事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

【最終見解】防衛省が韓国軍火器管制レーダー照射探知音公開と協議打ち切り

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防衛省:http://www.mod.go.jp/j/press/news/2019/01/21x.html

1月21日夕方、防衛省が韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射の音を公開。

これは一般人でも理解できるものになってますね。

防衛省・自衛隊:韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について

防衛省による韓国軍レーダー照射の最終見解説明概要

  1. 火器管制レーダーの照射について
  2. P-1の飛行について
  3. 通信状況について
  4. 今後の対応について

付属資料がありますが、HTML版として1ページ内でスクロールして見れます。

韓国レーダー照射事案に関する最終見解について(概要版)
韓国海軍駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射に関する防衛省の最終見解について
韓国海軍駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射に関する防衛省の最終見解について【補足説明資料】

図示して説明している補足説明資料が分かりやすいです。

火器管制レーダーと捜索用レーダーの照射の違い

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防衛省:http://www.mod.go.jp/j/press/news/2019/01/21x.html

公開された音は2種類。

火器管制用レーダーのものと捜索用レーダーのものです。

実際に防衛省HPで音声を聞けば分かりますが、火器管制レーダーの場合は音が継続的に聞こえるのに対して、捜索用レーダーは周期的に音が聞こえる(音が無い時間帯がある)のが違いです。

これを訓練を受けた海上自衛隊のP1哨戒機乗員が聞き間違えるはずもなく、ましてやレーダー波形のデータも取ってあるのですから、これを「違う」と言うのは無理があるし、信用されないでしょう。

その他の項目については防衛省のHPを実際に見てください。

防衛省の「協議打ち切り」の対応姿勢について

今回の防衛省の対応は『一般人が見ることを意識している』と言えます。

今回の防衛省のHPには付属資料が3つあり、前回の資料よりも多めの文量です。

それと同じ内容のものをHTML版としてトップ画面に掲載しており、スクロールすることで1ページ内で資料を全て見れるようになっています。

これは、PDFファイルをわざわざクリックして見る人が一気に減るということを意識していると言えます。いちいち画面を戻ったりタブを開いたりするのが面倒に思う人が少なからず居るということを把握しているのでしょう。

一般人が見ることを意識しているというのは「レーダーの波形」ではなく「レーダー検知時の音」を公開したことからも伺えます。

一般人はレーダー波形を見たところで理解できませんから、音を聞かせた方が直截的で理解可能だからです。

同時に、専門家が見聞きしても問題のないクオリティになっているという事でしょう。

防衛省による韓国側の嘘・非礼・検証拒否の指摘

韓国海軍駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射に関する防衛省の最終見解について

防衛省は、本年1 月14 日の実務者協議において、相互主義に基づき、解析結果のもととなる探知したレーダー波のデータやレーダー波を音に変換したデータなど事実確認に資する証拠と、韓国駆逐艦の火器管制レーダーの性能や同レーダーの使用記録などを、情報管理を徹底した上で突き合わせ、共同で検証していくことを提案しましたが、受け入れられませんでした。

なお、昨年 12 月 27 日の実務者協議でも、同趣旨の提案をしています。また、本年1 月14 日の実務者協議では、事実確認に資する証拠の一つとして、探知したレーダー波を音に変換したデータを持参し、その場で韓国側に聴取してもらうことを提案しましたが、韓国側はその提案も拒否しました。

結構重要なことが書かれているのがこの辺だと思います。

12月27日の時点でも1月14日でも、共同検証をする提案をしたが、韓国側が拒否していたという事実。

しかも、音を聴くことすら拒否したという意味不明な韓国側の挙動を暴露しています。

P1哨戒機の飛行についても言及

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防衛省:http://www.mod.go.jp/j/press/news/2019/01/21x.html

韓国海軍駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射に関する防衛省の最終見解について

これまで、海上自衛隊では、警戒監視及び情報収集中に、韓国のみならず外国軍艦等を確認した場合には、今回と同じような飛行を行い、写真を撮影しています。昨年4 月以降、今回写真撮影を行った韓国駆逐艦(「クァンゲト・デワン」)に対しても、今回と同じように3 回の撮影(4 月27 日、4 月28 日、8 月23 日)を行っていますが、その際、韓国側から問題提起を受けたことはありません。

過去に同様の飛行実績があるのに、韓国側から指摘は無かったという事実。

であれば、何故今回だけレーダー照射もし、P1の飛行を非難するのか?

北朝鮮船舶の存在が関係していることは明らかでしょう。

韓国海軍駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射に関する防衛省の最終見解について

防衛省は、実務者協議において、更なる客観的根拠の提示を求めましたが、韓国側からは、そのようなものは示されず、逆に「脅威を受けた者が、脅威と感じれば、それは脅威である」などの全く客観性に欠ける回答を繰り返しています。
こうしたことから、防衛省では、韓国側の主張は、客観的根拠に基づいていない説得力を欠いたものであり、火器管制レーダー照射に関する重要な論点を希薄化させるためのものと言わざるを得ないと考えています。

ありていに言えば「論点ずらししてんじゃねぇよ」ってことを言ってます(笑)

しかし、これはまだ「優しい」表現ですね。

より突っ込んだ言い方であれば「いったい何を隠してるんだい?」となるでしょう。

通信状況について

韓国海軍駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射に関する防衛省の最終見解について

この問題について、韓国側は、現場の通信環境が悪く、同機からの呼びかけをほとんど聞き取れず、「KOREA COAST」と聞こえたために反応しなかったと説明しています。また、3 つの周波数のうち1つについてはそれを聞けるような状態に通信装備をセットしていなかったとも説明しています。
しかし、当日の現場海域は、晴天で雲も少なく、通信環境は極めて良好でした。また、海自 P-1 哨戒機は、韓国駆逐艦に呼びかけた同じ通信機器(この通信機器は飛行前、飛行中及び飛行後に正常に作動していたことを確認済み)を用いて、埼玉県の陸上局と通信を行っていたほか、現場から約 240km離れた位置を飛行していた航空自衛隊の練習機が、この韓国駆逐艦に対する同機の呼びかけを聞き取っていたことも確認しています。

韓国側「あーあー聞こえない聞こえない」

こんな感じですかね。

公海上で聴取するものとされている通信装備をセットしてなかったって、海軍的には赤面な状況を暴露されてるのは防衛省の怒りを感じます。

ちゃんと日本側の機器の故障ではないことを示すために陸上局や航空自衛隊機が聞き取っていたことも説明していますね。

協議打切りと今後の韓国側の「反論」の予想

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防衛省:http://www.mod.go.jp/j/press/news/2019/01/21x.html

日本防衛省が公表した「音」なるものが我が軍からのものである証拠は一切ない

「客観性の欠けるものを証拠であるとして喧伝する無礼を許さない」

まぁ、おおかたこのような「反論」声明が出されるんじゃないでしょうか。

防衛省はそういう反応も見越しているので「協議を韓国側と続けていくことはもはや困難」とまで言い切っているのでしょう。

以上

玉城デニー(沖縄県側)は地方自治法と県民投票条例違反だが

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沖縄県の辺野古移設の是非を問う県民投票について5市が事務の執行拒否をしてる件。

私は【沖縄県側は県民投票条例の制定や執行に際して地方自治法や県民投票条例違反の違法があるが、それは市町村側の県民投票事務の執行拒否を法的に正当化するものではないだろう】という見解です。

その点についての理由をまとめます。

市町村側の執行拒否の裁量の有無については以下参照

4つの問題

  1. 県民投票条例の制定に際する県側の違法によって条例が無効となるか?
  2. 県民投票の執行に際する県側の違法が市側の義務免除の効果を生むか?
  3. 市町村側が県民投票事務の執行拒否をすることは違法か?
  4. 市町村側の県民投票事務の執行拒否が憲法違反か?

これらは互いに関係しないことは無いですが、一応は別々の問題だと思います。

まずは1番目の問題ですが、これは地方自治法252条の17の2第二項の「協議」を県側が怠っているという違法事実についてです。

地方自治法252条の17の2第二項の「協議」

既に上記記事で言及してますが、条例制定に先立って要求されている「協議」は「同意は不要」だが「誠実に協議することが必要」と解されています。

玉城デニー知事は「9月5日に協議した」としか言ってませんので、これが41市町村に対して面会や数度の書面のやりとりではないことは明らかです。よって、「誠実に協議」してないことは明白でしょう。

したがって県側には条例制定に際して地方自治法違反があったということになります。

地方自治法違反があっても条例は無効にならない

しかし、私は県民投票条例制定に際して「協議」を欠いていたとしても、それは条例の無効や市町村の事務執行義務の不発生の効果まで導くものではないと思っています。

それは「協議」が必要とされる趣旨から考えています。

新版 逐条地方自治法 第9次改訂版 [ 松本 英昭 ]

1355頁
八 第二項は、事務処理の特例を定める「条例」を制定し又は改廃する場合においては、あらかじめ市町村の長に協議することを都道府県知事に、義務付ける規定であり、ー省略ー
この場合、都道府県知事は事務を処理することとなる市町村の長と誠実に協議をする必要はあるが、「協議」は、市町村長の同意までを必要としない。これは、条例による事務処理の特例の制度が、住民の身近な事務は地域の実情に即し、市町村の規模能力等に応じて、基礎的な地方公共団体である市町村に対して、可能な限り多く配分されることが望ましいとの考え方に立って設けられたものであり、個々の恣意等によりこの制度の実行が決定的に左右されることとなることは必ずしも適切ではないと考えられることによるものである。

簡単に言えば「住民の身近な事務は市町村に権限移譲するのが合理的だが、キャパシティオーバーになったり政局判断で執行拒否されたら結局無意味なんでそうならないように協議しろ」ということを言っているのだと私は理解しています。

権限移譲について例えば机上で考えると以下のような場合があり得ると思います。

  1. そもそも市町村のマターとして不適切
  2. 時期的に忙しくてマンパワーが足りない
  3. 市町村の予算では不可能

このような問題がある県の条例が、わざわざ県議会を通して制定されるというのは何ともバカバカしいでしょう。だから協議しろ、という理屈は、一般的な感覚からも正当だと思います。

では、今回の沖縄県の県民投票条例の場合はどうでしょうか?

予算は県が確保してる

重要なことは、今回の沖縄の県民投票事務の予算は市町村が「捻出」するようなものではなく、県の予算で行われるということです。それを会計上、配分先の市のものとして扱う決定が必要なだけの話です。

したがって、予算的に不可能であるという理由は成り立ちません。

また、予算が出されても時期的にマンパワーが足りなかったり質的に適任者が不在だったりして執行不可能になる場合も観念できますが、今回の市町村側からはそのような主張はなされていません。客観的に見ても投票事務程度の負担で市町村の機能に支障が出るなどという事態にはならないと言えます。

県民投票事務は市町村が行った方が理に適っているので、市町村のマターではないとは言えません。

政局判断での執行拒否は見解が対立している場合にはどうしようもないので、市町村側に裁量があるか否かの話になります。

したがって、『条例制定前に「協議」が求められている趣旨』に反する事態が発生するということは、今回の場合は想定できないのです。

以上より、「協議」がなかったという地方自治法上の違法があったとしても、それは県民投票条例の成立を無効化するまでの重大な違法であるとは、決して言えないと思うのです。

条例執行に際しての違法と市の違法と憲法違反

玉城知事は辺野古移設反対派の元へ行って投票の意義を述べるなど、県民投票条例11条の中立義務に反した行動をしています。

しかし、条例には罰則が設けられていませんし、この違法によって市町村の県民投票事務の執行拒否を正当化する効果が直ちに発生するということは厳しいのではないかと思います。

ただ、市町村側の主張としてはとても理解できるものではあります。

まとめ:知事の中立義務等の違反が争点か

知事・県側の違法事実がこれ以上あるとすれば、かなり状況は変わってくるでしょう。

今のところは、執行拒否を正当化するには「弱い」と思わざるを得ません。

なお、市の執行拒否の違法が住民からの請求で憲法違反に問われることを直ちに導くものであるかはよくわかりません。請求としては別々に考えることもあり得るので、4つの問題があると一応は整理できるのではないでしょうか。

以上

沖縄辺野古移設の県民投票事務の拒否をする5市の政治的正義

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沖縄県の県民投票条例(辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例)による投票事務を5つの市が拒否している問題。

この件の政治的妥当性について書いていきます。

県民投票に限定した法的な側面からの分析は以下参照

法的妥当性と政治的妥当性、県民投票と辺野古移設の次元

私はこの問題を法的妥当性政治的妥当性という2つの観点に加え、県民投票と辺野古移設そのものの次元を分けて見ています。

法的妥当性とは、法に照らして違法か、或いは適切か否かという話です。

他方、ここでの政治的妥当性はダブルスタンダードではないことであったり、発言の一貫性という観点からの価値判断です。

法的妥当性

県民投票の実施に関して言えば、地方自治法177条2項の解釈や252条の17の2第2項の「協議」の有無に争いがあるものの、私は沖縄県側=県民投票賛成派に理があると考えています。県民投票は全県に跨る事務であり、予算は県が用意してるので市町村が「捻出」するようなものではないから、「できる」という文言になっていることだけで市長村長に拒否する裁量があるとは思えないからです。

県民投票事務に関する立法課題

南部氏が指摘するように、県民投票の事務が地方自治法上の第二号法定受託事務として規定されるようになれば、将来の解釈問題はなくなります。市町村は投開票事務を拒否することができなくなります。

この場合、地方自治法252条の17の2を介するのではなくなるので「協議」の有無は問題にならなくなるでしょう。ただ、仮に改正されたとしても今般の沖縄の事案は旧法に則って行われるとすれば、「協議」の不存在という法的瑕疵が、市町村が選挙事務を行う義務の不発生という効果を生むかどうかという問題は残ります

辺野古移設の賛否の次元での法的妥当性

しかし、これは元々は辺野古移設に賛成するか否かの話です。

県民投票の結果に日本政府が従うべき法的拘束力はありませんし、沖縄県が埋め立て工事の承認を撤回したことに法的な合理性は無いでしょう(だからこそ県民投票で誤魔化そうとしている)。

したがって、県民投票レベルの話では県側(デニー側)に法的妥当性があるが、辺野古移設(埋め立て)の是非というレベルでは、県側(デニー側)に法的妥当性はありません。

県民投票の政治的妥当性「少数者の意見」を盾にする玉城知事

結論から言えば、県民投票の次元で言えば、政治的妥当性は市側=県民投票拒否派にあると考えています。

玉城デニー(康裕)知事は、日本国とアメリカが合意した辺野古移設について「沖縄の民意を聞け」と言ってきました。

「沖縄県の自主性を尊重しろ」「少数派の声にも耳を傾けろ」と言ってきました。

この主張自体がおかしいのですが、仮にその理屈が正当だとします。

であるならば、辺野古の地元である名護市の声を沖縄県は聞くべきであり、普天間基地のある宜野湾市の声を沖縄県は聞くべきである、ということになります。

これは玉城デニー側が勝手に持ち出してきた、法的な問題とは別個の話なので、たとえ市側が県民投票を拒否することが違法だとしても、それは政治的には「少数者の意見」「地元の自主性」を蔑ろにしたということで、玉城デニー側に理が無いということは明らかでしょう。

地方自治法と県民投票条例違反の玉城デニー知事

県側は地方自治法252条の17の2第二項の「協議」を行ってません。 

さらに、玉城デニー知事自身が、辺野古移設反対派の元に行って活動していました。

これは県民投票条例11条違反です。

11条 知事は、県民が賛否を判断するために必要な広報活動を行うとともに、情報の提供に努めなければならない。
2 前項の広報活動及び情報の提供は、客観的かつ中立的に行うものとする。

これらの違反が直ちに県民投票条例の成立を法的に無効にしたり、投票実施の違法性を構成するとは思えませんが、少なくとも価値判断において「正統性」は失われていると言ってしまえるでしょう。

したがって、5市が投票事務の負担を反対していることについては、政治的な正当性があると言えます。「法に基づいた政治」を持ち出したところで、県民投票実施側の玉城デニー知事の側が法に基づいていないのです。

憲法改正の国民投票をにらんだ場合の問題

ところで、憲法改正の国民投票の事務は「第一号法定受託事務」として都道府県や市長村は拒否できません。予算も国が出すことになっています(項目ごとの基準が議員選挙みたいに定められていないという問題はありますが)。

この場合に投票事務を担う自治体が事務の負担を拒絶するということは、法的にはありえません。今現在沖縄で発生している議論は、一応は地方自治法の解釈が問題になっていますが、憲法改正の国民投票の場合は解釈の余地がありません。

ただ、政治的な牽制、揺さぶりとしては、今回の沖縄の5市の動きが引き合いに出されて利用される危険は拭えません。

憲法改正の国民投票について、改正反対派が多い都市の議会議員が「投票事務の予算に反対する」と表明するという事態を誘発しかねません。いや、実際に議員が議会で否決することは無いでしょうが、思わせぶりな発言をしたりすることは考えられます。

また、議員でなくともTVのコメンテーターが今回の沖縄の5市を引き合いに出して「あのときも地方自治を根拠に反対したのだから憲法改正の国民投票事務も同じだ」とか言い出しそうな気がしてなりません。

「そんなバカなことを言うはずがない」と思うなかれ、法的にありえない主張をするというのは、「あちら側」の常套手段でしょう。

改憲議論の呼びかけが「憲法尊重擁護義務に反する」と主張されたくらいですからね。

追記:裁判所が5市を敗訴させた場合

訴訟になって裁判所が5市を敗訴させた場合はどうでしょう?

上記の懸念は『裏返って』国民投票事務を拒否することは益々考えられなくなります。

では、5市は「それ」を狙っているのか?

そんなことはないでしょう。

今回の件で裁判所が5市を敗訴させ、投票事務の拒否はできないような雰囲気が出ようが、反日勢力はそんなことでは怯まないでしょう。関係ない事柄です。

現実に憲法改正の国民投票の時が来れば、いつにも増して発狂ぶりを見せてくると考えた方がいいでしょう。

県民投票で意思表示をするということ

私は、沖縄県の県民投票はやればいいと思います。

「法的拘束力の無いものについて財政が不健全であるなか余計な経費を使ってまでやる必要は無い」と言う主張も分かりますが、「他に予算を回せ」という主張は憲法改正の国民投票でも同じこと言われますよ。

「いや、国民投票は結果に法的拘束力があるから意味があるんだ、沖縄の県民投票とは異なる」という主張はその通り、ぐうの音も出ない反論です。

しかし、大多数の一般国民はそういう違いを理解できないでしょう。

主体性の発揮、意思表示をしたいという欲求は根源的なものです。それを「法的拘束力がないから」と言っても意味がなくて、意思表示の機会があるのであればやれば良い。

その意味がどれだけあったのか?ということは後で沖縄県政の評価をする際に考慮すればいいのではないかと思います。

まとめ:普天間の危険性除去というそもそも論

県民投票で必ず辺野古移設反対派が勝つとは決まってません。

移設反対派が多数でも、埋め立てには法的な意味はありません。

普天間基地の危険性除去という辺野古移設の目的の正統性は、いかなる結果になろうとも失われません。

たとえ県民投票の次元では法的正当性があるとしても、普天間の危険性を固定化・長期化する玉城デニー県政の判断には、法的にも政治的にも正当性はありません。

以上

公開ダイエット(ハンガーストライキ)元山仁士郎君は健康保険不適用?

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公開ダイエットをしていた元山仁士郎くんがドクターストップされました。

この場合に病院にかかった際の医療費って、保険適用なんですかね?

ハンガーストライキでの入院は保険適用外か

この根拠は健康保険法にあります。

健康保険法 第六節 保険給付の制限
第百十六条 被保険者又は被保険者であった者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は、行わない。

元山君は故意に給付事由を生じさせたと言えます。

ということで、元山君が保険給付を受けることは健康保険法上、許されてません。

まぁ、仮に給付を受けたとしても「不摂生で病気になった人と比べてどうなの?」という気がしないでもないので、そこをぐちぐち言うのは止めますが。

元山仁士郎君はハンガーストライキをしたのか?

一つ疑問ですが、元山君のやったことは「ハンガーストライキ」なのでしょうか?

4日間、水と塩(砂糖もか)しか摂らない生活をしたということですが

単なる絶食ダイエットではないでしょうか?

ハンストの定義はなさそうなのですが、4日間というのはハンストと言ってはいけない気がします。

香港の「雨傘運動」もたった5日のハンストだった

香港デモ、発起人が「降伏」 学生リーダーは「絶食宣言」でハンガーストライキを開始【雨傘革命】 | ハフポスト

一国二制度」に反対して行われた香港の学生によるハンガーストライキ

実は、こちらも2014年12月1日から6日正午までの正味5日間でした。

学生の自称ハンスト」という点では、同レベルだったということですね。

「一国二制度」については以下の記事でまとめています。 

16年間のハンスト?

16年間のハンストに終止符、インドの「鉄の女」が政界進出へ 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

こんなの見つけました。

これが事実かどうかは不明ですが、超超長期間、点滴だけでハンストを行ったといわれる事例があります。

流石にここまでやらないとハンストじゃない、などとは言いませんが、覚悟の違いを感じざるを得ません。

よくある勘違い:ボクサーの減量とラマダンは飯食うよ

ハンガーストライキに関連してボクサーの減量とラマダンが引き合いに出されてます。

しかし、いずれも食事をするので、比較対象として適切かは疑問です。

ボクサーの減量期は食事制限をしますが、一切の食事をしないわけではなく、低炭水化物、高たんぱくの食事と水の摂取を控えるというだけです。

イスラム教徒のラマダンも、日の出から日没までは水以外を摂取しないというものであって、夕食はたくさん食べてます。

まとめ:元山君はリバウンドに気を付けてね☆

4日間だけなら私も水と塩と砂糖以外摂取しない経験(40度の高熱で水とポカリのみ)はありますし、ツイッターのTLでも同様の経験をしている人をちらほら見かけました。

死にはしません。

まぁ、それは身体にダメージが残ることなので、やらない方がいいですね。

元山君はリバウンドに気を付けて「健全な」生活をしてほしいと思います。

以上

66歳男性「写楽」の侮辱匿名ブログの魚拓画像とヘイトスピーチ報道

侮辱罪、写楽、66歳男性、ヘイトスピーチ

66歳の男性が匿名ブログで川崎市の中学生を侮辱したとして科料が命じられた件。

実際の内容を確認してたら報道から察する以上に胸くそが悪いものでした。

その内容の紹介と、ヘイトスピーチについて改めて整理していきます。

66歳男性に侮辱罪の報道

中学生を匿名ブログで中傷 66歳男性に侮辱罪で略式命令魚拓はこちら

「写楽」ではこの新聞記事や生徒の本名を掲載した、「在日という悪性外来寄生生物種」というブログ記事を公開。

「日本国内に『生息』している在日」「おまエラ不逞朝鮮人」「チョーセン・ヒトモドキ」「通名か本名に統一しろよ」などという言葉を並べていたという。

匿名ブログ「写楽」の記事が問題のようです。

実際はどうだったでしょうか。

現在は消されているので魚拓から確認します。

匿名ブログ「写楽」の魚拓画像

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ブログの紹介に「日本が大好き」と書いて何かの免罪符にしている人はネット上にたくさんいますが、本当にやめてほしい。

私は報道を見て「非行少年か何かに対するものなのか?」と思っていたらそうではありませんでした(いや、たとえ犯罪者に対してであってもダメですが)。

普通の中学生に対してわざわざ親も含め氏名を特定して晒すのは完全にダメでしょう。

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侮辱の文言と報道で紹介されている文言

さて、実際にどういう文言が侮辱表現と認定されたかは定かではありませんが、報道には載っていない侮辱表現として

  1. 「〇〇〇・バクテリウム」
  2. 「通名などという在日専用の犯罪用氏名」
  3. 「ゲテモノ」

などが挙げられると思います(漏れがあるかもしれない)。

今回、報道された文言の選択はかなりまっとうなものだと思いますが、この種の報道においてはもっとも軽微と思われる文言や、それ単体では侮辱等にならない文言だけが紹介されることが多いです。

今回もなぜか「通名か本名に統一しろよ」という文言が紹介されていました。

ただ、もしかしたら検察がこれも含めた全体として侮辱罪を構成する文言の一つとして扱ったのかもしれません。この文言単体が侮辱罪を構成すると考えるのは間違いでしょう。

弁護士ドットコムでは『「如何にもバカ丸出しで、面構えももろチョーセン人面」「見た目も中身ももろ醜いチョーセン人!!!」などと記載した。』とあります。魚拓はこちら

ヘイトクライム・ヘイトスピーチの問題

このような事件が報道されると「罰が軽すぎる」ことや「ヘイトスピーチ規制法に罰則が無いこと」が問題視される傾向にあります。

しかし侮辱罪で捕捉できる上、科料の法定上限が低いことが問題視されるべきです。

別の法律である【ヘイトスピーチ規制法=本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律】でわざわざ別個の罰条を設ける目的は何でしょうか?

ヘイト規制法は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とあるように「いわゆる純日本人」に対する言動は明示的には捕捉対象になっていません。

今回の事例で言えば、たとえば「在日」という文言を「チョッパリ(韓国語で日本人の蔑称)」に置き換えた場合、ヘイト規制法の捕捉対象になるかどうかは、条文の文言からは解釈問題になってしまいます(絶対に適用されないと言い切れるかは附則があるので不明)。

日本人に対するこのような侮蔑発言は韓国の掲示版を見れば至る所で見つかります。

魚拓はこちら

「ヘイトスピーチの定義」という誤魔化し

上瀧浩子弁護士:日本人は誰でも殺せ、ヘイトスピーチ

一部界隈では広義の「ヘイトスピーチ」ないし「差別」の定義や用語法として

  1. 変えられない属性に対するもの
  2. 少数者に対するもの
  3. 劣位にある集団に対するもの

などという理解があります。

しかし、1番であれば国籍は変えられますし、日本人の血を引いているという属性は変えられないので「日本人に対するヘイトスピーチ」もあり得ることになります。

また、2番がヘイトスピーチの要件であるとするならば、その境界線はどこにあるのでしょうか?

日本には60万人以上の韓国人が住んでいますが、中国人と並んで外国籍者の中では最大のグループです。日本人との関係で少数者だというなら、たとえば日本のある地方で外国人が大量に移住し、日本人よりも外国人が多くなったら、その外国人は少数者ではなくなるので、そのような外国人に対する憎悪表現は「ヘイトスピーチ」ではなくなる、ということで良いのでしょうか?

日本国内で中国人が台湾人に「民族浄化」的な発言をしてもヘイトスピーチではないとでも言うのでしょうか?

3番の劣位にある集団も何を持って「劣位」とするのか2番と同様の問題があります。

結局のところ、広義のヘイトスピーチの定義として上記1~3の要素を持ち出す者は、何がヘイトにあたるか?ということを恣意的に使い分けているに過ぎません。

用語の意味を恣意的に使い分けているのは一部のLGBT界隈も同様です。

人種差別撤廃条約の人種差別の定義とヘイト

あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約

第1条

1 この条約において、「人種差別」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう。

ヘイト」とは異なる「人種差別」について。

人種差別撤廃条約を見れば、「人種差別」はマイノリティ・マジョリティ関係なく適用されることになります。

同条約の4条には「人種的優越の思想」に基づく憎悪表現=ヘイトに対する処罰規定を設けるよう規定されていますが(日本は留保)、「優越の思想」であって、現実的に優劣が発生していることがヘイトの要件や要素であるとは書いてません。

このように、一部界隈が言う「ヘイトスピーチの定義」は根拠がありません。

国籍による別異取扱いは人種差別でもヘイトでもない

人種差別撤廃条約Q&A(外務省)

Q4 「国籍」による区別は、この条約の対象となるのですか。

A4 この条約上、「人種差別」とは、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づく」差別と定義されていることより、「国籍」による区別は対象としていないと解されます。この点については、第1条2において、締約国が市民としての法的地位に基づいて行う区別等については、本条約の適用外であるとの趣旨の規定が置かれたことにより、締約国が行う「国籍」の有無という法的地位に基づく異なる取扱いはこの条約の対象とはならないことが明確にされています。
 ただし、「国籍」の有無による異なる取扱いが認められるかは、例えば、参政権が公権力の行使又は国家の意思の形成に参画する行為という合理的な根拠を持っているように、このような取扱いに合理的な根拠のある場合に限られ、例えば、賃貸住宅における入居差別のように、むしろ人種、民族的、種族的出身等に基づく差別とみなすべきものは、この条約の対象となると考えられます。

重要なことが無視されがちですが(報道状況としては意図的に隠ぺいされていると言ってよい)、国籍による別異取扱いは人種差別でもヘイトでもありません。

これは人種差別撤廃条約で明確になっていますし、外務省も明言しています。

政策論でどうしても国籍の別に触れざるを得ない場合に、それすらヘイトだと言って言いがかりをつける輩が居ますが、そうした者に惑わされないようにしましょう。

昨年話題になった内閣府の国政モニターの件もその点が無視されがちでした。

まとめ:ヘイトスピーチ報道の在り方

「ヘイトスピーチ」「人種差別」の事件が起きたとき、報道の多くは比較的軽微な文言を抽出して報道するがために、萎縮効果を発生させる可能性があります。

また、「ヘイト」や「人種差別」の用語法についての正しい理解が広まっていないせいで、恣意的な解釈による用語法を広める連中が蔓延っています。

表現の自由等を行使できるように、正確な理解が広まってほしいと思います。

以上

沖縄県辺野古米軍基地建設の県民投票条例の不実施は違法か?

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沖縄県の県民投票条例に基づく投票事務について、41の基礎自治体のうち5つの自治体が執行を拒否している問題。

  1. 市町村側が投票事務を拒否することは可能か、それは違法・憲法違反か
  2. 県側が地方自治法上の「協議」をしておらず違法か

1と2は2が前提問題なのか、別個の問題なのか分かりませんが、ちょっと備忘録的に整理していきます。

沖縄県の県民投票条例と地方自治法

県民投票の事務は県ではなく基礎自治体たる市町村が行うこととされています。

沖縄県の県民投票条例(辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例)

(県民投票事務の執行)

第3条 県民投票に関する事務は、知事が執行する。
ー省略ー
第13条 第3条に規定する知事の事務のうち、投票資格者名簿の調整、開票及び投票の事務の実施その他の規則で定めるものは、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の17の2の規定により、市町村が処理することとする。

これは地方自治法上、「条例による事務処理の特例」と呼ばれています。

地方自治法 第四節 条例による事務処理の特例
(条例による事務処理の特例)
第二百五十二条の十七の二 都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部を、条例の定めるところにより、市町村が処理することとすることができる。この場合においては、当該市町村が処理することとされた事務は、当該市町村の長が管理し及び執行するものとする。
2 前項の条例(同項の規定により都道府県の規則に基づく事務を市町村が処理することとする場合で、同項の条例の定めるところにより、規則に委任して当該事務の範囲を定めるときは、当該規則を含む。以下本節において同じ。)を制定し又は改廃する場合においては、都道府県知事は、あらかじめ、その権限に属する事務の一部を処理し又は処理することとなる市町村の長に協議しなければならない。

【条例の制定に際して市町村の長に「協議」をしなければならない】とあります。

最初にこの「協議」があったのか?について調べてみます。

条例による事務処理の特例における「協議」

これに関しては何か判例があるかどうか見つけられませんでした。

ただ、少なくとも解説書には以下のように書かれています。

新版 逐条地方自治法 第9次改訂版 [ 松本 英昭 ]

1355頁
八 第二項は、事務処理の特例を定める「条例」を制定し又は改廃する場合においては、あらかじめ市町村の長に協議することを都道府県知事に、義務付ける規定であり、ー省略ー
この場合、都道府県知事は事務を処理することとなる市町村の長と誠実に協議をする必要はあるが「協議」は、市町村長の同意までを必要としない。これは、条例による事務処理の特例の制度が、住民の身近な事務は地域の実情に即し、市町村の規模能力等に応じて、基礎的な地方公共団体である市町村に対して、可能な限り多く配分されることが望ましいとの考え方に立って設けられたものであり、個々の恣意等によりこの制度の実行が決定的に左右されることとなることは必ずしも適切ではないと考えられることによるものである。

1358頁
四 [解釈]の八において述べたように、第二項の「協議」は、市町村長の同意までを必要としないものであるが、運用上は、都道府県と市町村との間で十分協議し、両者の合意の上で市町村が処理することとなると思われる。なお、協議を行う場合は、都道府県の事務権限の配分先である市町村との個別の協議が必要である。

  1. 知事は市町村長と誠実に協議をする必要がある
  2. しかし、同意までを必要としない

「誠実に」がどこまでのものを要するのかは不明ですが常識的に判断されるでしょう。

同意が不要であるというのはその通りだと思います。

この記述ぶりを見ると単なる「努力規定」ではなさそうな雰囲気がありますが、そこは明言されておらず、解釈の余地が残っているようです。

なお、ここでは「個別の協議が必要」とありますが今回はあてはまらないと思います。

解説書の説明は都道府県から一つの市町村に対する関係で書いてあるからです。

沖縄県の県民投票事務は、県内41の全ての市町村が対象ですから事情が異なります。

物理的にすべての市町村と面会しての協議は困難です。

よって、この場面では書面等の形にならざるを得ないと思います。

県側は誠実に協議をしたのか?

沖縄県の玉城デニー(玉城康裕)知事はどう言っているか?

沖縄県民投票:デニー知事のコメント全文「市町村は執行義務がある」 | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス

4 そのため、条例の制定にあたり、県民投票に係る事務の一部を市町村に移譲するため、県は、直接請求を受けた平成30年9月5日と同日付けで、地方自治法第252条の17の2の規定に基づき、市町村長への協議を行ったところです。

こちらのコメントは今のところ沖縄県の広報課や県民投票推進課、知事室のWEBでは確認できません。

では、市町村側はどう考えているのか?

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平成31年1月11日八重山日報

石垣市の中山義隆市長は条例制定前に地方自治法の「協議」が無かったとしています。

地方自治法第252条の17の2違反の違法だが…

玉城デニー知事の『9月5日に協議を行った』とは、具体的に何をしたのでしょうか?

この点の情報が無いので推測ですがおそらく書面を送っただけでしょう。

41の市町村が一堂に会したわけでもないのですから。

既述の通り、同意は不要ですが、「誠実な協議」が必要と考えられています。

仮に書面を1回送っただけなら「誠実な協議」とは言えないでしょう。

何度かやりとりをする、或いは返信が無いなら催促する。これくらいはやるべきです。

よって、沖縄県側が地方自治法上の「協議」を怠っているのではないでしょうか?

しかし、「協議」が無いことが違法だとしても、それによって市町村が投票事務の執行を拒否できるかどうかは別問題のような気がします。

次に、市町村側が投票事務を拒否することは可能か、それは違法・憲法違反かについて情報を整理していきます。

不実施の違法確認と憲法違反の指摘について

県民投票「適切な措置を」 沖縄県が市町村に「助言」 - 産経ニュース

沖縄県は19日ー中略ー県内市町村に投開票事務を行うよう求める「技術的助言」を行った。地方自治法に基づく措置でー中略ー関連予算を可決していない21市町村に通知した。

 技術的助言では「県民投票の円滑な実施に向け、適切な措置を講じるようよろしくお願いします」とした。また、県民投票の関連経費を予算に計上し、支出することが「適当であると考える」と説明した。

技術的助言に法的拘束力はないが、市町村が従わなければ是正要求や違法確認訴訟を提起することができる

投票事務を行うためには予算が必要ですが、その予算を計上しなさいということです。

この技術的助言の法的根拠は木村教授や井上教授が指摘しています。 

木村草太氏が緊急寄稿 「県民投票不参加は憲法違反」 | タイムス×クロス 木村草太の憲法の新手 | 沖縄タイムス+プラス

宮崎氏解釈を疑問視 法専門家「予算執行は義務」 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース

地方自治法177条と予算原案の執行

第百七十七条 普通地方公共団体の議会において次に掲げる経費を削除し又は減額する議決をしたときは、その経費及びこれに伴う収入について、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付さなければならない。
一 法令により負担する経費、法律の規定に基づき当該行政庁の職権により命ずる経費その他の普通地方公共団体の義務に属する経費
ー省略ー
○2 前項第一号の場合において、議会の議決がなお同号に掲げる経費を削除し又は減額したときは、当該普通地方公共団体の長は、その経費及びこれに伴う収入を予算に計上してその経費を支出することができる。

地方自治法177条2項の「長は…経費を支出することができる」という規定。

予算原案の執行」と呼ばれることがあります。

「できる」という文言。「しなければならない」ではありません。

当該規定は任意に支出しない=投票条例による投票事務の執行を拒否することが可能かどうかで見解が分かれています。

木村教授や井上教授は不可能だという主張です。

今回の投票事務は市町村の【義務に属する経費】に当たりますから、この点に市町村の裁量は無いだろうと言われています。

また、玉城デニー知事もコメントで以下指摘しています。

沖縄県民投票:デニー知事のコメント全文「市町村は執行義務がある」 | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス

9 県としては、自治法第177条第2項の解釈について、義務に属する経費として再議に付したものであること、また、「できる」とされている規定は、権利等を与えられていると同時にその権利等を一定の場合には行使する義務をも負う、という意味も含むものと考えられ、市町村の長に裁量権を付与したものではない旨をご説明をしているところです。

10 県民投票条例の施行により、県及び市町村は、同条例の規定に基づき、県民投票に関する事務を執行する義務があるものであり、仮に当該事務を執行しない場合には、同条例及び地方自治法の規定に違反することになると考えております。

「できる」はあらゆる場合において首長が任意に原案執行したりしなかったりすることが可能なものではないという見解が示されています。

私見

私は、当該規定は義務に属する経費の場合においては、議会と首長の見解が異なって議会が予算案を否決したとしても首長は経費を支出できるという、予算執行方向の規定だと思います。177条は県の事務を市町村に委譲する際の予算取りの場面について、直接は想定していないのではないかと思われます。

なぜなら、義務に属する経費について、わざわざ議会が否決した補正予算を「再議」で検討させておいて、それが再度否決されたら市長がやっぱり「予算執行やーめた」と言い出すのは、なんだか『馴れ合い』『茶番』のような気がするのです。

形式論からも県民投票条例13条は、地方自治法252条17の2に基づき「市町村が処理することとされた事務は、市町村長が管理し執行するものとする」と規定されているので、義務に属する経費の場合には、裁量が生じると考えることはできないのではないでしょうか?

なので、条例13条、地方自治法252条の17の2、177条からは【その他の法的瑕疵が無い限り】市町村が県民投票の事務の予算執行を拒否することはできないことになるのではないかと思います。

留保をつけたのは冒頭で示したように「市町村側が投票事務を拒否することは可能か、それは違法・憲法違反か」という問題が「県側が地方自治法上の「協議」をしておらず違法か」という問題と別個なのか、後者が前提問題としてあって、そちらが違法なら予算執行義務が無くなるのか、ということがよくわからないからです。

今のところは後者が違法だとしても前者の判断に影響しないのではないかと思います。

まとめ:法的には市町村側が苦しい…気がする

  1. 県側は条例制定に際して地方自治法上の「協議」をしておらず違法
  2. しかし、この違法が市町村の投票事務を執行する義務を免除するものかは不明
  3. そうでないなら、市町村側が投票事務を拒否することは違法・違憲と思われる

これはあくまで法的な話です(しかもちゃんとした検証ではない)。

政治的な妥当性という観点からは、また別の評価がなされても良いと思います。

以上