府もその認識だったということは盧武鉉政権下の2005年に交渉文書の公開で明らかになりました。

関連記事は以下参照

西松建設の事案を敷衍するデマ

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「西松建設で最高裁が法的な義務は認めなかったが、任意の救済を促した画期的な判決がある」「だから徴用工にも日本企業は任意に救済するべきだ」

こういう主張をしている者はフェイクを拡散しているだけです。

  1. 日本人とは異なる労働環境で
  2. 賃金の支払いもなく
  3. 国家間合意による個人補償の支払いもなく(中国側が放棄)
  4. 西松建設が戦後日本政府に対して中国人使用による補償金を受け取っていた

西松建設の事案ではこのような事情の積み重ねが最高裁で認定されたのであって、たとえ中国人相手でも他の企業に対して「任意の救済を促す」合理性があるとは必ずしも言えません。

にもかかわらず「朝鮮人に対しても同じです」と言い切ってるのはもう論理無視のポジショントークなので、冷ややかな目で見るのが一番でしょう。

韓国側の人間は、企業に対して「任意の補償」を促してきています。

関係企業の従業員、役員、株主のみならず、国民全体が騙されないようにしないといけませんね。

詳細は以下記事参照

『「協議を求める」では甘い!』と言う人へ 

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現在、日韓請求権協定の実施に関して紛争が起こっています。

そのため「韓国が協議に応じるわけがないのだから今すぐ制裁だ!」と言いたくなる気持ちは分からなくもないです。

しかし、協定に「協議するものとする」と書かれていますから、この手続を踏まないとなると日本も協定を軽視していると見られてしまいます。

  1. 外交ルートの協議⇒破綻なら2へ
  2. 仲裁委員の選定
  3. 第三国の仲裁委員を締約国が合意選定or第三国の政府が指名
  4. 仲裁判断:両政府は仲裁判断に服することに⇒服さなかった場合には5へ
  5. 国際司法裁判所での審理⇒相手国の同意が必要

このような段階を踏むことになります。

菅官房長官のように「粛々と」の精神でいることが吉です。

詳細は以下記事参照。

まとめ:日立造船以外にも続々と賠償命令が予想されるが

朝鮮人戦時労働者(徴用工)の話はいわゆる従軍慰安婦問題と同じ轍を踏むわけにはいきません。

レーダー照射問題で韓国が反論動画を8か国語に翻訳したということの意味は、世界中の一般人に対して印象操作工作を仕掛けるという意味です。

そうしたものに騙されないように日本人がしっかりこの件を理解することが大切です。 

以上

「安倍首相のサンゴ移植発言に政府打ち消し懸命」という曲解

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http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/chotatsu/hyoukasyohosei/102.pdf

安倍総理の「あそこのサンゴは移植している」という発言がなぜか叩かれている件。

毎日新聞が印象操作記事を書いてますね。

この件の検証結果はJ-CASTニュースと以下記事を参照

毎「安倍首相のサンゴ移植発言に政府打ち消し懸命」

安倍首相のサンゴ移植発言が波紋 政府、打ち消しに懸命 - 毎日新聞

 土砂投入区域には沖縄防衛局の移植対象になるサンゴはなく、「あそこのサンゴ」という首相の発言は正確性を欠く。

琉球新報の記事や社説と少しスタンスは異なりますね。

琉球新報の1月9日の社説は「安倍総理の発言は事実と異なる」と断言しています。

毎日新聞は「安倍総理の発言は正確性を欠く」「誤解を招く」という評価です。

辺野古埋め立て地区全体と辺野古2-1という限定区域

私自身も沖縄県水産課に取材しました。

  1. 移植対象となるサンゴは、0.2ha以上密集しているものについては10センチ以上のものを対象とする
  2. 密集していなくとも1メートル以上のものは移植対象とする
  3. 上記に当たらなくとも絶滅危惧種のオキナワハマサンゴは9群体移植した事実がある
  4. オキナワハマサンゴ9群体のうち、1群体は辺野古地区に存在していたが、それは現在周囲を囲って埋め立てをしている場所の外側に在ったものである
  5. 絶滅危惧種以外の移植対象の7万4千群体は大浦地区にあり、そのうち4万群体は県が承認撤回をしたことで不要になったとして不許可になったが、防衛省が再申請をして現在審査中

サンゴを移植した事実はあるということと、まだ移植していないサンゴがあるということです。

辺野古2-1の地区は沖縄防衛局が調査した結果、移植対象となるサンゴは存在していなかったと判断されたようです。

安倍首相のサンゴ移植発言が波紋 政府、打ち消しに懸命 - 毎日新聞

菅義偉官房長官は10日の記者会見で「辺野古側の埋め立て区域に生息していた移植対象のサンゴはすべて移植しており、環境保全措置にも最大限配慮しながら対応している。(首相は)そういう趣旨の発言をされたのだろう」と苦しい説明に追われた。

したがって、菅官房長官のコメントも事実と異ならないということになります。

安倍総理のNHKでの発言

 

NHKの1月6日の放送「日曜討論」では、安倍総理が土砂を投入している映像に触れて「土砂を投入していくに当たって、あそこのサンゴについては移している。また絶滅危惧種が砂浜に存在していたが、これは砂をさらってしっかりと別の浜に移していくという環境の負担を抑える努力もしながら行っている。」と発言しました。

安倍総理が「あそこのサンゴ」と言ったことが正確性を欠くという毎日新聞。

しかし、この発言に至るまでに、安倍総理は辺野古基地の移設の経緯を説明していますから、辺野古埋め立て予定地域全体について言及する流れでの発言であることが明白です。

工事の規模も現在進行形の区域は予定している場所の極々一部であって、一国の総理大臣がいちいち具体的な区域を指定していると考えるのは異常です。埋め立ての映像に触れたことについても、埋め立て工事を現在進行形で行っている映像の区域に限定して話をしていると理解するのは殊更に安倍総理を非難したい者の都合の良過ぎる解釈でしょう。

安倍首相のサンゴ移植発言が波紋 政府、打ち消しに懸命 - 毎日新聞

首相による「印象操作」と受け取られかねない発言だけに、政府は打ち消しに懸命だ。

それに「印象操作」と言いますが、この件で辺野古2-1に移植対象のサンゴが存在していてそれを移植したという印象を与える意味はあるのでしょうか?

仮にそのような印象を与えたとして、それはニュースで取り上げるような悪いことなのでしょうか?

そんな動機があるとは通常思えず、そのような理解になる意味が分かりません。

毎日新聞(と元の報道記事を書いた琉球新報)の言いたいことは良くわかりません。

移植対象である10センチ以上のサンゴになぜ触れない?

この件で琉球新報、毎日新聞、朝日新聞のWEB版のみについて言及しますが、どの記事も「絶滅危惧種と1メートル以上のサンゴ」が移植対象としか書いていません。

私が沖縄県水産課に確認したところ0.2ha以上のまとまりの群体については10センチ以上のものを移植対象とするという説明を頂きました。

1メートル以上のサンゴは、そういったまとまりが無くとも移植対象としているということなのです。

なぜこれを記事に書かないのでしょうか?

取材時に水産課の方が触れなかったのか分かりませんが、これらのメディアの普段の発信や、今回の印象操作報道を見ていると「1メートル未満のサンゴは移植せず大量に犠牲にしている」という印象を与える意図があるのではないか?と疑いたくなります。

沖縄防衛局によるサンゴの分布状況調査はこちら:「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書「第6章 6.14 サンゴ類」」です。

埋め立てを行う以上、なんらかの環境に対してインパクトを与えるのは当然です。

我々一般人の日常生活ですらそうです。

小さいサンゴをすべて移植することはリソース的に不可能ですから、ある程度の大きさ・まとまりを対象とする以外にありません。

この話を詳細にしていくと「10センチ未満のサンゴは無視されている!」と騒ぎ立てる者が出てくるので、あまり付き合う必要はないでしょう。

まとめ:政府が打消しに懸命という謎の評価

辺野古移設とサンゴ保護は両立できるという首相発言が嘘ではない理由 | 高橋洋一の俗論を撃つ! | ダイヤモンド・オンライン

筆者の知る限りでは、日曜討論での「サンゴ移植」の首相発言は、実際の土砂投入海域と埋立予定地域を峻別し、場所を限定した議論ではなかった。琉球新報の記事は、揚げ足取りに近いものだと筆者には思える。

好意的に評価して、琉球新報は揚げ足取りでしょう。

毎日新聞はそれに便乗して「問題」を長期化するつもりでしょう。

いい迷惑です。

 

以上