事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「検察庁法改正案に抗議します」ねとらぼがツール調査でスパムが4.87%と算定

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「#検察庁法改正案に抗議します」に関してねとらぼがツールで調査したのでその結果を整理して評価を加えます。

ねとらぼがツール調査でスパムが4.87%と算定

「検察庁法改正案に抗議します」500万ツイートを集めた「最初の1ツイート」はどのように広まったか?(1/3) | ねとらぼ調査隊

【追記 :(5月11日21時50分)】
 「500万件のツイートは、そのほとんどがスパムツイートにより水増しされたもので、実際のツイート数ははるかに少ないという疑惑がある」旨の指摘を受け、再調査した結果について追記します。

 調査に使用したSNS分析ツール(BuzzSpreader Powered by クチコミ@係長)のスパムフィルタをオンにして、該当ハッシュタグのツイート数の増減を比較したところ、フィルタオフ時には「51万3155件」(10%サンプリングのため、実数はその約10倍ある)だったのに対し、フィルタオン時のツイート数は「48万8175件」(同10%サンプリング)でした。結果、スパムと判定されたのは「約4.87%」でした。

 同ツールのスパムフィルタでは、アフィリエイトやアプリによる自動投稿や、ツイート内容のほとんどがURLや同じ様な内容の繰り返しであるツイートをスパムと判定して排除します。また指摘された一例として、下記のような多重投稿は、「フィルタオフ」時でもツイート数の集計結果には入っていませんでした。(追記終わり)

「#検察庁法改正案に抗議します」のTwitter上のトレンドについて、ねとらぼがツール調査をしました。

その結果、当該ハッシュタグに関するツイートについては、スパムフィルタオンの場合には「約49万件」であり、10%サンプリングなので実数は10倍だとしています。

そして、「スパムが4.87%」(!)と算定しています。

さて、この結果をどう理解すればよいでしょうか?

ねとらぼの記事では手法と結果のみであり考察はありませんのでここで考えてみます。

Yahooリアルタイム検索で「#検察庁法改正案に抗議します」を調べると…

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Yahooリアルタイム検索で「#検察庁法改正案に抗議します」を調べることができます。

7日間スパンの場合には2時間ごとの件数が表示されます。

すると、5月9日の途中から2時間あたり1000件以上になってから11日の0時までの期間(多くのメディアが10日夜までのTwitterトレンド上の件数を報じたので)の件数を足してみると、約40万件でした。

ねとらぼの数字と10倍以上の差があります。

これはどういうことでしょうか?

Twitterトレンド上の件数表示のカラクリ

ここでも説明していますが、実はTwitterトレンド欄の件数表示は単に当該文言を含むツイートの数を表しているのではありません。

そのツイートのリツイートなどの要素が加味された件数なので、実際のツイート数よりも数倍規模になることが通常です。

実際に私が自身でTwitter上の検索窓から文言検索をした結果、Yahooリアルタイム検索と同じ数値になりましたから、リアルタイム検索はリツイートは含まない数値を拾っていると言えます。参考:ニューヨークタイムズのモトコリッチ「日本Twitterで中国人は来るながトレンド」と捏造か?

ねとらぼが使用したツールは、Twitterトレンド上の件数表示に近いものを採用しているのだと思います(まったく同じ数値を拾うものかは不明)。

で、フェルミ推定すると、実際に当該ハッシュタグを含むツイートをした人間は数万人程度と考えられます(詳細は上記記事参照)。

何らかのツールを使って詳細分析された方はこちら

「検察庁法改正「法」案に抗議します」との混同

  1. 「#検察庁法改正案に抗議します」
  2. 「#検察庁法改正法案に抗議します」

10日にトレンドに上がり報道されたのは1番の方であり、「スパムが削除された」などと言われたのちにトレンドに上がったのは2番の方です。文言として「法」が挿入されています。

ここが混同されて論じられている点があるので注意してください。

スパムが「大量削除されてトレンド上の数字表記が減った」という実態は不明としか言えません。

ただ、【Twitter側が「検察庁法改正案に抗議します」をスパム判定してトレンドから排除した】ということは言えます。

11日深夜0時以降のツイート数を比べると、1番のツイート数は2番のツイート数よりも多いからです。

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「当該ハッシュタグを含むツイートの勢いが衰えたから自然にトレンドからランクアウトしていった」ということはありえないわけです。

それはTwitter側がツイートそのものではなく当該ハッシュタグ自体をスパム判定したと見るほかないでしょう。

「約5%もスパムがあった」のは大問題では?

さて、ねとらぼでは「約5%スパムがあった」という結論が出てますが、この評価はどうするべきでしょうか?

この点を取り上げて「たった5%しか存在せず、ほとんどは自発的なツイートだ」と評価する人が居ます。

でも、それって公正な見方でしょうか?

スパムツイートによって水増しされたためにトレンドに表示され、興味を持った人が当該ハッシュタグを使って参加するようになった」という因果関係が疑われてしかるべきではないでしょうか?

ボットを利用するなどしてのスパムツイートをするくらいのアカウントは、このハッシュタグがトレンドに浮上する前の、最初期からツイートをしていた可能性が極めて高いと考えられるからです。

それによって釣られた利用者が最終的に大勢ツイートをするとスパムツイートの割合は相対的に小さくなるのは必然です。

そもそも25万件表示分のスパムがあったという事自体が異常です。

ねとらぼさんの利用したツールではどの時間帯からスパムツイートが行われていたかを調べることはできなかったのでしょうか?(ねとらぼさんを責めるつもりはなく、より厳密な調査をするなら、という意味で)

『#検察庁法改正「法」案に抗議します』等でもトレンドに上がったので民意?

同じ事が『#検察庁法改正「法」案に抗議します』にも言えます。

『#検察庁法改正「法」案に抗議します』等でもトレンドに上がったので、それは純粋な民意だとする人が居ます。

しかし、『#検察庁法改正案に抗議します』のハッシュタグがトレンド入りしてNHK含む大手メディアが報道した後に登場した類似のハッシュタグは、もはやマスメディアの報道の影響が介在してしまっていますから、公正な評価だと言うのはもはや難しいのではないでしょうか?

4月には朝日新聞が「#東京脱出」がトレンド入りしていたと報じましたが、当該ハッシュタグは朝日新聞が報道してからトレンド入りしたのであって、それ以前は15分に1~2件しかツイートされていなかったという事件がありました。それを思いだしましょう。

まとめ

  1. ねとらぼ使用のツールはTwitterトレンド上の件数表示に近い
  2. それはリツイート数なども加味した数値なのでツイートの数倍になるのが通常
  3. Yahooリアルタイム検索では拡散されてから約40万件
  4. スパムが約5%というのは少ないのではなく異常であり、拡散の因果関係を考えると「多くが自発的にツイートされた」と評するのは公平ではない
  5. 「#検察庁法改正案に抗議します」と「#検察庁法改正「法」案に抗議します」の混同に注意
  6. 「#検察庁法改正「法」案に抗議します」がトレンド入りしたのはメディアの報道の寄与分が大きい

作られたトレンドに乗っかってしまった人たちは反省してはいかがか。

以上

朝日新聞が「検察庁法改正に抗議します」ツイート件数の記事を大幅改変し、一部有料化していた

朝日新聞が「検察庁法改正に抗議します」ツイート数を更新して水増ししていた

朝日新聞が「#検察庁法改正に抗議します」というTwitter上の事象を扱った記事で、ツイート数を更新してさらに記事の内容もほぼ別物に改変していたことが判明しました。

朝日新聞9時46分時点「検察庁法改正に抗議が150万超」

https://web.archive.org/web/20200510014118/https://www.asahi.com/articles/ASN5B34BYN5BUTIL005.html

朝日新聞が9時46分時点でUPした「検察庁法改正に抗議が150万超」という記事。この時点では「10日の8時過ぎに150万件」というものでした。

朝日新聞20時18分時点「検察庁法改正に抗議が470万超」

https://web.archive.org/web/20200511031301/https://www.asahi.com/articles/ASN5B34BYN5BUTIL005.html

ところが同一のURLの記事でも、20時18分時点で更新されたものは「検察庁法改正に抗議 が470万超」に更新されていました。

しかも本文も別記事であるかのようにまったく別のものに改変されています。

同一URLの記事をまったく別物に変える怪

比較のために並べます。

https://web.archive.org/web/20200510014118/https://www.asahi.com/articles/ASN5B34BYN5BUTIL005.html 9時46分時点

検察官の定年を65歳に引き上げる法改正案を認めていいのか――。作家や漫画家、俳優、音楽家らが10日未明、疑義を唱える声をツイッター上で次々と上げた。「#(ハッシュタグ)検察庁法改正案に抗議します」の投稿が相次ぎ、その数は午前8時過ぎに一時、約150万件を越えた。

 「もうこれ以上、保身のために都合良く法律も政治もねじ曲げないで下さい。この国を壊さないで下さい」。俳優の井浦新さんが10日朝に投稿すると、「いいね」が1万件以上ついた。

省略

https://web.archive.org/web/20200511031301/https://www.asahi.com/articles/ASN5B34BYN5BUTIL005.html 20時18分時点

国会で審議が始まった検察庁法改正案への抗議が、ネット上で急速に広がっている。政府の判断で検察幹部の定年を延長できる規定が「人事や捜査への政治介入を招く」と問題視され、ツイッター上では9日夜から10日朝にかけ「#(ハッシュタグ)検察庁法改正案に抗議します」という投稿が相次いだ。コロナ禍が続くなか成立を急ぐ姿勢にも反発が出て、リツイートも含め、その数は10日夜までに470万件を超えた。

 「もうこれ以上、保身のために都合良く法律も政治もねじ曲げないで下さい。この国を壊さないで下さい」。俳優の井浦新さんが10日朝に投稿すると、昼までに2万件以上リツイートされた。

省略

 

引用要件のため省略していますが、以降の記述を見るとまったく別物になっています。単に夜までの件数の更新をしているにとどまりません。

同一URLの記事をまったく別物に変えるという怪

なぜこういうことをしたのでしょうか?

yahooでは更新後も朝のタイムスタンプ

朝日新聞が更新して水増し

Yahooに転載されている方のタイムスタンプは朝のもののままです。

しかし、内容は「470万超」のものにすげ変わっています。

「470万」というのは人数ではなく件数であり、その件数は実際に当該ハッシュタグをつけたツイート数を数倍しているもので、更に大量スパムが削除されているという経緯があります。

Twitter側がスパム判定して消したのは11日の深夜以降と思われるため、20時時点では本当にTwitterトレンド欄では「470万件」が表示されていたのでしょう。

なぜ朝日は大幅に改変したのか?

なぜ朝日は同一URLのものを大幅に改変したのでしょうか?

9時台の記事中には何らまずいことは無かったと思うので不思議です。

同じ話題でも別記事を作れば良いのではないでしょうか?

しかも、後半部分が有料化しています。

改変したという旨の記載が無料部分にはありません。

それとも、「470万」というその瞬間の数字を記録に残そうとしていたのでしょうか?11日の朝刊にこの数字を報道させるためだとしたら考えたものだと思います。

このような同一URLの大幅改変を見たのはあまり例がないと思いますが、それとも頻繁に行われてきたのでしょうか?だとしたら、ネット上での朝日新聞記事の信憑性はほとんど無いということになります。

以上

「検察庁法改正案に抗議します」ツイートが「470万人」というフェイク:大量スパムが削除?

「#検察庁法改正案に抗議します」を含むツイートがTwitterトレンドに上がり、その数が膨大であるとして複数メディアで報道されていますが、大量スパムが原因で削除されていることと、Twitterトレンド欄の見方が正確に伝わっていないので整理します。

※追記:スパムが「削除」されたために数字が変わったのではなく、ワードがスパム判定されてトレンドから消え、別の類似ワードがトレンドに上がったという方が正しいので内容を一部修正しています。

Twitterトレンド欄の「件数」は実数ではない 

このブログでは何回かTwitterトレンドの仕組みについて解説してきましたがここでも改めて指摘すると、実はTwitterトレンド欄の「件数」は実数ではないのです。

Twitterトレンド欄の件数表示は、実際に当該文言を含んだツイートの数に加え、それがリツイートされた数や投稿の加速度など、色んな変数を掛け合わせたものです。

したがって、現実に当該文言を含むツイートの数自体は、トレンド欄に表示された件数よりも低くなります

私の観測では、上述のようにツイートの実数の5倍以上になることもありました。

たとえば朝日新聞も以下報じています

検察庁法改正に抗議、ツイッターで470万超 著名人も(朝日新聞デジタル)

リツイートも含め、その数は10日夜までに470万件を超えた。

したがって、『「#検察庁法改正案に抗議します」を含む投稿が470万件以上なされた」というのは、厳密に言うとフェイクニュースです。

ただし、朝日新聞を含め「件」と表記してるメディアを殊更非難しようとは思いません。ツイッター上のトレンド欄の件数を指していると理解しましょう。それは間違いではないですから。(しかし、朝日新聞記事には別の問題点がある:朝日新聞が「検察庁法改正に抗議します」ツイート件数の記事を大幅改変し、一部有料化していた

今の所、「人」という表記をしている大手メディアは無いようです。

「#検察庁法改正案に抗議します」は数百万がスパムとして消された

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https://twitter.com/kirinpower1/status/1259474195416666112

ところが、トレンド欄の件数はスパム投稿で水増しされていた数だということは報道されていません。

 「#検察庁法改正案に抗議します」のツイートは、そのほとんどがスパム投稿だったため、一度Twitter側によってトレンド集計から外されたようです。

※追記:『#検察庁法改正「法」案に抗議します』に変わっているという点について考慮し、次項までの記述を修正しています。

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『#検察庁法改正「法」案に抗議します』のyahooリアルタイム検索の魚拓(11日0時30分頃)を見るとこの通りですが、Twitterのトレンドに上がっているのが分かります。

11日の朝の時点で、約50万件表示になっています。

で、元の「改正案」の方はどうやら10日深夜あたりからトレンドに上がっていないようなのですが、以下の数字を見る限り、トレンドに上がっていなければおかしいレベルでツイートが存在しているのが分かります(7日間スケールは2時間単位)

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よって『#検察庁法改正案に抗議します』が「勢いを失ったために自然と」トレンドから外れたという主張は、成り立ちません。

Yahooリアルタイム検索の数字は、当該文言が存在しているツイートを見ており、そのツイートのリツイートを見ない数値です。そのため、これを見ても数百万もツイートが存在していないというのが分かると思います(9日の1000人以上ツイートされた時間帯から11日0時までの合計でもせいぜい40万)。

多くの端末環境でトレンドに上がって来たワードとして『#検察庁法改正案に抗議します』が消え、『#検察庁法改正法案に抗議します』が現れたという経緯からは、Twitter側が前者をスパム判定してトレンドから消した(ツイートの多くは削除されずそのまま)と理解する他は無いと言えます。

※追記終わり

実際は数万人による投稿か

更に言えば、「当該ハッシュタグを含むツイート」というのは、同一アカウントが複数回行ったとしてもその分が計上されます。

今回のハッシュタグは、同一人物が複数回投稿する例が見られますから、その分を割引いて考える必要があります。

さらに言えば、「#検察庁法改正案に抗議します」の動きに反対している者(必ずしも法案賛成者ではない)も当該ハッシュタグを含むツイートをしているので、そこも考慮しなければなりません。

そうすると、実際に「#検察庁法改正案に抗議します」の投稿をした人物は「数万人程度」であると考えられます。

まとめ:「検察庁法改定に反対する者が数百万人」というのはフェイク

  1. Twitterトレンド欄の件数表示は、実際のツイート数の数倍が相場(リツイートなども見ている)
  2. 同一人物の複数回投稿、当該ハッシュタグの賛同者以外による投稿も考慮すべき
  3. よって、この時点で『検察庁法改定に反対する者が数百万「人」』というのはフェイク
  4. 「#検察庁法改正案に抗議します」はスパム判定されてトレンドから排除された
  5. 「#検察庁法改正法案に抗議します」がトレンド入りするも、前者よりも少ないツイート数
  6. 以上からフェルミ推定すると、実際に法改正反対者が当該ハッシュタグをつけていたのは数万人と考えられる

「検察庁法改定に反対する者が数百万人」というのはフェイクですが、50万件表示でも十分すごいと思いますけどね。

以上

「検察庁法改正は三権分立の破壊」論者との面白いやりとり

 「検察庁法改正は三権分立の破壊」論者との面白いやりとりがあったので載せます。

「検察庁法改正は三権分立の破壊」論者との面白いやりとり

こんなツイートをしていました。

「検察庁法改正は三権分立の破壊」論者は、行政組織である検察について「司法権側でもある」としていることから内閣による人事介入(現在でも検察庁法15条で1級検事は内閣が任命しているが)は司法権の侵害・司法権への干渉であり、三権分立の破壊であると言っていました。

しかし、それって「司法権に対する牽制」じゃないの?それを言うなら最高裁判所長官の指名なども司法権への干渉じゃないの?と書いてます。

するとこういう反応がありました。

魚拓 https://idtwi.com/81066683

 

魚拓

この人はそもそも日本国憲法6条2項が「天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する」としていることそれ自体を「セキュリティホール」と言ってるわけです。

この時点で、「これは面白い展開になりそうですね()」と思う人は多いと思います。

憲法改正はしないんだろうか?

行政権からの司法権への牽制は何がある?

当然こういう疑問が出てきます。

三権分立の根幹は「権力を分散してお互いを監視することで暴走を防ぐ」です。

世の中の三権分立の機能についての説明を見てみると、「行政権からの司法権への牽制」の話として最高裁判所長官の指名やその他裁判官の任命が記述されています。

というか、それ以外って何があるの?

で、それに対する返答がこれ

魚拓

雲行きが怪しくなってきました。

そもそも三権分立など存在せず「三権分立の破壊」など不存在では?

魚拓

ちょっと面白いことを言い始めましたねぇ。。。

魚拓

「憲法に書いてない基準を設けないと司法権に干渉しまくりです」なんてこれまでまったく書いてないのですが、まぁ、そういう考えなんでしょう。

「司法権に干渉しまくり」が「牽制」機能を超えて問題だという主張がまったくないのでよくわかりませんでしたが、この論だと結局は行政権から司法権に対する関係で三権分立の機能がそもそも存在していないので【国家公務員法改正に伴う検察庁法改正による三権分立の「破壊」】など不存在と理解せざるを得ません。

指名・任用について憲法には無い基準を設けて透明性を図るべきだという論は理解できるのですが、それって三権分立と関係ありますかね?

三権分立の話とするのは筋悪では?

この話はここでまとめているのですが、結局のところ、「検察は司法権側でもある!だから検察官人事に対して行政側の内閣による介入というのは三権分立破壊だ!」と息巻いてる者に対しては、「それって最高裁判所長官の指名や最高裁裁判官の任命を内閣が行うことでの司法権への牽制と何が違うの?」としか思わないわけです。

今般の改正に反対しても、内閣が検事総長や検事長らを任命する検察庁法15条はそのままですが、彼らはそれをも改正しろと言わないんですよね。ま、それを言い出したら行政機関内部の話なのに三権分立の話をすることになって自滅するんですが。

検察人事への介入の度合いを強めることの問題は三権分立との関係ではなく、検察の独立性それ自体や刑事司法の公正性の観点から論じた方が、変なノイズが無くていいんじゃないかと思うのです。

以上

検察庁法改正は三権分立の破壊論:検察は行政権か司法権かという不毛な議論

検察庁法改定、検察庁法改正案

 「内閣による検察人事介入は三権分立の破壊」論の行き着く先は袋小路だった。

国家公務員法改正に伴う検察庁法改正

第201回 通常国会|内閣官房ホームページ

国家公務員法改正に伴う検察庁法改正を三権分立の観点から論難する話が話題ですが、これは今年の3月13日に【国家公務員法等の一部を改正する法律案】として国会提出された定年規定の改定等を定めた、複数の法律案に対するものです。

勘違いしてる人が居ますが、この動きは先般の黒川検事長の勤務延長の解釈変更の話とは別に、10年ほど前から議論されていた国家公務員の定年の変更に関する議論の帰結ですからね。施行日も令和4年4月1日ですから、黒川検事長の定年は変わりません。

検察官は行政権(司法権は裁判所のみ)

第六章 司法
第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

憲法上、司法権の所在は裁判所にのみ属すると明記されています。

他方、検察庁は行政権に属する行政機関です。

よって、まずは「検察人事に官邸が介入できるようになる今般の検察庁法改正は、司法権への不当な介入を許してしまうため、三権分立の破壊である」論に対しては「検察官は内閣と同じ行政権に属するので、三権分立はまったく無関係だ」と言う者が出ています。

※「検察庁は行政権」について。憲法65条で「行政権は、内閣に属する」とあり、国家行政組織法は1条で「内閣の統轄の下における行政機関で内閣府以外のものの組織の基準を定め」、3条2項で「行政組織のため置かれる国の行政機関は、省…」とし、法務省設置法4条 7号で所掌事務を「検察に関すること」と規定し、同法14条で「別に法律で定めるところにより法務省に置かれる特別の機関で本省に置かれるものは、検察庁とする。」「検察庁については、検察庁法(これに基づく命令を含む。)の定めるところによる」とあることから検察組織は行政権に属することになります。

※その上で検察庁法15条「検事総長、次長検事及び各検事長は一級とし、その任免は、内閣が行い、天皇が、これを認証する。」とあり、それ以外の普通の検察官は16条で「検事長、検事及び副検事の職は、法務大臣が、これを補する。」とあります。

検察は準司法機関

ところが、検察は行政権に属してはいるものの、その性格は準司法機関と言われます。

そのため、三権分立の話にもっていこうとする者が出てくるというのはある程度理解できます。それは、検察が刑事司法制度に組み込まれており、特に公訴については、国家訴追主義、起訴独占主義、そして起訴便宜主義が採用されていることから、司法機関に準じた独立性が求められているからです。

ですから、「検察は行政権だから三権分立はまったく無関係だ」などという論も、間違いだと言うつもりは無いですが、しかし一面的に過ぎるだろうと私は思います。

他方、憲法77条2項では「検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。」とありますが、検察庁の組織や検察官の身分がなにか最高裁判所規則で基礎づけられているということではなく、検察官は最高裁判所の定める各種の訴訟規則(刑事訴訟規則や民事訴訟規則など)に従うべきであるという意味でしかありません。
(民事・家事事件においてもたとえば後見人制度や不在者の財産管理、婚姻・離婚や親子関係の争いにおける行為主体として検察官が組み込まれている)

参考:最高裁判所規則及び最高裁判所規程の一覧(平成31年3月現在).pdf

なお、「検察が起訴したら99%以上が有罪」という実態から三権分立論に言うところの司法側であると構成する見方が一部であるようです。

検察人事介入は三権分立の破壊なのか?

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さて、私としては「検察人事への介入が三権分立の破壊」論については、イマイチピンときません。

まず、上手く「政権による検察官人事は司法権への干渉だ」などと言えたとして、司法権に干渉することがすべて悪いことなのか?という三権分立の核心に迫る問題があるからです。

上記の図は一般的な三権分立の説明をする図として衆議院HPから持ってきたものです。

三権分立の根幹は「権力を分散してお互いを監視することで暴走を防ぐ」です。

行政と司法の間に「(内閣による)最高裁判所長官の指名」とありますが、これは内閣が司法権の人事権を一部握っていることで【行政権による司法権への牽制】という、三権分立が目指した機能の一翼を担っている事の説明として叙述されるものです。

で、「検察が司法権」だと言うのならば、内閣による検察官人事はこのような「行政権による司法権への牽制」であると言わないのだろうか?

「検察庁法改正は三権分立の破壊」論者は憲法第6条2項を「三権分立の破壊」と言わないのはなぜなんでしょうか(笑)

ということで、「検察官人事介入は三権分立の破壊」論者は、ここで「詰み」なわけです。まさか憲法改正を言い出すのではあるまいな?

公正性や独立性の話として論じれば良いのでは?

国家公務員法改正に伴う検察庁法改正を三権分立の観点から論難しようとしても、現行の検察庁法で内閣に1級検事の任命権を認めてることはそのまま放置されてるので、論じる意味があるのかと思うと、イマイチピンと来ません。

ざっくりと「公正性」や「独立性」の話=政権が捜査・起訴権限を持つ機関の人事への介入の度合いが強まる制度にすることの問題、として論じてくれた方が、ノイズが少なくて済むんじゃないだろうか?と思うのです。

ま、それでも一筋縄ではいきませんが。

繰り返しますが、先般の安倍政権による黒川検事長の勤務延長に関する検察庁法の解釈変更のドタバタについて論難するのは結構ですが、今般の定年制度の変更とは無関係です。

※追記:安倍内閣が混同されるような経緯で動いていた責任はあるし、以下で指摘されているように、改正検察庁法が「特例」について内閣に白紙委任していることなどはダイレクトに問題視されてしかるべきだと思います。

いったい検察庁法改正案の何に抗議しているのか|徐東輝(とんふぃ)|note

以上

「首相官邸の三権分立の図がフェイク、改竄」⇒民主党政権時代含め昔から同じ図でした

「首相官邸の三権分立の図がおかしい」「安倍内閣によって改竄された」と騒いでる人が居ますが、頭の程度が知れるのでやめたほうがいいですよ。その図、前々からありますし。

追記:三権分立の破壊ガーについて

首相官邸の三権分立の図がフェイク、主権者無視、矢印が逆、と言う指摘

f:id:Nathannate:20200510101620j:plain

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/kokkai/kokkai_sankenbunritsu.htm

上図は衆議院HPで掲載されている三権分立の図ですが、確かに行政と国民との間は国民から行政に「世論」の矢印が向かっていますね。

内閣制度の概要 | 首相官邸ホームページ(URL:https://www.kantei.go.jp/jp/seido/seido_2.html

他の三権分立の説明との比較で、首相官邸の三権分立の図がフェイク、主権者無視、内閣と国民との関係の矢印が逆、「世論」の矢印が無い、と言う指摘があります。

……

いつから載ってる図なのか確認しましょう。

首相官邸の三権分立の図は安倍内閣以前の民主党政権時代も

首相官邸の三権分立の図

現行憲法下の内閣制度(2004年11月19日以降の古い首相官邸HPのURL)

はい、遅くとも2004年には同じような図になってます。

追記:更に調べたら1998年からこの図が存在していたようです。

https://web.archive.org/web/19980212222703/http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/1-2.html

で、この図は民主党政権時代にもそのままだったわけです

参考:https://web.archive.org/web/20091121160225/http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/1-2.html

首相官邸から見た関係を叙述するものとして何ら間違いではない

この図は首相官邸から見た「内閣制度」の記述です。

つまり、国会議員によって構成される閣僚の視点で叙述されたものと考えられます。

そのため、国民との関係は既に「選挙」で言及されているのであって、それは「世論」と一体なにが異なるのでしょうか?

なんらフェイクではないでしょう。

制度上の用語の中に「世論」を含めることは適切か?

それから、この図は選挙や国民投票、弾劾裁判、法令の違憲審査、衆議院の解散、国会の召集、最高裁判所長官の指名、など、憲法上にも記述のある制度上の文言などが中心に記述されているのがわかります。

このページの目次は「2.現行憲法下の内閣制度」となっています。

その中にポンッと一般用語である「世論」というワードが出てくることに違和感を覚えることもあるでしょう。

法制度上、国会議員以外の行政機関に対する国民の監視の手段は何か?というと、かなり苦しいものになるのではないでしょうか?

そう考えると、「行政サービスを提供する」という意味において国民との関係を「行政」と記述することは何らおかしなことではないのですが。

強いて言えば、「行政」であったとしても、双方向の矢印で表現することも可能というくらいしょうか?

以上