事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「ヒューストンの中国総領事館職員がアメリカに亡命」という情報のソースについて

ヒューストン中国領事館職員がアメリカに亡命

「ヒューストンの中国総領事館職員がアメリカに亡命」という情報について、出所を見つけました。

ジェニファー・ツェン氏のTwitterから広がる「ヒューストンの中国総領事館職員がアメリカに亡命」

Twitterにおいて「ヒューストンの中国総領事館職員がアメリカに亡命」という情報が拡散されたのは、ジェニファー・ツェンというライターのツイートが発端です。

其二人向美國政府申請政治庇護

しかし、"It was said" とあるように、伝聞です。

彼女はどこの情報を参照したのでしょうか?

彼女のアカウントのBioにあるYouTubeチャンネルやブログには当該情報はありませんでした。

ただ、調べると同様の内容の記事が見つかりました。

大紀元≒新唐人電視台での中国領事館員亡命?記事

【新唐人北京時間2020年07月23日訊】中共駐休斯敦總領館被指是共諜「司令部」,早已受到美國情報部門特別關注。香港著名實業家袁弓夷22日向《看中國》獨家爆料,他收到內幕消息,中共駐休斯敦總領館內有人想留在美國,已向美國投誠

北京時間:2020-07-23 03:21にUPされた大紀元≒新唐人電視台の記事では、香港の著名な実業家である「袁弓夷」氏の22日の発言で、【中共駐休斯敦總領館內有人想留在美國,已向美國投誠】=ヒューストン中国領事館の職員がアメリカに留まりたいと考え、アメリカに「投誠」した、と伝えています。

已向美國投誠

つまり、これも別のメディアがソースだということです。

「看中國」における香港の実業家「袁弓夷」の発言が亡命の元ネタ・ソースか

 

袁弓夷:休斯頓中領館内有人向美國投誠(圖)|袁弓夷 | 休斯頓中領館 | 投誠 | 美國 | 時事 | 看中國网

袁弓夷爆内幕消息

7月22日,香港著名實業家袁弓夷在《看中國》「名家論談」節目中向《看中國》獨家爆料說,他收到內幕消息稱,休斯頓總領館內有人因想留在美國,已向美國投誠。但目前尚不清楚領館人員投誠的具體時間,預計在未來幾天内,將有更多相關消息陸續流出。

 「已向美國投誠

「投誠」の訳語として「降伏」が出てくるのですが、投誠 - 维基百科,自由的百科全书や、アメリカに留まる意思を示しているという文を考えると、これは「亡命」と訳してもよいのではないかと思われます。

つまり、香港の著名な実業家である「袁弓夷」氏が、7月22日に「看中國」というメディアで語った内容が、今現在広がっている「ヒューストンの中国総領事館職員がアメリカに亡命」という情報の出どころということになります。

日本やアメリカのメディアで亡命を報じている所は見つからず、公式発表も無し

「ヒューストンの中国総領事館」に関する情報は日米のメディアは大々的に報じていますが、その中で「職員がアメリカに亡命」という内容を報じている所は、7月25日午前現在はどこも見当たりません。

公式発表もなされていません。

裏どりをしている最中か、知っていても話さないのかもしれません。

しかし、新唐人電視台や看中國のツイートがほとんど拡散されていないのを見ると、現時点であまり騒ぐのはやめた方がいいのではないかと思います。

以上

「事実を整える デマ」で検索したらストローマン論法のお手本記事が見つかった

ストローマン論法、藁人形論法

試しに「事実を整える デマ」で検索したら見事なまでにストローマン論法のお手本記事が見つかったので紹介します。

桜を見る会メディア報道検証についてのストローマン論法

事実を整える デマ で検索したストローマン論法

http://archive.is/J34v0

このnoteの記事が批判対象(笑)としているのはNHKの桜を見る会の記事が印象操作のお手本過ぎるので読んで欲しい - 事実を整えるという私の記事です。

私の元記事の内容は、NHKの当該記事による報道が「ホテルがHPで公開しているプランでは1人あたり1万1000円が下限なのに桜を見る会では1人あたり5000円という低額で提供しているのは利益供与ではないか」と仄めかしているのは、調べれば簡単に分かる内容を敢えて省いているため印象操作だ、という事を指摘しているものです。

で、私に対する批判者の論理は、上記画像のように『料理の部分は人数に比例して価格が増加しているから、ケータリングプランの料金表を根拠に「1人当たりの単価が5000円というのは有り得る」というのは無理がある』、ということでした。

画像中の表で「お料理」の代金の所だけを映しているのが分かりますが、もちろんこれは全体の一部しか見せていないストローマン(藁人形)論法が絡んでいます。

料金表の一部だけ見せて総額を隠す藁人形論法

私の記事の中で「50名と100名とでは一人当たりの価格が1000円も異なります」とあるのは以下の料金表の事を指します。

桜を見る会ホテルニューオータニ

https://web.archive.org/web/20191117003302/https://www.newotani.co.jp/tokyo/banquet/plan/catering/

とまぁ、一目瞭然ですが、見積もりの内容は「お料理」項目だけではないのですよね。

総合計を見れば当然、客単価の通りになっているわけですし。

そもそも料理代金だけでプランが成り立っているというわけでは無いのですから、なぜお料理代金だけ比較したのか、最初から意味不明な事を言っていたということなのですが。

さらには、私の記事ではその後に他の報道で既にホテルニューオータニ側から「5000円でできるかについては宴会の形式による」「お客様の要望を伺って判断している」という証言を紹介しているので、NHKの当該記事が情報不足だということも裏付けています。

結局、この件は850人という大人数での宴会であることから、形式についても個別対応していたということで、世の中でまともに仕事をしたことがある人であれば(特に営業)、パーティーの金額が5000円であったことは何ら問題視されるような事ではないと分かる話でした。

「事実を整える デマ」で検索したらストローマン論法のお手本記事だった

ということで、「事実を整える デマ」で検索してみたら、ストローマン論法(+αで意味不明な論理展開も加わりますが)のお手本のような記事を見つけてしまったので、ここに記録しておきます。

結局、何がしたかったんだろう?

情弱だけ釣れればそれで良いや、と思っていたんでしょうけど、はてブ民じゃあるまいし、note民でそういうのにひっかかる人って居るのだろうか?

以上

リツイートだけでなくいいねだけで著作者人格権侵害になり得る事が判明:自動トリミング最高裁判決

 

Twitterでいいねだけで著作者人格権侵害

リツイートだけで著作者人格権侵害になり得る最高裁判決が出てしまいましたが、その仕組みが分かると、実は【いいねだけで著作者人格権侵害になり得る】という事に気づいてしまいました。 

リツイートだけでだけで著作者人格権侵害の最高裁判例の事案の概要まとめ

リツイートしただけで著作者人格権侵害になり得る最高裁判決はネット当たり屋やスパムを生み出す|Nathan(ねーさん)|note

上記でも事案の概要のまとめを整理していますが、最高裁の判決文から事案の概要を書くと以下になります。参考:知財高裁

  1. 画像の権利者が鈴蘭の花の画像を自己のウェブサイトにUP
  2. 画像上部と下部には権利者の名前と転載禁止の文字
  3. ツイート者が無断で当該画像をツイートに添付(画像自体を編集はしていない)
  4. リツイート者がツイート者のツイートをリツイート(画像自体を編集はしていない)
  5. それにより、リツイート者のタイムライン(プロフィール画面)では画像の上部と下部が自動「トリミング」されて表示(画像自体が編集されたのではなく、表示が一部だけという意味)
  6. 自動トリミング表示はリツイート者のアカウントページにおいて行われているので、表示主体はツイート者やツイッター社ではなくリツイート者と判断
  7. パクツイをしたツイート者は当然、画像の「著作権」侵害
  8. トリミング表示は著作権侵害ではないが著作者人格権(氏名表示権)の侵害とされた(知財高裁では同一性保持権も侵害しているとしたが最高裁では言及無し)
  9. そのため、ツイート者のみならずTwitter社に対するリツイート者の発信者情報開示請求も認容された

単に「パクツイをリツイートしたから」権利侵害とされたわけではないという点は要注意です。そして、この理屈だとパクツイのリツイートじゃなくても権利侵害の主体になり得ることになります。

インラインリンクの仕組みが原因

 

インラインリンクの仕組みとは

Twitter社の仕様による自動トリミングなのに、なぜリツイートをした人が権利侵害の主体となるのか?

これは、インラインリンク(乱暴に言えば画像とか説明文付きのリンク)の仕組みの法的評価が原因です。

細かい話は以下小文字で載せておきますが、リツイートしたツイートがそのアカウントのプロフィール画面で表示されている状態は、元ツイートへのインラインリンクであると技術的に説明されます。

そして、そのような表示はTwitter社のサービスの仕様によるものではあるものの、そのアカウントのページから情報送信の指令が出されているから、表示の責任がそのアカウントの開設者にある、というのが知財高裁と最高裁の理屈です。

「インラインリンク」とは、「ユーザーの操作を介することなく、リンク元のウェブページが立ち上がった時に、自動的にリンク先のウェブサイトの画面又はこれを構成するファイルが当該ユーザーの端末に送信されて、リンク先のウェブサイトがユーザーの端末上に自動表示されるように設定されたリンクをいうものとする。参照:電子商取引及び情報財取引等に関する準則 平成29年6月 経済産業省140ページ以下

リツイートでも「いいね」でも自動トリミング

リツイートでもいいねでも著作者人格権侵害

リツイートによる自動トリミングとはどういうものか?

試しに自分のアカウントでやってみると、こういう感じです。

twitter.com/Nathankirinoa⇒これがアカウントページです。

見ての通り、リツイートしていなくてもこの表示なわけですが、これは私自身のツイートを私自身のプロフィール画面で見ているからです。リツイートしてもこの表示です。

最高裁判決の事案は、画像の上端と下端が見切れるようになり中央部分だけが表示されたというものだったのですが、ここで例示したものは下端部分は全部映り込んで、上側のはみ出る部分が見切れるような表示になっています。

今回、いろいろ調べてみたのですが、中央部分だけ表示されるものもあり、挙動がよくわかりませんでした。

そして、これは「いいね」でも同じ表示です。

いいねのインラインリンクで著作者人格権侵害

このように、プロフィール場面で「いいね」タブを押せば、いいねを押したツイートも表示されますが、リツイートしたツイートと同様「自動トリミング」が行われているのが分かります。

「いいね」もリツイートほどではありませんが、ユーザーのホーム画面上に流れてくるツイートとして選別されるような、拡散性を一定程度有しています。

いいねの場合もインラインリンクですよね?なので、理屈上はリツイートと同様に考えることになります。

………どうすんでしょ?これ?

いいねだけで著作者人格権侵害、回避方法は

リツイートもいいねも画像付きのものは避ける、パクツイっぽいツイートは放置する、ということにするしかなさそうです。

Twitter社が日本の判例だけで仕様変更するとは思えないですし、全部表示ということなら縦長画像のスパムが横行しそうですし。

最高裁の発信者情報開示を認めた判例が、「転載禁止」と書かれているツイートに関するもの、という理論的限定が付けられればいいのですが、今のままだとTwitterの機能と利用実態を無視したユーザーの萎縮にしかならないと思います。

以上

愛知県共産党、大村知事のリコールに反対「表現の自由を否定」と誤解

愛知県共産党、大村知事のリコールに反対する声明を出しましたが、相変わらず表現の自由、検閲、などと吹聴しているので改めてその主張の誤りを指摘します。

過去に語りつくした話ですので、深く知りたい方は以下を読んで頂ければと思います。

あいちトリエンナーレ・表現の不自由展 カテゴリーの記事一覧 - 事実を整える

愛知県共産党、大村知事のリコールに反対

愛知県共産党、大村知事のリコールに反対する声明を出しました。

誤解があるので指摘します。

高須院長や河村市長は「表現の自由を否定」と誤解

共産党愛知県委員会

共産党の声明は相変わらず「表現の自由を否定」「検閲」などと言ってますが、本件は以下のように整理できます。

  1. 表現の自由は政府に表現の場を求める権利ではなく、邪魔するなと言う権利に過ぎない
  2. トリエンナーレは公的機関運営に民間が乗っかってるだけ
  3. 民間活動に公金支出するような事案とは異なる
  4. よって憲法上の表現の自由の話ではない
  5. したがって検閲の話になり得ない

上記の内、2番の「トリエンナーレは公的機関運営に民間が乗っかってるだけ」という認識をすっとばしてるからおかしな話になります。

公金支出の問題」なのは確かですが、それは上記の前提を踏まえた上でないと、「表現の自由は尊重されるべきだから補助金出せ」みたいな「反論」が可能だと勘違いする輩が出てきます。

あいちトリエンナーレ問題・展示前と展示後の問題は別

また、展示前と展示後の問題は別に考えることになります。

「一度展示の場を提供しておきながら一方的に撤回した問題」は、トリエンナーレ実行委員会≒ほぼ愛知県と表現の不自由展実行委員会や参加クリエイターらとの契約関係や不法行為の問題です。

それは事後処理の問題であって、昭和天皇の御尊影を燃やし、残り灰を踏みつける映像の展示を許した問題は、展示前の話です(撤回後に再度展示許可した点も糾弾されるべき)。

「憲法上の表現の自由・検閲」は愛知県の検証委員会も否定

あいちトリエンナーレ表現の不自由展の問題を「憲法上の表現の自由・検閲」と捉えることは、愛知県の検証委員会の法律論を担当した曽我部教授も否定しています。

あいちトリエンナーレのあり方検証委員会 第2回会議 議事録

(曽我部委員) 省略

まず一点目、本件は公金を使って県立美術館で表現の場を提供する、しない、というケースですので、憲法上の表現の自由がストレートに問題となる事案ではないということで、これが今回の大前提となるものです。「憲法上の表現の自由がストレートに」と書いていますけれども、今回その表現の自由、あるいは、芸術の自由が問題に、もちろんなるわけですけれども、「法的な意味での表現の自由」ということでいうと、ストレートに問題となるということではないということになります。もちろん、表現の自由というのは非常に重要でありまして、最大限尊重が必要なわけですけれども、法的な議論をする場面でいうと、今のようなことになるということです。法的に言うと、基本的には、契約ですとか、あるいは、その不法行為ですとか、民法上の話がメインになるかな、ということでございます。

したがって、表現の自由のフィールドの話である「検閲」においても以下指摘しています。大村知事の事を言ってますね。

第3回会議議事録

(曽我部委員) 省略

最後に 1 点だけ、法律的なことでいうと、今回非常に印象に残ったのは、検閲という言葉が非常に様々な意味で用いられて、混乱を招いたということです。何か自分の気に入らないことに検閲というレッテルを張って批判するということ、そういう局面も見られたわけですが、そういう意味では検閲という言葉が、極めて多義的に用いられて混乱を呼んだというのは大変残念なことだったと思います。以上です。

法律関係の図などは議事概要(あいちトリエンナーレのあり方検証委員会 第3回会議) - 愛知県 の資料に掲載されています。

トリエンナーレ表現の不自由展問題は、公的機関の裁量・自律的態度を放棄した大村知事の問題

公的機関の裁量としてどの作品を展示するかは選択可能なのに、その自律的態度を放棄した大村知事の主体性を欠いた無責任な行政運営の問題

あいちトリエンナーレ表現の不自由展問題は、このように言えます。

誰でも自分の裁量の範囲であれば、自分に決定権があり、他人がその者の意思に反する事柄を強制することはできない。

この当たり前の、普遍的な価値観の話であると言えます。

文化芸術基本法違反だとする主張も誤り

これもあいちトリエンナーレ大村知事、自ら「検閲」していたと暴露する - 事実を整えるで既に指摘していることですが簡単に。

共産党は文化芸術基本法の第二条 「文化芸術に関する施策の推進に当たっては,文化芸術活動を行う者の自主性が十分に尊重されなければならない。」を持ち出しています。

「自主性」と書いていますが、既述の通り、あいちトリエンナーレは公的機関が運営主体の場であり、表現の不自由展がそこに乗っかっているだけですから、それだけで行政の介入を全否定するような効力はありません。

  1. 文化芸術基本法は行政不介入の原則を示しているに過ぎず、絶対的に介入を禁止しているわけではない⇒トリエンナーレの他の展示領域の要件には「政治的主張を目的とする表現でないこと」という項目がある(なぜか表現の不自由展が属する国際現代美術展にはこの項目が存在しない)
  2. 文化芸術基本法があるからといって表現の自由に給付請求権は無い
  3. 文化芸術基本法2条9項には「文化芸術に関する施策の推進に当たっては,文化芸術活動を行う者その他広く国民の意見が反映されるよう十分配慮されなければならない」とある⇒今回問題視された作品に関しては国民の意見が反映されるようになっていたか?
  4. 誰が文化芸術であると決めるのか?⇒文化芸術だと言ってしまえば展示が強制されるのか?それは「特権」ではないのか?

行政は何が文化芸術であるかは判断する能力がありませんが、何が政治的であるかを判断する能力はあります。芸術であるからといって政治的表現が「治癒」されるという特権を与えるのは憲法14条違反ですので、それこそ公的機関としては許されるものではありません。

大村知事のリコール問題と表現の不自由展の問題

大村知事のリコール問題と表現の不自由展の問題についてはあいちトリエンナーレの問題点・争点をわかりやすくまとめ - 事実を整えるでまとめています。

事案の中心から外れた、外縁に属する付随的な問題が取り上げられる傾向にありますが、中心的な問題は昭和天皇の御尊影を燃やして残り灰を踏みつける映像の展示を大村知事が容認したことにあります。これは判断ミスの問題。

そして、それに関する発言が法的主体としての自律性を放棄したものであり、誤解を拡散した点が、行政の長としての資質の問題として関連してくるでしょう。

以上

林景一裁判官の最高裁判決文の反対意見:リツイート画像の自動トリミングで著作者人格権侵害

リツイート画像が自動トリミング表示されたことで著作者人格権侵害となるという最高裁判決が出ましたが、Twitterアカウントのある林景一裁判官の反対意見を見ていきましょう。

リツイート画像の自動トリミングで著作者人格権侵害の最高裁判決文

平成30年(受)第1412号 令和2年7月21日 第三小法廷判決

事案の理解に参考になるのは「RTによる画像トリミングで著作人格権侵害」 知財高裁判決の意味と影響 弁護士が解説 - ITmedia NEWSです。

権利者のHP:http://ynawata.asablo.jp/blog/2018/05/22/8854401

  1. プロカメラマンである画像の権利者がホワイトとピンク色の鈴蘭の花の画像を自己のウェブサイトにUP
  2. 画像上部と下部には権利者の名前と転載禁止の文字が
  3. ツイート者が無断で当該画像をツイートに添付(画像自体を編集はしていない)
  4. リツイート者がツイート者のツイートをリツイート(画像自体を編集はしていない)
  5. リツイート者のタイムライン(プロフィール画面)で画像の上部と下部がトリミングされて表示(権利者のHP上の表現ではマスキングとなってるが、全体表示がされていないという意味において同じ)(画像自体の編集ではなく、あくまで表示の話)
  6. パクツイをしたツイート者は画像の著作権侵害
  7. トリミングされた表示が著作権侵害ではないが著作者人格権侵害とされた
  8. そのため、ツイート者のみならずリツイート者に対する発信者情報開示請求が認容された

リツイート画像の自動トリミングで著作者人格権侵害が認定された最高裁判決の事案はざっくり言うとこの通りです。

単なる画像リツイートやパクツイのリツイートが違法ではない

写真の無断リツイートは著作者の権利侵害 最高裁判決 - 毎日新聞

新聞メディアなどでは「写真の無断リツイート」や「無断転載画像のリツイート」などといった表現で報道されている所が多いですが、単なるパクツイのリツイートが問題なのではありません。

リツイートした画像に対してリツイート者が何ら手を加えていないのに、「表示上、上下部分が見えなくなった」ことが権利侵害とされたのです。しかも、それはTwitterサービス上の仕様によって行われたものなのです。

判決文の反対意見ではその懸念が示されています。

林景一裁判官の最高裁判決文の反対意見

Twitter裁判官林景一の反対意見:リツイート画像の自動トリミングで著作者人格権侵害の最高裁判決

自らもツイッタラーだった林景一裁判官の最高裁判決文における反対意見は以下の通りです。割と短いです。

裁判官林景一の反対意見は,次のとおりである。
私は,多数意見と異なり,本件各リツイート者が本件各リツイートによって本件氏名表示権を侵害したとはいえず,原判決のうち本件各リツイート者に係る発信者情報開示請求を認容した部分を破棄すべきであると考える。その理由は以下のとおりである。

1 原審は,本件各表示画像につき,本件写真画像(本件元画像)がトリミングされた形で表示され(以下,このトリミングを「本件改変」という。),本件氏名表示部分が表示されなくなったことから,本件各リツイート者による著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)の侵害を認めた。しかし,本件改変及びこれによる本件氏名表示部分の不表示は,ツイッターのシステムの仕様(仕組み)によるものであって,こうした事態が生ずるような画像表示の仕方を決定したのは,上告人である。これに対し,本件各リツイート者は,本件元ツイートのリツイートをするに当たって,本件元ツイートに掲載された画像を削除したり,その表示の仕方を変更したりする余地はなかったものである。

また,上記のような著作者人格権侵害が問題となるのは著作者に無断で画像が掲載される場合であるが,本件で当該画像の無断アップロードをしたのは,本件各リツイート者ではなく本件元ツイートを投稿した者である。

以上の事情を総合的に考慮すると,本件各リツイート者は,著作者人格権侵害をした主体であるとは評価することができないと考える。

2 ツイッターを含むSNSは,その情報の発信力や拡散力から,社会的に重要なインフラとなっているが,同時に,SNSによる発信や拡散には社会的責任が伴うことは当然である。その意味で,画像そのものが法的,社会的に不適切であって,本来,最初の投稿(元ツイート)の段階において発信されるべきではなく,削除されてしかるべきであることが明らかなもの(例えば,わいせつ画像や誹謗中傷画像など)については,その元ツイートはもとより,リツイートも許容されず,何ら保護に値しないことは当然である。しかしながら,本件においては,元ツイート画像自体は,通常人には,これを拡散することが不適切であるとはみえないものであるから,一般のツイッター利用者の観点からは,わいせつ画像等とは趣を異にする問題であるといえる。多数意見や原審の判断に従えば,そのようなものであっても,ツイートの主題とは無縁の付随的な画像を含め,あらゆるツイート画像について,これをリツイートしようとする者は,その出所や著作者の同意等について逐一調査,確認しなければならないことになる。私見では,これは,ツイッター利用者に大きな負担を強いるものであるといわざるを得ず,権利侵害の判断を直ちにすることが困難な場合にはリツイート自体を差し控えるほかないことになるなどの事態をもたらしかねない。そうした事態を避けるためにも,私は,上記1の結論を採るところである。

インラインリンクの自動トリミングとは?

インラインリンクの自動トリミングとは

 

判決文では、「インラインリンク」の形式でタイムライン上に表示されているため、リツイート者が自動トリミングの主体であるとされました。

ここではインラインリンクとは何ぞや?という技術的な説明は置いておいて、具体的にどういう見え方をしているのかだけ説明します。

上記画像は、元ツイートの画像です。

URLはhttps://twitter.com/Nathankirinoha/status/1285526643776212994となっています。

それをリツイートすると、タイムライン(つまりはプロフィール画面)では、以下のような見え方になります。

インラインリンクのリツイート画像

https://twitter.com/NathankirinohaがタイムラインのURLになります。

この画像の場合、画像の上部が隠れてしまっているのが分かるでしょう。
※このことは権利者のHPではマスキングと書かれているが、何か手を加えたわけではなく、表示上の問題だということがわかるだろう。

このツイートをクリック(スマホならタップ)すると、上掲のツイートURLの表示になるわけです。

なお、2015年の際の仕様は、現在よりももっと画像の表示スペースが小さいものでしたが今は映り込む範囲が広くなっています。

Twitter社は仕様変更で対応するべき

一般ユーザがリツイートされた際の表示がどうなるのかを予め予測することは不可能ですから、Twitter社の方で仕様変更して、リツイート時にも画像が全体表示されるようにする以外に、混乱は収まらないと思います。

以上

"シーライオニング"の日本語界隈(Twitter)での拡散の仕方とその経緯

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「シーライオニング」という用語の日本語圏での広がり方の経緯について。

Google検索とTwitter検索をしても、言及されているタイミングは変わらなかったのでツイートを中心に整理していきます。

シーライオニングの元ネタ漫画は2014年

シーライオニングの元ネタ漫画は、David Malki ! 氏が連載しているWondermarkという単発シリーズにおける"Terrible Sea Lion"という題名の回です。

主に#GamerGate に関連して言及される形で英語圏で拡散されていますが、作者がその議論を意図してシーライオンを書いたのかは定かではありません。

「シーライオニング」という言葉の用語法は、この漫画で決定づけられたのではなく、漫画はきっかけに過ぎません。その後のネット上での用いられ方によって徐々に共通理解が形成されていきました

概ね「誠実に議論をするふりをして、相手の好意に乗じて一方的に情報提供・説明を要求し、負担をかけさせ、時間を浪費させ、しかも説明された内容を曲解したりしながら更なる質問を繰り返す」と理解されていますが、もっと短く「議論をする気も無いのに悪意を持って質問を繰り返す」と言われることがあります。

日本の既存のネットスラングで言えば「荒らし」≒「釣り」であり、「粘着」に近いものなので、対処法はこれまでと変わりません。

日本語界隈での拡散は2020年から

シーライオニングという言葉が日本Twitterで広まったのは、2020年に入ってからです。

厳密に言うと、2019年12月30日にシーライオニングの語義をUrbandictionaryから引用しつつ元ネタ漫画を提示したものが拡散されたのをきっかけに、何度か関連するツイートが拡散されていきました。

その際の言及のされ方にも変化があるので、その点をここでは整理していきます。

2019年までの"Sealioning"の認識と経緯

現存している日本語Twitterにおける最古のシーライオニングに言及しているツイート。

これ以降シーライオニングに言及しているツイートは2019年11月まで隔たりがあります。

そして2019年12月31日になされたこのツイートが日本語Twitterでシーライオニングの語が拡散されたきっかけになります。

翌日には棘(togetter)のまとめが作成されました。

これは1月1日時点ですが、2月に入ってからもとても多く拡散されていました。

リプライや引用リツイートを読む限り、7月に示されたような、作品をストローマンして理解するようないいかげんな論じ方はほぼ無いに等しいです。 

この時点では英語圏での用語法の認識と、元ネタ漫画とそこから意味が派生・発展・形成されていったという認識がきちんとあるのが見て取れます。

日本語訳が出てくるのは先の話で、概ね、英語(と英語圏での文脈)を理解しようとする人たちによって認識されていたと言えそうです。が、7月に拡散されたものと比べると小規模なものにとどまっています。

この頃から「フェミがやってることだよね」「某ネット論客そのまんまじゃん」みたいなツイートはありましたが、ほとんど個人の単発の感想に終わっています。

2月以降から6月までのシーライオニングの広がり方

2月はこの漫画化したツイートが拡散されています。

これは「女性が被害を受けやすい」という事が書かれているので、よりフェミニスト界隈に近い言説なのですが、「これってお前らがやってることだよね」とかその逆で「フェミらが論理的に話せないのを誤魔化すためだ」みたいな言及はあったものの、あまりその事で論争のような事は発生していなかったようです。

むしろ「春風ちゃんがよくやられてる」「現実のカップルでもそう」というように、肯定的なものが多かったです。

また、この漫画の作者がシーライオニングの用語法の出典や元ネタ漫画の出典を示していないので、英語圏での使用のされ方・マルキ氏の漫画の内容についてこのツイートから知った人はほとんどいなかったようです(何人かは特定していた)。

そのためかわかりませんが、1月よりは「論理的に説明できない連中が使う詭弁だ」といった受け止めが増えています

「半年ROMれ」という対処方法を指摘している人、既存の概念での置き換えが可能であることを指摘している人はそれなりにいました。

6月11日には、7月に話題になった際にも多く取り上げられた和訳版がツイートされており、このタイミングでも多く拡散されています。

7月までの「シーライオニング漫画と黒人差別・人種差別」 の言及

このような状況なので、「シーライオニング 黒人」「シーライオニング 差別」などというクエリで検索をしても、まったくヒットしません。

「アシカを黒人などの別人種に置き換えたら差別に繋がる」旨を主張するツイートは、6月31日までで3、4つしかありませんでした(7月21日検索)。

これが、7月の拡散時には非常に多くのツイートがみつかるようになります。

7月以降のシーライオニングの定義・意味の拡散のされ方

「須藤エミニ🕊フェミニストVtuber (@suto_emini)」という方がこのような動画を投稿したことが7月に「シーライオニング」にまつわる言説が拡散したきっかけです。

これに対する反応は2極化しました。

フェミニストを名乗る者が説明したことで「ほらみろ」というような反応が増大、他方でフェミニストであるか否かは別として「あるある、よくある」というような反応も多く、後に某ネット論客が「参戦」していくようになりました。

動画の内容的には宇崎ちゃんポスター事件をモチーフに「こういうポスターが子供の見る場所にあるのはよくないな」とフェミニストが感想を述べたところに、それに対してエビデンスを要求する人(Twitterのツイートを見た人などが念頭にある)の例、次に彼女が体験した具体例(「井の頭公園にアシカは居ない」に対するエビデンスを要求する人→ダイヤモンドオンラインの記事と同じ)を提示。こうした流れでシーライオニングの用語法の説明をしていました。

動画では具体的な言及はしていませんが、動画の概要欄にワンダーマークのHPダイヤモンドオンラインの解説記事が添付、質問の全てがシーライオニングではないという注意事項も説明がありました。

英語圏でのシーライオニングの用語法から説明したものではないのですが(重ねて言うが、マルキ氏の漫画は概念が形成されるきっかけに過ぎず、漫画におけるシーライオンの行為だけがシーライオニングの定義として使用されているのではない)、それと照らしても概ね合致している説明内容です。

あくまでシーライオニングに関する説明についてですが。

この拡散は7月15日にピークになりました。

シーライオニングのTwitterでのトレンド、拡散

yahooリアルタイム検索:http://archive.is/XLmZn

フェミニストvs反フェミニスト+某ネット論客の文脈

ここからは私の私見の要素が強まる内容になっています。

 「フェミニスト」に対する評価ですが、ネガティブなものが多く、「議論をしようとしない、反論されてもそれに対してちゃんと応じない」という評価がネット上では定着しています。

1つリプライで指摘しただけで14分でブロックされた例ですが、こういう例がいくらでも存在しています。

7月の「シーライオニング」の日本Twitterにおける拡散は、フェミニストに対してこういう認識を持っている者が「フェミニストが言っていることだからおかしい言葉だろう」という先入観を持って理解するものと、フェミニストらによる理解が対立する形で論争化しました。

そうした状況もあったためか、「フェミニストがそれを論じていること」に留まらず、6月までにはほとんど見られなかった「シーライオニングという言葉自体」や、「元ネタ漫画の作品自体」を否定的に論じる様子が目立つことになります。

なお、元ネタ漫画を持ち出してきたのはフェミニスト界隈であるが、普段あんたらがやってる論理展開からは、あんたらのような連中が寄ってすがるべき漫画ではなく、逆に足元を掬われないか?という文脈で論じられているのがCDB氏のこのエントリ。その限りでは私も同意。これもフェミvsアンチフェミの文脈での捉え方と言えるでしょう。

某ネット論客とシーライオニングの用語法

同時に、某ネット論客に対する評価から「シーライオニングという言葉、わが意を得たり」という視点で論じられるケースも多く存在しています。

そのため、フェミvsアンチフェミ文脈も相まって、英語圏でのシーライオニングの用語法とは離れた文脈で理解されることが多くなり、「その漫画はシーライオニングを上手く表現できていない」、などの時系列からは間違っている理解も一部見られました。

さらに、自分で英語読解ができない者が他人の単語の説明文を一知半解して和訳の内容を否定する、ということも起きていました。

和訳についてはその意図と作品解釈も含めて私も以下で論じています。

ワンダーマークの表題"The Terrible Sea Lioning"を無視した用語法

そしてこの話になるのですが、7月の拡散の中心となった某ネット論客が和訳されたものだけを参考にし(和訳ツイートを「原典」として物を書いている)、原作の表題"The Terrible Sea Lioning"や漫画HP上のTags: annoyances(=ウザい・苛立たせるもの)を無視したことで、独自理解で「シーライオニングしよう」とまで主張した、という展開になりました。

結局このような用語法は受け入れられるハズもなく、まったく広まらなかったのですが、「フェミが詭弁に利用しようとしている怪しい道具」の先入観や、原作ツイートなりHPではなく原題の誘導が無い和訳が広まったことで(和訳者には責任が無い)、「女性が悪いのであってアシカは悪くない」「アシカを黒人や在日朝鮮人に置き換えることができるので漫画はダメだ」という主張も多くみられるようになりました。

アシカを黒人に置き換えたら…のストローマン論法

先述のように、6月31日までは「シーライオニング 黒人」「シーライオニング 差別」ではほとんど誰も論じていませんでした。

それが、7月の拡散時には相当数のツイートが引っかかるようになり、ツイッターの検索窓で「シーライオニング」と入れると関連に「黒人」が出てくる時期もありました(設定環境によっては違いがある)。

「女性の非難対象がアシカという存在であるのが黒人や在日朝鮮人への代入可能性がある」と言うなら、なぜ5コマ目や6コマ目にも代入しないのでしょうか?

黒人や在日朝鮮人は、5コマ目や6コマ目のように、拒否られた相手の部屋に深夜に侵入したり朝食の時間にも議論を吹っかけて粘着するような人々なのでしょうか?

漫画は6コマあって全体の展開から理解すべきものを、5コマ目以降を無視しているのはストローマン(藁人形)論法ではないでしょうか?

こんなのがありますが、ならばもはや女性が嫌悪するのは正当性があるということになぜ気づかないのだろうか?

なお、2014年に英語圏で拡散された際もこのような難癖は多くつけられたようですが、作者が「そういう読み方は普通しないだろ」と一蹴しています。

嫌悪対象を擬人化する展開を否定するのは表現の自由の観点から危険なのでは?

7月の拡散時に見られた光景は、嫌悪対象を擬人化するという風刺の表現を狭めるような論理を、表現の自由が大事だと言ってる側が、反フェミの文脈で相手を論破できればそれでいいと思って主張している様でした。

それを見るのは何とも言い難い気持ち悪さを覚えますし、誠実さの欠片もないなと思います。

以上