事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

朝鮮学校無償化愛知訴訟,最高裁でも原告敗訴:自律的運営の欠如と朝鮮総聯の介入

朝鮮学校と朝鮮総聯の不当な支配と教育内容

愛知朝鮮高校の無償化を求めた訴訟で最高裁でも原告敗訴となりましたが、これに関する報道が少しミスリーディングなので本件の内容を整理します。

朝鮮学校無償化訴訟

朝鮮学校無償化訴訟は東京・大阪・愛知・広島・福岡で提起されていました。

このうち、東京と名古屋と福岡は元生徒ら(卒業生)が原告、広島と大阪は朝鮮学校の運営法人が原告です。

最高裁判決が出ていたのは東京・大阪訴訟で、いずれも原告(朝鮮学校・卒業生側)が敗訴しています。大阪訴訟では地裁で原告が勝ちましたが、高裁で覆りました。

広島・福岡は地裁で原告が敗訴した後、高裁での審理が続いています。

広島高裁では2020年10月16日、福岡高裁では10月30日に判決言渡しの予定です。

朝鮮学校無償化愛知訴訟、最高裁でも敗訴

朝鮮学校の無償化除外 元生徒たちの敗訴が確定 NHK

2審の名古屋高等裁判所は、去年10月、「学校の運営に朝鮮総連=在日本朝鮮人総連合会が介入し、北朝鮮の政治指導者を崇拝しその考えやことばを絶対視するようになっている。教育基本法に規定がある『教育の不当な支配』にあたり、国の判断は違法とは認められない」と指摘し、1審に続いて元生徒らの訴えを退けました。

朝鮮学校無償化愛知訴訟も、最高裁で敗訴が確定しました。

しかし、この記事だけを見ると、「教育内容」だけをもって教育基本法上の「不当な支配」を認定したと理解する者が出てきます。「朝鮮総連の介入」も、「教育内容」にのみかかっている書き方になってます。

 

教育基本法

(教育行政)
第十六条 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。

「勘違いする者」が出現

NHKの記事を引用する者が、「教育内容」だけのせいで「不当な支配」が認定されたと勘違いしてこのようなツイートをしています。
まぁこのアカウントは確信犯でしょうけど

こういう存在を再生産する報道はやめていただきたい。

教育内容以外の不当な支配

名古屋地裁 平成30年4月27日判決 平成25(ワ)267 平成25(ワ)267

最高裁判決文は手に入っていませんが、名古屋高裁の判決文を見ると、名古屋地裁の判決文を踏襲しており、補充主張に対する追加的判示が為されている部分が多いため、ネットでも見れる名古屋地裁の判示内容から、「教育内容」以外の事情で「不当な支配」を認定したものを示します。

朝鮮総連の傘下団体の教育会が実質的に朝鮮学校の運営をしている疑念

a すなわち,愛知朝鮮学園の理事会は,同学園の業務を決し,理事の職務の執行を監督するとともに理事長を選任する機関であり(私立学校法64条5項,36条2項,35条2項,愛知朝鮮学園寄附行為〔甲全4の10〕5条2項,17条),評議員会は,理事を選任するほか,予算や事業計画など学園の業務に関する重要事項に関する諮問を受ける機関である(私立学校法64条5項,38条,42条1項,愛知朝鮮学園寄付行為〔甲全4の10〕6条1項,22条)等,いずれも愛知朝鮮学園の運営に関して重要な役割を果たすべき存在である。

b しかしながら,前記イ aのとおり,朝鮮総聯のホームページには,平成24年3月まで,「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている」との記載が存在していたのであり,この記載は,朝鮮学校の運営が朝鮮総聯の傘下団体である教育会において実質的に行われているのではないかとの合理的疑念を生じさせるものである。

朝鮮高校の管理運営をしているとする愛知朝鮮学園については、朝鮮総連と人的に密接な関連を有し、北朝鮮から多額の資金援助を受けていることが認定されましたが、それだけでは「不当な支配」の合理的疑念を認定するべきではなく、一般的関与を超える介入であって、教育本来の目的を歪めるものに至っているかを検討するべきだとしてこのような詳細な認定をしています。

その事情の一つとして、朝鮮総連の傘下団体の教育会が実質的に朝鮮学校の運営をしている疑念が指摘されています。この根拠がホームページ上に「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている」との記載が存在していたことです。現在は消されていますが、魚拓はこちら

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愛知朝鮮学園の借入債務が教育会名義で会計上の意思決定が自律的に行われていない疑念

c また,準学校法人が学校の運営費のために行う借入金は,評議員会に諮問した上で(私立学校法64条5項,42条1項1号),理事会において決すべき事項であるところ(同法64条5項,36条2項),前記イ bのとおり,平成23年時点で愛知朝鮮学園がRCCに対して負っていた約14億円の借入債務は,学校運営費のための借入金であるとの説明がされているにもかかわらず,その多くが教育会名義での借入れとなっている。しかも,支援室からの確認に対し,愛知朝鮮高校は,上記借入債務について,理事会・評議員会の意思決定の有無を確認できない旨の回答をしているほか,借入れの詳細が分かる書類も学園内には存在しない旨を回答するなど( イ,同エ),理事会・評議員会において意思決定を自律的に行っている準学校法人とは考え難い回答をしている。

  1. 愛知朝鮮学園の借入金債務が教育会名義
  2. 借入債務について理事会・評議員会の意思決定を確認できない
  3. 借入れの詳細が分かる書類も学園内には存在しない旨

これでは会計上の意思決定が愛知朝鮮学園の自律的判断において行われているとすることは困難でしょう。

他の訴訟の判示でも指摘されていますが、これでは補助金を投入しても教育に使われるのではなく別目的に転用される危険が高いでしょう。

愛知朝鮮学園の理事会開催状況が不存在

そして,上記借入れが行われたのは平成9年から13年頃のことではあるが,愛知朝鮮学園は,現在の理事会の開催状況についても,理事会開催を裏付ける書類(出欠票や欠席者の委任状等)は特に存在しないと回答している上( エ),役員名簿と理事会等の出席者が一部合致していないことも確認されており(乙184),さらには,平成24年3月時点で前記bのとおりのホームページの記載もあったのだから,本件不指定処分時に,愛知朝鮮学園の理事会・評議員会が法令に従って自律的な意思決定を行っていると合理的疑念なく認められる状況ではなかったといえる。

【理事会開催状況が不存在】などという学校の管理運営の母体なんてもはやあり得ないでしょう。別の存在によって実質的に運営されていると考えるのが筋です。

教育内容が朝鮮総聯による不当な支配を基礎づける判示

教育内容についての言及は、これらに加えてのものでした。

改めてここでも紹介します。

次に,愛知朝鮮高校における教育内容について見るに,この点においても,朝鮮総聯が愛知朝鮮学園に「不当な支配」を及ぼしているのではないかとの合理的疑念が存在するといわざるを得ない。

a まず,前記イ aのとおり,朝鮮高校が使用している教科書は,平成22年以前まで朝鮮総聯中央常任委員会に置かれた「教科書編纂委員会」によって編纂されており,総聯中央副議長が責任者になるなど,朝鮮総聯の意向を色濃く反映した教科書編纂がされていたことがうかがわれる。その後,教科書の編纂者は「学友書房 教科書編纂委員会」と改められたが,学友書房も朝鮮総聯の事業体である上,学友書房が朝鮮総聯中央の指導の下で教科書編纂を行っていたことは,「朝鮮新報」の記事から認められる。

b もっとも,前記 のとおり,在日外国人学校が外国本国ないし在日民族団体から教育内容について影響を受けること自体は一般的にもあり得ることであるから,上記aの事実のみをもって「不当な支配」が合理的に疑われることにはならない。しかしながら,朝鮮高校で使用されている教科書には,北朝鮮の最高指導者を絶対視し,これを賛美・礼賛する表現が多数見られるのであって(前記イ b),その内容は,授業内容に対する批判能力が未だ十分とはいえない後期中等教育段階にある生徒に対して,一方的に偏った観念を植え付けるものなのではないかとの疑いを抱かせるものである。

c また,このような教育は,その規約上,北朝鮮の政策を高く奉じ,朝鮮総聯の綱領を固守することを任務としている朝青を通じて,朝青の加盟員である愛知朝鮮高校の生徒に対し,課外でも行われているのではないかとの疑いが存在する(前記イ c)。さらに,朝鮮総聯は,朝鮮学校において,北朝鮮の最高指導者を崇拝し,その考えや言葉を絶対視するような教育を行うべきことを,教職同等を通じて,校長や教員に繰り返し指導していることも認められる(前記イ d)。

  1. 教科書編纂が朝鮮総聯指導の下行われている
  2. 朝鮮高校で使用されている教科書には北朝鮮の最高指導者を絶対視・賛美礼賛
  3. 朝青による課外授業でも上記指導が行われている疑惑
  4. 生徒だけでなく教職員らに対する指導も存在

朝鮮学校は「自律的運営の欠如と朝鮮総聯の介入」が本質

こうしてみると、教育内容に基づく「不当な支配」の認定は、補助的な要素だというのが分かるでしょう。

むしろ、朝鮮学校が自律的運営が為されておらず、会計処理の主体であったり、運営の主体が朝鮮総聯やその傘下組織によるものであるという疑念を生じさせる事情が本丸であるのが見て取れます。
たとえばアメリカ礼賛の日本の私立高校があったとして、その運営においてアメリカの関与がまったく存在せず、自律した管理運営の事実が認められるのであれば、教育内容がアメリカ礼賛だったとしても、「不当な支配」は認められない可能があると考えられます。もっとも、そのような教育内容それ自体が是認しがたいため、ここは立法課題とされるべきだと思います。
逆に礼賛とまではいかないが巧妙なプロパガンダが要所に仕掛けられていた場合、管理運営への他国の介入の程度によって不当な支配が認定されるでしょう。

したがってNHKの報道は少しミスリーディングではないでしょうか?

朝鮮学校側は名古屋高裁において、「教育内容」については不当な支配の考慮要素とするべきではないと主張していましたが、それも退けられています。

朝鮮学校側は「教育内容への日本政府の介入」を強調して報道対応していますが、それはいつもの「差別」「お涙頂戴」の世論戦術なので、それに加担するような報道になってはいけないと思います。

以上

菅義偉議員の「国の基本は自助共助公助」すら言葉狩りする者へ

菅義偉の自助共助公助

NHKニュースウォッチ9:2020年9月2日

菅義偉議員の「国の基本は自助・共助・公助」と発言について、勘違いしている人が多いので、基本的なことを整理しました。

菅義偉議員の記者会見での「自助・共助・公助」

私自身、国の基本は自助・共助・公助であると私は思っている。自分のできる事はまず自分でやる。そして地域や自治体が助けあう、そのうえで政府が責任をもって対応する。当然のことではありますが、このような国の在り方を目指すには国民の皆様から信頼をされ続ける政府でなければならないと思っています。

菅義偉議員は、自民党総裁選出馬記者会見で「国の基本は自助・共助・公助」と語りました。

これに対して「順番がおかしい!」「行政の側が強調するな!」「責任逃れだ!」などと文句を言う者が居ます。

しかし、菅義偉議員は「国は自助・共助を尽くさない者には助け舟を出さない」などとは決して言っていません。そのような見方は非常に狭い理解であり、一種のストローマン論法に過ぎません。

社会保障制度改革推進法の規定

社会保障制度改革推進法

(基本的な考え方)
第二条 社会保障制度改革は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。
一 自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと。

社会保障制度改革推進法の規定に、既に「自助・共助・公助」が定められています。

順番は「自助」が最初で、「公助」が最後です。

菅義偉議員の主張と何ら変わりはありません。

そして、それらは【国民が自立した生活を営む】ために規定されています。

最初から「公助」によってズブズブにし、個人の自立心をスポイルするような環境を作るのではなく、「自助」ができるようにする、と規定しているのです。

「国は公助だけを意識すればいい」というものではないというのが分かるでしょう。

こうした考え方は何も法律によって無理やり作ったとか、近年になって新しい概念を創設したとかいう話ではありません。

米沢藩主上杉鷹山の「三助」

5 防災まちづくりの推進 | 防災情報

(1)「共助」のまちづくり
 序章で見たとおり,阪神・淡路大震災では,災害後の対応で,地域コミュニティの役割が重要であることを多くの国民が認識したところである。しかし,その後の防災意識の風化,都市部における旧来型コミュニティの機能の低下が指摘されている。
省略

コラム 上杉鷹山の「三助」の思想
 米沢藩主上杉鷹山は「民の父母」としての藩主の根本方針を次の「三助」とした。すなわち,
 ・自ら助ける,すなわち「自助」
 ・近隣社会が互いに助け合う「互助」
 ・藩政府が手を貸す「扶助」
 具体的には,「自助」実現のために,鷹山は米作以外の殖産興業を積極的に進めた。また,「互助」の実践として,農民には,五人組,十人組,一村の単位で組合を作り,互いに助け合うこととした。特に,孤児,孤老,障害者は,五人組,十人組の中で,養うようにさせた。一村が,火事や水害など大きな災害にあった時は,近隣の四か村が救援すべきことを定めた。
 天明の大飢饉では,藩政府の「扶助」として,藩士,領民の区別なく,一日あたり,男,米3合,女2合5勺の割合で支給し,粥として食べさせることとした。鷹山以下,上杉家の全員も,領民と同様,三度の食事は粥とし,それを見習って,富裕な者たちも,貧しい者を競って助けたという。
(童門冬二「小説 上杉鷹山」集英社文庫,H8.12より)

「自助・共助・公助」類似の思想は古くは米沢藩(現在の山形県)主の上杉鷹山の「三助」に見て取れます。

「自助や互助」に関して、「民間で勝手にやってろ」などというものではなく、そのような行動が可能になるよう環境整備を藩の側(つまり「公」の側)が実践していたのが分かります。

そして、民間の側(「自助」「共助・互助」)も、「扶助・公助」を見習って行動をしていたという記録があります。

山形県の隣県である秋田県出身の菅義偉議員ですから、このことが念頭にあるのではないでしょうか?

自助・公助・共助は相互連関している

冊子・計画内容(Plan)|都の基本計画|東京都政策企画局魚拓

政策の柱2 自助・共助・公助の連携による防災力の向上魚拓

現代においては例えば東京都のアクションプランにおいて、【(自助・共助の促進による地域防災力の向上)】と【(公助による防災対策の充実強化)】の項目があります。

前者においては地域の消防団員の人員を確保するために都が広報等で積極的に募集したことや、帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設の確保を推進していること、発災時に帰宅困難者が適切に行動できるよう、帰宅困難者に対して災害情報等を的確に提供していく必要などが記述されています。

ここでも都の側(「公」の側)が、自助・共助の環境整備を手伝っている構図が見て取れます。また、想像すれば分かりますが、公助を有効的に機能させるためには個人(「自」の側)が都の政策(「公」の側)について知っていれば役に立つことは論を待たないでしょう。たとえば自治体が作成した土砂災害警戒区域の情報を参照して個人的な避難計画を持っておくことなど。

このように、あらゆる分野において、自助・公助・共助は相互連関しており、切り離して論じることはまったく有益ではありません。

菅義偉議員の国会答弁における自助共助公助

第189回国会 参議院 内閣委員会 第4号 平成27年4月7日

○国務大臣(菅義偉君) 私、日本という国は衣食住、生活の基本であります、衣も食も世界で私、トップクラスだというふうに思っています。ただ、住宅政策、これはやっぱり遅れているというふうに私は思っていました。
 私、秋田から出てきたとき一番びっくりしたのは、住宅の家賃が余りにも高過ぎたんですね。そういう思いの中で、私、今自民党の、これは個人的なことで恐縮ですけれども、公団住宅居住者を守る会の会長というのを実はやっているところであります。
 ただ、やはり基本は自助自立、共助、公助ですか、そこをやはりしっかり行うということがまず基本だというふうに思っています。
 今、国交省と厚労省から所得の低い若年者に対しての対策のお話をさせていただきました。その両省がいわゆる連携を取りながら行っていくということがこれは極めて大事だというふうに思っております。ただ、その比較は、それぞれの国によって事情も違うと思いますので一概には言えないと思いますけれども、とにかくそうした対策をやはりしっかり打ちながらも、しかし、若い人にはやはりまさに自立という思いの中で取り組んでいただければというふうに思っています。

菅義偉議員の国会答弁における「自助共助公助」が出てきたのはこのシーンだけなのですが、やはり「自助自立」が最初に来るべきだということは変わっていません。

それは、「自助自立していない者には何もしない」などというものではなく、自助自立が可能になるような環境を作っていくという意味です。公の側による支援が行き過ぎると、それに依存した生活・思考回路に陥ってしまうからです。

このことは、たとえば「生活保護受給世帯」において常々指摘されてきましたし、改めて論じる必要もないくらい常識的な話です。

菅義偉の「自助・共助・公助」は深い

まず自立する・独立する、ということに意識を向けさせる菅義偉議員の「自助・共助・公助」という標語は、非常に潜勢力のある概念だと思います。

個人においてはどうか?

たとえば青山繁晴議員が「独立総合研究所」という名称の会社を興したのはなぜなのか?私のブログを見ている人は理解している人は多いと思いますが、何が人の根幹たる価値かと言えば、金があることでも名誉を得ていることでもなく、【自立した主体として生きること】であるからです。

国内においてはどうか?

中央集権体制によって霞が関官庁の規制が全国一律に渡って敷かれている現状が制度疲労を起こしていると言われ、地方分権の必要性が叫ばれています(菅議員も会見で言及)。大阪府の泉佐野市が総務省のいじめによってふるさと納税制度の対象外になったことが争われて久しいですが、地方が国の言いなりにならないといけない場面が多すぎ、国力を削いでいる現状があります(泉佐野市は最高裁で勝訴)。実は、安倍晋三議員が道州制の導入について検討を重ねていることはあまり知られていません。

国際社会においてはどうか?

国土・国民・国家主権を守るためには、まず自らの武力を充実させねばなりません。その上で集団的自衛権による補強、国際社会との連帯による抑止力を働かせることも考える。この当たり前を実現させなければならない。しかし、何ら実力の無い国家は蹂躙されてしまいます。現在の香港やウイグルのように。

菅義偉議員の「自助・共助・公助」は、普遍的なメッセージが込められた、含蓄のあるものであると考えます。

以上

町山智浩「安倍総理が潰瘍性大腸炎発覚後3日連続焼肉」がデマと分かってもツイート削除せず

Twitterフォロワー数33万人の町山智浩氏が「安倍総理が潰瘍性大腸炎発覚後3日連続焼肉」(だからといって何だというのだろうか?)と書かれた図がデマと分かってもツイート削除せず放置している問題について。

※この図のうち8月の焼肉部分は2014年の首相動静に基づいています。

町山智浩「安倍総理が潰瘍性大腸炎発覚後3日連続焼肉」を削除せず

魚拓

魚拓

町山智浩氏は、この図が間違いであるということに気づいた後も、当該ツイートを削除していません。9月3日午前10時30分を過ぎてもまだ残っています。 

彼のツイートは最近実装された「返信制限」の機能が使われており、リプライで間違いを指摘することができませんから、後に彼のツイートが再拡散されても閲覧した者が誤りに気付かない可能性が高いものになっています。

Twitter社はそれを見越して「引用リツイート」と「単純リツイート」の表示を分け、引用リツイートの内容をワンクリックで辿れる機能を実装しましたが、現時点ではこの機能を知っている人は少ないです。

図を作成した本人は訂正

安倍総理が潰瘍性大腸炎発覚後3日連続焼肉というデマ

図を作成した本人は訂正済みで、間違いだと判明した後に何度も訂正ツイートをしていました。そして、このように町山氏の転載行為についても問題視しています。

削除しないとデマ情報の再拡散は止まらない

削除したからといってデマ情報の再拡散が止まるとは言えないのですが、少なくとも削除しなければ止まらないでしょう。実際に以下のような引用リツイートが現在も残っています。

魚拓

町山氏が誤りに気付いた後でも、以下のような引用リツイートがなされています。

町山智浩はなぜツイートを削除しないのか?

町山氏の行動は口先だけで、自らのツイートによる誤情報拡散の責任を取っているとは言い難いものです。

町山氏はつい最近もリコール請求の署名簿が公報されるとの誤った情報をツイートしてますが、そちらは誤りと分かった後に削除しているのに、なぜ今回のはそのままなのでしょうか?

このように、町山氏はそういう人なので、間違いをしたこと自体はどうでもいいです。その後の対応が肝心です。

今回の事案は、Twitter社が返信制限機能を実装したことも相まって、誤情報の訂正の在り方や、情報の真偽の確かめ方について考えさせられるものであると言えるでしょう。

以上

「モーリシャス政府が重油事故で日本に請求」は誤報:正しくは「日本政府に支援要請」

モーリシャス政府が日本に請求という語法

TBS

TBSが「重油流出でモーリシャス政府が日本に請求」というタイトルで報じましたが、これは誤報と言うべきものです。

「モーリシャス政府が重油事故で日本に請求」とTBS

重油流出、モーリシャス政府が日本側に32億円請求|TBS NEWS魚拓

重油流出、モーリシャス政府が日本側に32億円請求
1日 8時36分
 インド洋で座礁した日本の貨物船から大量の重油が流出した事故で、モーリシャス政府は日本側におよそ32億円の支払いを求めました。

 7月25日にモーリシャス沖で座礁し、1000トン以上の重油が流出した長鋪汽船が所有する貨物船「WAKASHIO」をめぐっては、分断した船体の一部を沖合の海底およそ2000メートルに沈没させるなど、処分が進められています。

 ただ、流出した油による漁業や観光業などへの影響は深刻化していて、地元メディアによりますと、モーリシャス政府は、漁業支援費として12億モーリシャスルピー(日本円にしておよそ32億円)の支払いを日本側に求めたことがわかりました。サンゴ礁やビーチ沖合で使う近海漁船およそ100隻を日本やスリランカから調達し、その購入費用などにあてる予定だということです。

 この事故をめぐっては、漁業だけでなく、観光業や多くの絶滅危惧種が生存するモーリシャス海域への損害が加わるため、所有会社の長鋪汽船に対する最終的な損害賠償額は確定していません。

TBSは、「モーリシャス政府が重油事故で日本に請求」とタイトルで報じています。

これは誤報と言うべきでしょう。

このタイトルから受け取られる内容は「モーリシャス政府が日本政府に対して、事故の責任を問う形で金銭要求をした」というものであり、本文中に、「漁業支援費として支払いを求めた」とあっても、それを払拭することは難しいと思います。

日本側」と濁していますが、日本政府を意味すると理解する他はありません。

賠償責任は「わかしお」の所有者=船主である長鋪汽船

モーリシャス政府が賠償請求 座礁事故「わかしお」の長鋪汽船に | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

モーリシャス沖座礁、賠償責任は商船三井ではなく「船主」に - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト

モーリシャス沖での座礁事故による賠償責任は、船主の長鋪汽船が負うことになっているという報道があります。

したがって、日本政府が何らかの賠償請求を受ける立場には無いというのは明らかで、TBSの報道はこの時点で疑わしいということが分かります。

では、TBSが根拠とした「地元メディア」はどう報じていたか?

地元メディア「ル・モーリシアン」は「支援要請」

Marée noire : Maurice sollicite le Japon pour une aide de Rs 1,2 milliard - Le Mauricien

日本メディアが根拠にしている「地元メディア」の報道とは、「ル・モーリシアン」のこの記事ですが、表題では"sollicite"=要請となっています。

本文でも"sollicite"と"approché"となっていて、ニュアンスとしては「請求」とは程遠いものです。

ブルームバーグ詳報「漁船100隻の供与を検討頂ければ幸いです」

ブルームバーグがこの件について詳報しています。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-09-01/mauritius-asks-japan-for-fitted-fishing-trawlers-after-oil-spill

“It would be appreciated if the Government of Japan could consider granting 100 semi-industrial fully-equipped fishing boats to the Mauritian fishers to allow them to operate in off-lagoon,” Financial Secretary Dev Manraj wrote in a letter dated Aug. 21 to Japan’s ambassador in Mauritius, seen by Bloomberg.

ブルームバーグが見たところによると「モーリシャスの漁民がオフラグーンでの操業を可能にするために、日本政府から、完全装備の半産業漁船100隻の供与を検討できれば幸いです」と、Dev Manraj財務長官が、モーリシャスの日本大使に宛てた8月21日付けの書簡に書き込んだ。

"could consider granting"=供与を検討して頂ければ…という、丁重な用語を用いているのが分かります。

請求」という用語は、何か対価を提供した者が相手方に要求する場合や、不法行為などによる被害を回復するために相手方に要求する場合に用いられます。法的には何らかの法的な地位に基づいて行われる権利主張、というような意味で使われます。

モーリシャス政府は、そのような敵対的な関係に立つような用語法は用いていません。

ブルームバーグはさらに以下指摘します。

The letter doesn’t refer to the oil spill caused by the MV Wakashio

手紙には、MVワカシオによる油流出について言及していない。

つまり、モーリシャス政府の日本政府に対する「要請」は、事故の責任を問うものではないことを明確にしているわけです。事故の責任を問うのであれば、必ず事故の内容について記述します。

「モーリシャス政府が日本に32億円請求」は誤報

したがって、「モーリシャス政府が日本に32億円請求」は誤報です。

TBS以外のメディアも、朝日・日経などは「要求」という用語を使っており、ややミスリーディングですが、誤報と呼ぶべきかというと微妙かなと思います。

きちんと「要請」という語を使っていたのは共同通信や日テレなどでした。

以上

高須院長が町山智浩,香山リカ,津田大介を刑事告発

高須院長刑事告発、町山智浩、香山リカ、津田大介

高須院長が町山智浩,香山リカ,津田大介を刑事告発しました。

高須院長が町山智浩,香山リカ,津田大介を刑事告発

高須院長が町山智浩,香山リカ,津田大介を刑事告発しました。

その具体的な中身とその展望をしていきます。

告発理由はツイートによる署名運動妨害罪

Twitter社に対するアカウント停止の要求を記載した書面(※発信者情報開示請求の訴状ではない)を見ると以下記述があります。

貴社の下記利用者は、いずれも、貴社のアカウントを悪用して、重大な犯罪公、具体的には、署名運動妨害罪(地方自治法第81条2項、同74条の4第1項第2号…)をしたものを思料され…

これだけでは何のことかわからないのですが、Twitter上の経緯を知っているのでここでまとめると、要するに愛知県知事の解職(リコール)請求のための署名収集がこれから高須院長ら主導で行われるわけですが、「町山・香山・津田らは、署名審査の後に行われる署名簿の縦覧において署名者の個人情報が誰でも見れるようになっている旨のツイートをして、愛知県選挙管理委員会の方針とは異なる内容を発信し、さらには署名を躊躇させるような内容の言辞を弄したため、署名の自由を妨害した」という主張をしています。

地方自治法の関連規定は以下です。

地方自治法

第七十四条の四 条例の制定又は改廃の請求者の署名に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、四年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
一 署名権者又は署名運動者に対し、暴行若しくは威力を加え、又はこれをかどわかしたとき。
 交通若しくは集会の便を妨げ、又は演説を妨害し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて署名の自由を妨害したとき。
三 署名権者若しくは署名運動者又はその関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の利害関係を利用して署名権者又は署名運動者を威迫したとき。

署名の自由妨害罪は適用されるのか? 

 こちらでは町山氏が請求代表者の氏名住所が告示で公報されている内容を、転載したことについて署名の自由妨害になるかを考え、それは難しいだろうと結論付けました。

しかし、高須院長が問題視しているのはそれとは異なり、将来行われる予定の署名簿の縦覧に際する「誤った説明」についてですから、ここでもあらためて検討します。

署名簿の縦覧の具体的手続について

あくまで現時点の方針ですが、地方自治法上定められている署名簿を「縦覧に供」する手続について、愛知県選挙管理委員会の方針は、各自治体の窓口で有権者である旨を伝えると、職員の側で当該有権者が署名簿に記載されているかをチェックし、記載されていれば当該ページのみを見せ、そうでなければ「記載されていない旨を伝える」運用になっているとのことです。

ですから、単なる有権者たる縦覧希望者が当該市区町村管理の署名簿をすべて見てチェックをする、などという方法は採られていないと説明されています。

縦覧の運用について、私は静岡県静岡市・河津町、埼玉県川島町、名古屋市など、過去に住民による直接請求が行われた自治体の選管担当者に当時の「縦覧に供」する際の具体的内容について確認しました。

すると、選挙人=有権者であれば署名簿を渡して指定された場所にて読んでもらった、署名した者か署名していない者かは区別していない・請求代表者かそうでないかは記録が残ってないので定かではない、などという回答を頂きました。

つまり、一般的には「縦覧に供」するという場合には、署名簿全体が見れるような方法が採られていたということになります。

愛知県選挙管理委員会の方法は違法?

とすると、むしろ愛知県選挙管理委員会の方法が違法?と思う人も居るかもしれませんが、私はそうは思いません。以下でまとめています。

昭和24年の立法当時から憲法で保障されている投票の秘密の趣旨との抵触関係が指摘されていたが、署名の偽造があったためそれを防ぐ必要性が優先され、その憲法的許容性は無視されてきただけだと考えています。

実際に、縦覧手続を逆手にとって、署名を躊躇させるビラが町議によってばら撒かれたり、ある議員が署名簿縦覧を行い、そこで見つけた知人に対して後日署名の真意を問うなど、威迫的な行為が行われた事案もありました。

参考:宇都宮市陳情第61号「署名簿縦覧の目的外を防止する条例等の制定を求める陳情」

参考:署名縦覧を盾に議員らがビラで暗黙の圧力?町長リコール運動をめぐる川島町住民の狼狽 | 相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記 | ダイヤモンド・オンライン

よって、愛知県選管のような運用を採ったとしても違法では無いとするべきでしょう。

なお、比較法的にも直接請求の署名簿の縦覧制度があるのは韓国くらいのもので、欧米ではそのような手続は確認できないことについて以下。

町山智浩,香山リカ,津田大介らが署名妨害罪になるか?

こうしてみると、『「縦覧制度」はその自治体の選挙人=有権者であれば署名簿が見れるものである』という観念は一般の人間が持っているのであって、その認識で行われたツイートは、それだけでは署名妨害罪にはならないと考えられます。

愛知県選挙管理委員会の方針も、現時点では未定です。現時点では方針は変えるつもりは無いが、より詳細な運用について話を詰めているところであるとしています。

このような流動的な状況下で、「署名簿の縦覧において署名者の個人情報が誰でも見れるようになっている」とツイートすることは、愛知県選管の運用と異なる話をしていることになるかもしれませんが、そのことが直ちに署名の自由妨害になるかというと、少なくとも故意が否定されて、難しいだろうと私は思います。

もっとも、愛知県選管が方針を固めた後も、敢えてそのような主張をしているというのであれば、署名の自由妨害罪となる可能性はあるのではないでしょうか?

以上

白井聡「松任谷由実は夭折すべきだった」ユーミンへのFacebook投稿を削除:京都精華大学は?

白井聡氏が「松任谷由実は夭折すべきだった」と投稿したFacebook投稿を削除しましたが、余波が波及しています。

※追記:その後、大学側から厳重注意をしたようです⇒本学教員のフェイスブック上の発言について | 京都精華大学

白井聡「松任谷由実は夭折すべきだった」Facebook投稿を削除

白井聡facebook投稿削除松任谷由美は夭折すべきだった

https://web.archive.org/web/20200831085807/https://m.facebook.com/satoshi.shirai.18/posts/4268478399894278

http://archive.is/6HtYt

白井聡氏が「松任谷由実は夭折すべきだった」と投稿したFacebook投稿を削除しました。

もともとは松任谷由美氏が安倍総理の辞任方針発表記者会見を見て同情的な感想を言ったことが発端で、彼女が白井氏に対してなにか言辞を向けたわけではありません。

この件は彼が教鞭を振るっている京都精華大学にも波及しています。

京都精華大学はどう出るのか?

神戸市会議員の岡田ゆうじ議員が京都精華大学の学長に対して、白井聡氏を追放すべきであるというメールを送信しています。

白井 聡 | 京都精華大学

京都精華大学の教鞭を振るっている人間による舌禍といえば、昨年レイチェル・ソーン(マット・ソーン)氏が「日本はロリコンをやめろ、海外では逮捕」「私が音信不通なら日本の小児性愛者が暗殺」などとツイートしたことを思い出しますが、その際も大学側は「我関せず」の態度でした。 

白井聡の発言は侮辱罪相当か

侮辱罪とは?|ネット上で侮辱された場合の効果的な反撃方法を弁護士が解説

1)侮辱罪に当たり得る例
 2 サッカーチームの掲示板への「●●は年だし、チームにとって使いものにならない。即刻引退させるべきだ。」との書き込み

侮辱罪は他人の社会的地位を軽蔑する犯人の抽象的判断を公然発表することによって成立します。

上記の例はちょっと行き過ぎた認定だと思いますが、白井氏の書き込みは何ら政治評論としても芸能評論としても成立する類のものではなく、論評としての範囲を逸脱した侮辱罪になり得る言動でしょう。
※侮辱罪は親告罪です。

たとえば大学生が殺人事件等を起こしたら退学させられる例がありますが、今回の場合「教員の職務外の個人の表現活動であり、大学は関知しない」などとして『表現の自由』を振りかざすんでしょうか?

以上