事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

NHKの桜を見る会の記事が印象操作のお手本過ぎるので読んで欲しい

NHKの桜を見る会に関する記事で印象操作のお手本のような見事な記事がありました。

何がどう印象操作・誘導なのかを整理して紹介したいと思います。

 「桜を見る会」安倍首相の国会答弁と食い違う証言 | NHKニュース

「桜を見る会」安倍首相の国会答弁と食い違う証言 | NHKニュース別の魚拓

今回紹介するのは 2019年11月14日 20時02分に公開されたNHKの記事です。

まず、タイトルから「安倍首相の国会答弁と食い違う証言」という表記であり、まるで安倍側が虚偽の発言をしているかのような印象を一般的に受けるものになっています。

懇親会と会費徴収と政治資金規正法

まず「桜を見る会」の前日に「前夜祭」などと称して安倍総理大臣の後援会が都内のホテルで毎年、開いていた懇親会についてです。

NHKが入手した「桜を見る会」の案内文には、前日の懇親会について、安倍総理大臣の後援会が主催し会費は5000円だったと記されていて、ことしの懇親会に出席した女性は「850人ぐらいが出席していた」と証言しています。

最初に触れるのが前夜祭の事実関係。この部分は問題ありません。

政治資金規正法は、政治団体が会費を徴収して催し物を開いた場合には、その収支を政治資金収支報告書に記載することを義務づけています、政治団体「安倍晋三後援会」の収支報告書にはこうした懇親会の収支の記載はありません。

ここで、NHKは「会費を徴収」した場合には報告書に記載義務があるが安倍事務所は怠っている疑惑を指摘しています。

懇親会について安倍総理大臣は今月8日の参議院予算委員会で「各個人がホテルとの関係においてもそれはホテルに直接払い込みをしているというふうに承知している」と答弁し、会費は出席者がれぞれホテル側に直接支払ったと受け取れる説明をしています。

「出席者がそれぞれホテル側に直接支払ったと受け取れる説明」という部分。

これは安倍総理の発言の趣旨を分かった上で、敢えてそれと異なる方向に読者の認識をずらそうとしていることがうかがえる記述です。

どういうことか?

「参加者がホテルに直接払い込み」の法的な意味

あなたが飲み会の幹事だとします。

幹事は飲み会の代金を集めて一括でお店に支払うことが通常です。

その場では事実としては参加者⇒幹事⇒お店の順番でお金の受け渡しが発生します。

それは幹事にとって「参加者が渡したお金分の収入が発生した」と言えるでしょうか?

一定の場合には幹事は確定申告をしなければならないのでしょうか?

もちろん、そんなことはありませんよね。

幹事は単にお金をごく短時間の間に一つに取りまとめただけであって、収入を得たという処理にはなりません。

ですから、法的には参加者⇒お店にダイレクトに支払いが行われたとみる
※或いは前夜祭の話は参加者⇒旅行代理店 旅行代理店⇒ホテルという流れかもしれない

これが事実としての把握と法的な把握の違いです。

お店も特段に「幹事から徴収した」扱いにはしません。

事実としての行為と法的な行為の把握のズレを利用

さて、安倍総理が言っている「ホテルに直接払い込み」は法的な意味です。

それは11月15日に安倍総理が記者団に対する会見で述べています。

令和元年11月15日 「桜を見る会」(3)及び北海道大学教授の解放についての会見 | 令和元年 | 総理の一日 | ニュース | 首相官邸ホームページ

旅費、宿泊費につきましては、各参加者がそれぞれ旅行代理店に支払いし、夕食会費用につきましては夕食会場の入口の受付にて、安倍事務所職員が一人5,000円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受付終了後に、集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた、ということであります。

NHKは「出席者がそれぞれホテル側に直接支払ったと受け取れる説明」と、理解の仕方に事実面の捉え方と法的な捉え方があり得るが、現時点ではいずれにも確定していないという表記でした。この記述自体を責めることはできません。

しかし、後の記述との関係で、これは見事な印象操作に変わります。

ホテル側「主催者や代表者から一括で受け取る」

「桜を見る会」安倍首相の国会答弁と食い違う証言 | NHKニュース

「代金は一括で受け取る」「最低で1人1万1000円から」

数百人規模のパーティーの代金を出席者一人一人がホテル側に直接支払うことは可能なのでしょうか?

NHKは過去に懇親会が開かれていた都内の2つのホテルに取材しました。いずれも個別のケースについては答えられないとしましたが、「ANAインターコンチネンタルホテル東京」は「パーティーの代金は原則として出席者から個別に受け取ることはなく主催者や代表者から一括で受け取る」と説明しました。

 「ホテルニューオータニ」は「代金を個別に受け取るか一括かはケースバイケースで相談次第だ」と回答したうえで、会費5000円のパーティーのプランはあるかどうか尋ねたところ「パーティープランの最低価格は1人1万1000円からで値切り交渉などには応じられない」などと説明しました。

ホテル側は事実としての行為を説明するのでこのような説明にならざるを得ません。

これを見た一般人は、「安倍は嘘をついてるのではないか」と思う可能性が高いです。

特に、NHKの記事タイトル自体が「安倍首相の国会答弁と食い違う証言」となっている前提では、そのように理解する人が出るのが当然だと思います。

この文章の項目の見出しも「代金は一括で受け取る」とあり、安倍総理の「各個人がホテルとの関係においてもそれはホテルに直接払い込みをしている」という発言と齟齬が生じているということを言わんばかりです。

「パーティープランは1万1000円を下回ることはない」

「桜を見る会」安倍首相の国会答弁と食い違う証言 | NHKニュース

 「ホテルニューオータニ」は「代金を個別に受け取るか一括かはケースバイケースで相談次第だ」と回答したうえで、会費5000円のパーティーのプランはあるかどうか尋ねたところ「パーティープランの最低価格は1人1万1000円からで値切り交渉などには応じられない」などと説明しました。

NHKの当該記事中で最も作為的なものが感ぜられるのがこの部分です。

これは取材方法を意図的に調整していると考えられます。

1万1000円からの「パーティープラン」とはパッケージプランのこと

ホテルニューオータニのパーティープラン

ホテルニューオータニ公式HP

ホテルニューオータニの公式HPでは「パーティープラン」という項目があります。

たしかに1万1000円からの表記になっています。

要するに、これはホテルニューオータニ側がある程度の大枠を決め、その中で客が要望を伝えて微調整する「パッケージプラン」であって、値下げ交渉を行わないというのは当然なのです。

しかし、ニューオータニが用意している宴会プランはこのプランだけではありません。

ホテルニューオータニの宴会プランは「パーティープラン」だけじゃない

ホテルニューオータニのパーティープラン

ホテルニューオータニの宴会プランの一覧です。

上述の「パーティープラン」は、この中の一つに過ぎないというのが分かります。

下部に「ケータリングプラン」がありますが、この料金体系を見ると、人数が多くなればなるほど一人当たりの価格が下がるというのが分かります。

50名と100名とでは一人当たりの価格が1000円も異なります。

安倍事務所主催の「前夜祭」が850人の規模ですから、これを参考にして考えると十分にあり得る値段だということがうかがえます。

多局では「5000円でできるかは宴会の形式等次第」と回答したと報道

「5000円でできるかは宴会の形式などによる」

ホテルニューオータニはこのように回答しています。

NHKは、この回答を引き出せなかったのでしょうか?

NHKはなぜ他の宴会プランについて書かなかったのか?

疑問なのがNHKはなぜ他の宴会プランについて書かなかったのか?ということです。

ホテルニューオータニには1万1000円からのプラン以外にも多数のプランがあるのにもかかわらず、敢えて1万1000円からのプランの話しか書かなかったのは、単なる取材不足だったのでしょうか?

私はそうは思いません。

私は日ごろからNHKの記事を見ていますから、その速報性・取材密度・正確さについて尊敬しています。たまに五月雨式に追記される場合がありますが、それも必要な情報を順次追加しているという感じで、組織力を見せつけられている思いです。

そんなNHKが一般的なパッケージプランの価格についてだけ報じ、HP上で簡単にほかの可能性を認識でき、他局も報道している「5000円でできるかは宴会の形式などによる」というニューオータニの認識を報じなかったのは、なぜでしょう?

敢えて質問しなかったか、ワザと1万1000円のプランだけ書いたか

2パターンあると思います。

  1. 最初からパッケージプランについてのみ質問して取材を終えた
  2. 5000円でできるかは形式によると聞いたが敢えてそれは書かなかった

いずれも記事中に書かないことによって「嘘をついた」ことにはなりません。

こうやって、事実のみを報じることで読者の認識を誘導する記事が完成します。

締めの違法疑惑と偏向報道批判回避 

NHKの記事の最後には「政治資金収支報告書への記載漏れ たびたび問題に」という項目で、政治団体の催しで政治資金収支報告書への記載漏れが生じたケースとして「菅原一秀後援会」のバス旅行、工藤彰三衆議院議員の政治団体「彰友会」での総会・報告会の収支が不記載だった事例を紹介しています。

当初の説明と異なる結果となったとして、今回の安倍事務所の対応もそうではないかと読者に思わせる書きぶりになっています。

そして、最後に立憲民主党の近藤昭一元副代表の政治団体の不記載の事例も出し、「偏向報道」との誹りを免れる形を整えようとしていることが伺えます。

まとめ

  1. タイトルと見出しで記事の理解の方向性を限定
  2. 事実としての行為の把握と法的な事案の把握のズレを利用した印象操作
  3. 容易に他の可能性を確認できるハズなのに、わざわざパッケージプランの料金体系だけを記述する誘導
  4. しかし、嘘は書いていない
  5. 他の類似事案を紹介して違法の印象を与える構成
  6. 申し訳程度の野党の事例で「偏向報道批判」回避

このNHKの記事は印象操作の教科書として記憶にとどめたいと思います。

実は他の新聞社の記事でも桜を見る会に関する記事は同様の手法が行われていますので(特に上記2と3)、読んでみるといいでしょう。

以上

ツイート時刻変造問題調査チームの報告書が公開

ツイート時刻変造問題調査チーム報告書

質問通告漏洩問題の野党合同ヒアリングで資料掲載された高橋洋一氏のツイート。

その時刻が米西海岸時間になっており、それを前提に「事前漏洩していた!」と森ゆうこ・今井雅人・原口一博・柚木道義議員らが騒いでいた問題について、調査報告書が出されました。

ツイート時刻変造問題調査チームの報告書が公開

「ツイート時刻変造問題調査チーム」ヒアリング開催のお知らせ

191114「ツイート時刻変造問題調査チーム」調査報告書.pdf - Google ドライブ

「ツイート時刻変造問題」について時系列による経緯説明と、11月1日のツイート時刻変造問題ヒアリングの議事録を元に作成されています。

森ゆうこ・今井雅人・原口一博・柚木道義議員らは逃亡

この報告書は11月1日に開催されたツイート時刻変造問題ヒアリングの議事録を元に作成されていますが、当日は森ゆうこ・今井雅人・原口一博・柚木道義、各議員らを呼んだのに来ませんでした。

ツイート時刻変造問題調査チームの調査報告書にもあるように、単純ミスならそうであったと説明して謝罪すればそれで良いのに、それすらしないで来ないというのは、単純ミスではなく意図的な変造、つまり捏造であるという疑念が更に強まります。

野党「質問通告事前漏洩調査チーム」の報告書は未だ

野党「質問通告事前漏洩調査チーム」の報告書は未だ作成されていないようです。

このまましれっと逃亡するつもりでしょうか?

以上

「田崎史郎が久兵衛の寿司が出てると発言」はデマ:塩村あやか議員が拡散

 

田崎史郎が久兵衛の寿司と発言したソースというデマ

「田崎史郎氏が銀座久兵衛の寿司が出てると発言した」

というデマが拡散されており、立憲民主党の塩村あやか議員が加担しています。 

「田崎史郎が久兵衛の寿司が出てると発言」 というデマ

魚拓

「田崎史郎氏が久兵衛の寿司が出てると発言した」というのは、「情報源として田崎氏がお墨付きを与えた」という趣旨で発言されています。

このツイートを塩村あやか議員は参考にし、のちの発信に利用しています。

ツイートの経緯全体を整理します。

塩村あやか議員、匿名アカウントのツイートを拡散

f:id:Nathannate:20191116100829j:plain

塩村あやか議員のツイッターアカウントのプロフィールページ(11月16日魚拓)

このリツイートまでの経緯を以下に整理します。

魚拓

このツイートに対する引用リツイートを匿名アカウントである@sangituyamaが行いました。上記ツイートは11月14日のテレビ番組での田崎氏の発言を紹介していますが、「高級寿司」という部分は実際には発言していません。

魚拓

魚拓

そして、一連のツイートを参考にした塩村あやか議員が以下のツイートをしました。

魚拓

魚拓

塩村あやか議員は「田崎史郎氏が久兵衛の寿司が出てると発言した=情報源だ」という認識でいるということが分かります。

しかし、これは明確にデマです。

田崎史郎の11月14日のモーニングショーでの発言書き起こし

11月14日、羽鳥慎一モーニングショーでの田崎史郎氏の久兵衛発言

11月14日羽鳥慎一モーニングショーより

前項で最初に挙げたツイートが紹介した田崎氏の発言は、11月14日の羽鳥慎一モーニングショーでの発言です。

番組では、パネルを用いて黒岩たかひろ議員の発言として「久兵衛の寿司がでていた」という発言を引用しており、そうした番組進行があった前提において、田崎史郎氏が発言しているという事が分かります。

発言を書き起こします。

田崎 これね、聞いてみますと、立食パーティーなんですね。で、テーブルがいくつもあって、その中に寿司があったかもしれない。ですけれども、850人の方々に全員に久兵衛の寿司を出しているわけじゃないわけですね。当たり前のことながら。で実際にこういうときに食事を出すのは、850人集まられたとしても人数の半分くらいしか食事を出していないんですね。だからニューオータニも損しないし、かつ、領収書はニューオータニから参加された方から切られているんですね。領収書は切られているってことで、そこではね、法的な問題は生じないっていうことなんです。

田崎氏は「その中に寿司があったかもしれない」という留保をつけた上で発言。 

「高級寿司」という発言もありません。

したがって、「銀座久兵衛の寿司が出ていると田崎史郎氏がお墨付きを与えた」「田崎史郎氏が根拠づけた」などという事実はありません。

番組進行を崩さない形で留保をつけて発言しているのですから。

塩村あやか議員、立憲民主党は「から騒ぎ」をどうするのか

塩村あやか議員と所属する立憲民主党は、この「から騒ぎ」をどうするのでしょうか?

匿名アカウントのいいかげんなツイートを信じてリツイートしているという行動を改めない限り、同様の間違いを起こし続けるでしょうね。

以上

塩村あやか議員「久兵衛の寿司付きで5000円!」とから騒ぎ 桜を見る会

魚拓

立憲民主党の塩村あやか議員がホテルニューオータニで行われた安倍事務所主催の桜を見る会の前夜祭に関し、「久兵衛の寿司が本質ではない」とツイートしました。

しかし、前には「久兵衛の寿司付きで5000円!」と、から騒ぎをしており、到底説明可能な態度であるとは言えません。

塩村あやか議員「久兵衛の寿司が本質ではない」⇒「久兵衛の寿司で5000円!」とから騒ぎ

魚拓

塩村議員はこのように言いますが…

魚拓

同じ日の数時間前には5000円という参加費について「安すぎる」というニュアンスであり、その理由として「久兵衛の寿司」を挙げてます。

彼女が「久兵衛の寿司」を桜を見る会の前夜祭の参加費について本質的要素として認識していたことは明らかですから、

桜を見る会の前夜祭参加費の法的な話と事実の話を混同

  1. 「総理の話では支払いは直接ホテルに個々の参加者が」
  2. 「参加者の話は受付は安倍事務所」
  3. 未領収なのにホテルが領収書を束で渡す事があるのだろうか

1は法的な意味、2は事実としての意味であるということが混同されています。

3は信頼関係があるから行っているんでしょう。

桜を見る会の前夜祭に関する安倍総理の会見を聞けばわかる話です。

安倍事務所が5000円を集金し、ホテル名義の領収書を手交し、現金をホテル側に渡した」

令和元年11月15日 「桜を見る会」(3)及び北海道大学教授の解放についての会見 | 令和元年 | 総理の一日 | ニュース | 首相官邸ホームページ

旅費、宿泊費につきましては、各参加者がそれぞれ旅行代理店に支払いし、夕食会費用につきましては夕食会場の入口の受付にて、安倍事務所職員が一人5,000円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受付終了後に、集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた、ということであります。

なぜ法的な話になるかというと、「収支が発生」すれば、政治資金規正法によって、政治資金収支報告書に記載する義務が発生しますが、それが無い場合には記載義務は無いからです。

たとえば、飲み会の幹事が参加者からお金を集めてお店に渡す行為を考えてください。

いちいち幹事に収入が発生して見せに幹事から支払ったという処理はしないですよね?

それをやったら確定申告しなきゃいけなくなる場合も出てくる。そんなことはあり得ませんよね、常識的に考えて。

ですから、事実としてのお金の動きとしては「参加者⇒安倍事務所⇒ニューオークラ」という順番であっても、法的には「参加者⇒ニューオークラ」と捉えることになるわけです。

事実としての事象と法的な把握の仕方に若干のずれがあるというのは日常茶飯事です。

たとえば、営業マンが契約をとってきたとして、その効果は会社に帰属します。

会社が相手先と権利義務関係を結ぶことになり、営業マンが個人として契約関係を結ぶことにはなりませんよね?それと同じことです。

塩村あやか議員のから騒ぎの原因:情報源は大丈夫なのか

塩村あやか議員、匿名アカウントのツイートをソースにしてしまう

塩村あやか議員のツイッターアカウントのプロフィールページ(11月16日魚拓)

塩村あやか議員は桜を見る会に関する情報収集を匿名アカウントのツイートなどで得ているようです。そのこと自体は否定する気はありません。

しかし、このツイートが引用しているツイートで「田崎史郎氏が久兵衛の寿司がでたとテレビでいっていた」という事実は確認できません。

以上

ホテルニューオータニ 桜を見る会前夜祭は久兵衛の寿司じゃなかった

f:id:Nathannate:20191116004348j:plain

画像出典:銀座久兵衛HP,ホテルニューオータニHPから加工して作成

安倍晋三事務所主催でホテルニューオータニにて開催された桜を見る会の前夜祭。

そこでの食事に「銀座久兵衛の寿司」が振舞われたという情報が飛び交いましたが、久兵衛の主人が振舞った事実を否定しました。

銀座久兵衛、ホテルニューオータニでの桜を見る会前夜祭での提供を否定

桜を見る会 高級寿司「銀座久兵衛」主人が「うちは出していない」 - 産経ニュース

東京・銀座の高級寿司店「銀座久兵衛」主人の今田洋輔氏は15日、産経新聞の取材に対し、首相主催の「桜を見る会」の前日に行われた安倍晋三首相の後援会の夕食会で、同店の寿司が振る舞われたとする一部報道について「うちの寿司は出していない。過去何年も調べたが、出ていなかった。報道は間違いだ」と述べた。

ホテルニューオータニで出された寿司は銀座久兵衛ではなかったという指摘。

これはどうしたことでしょうか。

以下はこれが正しい事実であることを前提に記述していきます。

「報道」はどこがしていたのか

魚拓

11月14日の「ひるおび」で、ホテルニューオータニでの桜を見る会前夜祭で銀座久兵衛の寿司が振舞われたという説明がされているのがわかります。

他の新聞・テレビの報道は未検証です。

ただ、このような報道の元になる発信がありました。

ネット上では立憲民主党の石川大我議員のツイッターが初出か

魚拓 

立憲民主党の石川大我議員のツイートがどうやら「ホテルニューオータニでの桜を見る会の前夜祭において、銀座久兵衛の寿司が振舞われた」とする言説の初出です。

11月12日の16時36分のツイートです。

これ以前に「久兵衛」でツイッター上を検索しても、桜を見る会前夜祭との関係で久兵衛に言及している発信は見当たりません。

久兵衛 until:2019-11-12_16:59:59_JST - Cerca al Twitter

追記:同日の野党合同ヒアリングでの黒岩たかひろ議員が初出か

動画の3分あたりで黒岩たかひろ議員から「久兵衛」の単語が聞こえます。

このヒアリングが開催された日時が未確定ですが、午後3時6分に官僚と野党が揃っている写真を毎日新聞が撮っていること、この動画の最初に「久兵衛」発言があることから、石川大我議員のツイートに先んじて黒岩たかひろ議員の発言があったと思われます。

テレビ局はこの発言を根拠に「久兵衛」に触れています。

なぜ銀座久兵衛の寿司と間違えたのか:原因は同じ住所記載だからか

このツイートで貼られているリンクは食べログの銀座久兵衛のページです。

そこでは銀座久兵衛ホテルニューオータニ店という記載があります。

銀座 久兵衛 ホテルニューオータニ店 タワー店 (ぎんざきゅうべえ) - 赤坂見附/寿司 [食べログ]

つまり、「ニューオータニの敷地内に久兵衛があるから、ニューオータニで行われた桜を見る会に出された寿司も久兵衛が握っているに違いない」と思い込んだということでしょう。

ホテルの料理人かケータリングサービスの人間が握ってたなど、別の形態だったんでしょう。

差額分を補填しているというストーリーが思い込みの元

「本来はもっと高い費用がかかるはずなのに、参加者が5000円しか払っていないと言うのは、差額分を安倍事務所が補填しているからだ」

このようなストーリーありきで色んな情報を繋ぎ合わせて発信し、公職選挙法違反であるという印象操作をしようとしていたためにこのようなことが起こったとしか考えられません。

なお、ホテルニューオータニ側は「5000円になるかは宴会の形式による」と述べています。「1万1000円を下回ることはない」と言ったのはパッケージ化されたプランの話であり、個別の宴会の話ではありません。メディアは嘘にならないように読者の理解を誘導しているのです。

違法かどうかについては以下でまとめています。

以上

桜を見る会問題まとめ 安倍は公職選挙法・政治資金規正法違反の違法か?

桜を見る会問題:公職選挙法・政治資金規正法違反

出典:首相官邸HP:https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201904/13sakura.html

桜を見る会問題が騒がれていますが、この問題の構造を分かりやすく整理します。

また、公選法、政治資金規正法違反の疑いがあるなどと報道されていますが、それは本当かについても解説します。

「桜を見る会問題」は2つある

マスメディアや一部野党が問題視している「桜を見る会」とは、実は2つの事象が混同されて(わざと混同して)報道されています。

  1. 内閣総理大臣が主催する桜を見る会
  2. 安倍晋三事務所(或いは旅行代理店)が主催する、桜を見る会に関連したツアー、特に「前夜祭」

両者は主催が別個であり事実として別々のものとして把握しなければなりません。

そして、それぞれに「違法なのか」という問題と「違法ではなくとも政治倫理の見地から適切なのか」という問題があります。

1:内閣総理大臣主催、新宿御苑で観桜する桜を見る会

日本共産党公式ツイッターより

内閣総理大臣が主催し、新宿御苑で観桜する「桜を見る会」は、当初、その会自体が問題視され、以下の点が指摘されていました。

  1. 予算額を超えた支出と予算の増額
  2. 招待客の人数が膨れ上がっていること
  3. 縁故者を優先して呼んでいる可能性が疑われていること(後援会の人が850人程度参加している)
  4. どういう理由で呼ばれているのか疑問な人が居ること

結局、安倍総理大臣の判断で来年度の開催は中止し、ルールの見直しを経て再来年度に再開する予定となっています。

関連:なぜ桜を見る会が問題視されているのか

関連:菅官房長官、桜を見る会の来年度の開催を中止の理由

2:安倍晋三事務所主催の前夜祭等のツアー

もう一つの問題として、後援団体である安倍晋三事務所が主催する桜を見る会をツアーの中に組み込んだイベントが行われており、その中で供応接待等の「寄付行為」が行われていたのではないか?という点が騒がれています。
※安倍晋三氏の「後援会」はいくつもあり、また、それとは別に「安倍事務所」があるようですが、どの行為がどの主体によるものなのかが不明なので、ここでは基本的に便宜的に「安倍側」と記述する場合があります。

現在は「前夜祭」であるホテルニューオータニでの会食について、通常よりも割安で提供したのではないか?という疑惑があり、その場合には寄付行為になるだろうといわれています。

また、この際の経費が政治資金収支報告書に記載が無いことから、政治資金規正法違反ではないかという疑惑が叫ばれています。

桜を見る会は公職選挙法199条の5違反なのか

長いですが太字だけが関係しています。

公職選挙法(後援団体に関する寄附等の禁止)
第百九十九条の五 政党その他の団体又はその支部で、特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)の政治上の主義若しくは施策を支持し、又は特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)を推薦し、若しくは支持することがその政治活動のうち主たるものであるもの(以下「後援団体」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。※ただし書き省略

2 何人も、後援団体の総会その他の集会(後援団体を結成するための集会を含む。)又は後援団体が行なう見学、旅行その他の行事において、第四項各号の区分による当該選挙ごとに一定期間、当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行なわれる区域)内にある者に対し、饗応接待(通常用いられる程度の食事の提供を除く。)をし、又は金銭若しくは記念品その他の物品を供与してはならない。

指摘されている違法は公職選挙法199条の5違反です。

要するに、【後援団体は】選挙区内の人に対して寄附や後援団体の行事での通常の食事の提供を超える饗応接待などをしてはならないとされています。

さて、「桜を見る会」は「後援団体」が主催でしょうか?

違いますよね、【政府】が主催です。

したがって、「桜を見る会」は公選法違反の話ではありません。

また、今回問題視されている政治資金規正法上の義務違反疑惑も、政治団体の会計責任者に課せられている義務の話なので、関係ありません。

安倍晋三後援会の「前夜祭」は公職選挙法違反なのか?

次に、安倍晋三後援会の「前夜祭」は公職選挙法違反なのか?という問題。

具体的に言えば、ホテルニューオータニで開催された前夜祭で、850人の参加者は5000円を支払ったが、本来はもっと高くつくはずなのに安くしているということは、安倍後援会から参加者に対して公職選挙法上の『饗応接待』をしていたのではないか?という問題です。

※安倍晋三個人が主催じゃないので199条の2は無関係です。

ホテルニューオータニの見積もりと食費

ホテルニューオータニでの会食については、パーティープランは1万1000円が下限と言われたという報道や、見積もりを取ったら1人当たり1万3000円だという野党議員の発信が目につきます。

しかし、「850人」の前夜祭の話なのに何故か「150人」の場合の費用を確認するなど、印象操作が多いというのが分かります。これは非常にわかりやすい例。

通常用いられる程度の食事の提供を超えた「饗応接待」なのか?

ホテルニューオータニの前夜祭

 

前掲の公職選挙法には以下のように書かれています。

【饗応接待(通常用いられる程度の食事の提供を除く。)】

ホテルニューオータニは「5000円でできるかは宴会の形式による」「お客様の要望をうかがって判断」していると述べています。

先に挙げた立憲民主党の石川大我議員の見積もりはいろいろ突っ込みどころがありますが、要するに個別対応をするケースがあり、一般的な概算見積もりを提示しても無意味だということです。

安倍総理の11月15日の答弁でもホテルニューオータニに宿泊している客が多い事情を踏まえて値段が設定されたとしており、個別対応されたとみる他ないでしょう。

なお、NHKなどの取材では、『会費5000円のパーティーのプランはあるかどうか尋ねたところ「パーティープランの最低価格は1人1万1000円からで値切り交渉などには応じられない」などと説明しました。』と報じられることがありますが、「そういうパッケージプランがあるのか?」という質問になっているので、「それは無い」となって当然です。質問が悪すぎる、ということになります。

一般人の結婚式の2次会よりもかなり窮屈なのが分かります。

「会場はぎゅうぎゅうで五千円は高い。ぼったくりかと思った」とこぼす男性の弁が東京新聞で報じられるように、こういう場は食事も「1人分×人数分」などという量を用意するはずがないというのが社会常識であり、食事代が安くなる可能性は十分にあるということです。

なお、移動費や宿泊費も参加者の自腹であり、招待状が送られた人でも「だから行かない」と言う人も出ていました。

いずれにしても現時点で出そろった情報からは、「本来の食事代よりも安い5000円でパーティーを開いたのであり、それは差額分を参加者に饗応接待したことになる」と言うことはほぼ不可能と思われます。

追記:シャンソン歌手 ケイ潤子の歌披露は「財産上の利益の供与」なのか?

シャンソン歌手のケイ潤子氏・プロの歌の披露は寄付にあたる?

前夜祭ではシャンソン歌手のケイ潤子氏が「6曲20分間」歌を披露したようです。

京都弁護士会の渡辺輝人弁護士は、プロ歌手の歌謡を選挙民に供した場合には寄付=「財産上の利益の供与」に該当すると考えているようです。

一方、湘南平塚事務所弁護士の最所弁護士は、選挙応援演説における森進一氏による歌のサビ披露について以下述べています。

応援演説で、歌手が歌を歌ったら、候補者は懲役刑になる!?

公職選挙法に違反するとの主張は、①森進一氏の歌は、経済的価値が認められる無形の財産である、②候補者が、無償で経済的価値のある歌を聴く機会を聴衆に与えることは、聴衆に物品を提供する行為と実質的に同義である、③したがって、公職選挙法が禁止する『寄附』や『財産上の利益の供与』に該当しうる、概ね、そのような主張がなされているようです。

 このような主張をされている方の根底には、公正な選挙の要請がまずあって、公正な選挙を害しない限りにおいて、政治活動が許される、すなわち、政治活動は、原則としてしてはいけないが、公正な選挙を害しない限度で、例外的に許される、そのように考えているのではないでしょうか

 しかしながら、憲法上、政治活動の自由、表現の自由は、民主制において非常に重要な権利として保障されています。そのことを前提に、完全に自由な活動に委ねてしまうと、貧富の差等によって、公正な選挙を害してしまう可能性があることから、例外的に、ルールを決めて制限しましょう、そのルールが公職選挙法に規定された禁止規定であるというのが素直な解釈です。

 政治活動は原則自由、例外的に制限、これが基本的な憲法解釈の姿勢で、多くの弁護士の感覚だと思います。

こうした事案に関する確定した行政の見解や司法判断が出ているわけではありません。

さて、【プロの技術発揮には必ず利益が発生しているはずだ】という問題設定は、果たして適切なのでしょうか?

これではお笑い芸人による応援演説で笑いを取ったら公選法違反になってしまうことになりかねませんが、そういう考え方が正しいとは私は思いません。

安倍晋三後援会の「前夜祭」は政治資金規正法違反なのか?

政治資金規正法(報告書の提出)
第十二条 政治団体の会計責任者(省略)は、毎年十二月三十一日現在で、当該政治団体に係るその年における収入、支出その他の事項で次に掲げるもの(これらの事項がないときは、その旨)を記載した報告書を *省略* 提出しなければならない。

一 すべての収入について、その総額及び総務省令で定める項目別の金額並びに次に掲げる事項

二 すべての支出について、以下省略
三 十二月三十一日において有する資産等(次に掲げる資産及び借入金をいう。以下この号及び第十七条第一項において同じ。)について、以下省略

要するに、資産等以外は【収支が発生】していなければ記載する必要はありません。

安倍総理の説明も「収支が発生していない」として記載の必要性を不要としています。

安倍首相発言要旨 桜を見る会:時事ドットコム

 安倍晋三首相が15日、「桜を見る会」について首相官邸で記者団に語った要旨

旅費、宿泊費は参加者がそれぞれ旅行代理店に支払い、夕食会費用は会場入り口の受付にて安倍事務所職員が1人5000円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受け付け終了後に集金した全ての現金をホテル側に渡すという形で支払いがなされた

旅費や宿泊費は旅行代理店に支払っているとのことです。

そして、前夜祭については、たとえるなら飲み会の幹事が参加者から徴収したあとにお店に一括して支払う場合に、いちいち「幹事の収入+お店への支出」という処理はしないのと同じで、直接支払われたと同視できる事情があります。

ということで、収支が発生しないために政治資金収支報告書への記載・報告も不必要となるため、これが違法とはなりません。こんな処理はどこの事務所もやっているハズです。

違法性はなくとも後援会の会員を多く呼んでいるのは問題では?

違法性がなくとも、政治倫理や公金支出のありかたという視点からは問題があると思います。

11月13日の菅官房長官記者会見では与党にも推薦依頼をしていたということが分かりましたから、実質的に与党特権のような形になっていたのでしょう。

一応は要領に従って「功績のある者」を呼んでいる体でしたが、これでは「身内優先に税金を使っている」と言われても仕方がないと思います。

しかも、皇族方も出席される場に呼ばれるにふさわしくない人物が招待されている例もあることも確かなので、個人的には2000人程度に規模の縮小を図るべきだと思います。

私は園遊会よりもフランクな場として各界の著名人が交流できる場として首都圏の観桜の名所を活用できる機会があるのは貴重だと思っていますので、ルールを厳格にして再開してほしいと思います。

1年未満で廃棄、文書保存期間の3年、10年というズレ

なお、本題からずれますが、桜を見る会の関連文書の保管について情報が錯そうしている点について。

これは内閣府と各省庁とで文書保存期間の扱いが異なること、「推薦者名簿」と「招待者名簿」とで扱いが異なるために生じていることであると言えます。

一部野党やメディアはこの点を巧妙に隠して印象操作しています。

桜を見る会問題をわかりやすくまとめると

以上より、「桜を見る会問題」をわかりやすくまとめると以下になります。

  1. 「桜を見る会問題」とは内閣総理大臣が主催する桜を見る会と、安倍側が主催する桜を見る会に関連したツアーの2つの事象が問題視されている
  2. 桜を見る会自体は政府が主催なので、公職選挙法や政治資金規正法の規制する場面には当たらないため、最初から違法の話は出てくるわけがない
  3. 安倍側主催の関連ツアーは、饗応接待ではないため公職選挙法違反ではない
  4. 安倍側主催の関連ツアーは、旅費・宿泊費は旅行代理店に、前夜祭の食費は直ちにホテル側に支払われたため、収支が発生せず、記載の必要がないため政治資金規正法の違反ではない
  5. ただし、後援会の者を優先的に大人数呼んだことについては、公金支出のあり方や政治倫理の観点から問題であり、改善すべきである
  6. 文書保存期間の差は内閣府と各省庁の扱い、「推薦者名簿」と「招待者名簿」の違いによって起こっている

たった5500万円の桜を見る会に単純計算で1日3億円もかかる国会の質疑を当てるのは非生産的です。

既に来年度の開催を中止して、ルールを整備した上で再来年度に再開すると決めたのですから、もう野党議員や報道の役割は終わったでしょう。これ以上は無駄な行為だと思います。

以上