事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

故李登輝総統と蔡英文総統にみる台湾人アイデンティティ:杉田水脈の「台湾建国110年」は間違いではない

台湾建国110年

故李登輝総統と蔡英文総統に学ぶ。

杉田水脈の「台湾建国110年」が標的に

杉田水脈議員が「台湾建国110年」と書いたら、凄まじい数の罵詈雑言が。

「台湾は国じゃない」「中華民国の間違い」「110年前の台湾は日本統治時代だろ」のような内容で、杉田議員に「勉強しろ」と上から目線を叩きつけるものです。

中には「外交問題になるw」などと信じられない荒唐無稽なものもありました。

私に言わせれば、そういう者こそが知的怠惰の極みであると言っておきます。

日本側から見た「台湾建国110年」

  • 日本政府・外務省は「台湾」という名称を用いている
  • 台湾は「民国暦」を用いており今年が110年
  • 台湾という地域を言っているのではなく中華民国からの国体の連続性を言っている
  • 「建国してから110年」ということと「その間、日本国として台湾の地が統治されていた時期があった」ことというのは矛盾しない

こうしたことを上掲記事でまとめ、以下で台湾側の視点でどう捉えると良いのかの一視点を提示しました。

  • 台湾人の中には上掲ツイートのように中華民国との決別、大陸と切り離した台湾の歴史を始めたいという考え方も存在
  • しかし、台湾にはオランダ統治時代などもあり、漢民族も日本統治時代の前後に移殖してきており、原住民らと含めてそれも「本省人」
  • 「外省人」による迫害もあったが、同時に彼らと共に歩んできた歴史がある

「明確に切り分けられない背景」を有している事がそこに寛容や多様性が生まれ、国の強さになる、歴史の連続性の結果を受け入れることが人造国家との違いである、ということを書いてます。

で、私のこの見解は、2名の総統によって裏付けられると言ってよいと思っています。

故李登輝総統が台湾人アイデンティティを明確に

蒋介石の息子でもある国民党の蔣経国を副総統として補佐した故李登輝総統。

蔣経国が戒厳令を解除し、世襲しないことを決定したのちに直接民主制の選挙によって本省人出身者初の総統となった人物。

彼は元日本人であり、新渡戸稲造の「武士道」にも精通し解題書も書いているくらいです⇒李登輝総統と武士道、そして日本精神|Nathan(ねーさん)|note

その彼の発言から「台湾建国110年」が台湾人らにとってどのように受け止められるものになるのか、或いはどう受け止めるべきことになるのかが見えてきます。

李登輝「台湾の主張」に見る「台湾中華民国・新中原」

台湾の主張 /李登輝の49ページ以下を参照します。

 それでは、いま現在の「台湾のアイデンティティ」とはなんなのか。すぐに「台湾独立」という声が聞こえてきそうだが、台湾の国際的な地位をはっきりさせる必要があることは確かでも、私は「独立」に拘泥する気はない。現在は「中華民国在台湾」あるいは「台湾の中華民国」を確実なものにすることである。

~省略~

 まず、第一歩は台湾が国際的なアイデンティティと地位を獲得することであり、中国全体を考えることは、その後の話である。

~省略~

 一九九六年の就任演説で私が「台湾」を強調してはじめて、台湾は真に国民が主権をもつ国家として自己主張が可能になった。

 このとき私は、次のような意味の演説を行っている。

~省略~

 そして私は、次のように付け加えるのを忘れなかった。

「台湾は、ご存じのように移民社会でもあります。早い時期からの先住民の同胞を除いては、大陸から来た人々が大部分です。台湾に前に来た人、あるいは後から来た人は、それぞれに異なっていますが、すべてがこの土地を自分の力で耕し、同じく汗と心血を注いで現在の台湾を作り上げていったのです。

 誰が台湾人で、誰がそうでないか。いまさら時間的な差でそれを議論することは意味がなく、またその必要もないのです。台湾は我々のものであるという認識、そして台湾のために行う努力奮闘、これが台湾人の証です。

 そして、このような新しい台湾人の観念とともに、引き継いできた中国文化を尊重することもわすれては ならないのです。」

 ある政治学者は、こうした私の演説を分析して「台湾には二つのナショナリズムがある」と論じたことがあった。「大台湾」という、台湾と言う地域を基礎としたナショナリズムと、「中国文化」という、文化的なナショナリズムがあるというのである。

 台湾に作る「新中原

 しかし、私たちにとって大切なのは、これらのナショナリズムのいずれかが正統かを問うことではなく、いかに確固とした「台湾のアイデンティティ」を確立するかということに他ならない。

 私が一九九六年に強調したのは、「大台湾を経営し、新中原をうち立てる」ということだった。

 就任演説の一部を念のために引用しておこう。

 「長期にわたって多元的文化が影響しあう状況のもとにおいて、台湾は中国文化の総体的な発展の中で、最も先進的な新生の力となり、中国文化の『新中原』(新しい中心地)になろうとしているのです。

 現在は、まさに私たちが歴史の非情(苦難)から一歩踏み出し、手に手をとり、心をあわせて各グループが完全に融合し、全国民が共同の意識に立って『大台湾を経営し、新中原をうち立てる』ための新機運を切り開く、またとない絶好のチャンスであります」

 この「新中原」とは、文化の花咲くところに他ならない。政治にもっと引きつけていえば、民主主義文化ということができるだろう。この文化は台湾に住む人たちがすべて参加してはじめて成り立つものである。参加の中から生み出される、「われわれは台湾人だ」というアイデンティティを基盤にして育つものだ。

 しかし、いまの台湾が本省人や外省人、あるいは先住民を区別していてはアイデンティティは確立できない。むしろ、大台湾はこうした来歴の違う人々があつまって、新しい来歴を、大陸とは異なるかたちで形成していくことが重要なのである。

李登輝総統は「民主主義文化」が台湾人のアイデンティティだと指摘。

この部分はのちの記述と合わせて理解する方がいいでしょう。

李登輝総統の「台湾経験」構想の視野の深さ

台湾の主張 /李登輝120ページ以降に見られる李登輝総統のスコープの広さ・深さ・多次元的視座は、大いに知られるべきです。

共産チャイナはこれを警戒するだろうということが容易に感ぜられる。

 「台湾経験」の本当の意味

 このように、私が台湾の成果を基礎として論じているのは、台湾が昔から自由民主主義の国だったからではない。そうではなくて、台湾が戦後のこの半世紀のあいだに、次第に現在ある政治・経済・社会を築き上げてきたからこそ、私たちの経験を述べようとするのである。

 台湾に中華民国が移動してきたときには、台湾は豊でもなければ、平穏な地域でもなかった。もちろん、国民党が当初行った政治は強権的で独裁的といえるものだった。「白色テロ」が横行し、国民党とともに大陸から渡ってきた外省人による、当時台湾に居住していた本省人への弾圧があった。

 しかし、その後、経済的な進展を実現し、社会的にも安定した状況を生み出し、そして政治的にも総統の直接選挙に象徴されるように、民主化を推進してきたのである。

 現実的にみて、中華民国は台湾地区において経済、社会、政治の発展を実現し、その成果を蓄積してきたことは明らかであろう。同じ中国人が経験してきたこの過程は、大陸からみて、いかなる外国の経験よりも参考とする価値のあるものにほかならない。

 すでに第一章でも触れたが、中国人の文化や社会制度が中国社会の進歩を遅らせた面はあるものの、それがすべてではない。それどころか、中国人は経済的繁栄を実現しながら、同時にしっかりした足取りで民主化への道を歩むことが可能なのである。台湾はその証明を見事にしてきたといえるのである。

 そこで私が大陸に向かって言いたいのは、私たちのこうした経験は大陸同胞も思いあたることが多くないだろうかということなのである。そして、大陸が現在目指している方向に根本的で不快矛盾があるということも、台湾をよくみることによって気が付くはずなのである。「台湾経験」すなわち「台湾モデル」とは、単に台湾のためだけのものではない。中国人すべてのものであり、将来、統一された中国のモデルに他ならない。これが、本当の意味での「台湾経験」であり、私が強く主張したいことなのである。

 したがって、私たちは大陸当局が強圧的に主張してきた「一つの中国」論にはまったく同意できないが、現在進行している部分的な社会の末端の民主化実験については、成功することを願ってやまない。

 さらに大陸が政治改革を推進して、民主化の幅と深さを拡大し、大陸同胞がなお一層知恵と能力を発揮し、多元的な開放された近代社会に向かうことを強く希望しているのである。

「台湾経験」=「台湾モデル」とは、台湾が苦しみながら民主化の過程を経てきたという歴史的な経過そのものを指しているようです。

その事実それ自体が、貴重なものであるということ。

さらには、その姿を見せつけることで共産チャイナの民衆の意識に働きかけ、大陸での民主化に影響を与えようとする。

李登輝総統は、ここまでの視座に立っていたのかと戦慄を覚えました。

移民国家台湾と蒋介石政権の評価の歴史的視点

台湾の主張 /李登輝196ページ以下から抜粋。

 歴史の中の台湾という存在

 繰り返すが、もともと台湾に住んでいたのは先住民だけだった。その先住民も、文化的にはいくつにも分かれた少数民族の集まりだった。十七世紀ころになると、中国大陸の福建省や広東省あたりから漢民族の移住が始まり、一時的にはオランダが統治に意欲をみせ、さらには明の遺臣である鄭成功が政権を作ったこともあった

 漢民族が大勢住むようになったのは、中国が清の時代になってからである。それまではせいぜい十数万人でしかなかった漢民族人口は、この時代には二百数十万に増えたといわれている。

 そして、一八九五年には日本統治時代を迎え、一九四九年には中国大陸から国民党がやってきてさらにさまざまな民族・文化を受容しながら、半世紀後に現在のような「新しい台湾人」の台湾が存在するようになったのである。

 これからの台湾、二十一世紀の台湾を考える際にも、私はこうした歴史的経緯を重くみたい。多くの要素を取り入れ、多くの民族を受け入れながら、文明国として自らを位置づけ、そして未来を建設していくのが、まさに台湾の存在そのものなのである。

 そのプロセスは、切り捨てや否定ではなくて「積み重ねである。前の人々の尊い努力があったからこそ、現在の台湾が存在するのだ。「新しい台湾人」は突然生まれたのではなくて、歴史の「積み重ね」の結果として生まれつつある。

 この半世紀あまりの政治においても同じことがいえる。確かに国民党が大陸よりやってきたときには、権威主義的な勢力であり、事実、かなり強権的な政治を行った。

 しかし、その国民党は孫文の「三民主義」という種子を抱いており、その種子はいつかは芽を出し、花を咲かせ、実をつけるはずのものだった。蒋介石総統時代の台湾は、確かに権威主義的であったが、では、あの時点で自由と民主を全面的に展開できるかといえば、とても不可能だったろう。

 大陸には圧倒的な勢力い思われる共産主義政権が存在し、いま考えれば単に破壊するだけのようなさまざまな社会変革運動を強行していた。チベットやその他の周辺諸国をみれば分かるように、強権的な政策が有無をいわさず適用されていた。

 蒋介石時代とは、単に大陸からの逃避政権の時代としてではなく、当時の中国・アジア情勢の中でみなければならないだろう。

中華民国では「国父」と呼ばれる孫文(中国語圏では孫中山と呼ばれることが多い)はその思想によって辛亥革命を導いた中華民国の初代臨時大総統です。

孫文は日本に二度亡命して日本人の妻と愛人まで設けており、日本政府の要人とも親しく、日本と深い関係があります。

台湾・国民党と日本国が孫文を結節点として繋がっている点は重要でしょう。

軍政・訓政・憲政の革命三段階論を有していたことや三民主義についてはここでは捨象する。

蒋介石・蔣経国なしに現在の台湾はあり得ないと言い切る李登輝

李登輝氏は蒋介石・蔣経国についてはどう考えているのか?

彼のこれまで紹介してきた発言からは察しがつくでしょう。

台湾の主張 /李登輝202ページ以下から抜粋します。

 蒋親子の功績を基礎に

 こうして、台湾のこれまでを振り返ってみたのは、懐古に浸るためではない。そうではなくて、これまでの着実な達成の上に現在の私たちが存在し、そして現在の着実な試みの上に未来が描かれるという事を確認するためである。

~省略~

 この半世紀をみれば、私は過去とは決別したような民主化を行ってきているようにみえるかもしれない。蒋介石や蔣経国の政治はオーソリタリアンということになるだろう。しかし、私はこの先人を公的に批判した事は一度もない。歴史的にみたとき、蒋介石・蔣経国を考えずに現在の台湾はありえないのである。

 この数十年のあいだ、もし彼らのような強靭な性格の指導者でなければ、とっくに中国共産党に台湾は支配されていただろう。そして大陸同胞と同じようなつらく長い隘路を歩むはめになっていただろう。

 歴史はさまざまな屈折と逆説に満ちているようにみえるが、それはおそらく必要だった過程なのである。大きな視点でみれば、歴史に逆行しているとされていたことも、私たちのいまをささえている。

これは李登輝氏が蔣経国に恩を感じているからとか、自分が属する国民党を否定できない、ということではないというのは、これまで場面を変え、何度も言葉を尽くして同様の内容を説明していることから明らかでしょう。

歴史の連続性を重視する彼の思考は、まぎれもなく「日本人」です。

「独立」は必ずしも不要と明言する李登輝の「二国論」

前掲書の内容だけでも「台湾独立」という言葉(その意味内容は不明瞭だが)に関して、李登輝氏ならばこう考えるだろう、というのは見えてくるでしょう。

もっと明確に論じているものがあったので紹介します。

李登輝学校の教え(小学館文庫) [ 小林 よしのり ]97頁から102ページの内容を抜粋。

 しかし、もうすでに内戦を消滅させ、民主化して、憲法の内容も随分と変わりました。中華民国は従来のような内容の国ではないのです。今の中華民国は、内容の全部変わった「第二共和国(ニュー・リパブリック)」なのです。

そして九八年いっぱいで台湾省も廃止しました。

九九年にドイツの公共放送『ドイチェ・ウェレ』のインタビューで「台湾と中国は国と国、少なくとも特殊な国と国との関係」と答えた際にも、中共が台湾は反乱を起こした中国の一省だという言い方をしてきたので、我々はもうすでに憲法を修正したので台湾省はなくなったと言ったのです。

 そして、中華民国憲法の第四条には領土に関する規定があるのですが、これは実に興味深い表現になっています。「中華民国の領土は、従来の領域を領土とする」となっている。言葉は曖昧ですが、何も修正する必要がなく、どんな状況に対してでも使えるようになっています。今、台湾が有効に統治している地域、台湾島、澎湖諸島、金門島、馬祖島などが領土なのだと説明がつく。

 一九四九年に中華人民共和国が、その存在を宣言した時点で、中国はすでに分裂しているのです。

小林 なるほど。それが「二国論」というわけですね。

 しかし台湾には「独立」を言う人たちがいます。これは中国はもとより、もとをただせば外来政権である中華民国からも独立して、純粋に台湾共和国になることを望んでいる人たちだと思うのですが。

 確かにそういう考え方もあるでしょう。

 しかし、私は台湾が「独立」を言う必要はないと思う。私自身、「独立」を口にしたことはありませんしね。

 なぜなら中華民国は大陸での内戦に負けたかもしれないけど、台湾に残っている。そして中華民国は一九一二年の建国以来、主権を持つ国家です。だから中華民国の主権と地位を保全しつつ、憲法に従って内容を変えていって新共和国にすれば、何も台湾は独立を宣言する必要はない。中華民国を「台湾化」すればいいのです。つまり「本土化」ということです。

 もちろん国民党政府は結局のところ外来政権です。この外来政権を、台湾ときちんと結びつかせるためには、内務的な政治形態を変えることです。そこで、先ほど申し上げましたように、九一年の憲法修正に基づいて内務的な組織形態を変えました。そして民主化が進んだ結果、今実際に私たちが持っているのは、十分に民意の反映された政府であり、民意によって選ばれた総統です。

 事実として、中華民国は台湾に移ってきて、だんだん台湾化してきたという経緯があります。私はこれを「中華民国在台湾(中華民国は台湾にあり)と言ってきましたが、最近では「台湾中華民国」というところにまで意識が進んできた。

 そして、台湾に主権があるかどうか、台湾が一つの国家として成立するかどうかというのは、国際法の問題でもあるのです。

 我々はこの研究を進めていますが、今の状況が、そのまま肯定されていけば、何も台湾が独立を宣言して中共と戦争する必要はないでしょう。

ー省略ー

小林 しかも、台湾には外省人と本省人という「省籍問題」がありますよね。

 そうなのです。この台湾アイデンティティの問題というのは、台湾の民主化にとって、非常に重大な問題なのです。

 そもそも台湾は、その歴史において、ほとんどの時期が外来政権による統治だったという経緯があります。

 他のさまざまな国において民主化を行う際にも、階級的な闘争など、いろんな要因が入ってくるわけですが、それが契機となって、一層、民主化が進むということがある。

 台湾において民主化は、今までの外来政権の独裁政権から抜け出して、いかに台湾人自身が台湾を経営していくか、ということが問題になるわけです。

 ではそのとき、民主化の主体である民のアイデンティティはいかなるものか、という際に、台湾では、中国人か台湾人かという民族的な問題や、省籍の問題を解決していかなければならいわけです。

 だから、台湾のアイデンティティを求める際には、「台湾共和国」や「独立」を宣言したりということでは解決できない複雑な問題が横たわっているんです。

小林 なるほど。「台湾共和国」や「独立」では、現在台湾に籍を置く人たちの何割かは満足するけれど、何割かは弾かれてしまうということですね。特に戦後、国民党として渡ってきた外省人たちははじき出されてしまう

 でも極端な話、あれだけ本省人を差別し弾圧してきたのだから、少しぐらい痛い目に遭ってもいいのかもしれんと、わしなんかは勝手に思ってしまうけど、やはりそれではいけないと。全員を救い上げるようなものでなければならないということですね。

 そうです。全員が、自分たちは台湾人なのだという共通認識のもと、手を携えてやって行くことが重要なのです。

 私が「新台湾人」という言葉を連呼するのも、そのためです。

 台湾は民主化したといっても、まだまだ完全ではない。昔の古い統治階級は残っているし、統治階級がマスコミや世論を操作したり、教育を操作したりと、ほんとうの意味での民主化を妨げているという現状がある。 

 しかし、そういった弊害が改善されて、人民の間に共通のアイデンティティが深まれば深まるほど、台湾における民主化は、より強固なものになっていく。

 つまり台湾における民主化は、台湾アイデンティティの追求とは切り離せない関係にあるのです。

中華民国の憲法

いわゆる台湾独立派の言うところの「独立」とは何を指すのか分からないが、悪い部分を切り捨てるという意味であるとするなら、それは小林よしのり氏が危惧するように、分断を生み出す考え方であり、李登輝氏の思想からはあり得ないだろう。

国連に国家として承認してもらうというだけの意味であれば、台湾人のアイデンティティの淵源や建国からの年数とはほとんど関係ない話です。

民進党蔡英文2010年「台湾は中華民国」「中華民国は台湾」

f:id:Nathannate:20211014000107j:plain

https://web.archive.org/web/20211013150137/https://www.koryu.or.jp/Portals/0/images/publications/magazine/2011/12/12-6.pdf

現総統である民主進歩党の蔡英文氏が野党だった頃の2010年に「台湾は中華民国」「中華民国は台湾」と演説しているのが見つかります。

日本語では上掲資料があったのでリンクと画像を貼るが、原文は以下。

2011-10-08 蔡英文:台灣人可以包容、原諒,唯一堅持的是2300萬人的主權

過去60年來,中華民國失去了它原來建立的國土,在過去的62年,它只存在在台灣,台灣這塊土地與人民是融合在一起的,今天絕大多數的台灣人民都能認同一件事:「台灣就是中華民國」、「中華民國就是台灣」,這是中華民國的新生

翌日の記者会見でも進歩民主党は中華民国を「亡命政府」であるという見解であったが、それについては直接民主制の過程で中華民国政府は台湾の土地と人々と統合されたため「中華民国政府は台湾政府である」と発言しています。

2011-10-09 蔡英文:包容的態度讓台灣更和諧 和諧是團結國家的基礎

另針對媒體提問,過去民進黨內主張中華民國是流亡政府,對於這樣的立場是否有所改變,蔡英文表示,過去許多人對於中華民國政府有很多不同的觀感,尤其是1949年中華民國政府來台時,這種威權的統治,甚至於二二八事件,導致人民對於政府的觀感發生了分歧的狀況。

蔡英文說,但仍要給台灣民主的發展一些肯定,在過去的六十年,台灣的進程中,尤其是近二十年來台灣的發展,從開放黨禁到總統直選,在一次又一次總統直選的過程裡,其實中華民國政府已經和台灣的這塊土地和人民結合在一起了,所以今天的中華民國政府就是台灣的政府。

さらに翌日には、台湾の国民的アイデンティティは台湾の土地と人々にあること、それが発生したのは1911年の辛亥革命でも1992年のコンセンサスでもないこと、台湾は祖国であり母であるだけでなく、国家主権の意味合いを持つ場所でもあり、単なる地理的な名詞にとどまらない、としています。

2011-10-10 萬人湧進嘉義競總成立晚會 蔡英文:台灣不僅是家園,還是一個具國家主權意涵的地方

所以我要跟馬總統說,台灣的國家認同在於台灣的土地和人民,不是發生辛亥革命,也不是在九二共識。我要告訴馬總統,我們可以包容中華民國,我們也要請馬總統好好思考,國家認同的基本為何?還要請他想一想,中華民國應該要向台灣靠近?我再問,馬總統是否想一想,若台灣就是中華民國,中華民國是否就是台灣?

 這幾天馬英九總統呼籲大陸當局要正視中華民國的存在,我們也要請馬總統正視一個問題,那就是中華民國就是台灣。馬總統講過,中華民國是國家,台灣是家園。但台灣不僅是家園、是母親,台灣還是一個我們國家主權意涵的地方,不只是一個地理名詞

蔡英文総統は2021年も「中華民國台灣」の発言

共識化分歧 團結守台灣 總統發表國慶演說 總統出席「中華民國中樞暨各界慶祝110年國慶大會」 中華民國110年10月10日

蔡英文総統の2021年の中華民国110年記念式典でも"今天中華民國台灣"=今日の中華民国である台湾という表現や「中華民國台灣」という表現が2回出てきます。

「中華民国建国110年」「台湾建国110年」かは、オフィシャルな呼称かそうでないかという些末な違いしかそこには存在しないと認識しているように見えます。

蔡英文総統が故李登輝総統の思想をどれだけ知っており、どれだけ受け入れて、発言に反映させているのかは分かりませんが、これらの発言からは、両者の認識にはまったく齟齬は無いでしょう。

Twitterでも「臺灣 110」と検索すれば肯定的な反応が多く見つかります。

まとめ:杉田水脈の「台湾建国110年」は台湾視点でも間違いではない

  • 故李登輝総統は蒋介石時代も含めた台湾の民主化の過程こそが台湾人のアイデンティティの淵源だと主張
  • 故李登輝総統は「台湾中華民国」とも発言していた
  • 故李登輝総統は「独立」は不要とも指摘
  • 蔡英文総統も「台湾は中華民国であり、中華民国は台湾である」という見解
  • 蔡英文総統も中華民国時代を切り捨てる見解では無く、それを含めて台湾であるとしている

こうした要人らの主張からすれば、杉田水脈議員の「台湾建国110年」は、台湾視点でも決して「不勉強な・無知な間違い」ではないと言えるでしょう。

もちろん、台湾の建国の時期は辛亥革命ではないとする人も居るようで、これは当の台湾人たちが決める事でしょう。

ただ、「台湾建国110年」と言っている人を軽々に馬鹿にし、下に見て罵倒語を投げかけることは決して正当化されないし、底知れぬ不見識がそこにはあるのだということが本稿で明らかになったと言えるでしょう。

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杉田水脈「ホテルオオクラで台湾建国110年式典」の「間違い・外交問題」を指摘する恥ずかしい人たち

杉田水脈台湾110年ツイート

なぜか彼女を非難するツイートが

杉田水脈「ホテルオオクラで台湾建国110年式典」

杉田水脈議員が「ホテルオオクラで台湾建国110年式典」とする内容をツイート。

しかし、なぜか彼女を非難するツイートが相当数あるので事実と考え方を整理。

台湾は民国暦110年、中華民国からの国体の連続性

台湾建国110年

https://www.president.gov.tw/

台湾は【民国暦】という独自の暦を使っています。

上掲の台湾政府公式HPからも分かるように、今年は「110年」です。

中華民国からの国体の連続性をいっているわけで、台湾=中華民国が政府の公式見解なわけです。

厳密には1912年1月1日が公式の台湾の建国とされているので、110年にはあともう少し。民国暦は0年ではなく1年から始まっているので当然ですね。

日本政府は「台湾」と呼称、「中華民国」は採用していない

台湾|外務省 外務省: よくある質問集 アジア

むしろ「中華民国」という呼称こそ外交問題になる。

現に外務省は「台湾」という名称を当てている。

「中華民国 site:go.jp -"中華人民共和国"」で検索してみるがいいです。戦前の中華民国に関するものか、チャイナを含めた外交問題に関するものしかヒットしません。

中華民国と中華人民共和国の継承関係に関する質問主意書への答弁書の文脈、という留保付きだが、日本政府の見解は以下。

平成十八年六月十六日受領答弁第三一六号 内閣衆質一六四第三一六号 平成十八年六月十六日 衆議院議員鈴木宗男君提出中華民国と中華人民共和国の継承関係に関する質問に対する答弁書

一から六までについて

 千九百十二年以降中国を代表する政府であった中華民国政府は、「中華民国」を正式国名として使用していた。我が国政府は、中国は一つであるとの認識の下、千九百七十二年に、この中華民国政府に代わって、千九百四十九年以降「中華人民共和国」を正式国名として使用していた中華人民共和国政府を中国を代表する政府として承認している。

ー省略ー

八について

「中華人民共和国」と「中華民国」との関係は一から六までについてで述べたとおりであり、国家承継の問題は存在しない。

「台湾じゃなくて中華民国だろw」というの、杉田議員がUPしてる画像の横断幕でも「中華民国(台湾)」と書かれているので、まったく意味のない指摘です。

日本国側の認識として日本統治時代をどう考えるか

「日本国側の認識として日本統治時代をどう考えるか」

「建国してから110年」ということと「その間、日本国として台湾の地が統治されていた時期があった」ことというのは矛盾しないので、別に問題ない。

つまり杉田水脈議員の間違いは「ホテルオオクラ」と書いたことくらいしかない(笑)

これも実際は「大倉」さんが元だから完全に間違いではない。

ホテルオークラとしても厳密性が求められる場面ではともかく、嫌な気分になるような表記では決してないだろう。

「杉田水脈は間違い!外交問題!」と叫ぶ恥ずかしい人たち

https://archive.is/Kxh2T

https://archive.is/BvAXc

なぜか彼女を「無知だ」「勉強しろ」「外交問題になる」と罵倒する人たち。

日本政府・台湾政府の認識や物事の捉え方を身に付けずに簡単に人に間違いだと言ってしまうとは、恥ずかしいことだと思います。この2人は普段からこんな感じです。

※追記:補論を書きました。

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立憲民主党生方幸夫「拉致問題は無いんじゃ・被害者は生きていない」謝罪撤回も過去に「撤回すればOKは責任が無い」とツイート

生方幸夫、拉致問題を否定

なぜこういうことになってしまったのか。

立憲民主党生方幸夫「拉致問題は無い・被害者は生きてない」

「拉致被害者は生きていない」と立民・生方氏 家族会など抗議(1/2ページ) - 産経ニュース

立憲民主党の生方幸夫(うぶかた・ゆきお)衆院議員(比例代表南関東ブロック)が、9月に千葉県松戸市で行った会合で、北朝鮮による日本人拉致問題について「日本から連れ去られた被害者というのはもう生きている人はいない」などと発言したとして、拉致被害者家族会と支援組織「救う会」は11日、発言の取り消しと謝罪を求める抗議声明を出した。

立憲民主党の生方(うぶかた)幸夫議員が「拉致問題は無い・被害者は生きてない」などと後援会で発言したとして救う会が抗議声明を出したと報じられました。

拉致被害者を救う会から令和3年9月23日の発言に抗議声明が

救う会:★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2021.10.11)生方幸夫・立憲民主党衆議院議員の拉致被害者死亡発言に抗議する

■生方幸夫・立憲民主党衆議院議員の拉致被害者死亡発言に抗議する

立憲民主党の生方幸夫衆議院議員が、横田めぐみさんは生きていない、政府のD
NA鑑定はねつ造、自民党議員も拉致生存者はいると思っていない、などという
ひどい発言をした。

令和3年9月23日に松戸市民会館で行われた同議員の国政報告会で生方議員は
*「(横田めぐみさんは)生きていない」
*「生きているなら帰すではないですか。帰さない理由は全くない」
*「遺骨を送ってきて日本で鑑定をして当人ではないと言ったのですけれども、
 あの時の状況で遺骨からDNAを鑑定してそれが横田さんであるのかないのかとい
 うような技術力はなかったのです」
*「日本から連れ去られた拉致被害者というのはもう生きている人はいない」
*「日本国内から連れ去られて行ってあちらで教育を受けて日本語を教えるなど
 をしたというのは拉致被害者は、今は生存者はいないのだと思う」
*「拉致生存者がいると思っている人はたぶん自民党でも一人もいないと思う」
*「横田さんが生きているというとは誰も思っていないのです、自民党の議員も」
*「小泉さんが行って話をして決まったことを守らなかったというのがいけない
 のであって。守らなかったという意味は、いったん拉致家族の方たちを帰すけ
 れども、もう一回戻ってきてくださいよ、ということで小泉さんはOKしている。
 ところが、帰ってきたら全然戻らないまま、もうそんなの1回戻してきたらなん
 で返さなければいけないのだ、そんなの交渉の時に言わなければならない」

 これらの驚くべき発言はすべて動画がネットで公開されている。
 日本政府は〈被害者の「死亡」を裏付けるものが一切存在しないため、被害者
が生存しているという前提に立つ〉(政府拉致対策本部「すべての拉致被害者の
帰国を目指して ―北朝鮮側主張の問題点―」)という基本的立場に立っている。
この立場は生方議員が副大臣などで参画した民主党政権時代にも維持されていた。
 生方議員は人の命に関わる重大な人権問題について、日本政府の基本的立場を否
定して、北朝鮮の主張に賛同している。その上、自民党議員を含む関係者が皆生存
者がいないと思っていると断定して、関係者の名誉を著しく傷つけている。
生方議員のこの発言は、すべての拉致被害者の救出のために心血を注いできた拉致
被害者家族とその支援者また被害者自身の生命に対する重大な侮辱であり冒涜だ。
強く抗議する。発言の取消と謝罪を求めたい。

 立憲民主党は党として拉致対策本部を置き、枝野代表も参加して拉致被害者家族
の話を聞いてくださった。この生方議員発言を党としてどう考えるのか、ぜひお聞
かせ願いたい。

ー以下省略ー

拉致被害者を救う会から生方議員に直接の抗議がありました。

また、立憲民主党としての対応も迫っています。

このページでは実際に生方議員がどう発言したのかの書き起こしまで載っています。

生方幸夫議員が発言を謝罪撤回・県連会長を辞任と発表

生方幸夫議員が当該発言を謝罪撤回し、その後、直接救う会の会長である西岡力氏と面会して謝罪文を手交し、さらに立憲民主党の千葉県連会長を辞任と発表しています。

生方幸夫議員「森元総理、撤回すればOKとは責任という文字が無いよう」とツイート

https://archive.is/Bim8S/again?url=https://twitter.com/ubukatayukio66/status/1357592915871080448

https://archive.is/9CAir

生方幸夫議員はオリパラ組織委員会会長だった森喜朗元総理がJOC評議員会においてラグビー協会の(理事会における)女性理事の発言が長いと言及した事に関して「森元総理、撤回すればOKとは責任という文字が無いよう」とツイートしていました。

これを受けて、発言を撤回や県連会長の辞任だけでなく「議員辞職しろ」という引用リツイートが寄せられています。

それにしても、金正日総書記時代に北朝鮮自身が一部被害者の一時帰国を認めた結果、今の帰国者が居るにもかかわらず、拉致問題自体が存在しないのではないか、などと発言したというのは単なる「勉強不足」にとどまらない、何かを疑ってしまいます。

9月23日の発言から2週間以上経過後、救う会から直接抗議を受けて初めて問題を認識したことなど含め、謝罪撤回だけで済む問題では無いだろうというのは当然だと思います。

少なくとも次の衆院選で党から公認・推薦されるのか、出馬したとして国民の判断が問われると思います。

なお、立憲民主党としての本件への対処はまだ聞こえて来ていないので(なんかこういう声明は出してるが…)、それもどうなるかが要注目点でしょう。

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朝日新聞「フェミサイドを許さないと言ったら牛刀の写真が…」菱山南帆子の小田急線刺傷事件ツイート検証

小田急線刺傷事件フェミサイド?

小田急線刺傷事件に関しての朝日新聞の記事が気になりました。

朝日新聞がオンライン・セーフティー・フォー・シスターズを紹介

モノ言う女性がたたかれない社会に 安全なオンライン空間を求めて:朝日新聞デジタル

 菱山さんは8月にあった小田急線車内での刺傷事件に関連し、女性であることを理由にした殺人を意味する「フェミサイド」を許さないと発言したところ、「よく切れますよ」との言葉を添えた牛刀の写真が送られてきたという。

朝日新聞がオンライン・セーフティー・フォー・シスターズを紹介し、その中で「フェミサイドを許さないと言ったら「よく切れますよ」と牛刀の写真が」と言われたとする菱山南帆子氏の発言を取り上げています。

酷い話です。

牛刀というのは小田急線車内での刺傷事件で犯人が犯行に用いた凶器です。

牛刀の写真を送ったツイートと送られたツイートと「フェミサイド」

牛刀の写真を送ったツイートは画像にあるアカウント(削除済み)による以下のもの。

ハッシュタグを見て何の事かと思ったら下に産経のツイートがありました。
あたしも業務用の牛刀持っています。
上のが牛刀、下のが三徳包丁。
よく切れまっせ!

タイミングとしてあまりにも不見識ですし、不穏な意図を感じ取っても仕方がないと思います。しかし…

「フェミサイド」を許さないと発言したところ

なんでしょうか?

菱山南帆子氏のツイート検証「フェミサイドを許さない」と時系列

菱山南帆子氏のツイートで「フェミサイド」が含まれるツイートを検索すると⇒

https://archive.is/EYEE9

最初に見つかるのが8月7日午前11時19分の以下のツイート。

「完全にフェミサイド」と発言。

上掲の「#幸せそうという理由で私たちを殺さないで」とだけ書かれたツイートはその次にツイートされており、同日の午後0時29分のツイートです。

ということで、「フェミサイドを許さないと発言したところ」というのは事実関係として違います。

また、牛刀の写真を送ったツイートは短時間で削除されていることを観測した者もおり、その意図は不明です。

「フェミサイドを許さないと言うと「よく切れます」と牛刀写真」は…

ということで、「フェミサイドを許さないと言ったら「よく切れますよ」と牛刀の写真が送られた」というのは、時系列が揃っていません。

そこはさておき。

小田急線車内での刺傷事件は「フェミサイド」でしょうか?

小田急線車内の刺傷事件を「フェミサイド」と呼ぶ弊害

小田急線刺傷事件を「フェミサイド」と結論づけるのが極めて危険な理由 事件の「背景」を覆い隠してしまう | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

まず大切なことですが、「フェミサイド」の意味の公約数的見解は、「女性を標的とした殺人」です。

  1. 女性を標的にした
  2. 殺人

加害者の男女別の撤廃や人数の制限をも無くした結果、現在の理解になっています。

「差別に基づく」という実質を求める定義もあるようですが。

小田急線刺傷事件は…

名前からして答えが明確なのですが、不幸中の幸いなことに死者は出ていません

そのため、事件の内容について不用意な印象を持たせてしまう「小田急フェミサイド」という呼称は、不適切なのではないか。

ただ、「犯人に殺意はあった」という点でフェミサイドの実質を認めるべきという見解もあり得ると思います。未遂も含めてフェミサイドと呼ぶ用語法。

もっとも、「女性を標的に」したというのは確定事実でしょうか?

被害者は男女5人ずつ、犯人供述「誰でもよかった」「6年ほど前から幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった」

小田急線刺傷 容疑者、女子大学生に複数回切りつけ 追いかけ襲ったか 8/8(日) 18:36 yahoo!ニュース 毎日新聞 魚拓

捜査関係者によると、今回の事件の被害者は男性と女性が各5人。そのうち切られたのは女性3人と男性1人の計4人だった。切りつけられた被害者のうち、執拗(しつよう)に襲われて重傷を負ったのは大学生のみといい、そのほかは対馬容疑者が振り回した刃物が当たってけがをしたとみられる。「(相手は)誰でもよかった」とも供述している。

(相手は)誰でもよかった

という供述がありますが、前項の記事では聴取初期の調書の常とう句とされているように、本心がどこにあるかはよくわからないとしか言いようがない。

また、以下のような動機を伺わせる記述も。

小田急線車内で10人重軽傷 36歳の男を殺人未遂容疑で逮捕「幸せそうな女性を殺してやりたいと思った」、床にサラダ油まく:東京新聞 TOKYO Web

6年ほど前から幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった」「逃げ場がなくて大量に人を殺せるから電車を選んだ。誰でもよかった」と供述しているという。

ー省略ー

容疑者は登戸駅で6号車に乗車。先頭の10号車に向かって移動し、7号車で4人に切り付ける様子が車内の防犯カメラに写っていた。8号車では床にサラダ油をまいて火を付けようとしており、「大量に人を殺せると思った」と供述しているという。

6年ほど前から幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった

とありますが、同時に「大量に人を殺せる」と思ってサラダ油をまいて火を付けようとしており、事件当時の犯人の対象選択に女性が最優先にあったのか否かは現時点では不明です。

女性を必ず狙い、その後はなるようになればいい、というような場合などにはフェミサイドの実質はあると言えるでしょう。

本件では他の被害者は女子大生が最初に被害を受けた後、包丁を振り回された結果、ということがその要素を匂わせます。

しかし、その後に放火も予定していたということから、専ら女性を狙っていたのかどうかが曖昧な状況が生まれているとも言えます。

結局、公判を通じて明らかになる、くらいしか今の段階では言えないでしょう

まとめ「フェミサイド」なのかは言葉の定義と事案解明次第

小田急線刺傷事件はフェミサイドなのか

それは「フェミサイド」という言葉の定義と犯人の動機・目的という事案解明に左右され得るという状態にあるのではないでしょうか。

言葉の定義の関係で言えば、現時点では何か殺人が起きて被害者が女性ならフェミサイドと呼びうることになっていますが、果たしてそれで良いのでしょうか?

フェミサイドという言葉に込められた「敢えて女性を標的にする心情とそれを助長する或いは阻止できない環境・社会」という非難要素が、今現在の用語法ではスポイルされてしまうのではないか?

「フェミサイドを許さないと言ったら牛刀の写真が…」という事実関係を歪めた記事も、「フェミサイド」というワードの使用者への意図しない感情を喚起させてしまうのではないでしょうか?

さて、「フェミサイド」を浸透させることで何を狙っているのか?

女性を狙った加害行為の法定刑を加重するとか、そういう立法を狙っているような気がしますが、ならば子供は?老人は?という話にもなり、尊属殺重罰規定の際と同じ議論が展開されるかもしれません。

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立憲民主党原田ケンスケ「性交中に同意を得て手で首絞めると違法性無い・ショートパンツの女の子みたいなら夏場のサッカー観戦」既に削除の蒸し返し・魚拓

f:id:Nathannate:20211011124207p:plain

原田ケンスケ公式HP:https://haradakensuke.jp/

どうして立憲民主党の党員は…

立憲民主党衆院岡山1区総支部長の原田ケンスケ

原田ケンスケ 公式サイト

立憲民主党の衆院岡山1区総支部長の原田ケンスケ氏。

彼の問題とされるツイートが発掘されています。

既に削除されていたツイートの蒸し返しと思われる

実は、このツイート群は2019年にも話題になっており、魚拓が残っている時期を見る限り、そのときに消されているのではないかと思われます。

また、この件を取り上げたサイトも、当該記事を消しています。

それを2021年10月9日にTwitterの匿名アカウントがスクリーンショットの画像を取り上げ、インフルエンサーが拡散し、はちま起稿が記事を書いて広まったという経緯です。

ただし、原田議員のSNSや公式HPを見る限り、この件について明確に謝罪なり反省の弁が述べられたような記述は見当たりません。

「性交中に同意を得て手で首絞めると違法性無い」ツイート

原田ケンスケツイート魚拓:性交中に同意を得て手で首絞めると違法性無い

https://archive.is/OJghT

性交中に、相手の同意をえて、紐で首締めるプレイで誤って相手が死ぬと過失致死罪にとわれるけど、同様に性交中に同意を得て、手で首締めてて誤って死んでしまっても違法性はないよ。関係しそうな人はご注意を。そんな刑法

同意があっても紐だと過失致死罪だが手だと違法性は無い、というどこから聞いたのか不明な話。ケースバイケースなわけで、紐か手かという切り分けで一律に判断できるはずがありません。

ということで、削除して正解です。

「ショートパンツの女の子みたいなら夏場のサッカー観戦」魚拓

原田ケンスケツイート魚拓:ショートパンツの女の子みたいなら夏場のサッカー観戦

https://archive.is/dTHCv

ショートパンツの女の子みたいなら夏場のサッカー観戦はいいと思う。。。

これでは女子スポーツの応援をしていることが、別の目的ではないかと疑われてしまいます。現に、近年のツイートでもいくつか女子スポーツに関する発信をしています。

https://archive.is/0Mtbf

その目的に疑惑を持たれないためにも、削除したのは正解でしょう。

「帰宅困難なやつはうちにおいで!女の子が来る、今晩どうしよ」

原田ケンスケツイート魚拓:帰宅困難女の子がどきどき今晩どうしや

交通機関の影響等で帰宅困難なやつはうちにおいで!
現時点で、女の子が二人くることになってます。女の子と話すのにドキドキする人間なんで今晩どうしよ♪( ´▽`)

https://archive.is/5GqrA https://archive.is/BEFMx

これも正直な心情を吐露しただけなのかもしれませんが、「女の子がくることになっている」ことを公言してしまうとよからぬ輩を呼び寄せてしまいそうですよね。

なので、少なくとも不用意なツイートであることは確かなので、これも削除で正解。

増沢諒氏と さいとーだいち氏とどういう会話をしていたのかは気になりますが…

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郡司真子「殺害予告勢力をフェミ議連に抗議してる議員、県職のインフルエンサーが煽動」

郡司真子のフェミニスト議連記者会見

フェミニスト議連記者会見の内容を発信しているアカウントから。

郡司真子「殺害予告勢力を議員、県職のインフルエンサーが煽動」

https://archive.is/HLGED/again?url=https://twitter.com/bewizyou1/status/1447197655315009537

10月8日に行われたフェミ議連の記者会見場に入り、主張をツイートしていた郡司真子氏が「議員、県職であるインフルエンサー」という語を用いて「殺害予告する勢力の煽動をしていた」と指摘。

誰のことでしょうか?

以下、順不同ですが会見後のツイートで関係するものを抜粋。

郡司真子「オタク、表現の自由戦士界隈某議員と県職員」

https://archive.is/54lOt

タイムスタンプが午前2:33 · 2021年10月10日であり、「議員、県職」に関するおそらく最初のツイートがコレ。

「オタク、表現の自由戦士界隈」というのは、オタク議連に所属しているおぎの稔議員や、プロフィールに「表現の自由戦士」と書いている自治体職員が中の人のアカウントを匂わせる内容です。

https://archive.is/Z5llz

またも「議員や県職員」とセットで記述しています。

「フェミニスト議連への抗議」とあるので、それを主導していた人物として第一に挙がるのが署名を立ち上げた県職員と彼と動画でコラボなどしていたおぎの稔議員です。

https://archive.is/i1uOM

「某議員と県職員」という語は度々出てきます。

「ほかの議員の関わりまで、具体的な名前を」は引用リツイートの内容を参照。

「おぎの議員」「立憲民主党のやぶはら太郎武蔵野市議」の名前がありますが、具体的な名前と言えるのは「やぶはら太郎」の方でしょう。

とすると、「他の議員」ではない「クソリプに関わっていた議員」の一人は、おぎの稔議員であると認識しているような雰囲気がこのツイートからは漂ってきます

https://archive.is/WnFDS

https://archive.is/4yIsH

「ある政党、宗教系の政治的な扇動的司令塔の号令」とありますが…

誰なんでしょう?

おぎの議員は確かに何らかの宗教(仏教系)に入信しているとツイートしていますが、話題になっている「統一教会」とは一切関係ないということは具体的な名称を出さずに言及しています。

なお、おぎの稔議員が郡司氏について言及したのは午後4:45 · 2021年10月9日のツイートで、その後の言及内容が「煽動」かというと…⇒https://archive.is/4tp3p

少なくともおぎの議員のツイートやYoutube動画やブログでは郡司氏の報じている内容が嘘であるという指摘をしていることはまったく確認できないので、「殺害予告までする勢力の扇動をしているフェミニスト議連に抗議しているインフルエンサー議員」とはいったい誰なのか?おぎの議員を指しているとすればそれは完全に誤りでしょう。

おぎの稔議員から郡司氏へおぎの氏が脅迫に関与するような発言を問い質す

こうした一連の発信後、おぎの議員から郡司氏への@付きで以下のツイートが。

上掲ツイートの次のツイートが以下。

郡司真子氏のフェミニスト議連の記者会見を報じるツイート群の魚拓 

郡司真子氏によるフェミ議連の記者会見を報じるツイートは以下です。

ブロックされている人も多いと思うので全部魚拓化しています。

1:https://archive.is/eRcZQ/again?url=https://twitter.com/bewizyou1/status/1446316240197206021

2:https://archive.is/7krue

3:https://archive.is/vcWpE

4:https://archive.is/pZDmb

5:https://archive.is/ZjDV8

6:https://archive.is/wykuH

7:https://archive.is/snGrV/again?url=https://twitter.com/bewizyou1/status/1446396218611961856

8:https://archive.is/z5KVF

9:https://archive.is/NW482

10:https://archive.is/snGrV/again?url=https://twitter.com/bewizyou1/status/1446396218611961856

11:https://archive.is/e4hq4

13:https://archive.is/tYgE8

16:https://archive.is/x8UHU

なお、番号はスレッドのツイートの順番です。

肢が分かれているものはありませんが、記者会見の内容ではない、自分の見解等を述べるものも途中のツイートに挟まっているので、抜け番号はそういうツイートです。

その他のツイート内容と3年前のハフポスト「中2女子」騒動

https://archive.is/snGrV

「フェミ議連の主張をすりかえ」というのがどういうものか定かではないが、おそらく「戸定梨香の活動自体を問題視しているのではない」というフェミ議連側の主張に対して、もともとのフェミ議連の公開質問状は不可避的に問題視しているだろう、という指摘についての話であるとしか思えません。

詳しくは以下。東京新聞の報道をベースにしています。

https://archive.is/PEJeD

「3年前のデマ」というのはハフポストが「中2女子」として報じた「山本あすか」を名乗るアカウントに関する一連の言説を指しています。調べるといろいろと出てきます。

https://archive.is/4IXJq

「歴史修正主義者」という単語が度々出てきますが、どういう方針で発信をしているのかは大体これでお察しでしょう。

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