事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

ブルーリボンバッジを禁止した裁判官の直接の説明を求める署名:ブルーリボンを守る議員の会HP

ブルーリボンを守る議員の会

ブルーリボンバッジ裁判の経緯について

ブルーリボンを守る議員の会HPの2つの内容

8月22日、福岡県行橋市の小坪慎也議員が会長を務める「ブルーリボンを守る議員の会」のHPが公開されました。

ブルーリボンを守る議員の会 | 拉致被害者救出のため強い覚悟をもつ。

本HPで全国の議員らにお願いしている内容は以下の2つです。

  1. ブルーリボンバッジを禁止した裁判官の直接の説明を求める署名
    ※署名実施団体は「ブルーリボンバッジを守る国民の会」(署名代表者 小松敏行)
  2. 拉致被害者救出のため強い覚悟をもって ブルーリボンバッジを着用する共同声明への署名
    ※署名実施団体は「ブルーリボンバッジを守る議員の会」

いずれかに賛同するという方法も可能で、別建てとなっていますが、そのようにした理由については当会について | ブルーリボンを守る議員の会にて説明されています。

いずれの署名も、ブルーリボン訴訟の弁護団を通じて法廷に提出されるとしています。

2番の共同声明については、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会の会長である西岡力 氏が協力要請をしています。

本稿では、本件に関心を持った方の理解・判断・説明を助けるために、1番の裁判官がブルーリボンバッジを禁止した経緯について簡単に説明し、その不当性乃至違法性についての私見を伝えることとします。

ブルーリボンバッジを禁止した裁判官の直接の説明を求める署名の経緯

ブルーリボンバッジを禁止した裁判官の直接の説明を求める署名 | ブルーリボンを守る議員の会

大阪地裁堺支部の裁判官(裁判所)が、「フジ住宅裁判」(フジ住宅の従業員が会社を訴えた裁判。平成27年(ワ)第1061号)における法定警察権の行使としてブルーリボンバッジを外すよう命じたということがありました。その行為について当該命令を受けたフジ住宅側(今井会長と支持者である南木氏、黒田氏)が国を提訴したのが「ブルーリボンバッジ訴訟」です。

その経緯については【2018.08.16 Thursday「傍聴人はブルーリボンバッジをはずせ。」『大阪地方裁判所堺支部』が示した、前代未聞の驚くべき訴訟指揮。南木隆治】で初めて明らかにされましたが、私の方でも訴訟提起前に事情を整理しました。

大阪地裁がブルーリボンバッジを外すよう訴訟指揮した経緯と不当性 - 事実を整える

  1. 原告従業員の支持者が「ストップ!ヘイトハラスメント!」という文字のある手のひら大の缶バッジを着用して期日に入廷し傍聴
    ※裁判所は注意せず
    ※フジ住宅側からやめさせるよう裁判所に要求していた
  2. それを受けてフジ住宅を支持する者が富士山の上に太陽が昇っている絵をあしらった同サイズの缶バッジを着用して期日に入廷し傍聴
  3. 裁判所が両者に「メッセージ性のあるバッジ等は外してください」と指示
  4. 後日、原告従業員の支持者が、フジ住宅側が着用しているブルーリボンバッジについても「それもメッセージ性があるから外せ」と要求
  5. 裁判所が「入廷時はブルーリボンバッジも外すように」(当初は傍聴券抽選時も)と指示。指示は判決の日まで変わらず、理由の説明がなされたことはない
  6. 裁判所の当該指示命令が違法だとしてフジ住宅・南木氏らが国を提訴

フジ住宅裁判、ヘイトハラスメント裁判、バッジ

訴訟・裁判に関する当社の主張::フジ住宅株式会社

訴状は【2020.12.13 Sunday(重要)『ブルーリボン訴訟』大阪地裁提訴の訴状全文公開、及び『フジ住宅裁判』大阪高裁での控訴審開始について。】にて掲載

なお、ブルーリボンバッジ訴訟の発端となったフジ住宅と従業員の訴訟は、フジ住宅側は「フジ住宅裁判」と呼び、従業員側は「ヘイトハラスメント裁判」と呼んでそれぞれ訴訟経過をHP上で報告しています。

原告従業員は韓国籍であり、朝鮮籍や北朝鮮人ではありません。

「ブルーリボン訴訟」は、「フジ住宅裁判」本体の判断について異議申立てをするものではありません。

私見:ブルーリボンバッジを「メッセージ性のあるバッジ」と扱うべきではない

フジ住宅側の高池弁護士の訴状での主張とは異なる構成ですが、私は以下のように考えています。

  1. フジ住宅裁判で禁止されている「メッセージ性のあるバッジ」というのは、「一見して本件訴訟に関連するメッセージがあるかの判別が困難なデザイン」を禁止する趣旨と考えられる
  2. 現に、フジ住宅の社員バッジ(富士山をモチーフ)は禁止されていない
  3. ブルーリボンバッジは【北朝鮮による拉致の被害者らの生存と救出を信じる意思表示】のために着用されるものであり、その理解は一般的に周知されている
  4. よって、「一見して本件訴訟に関連するメッセージがあるかの判別が困難なデザイン」には当たらない
  5. また、原告は在日韓国人であり、北朝鮮人・朝鮮籍の者ではないことから、原告を非難するメッセージがあると理解することはできない

なぜ裁判所がメッセージ性のあるバッジを外すように命じたのかと言えば、それは原被告とその支持者らの間で無用の争いが生じるのを避けるためでしょう。それ自体は理解します。フジ住宅側もそれ自体には反対していません。

一般的に広く周知されていないデザインの場合、その意味内容・メッセージ性がどういうものなのかの判別が困難なため、相手方を刺激する要素がある可能性が拭えない上に、着用側がその意味をいくらでも操作することが可能です。

対してブルーリボンバッジは、フジ住宅裁判の前から存在しているために本件訴訟とは無関係である上に、その意味内容も客観的に定まっており、当事者の恣意によって意味を定義・付加することは不可能なものです。北朝鮮に縁のある者だと客観的に認識されている者でない限りは(この場合は経緯次第では相手方への非難の要素が生じ得る可能性がある)。そのため、社員バッジと変わらないものと言えるでしょう。

そして、広く周知されているために、メッセージの誤認は客観的に起こり得ない。

つまり、ブルーリボンバッジについて相手方が不快感を示して争いが生じるとしても、それは「難癖をつけて来た」以外にあり得ません。それに裁判所が偏頗的に加担したということ。

したがって、本件の裁判所の指示命令は、本来の法定警察権行使の対象ではないものを排除している点で少なくとも不当である、と私は考えています。

弁護士の傍聴席でのメモを禁止した裁判所の法定警察権が問題となったメモ採取不許可国家賠償請求事件=レペタ事件では違法性は認められませんでしたが、これを機に傍聴席でのメモが一般的に可能になりました。

「ブルーリボンバッジ訴訟」に関しても、少なくともこうした効果がもたらされることを、私は期待しています。

そのため、議員の方々の署名には意義があると考えています。

署名は、ブルーリボン弁護団を通じて大阪地方裁判所に提出されます。

なお、以下の法律がブルーリボンバッジの背景に存在しています。

平成十八年法律第九十六号
拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律

(国の責務)
第二条 国は、北朝鮮当局による国家的犯罪行為である日本国民の拉致の問題(以下「拉致問題」という。)を解決するため、最大限の努力をするものとする。
2 政府は、北朝鮮当局によって拉致され、又は拉致されたことが疑われる日本国民の安否等について国民に対し広く情報の提供を求めるとともに自ら徹底した調査を行い、その帰国の実現に最大限の努力をするものとする。
3 政府は、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に関し、国民世論の啓発を図るとともに、その実態の解明に努めるものとする。

※追記:最高裁判例を参考に、より詳細に裁判所の違法性を論じました。

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