事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

Colabo・暇空茜:配偶者暴力被害者等セーフティネット強化支援交付金の情報開示請求も計画書や貸借対照表等が非開示:その原因はなぜ?

どういうことなの?

Colabo配偶者暴力被害者等セーフティネット強化支援交付金

令和4年度東京都配偶者暴力被害者等セーフティネット強化支援交付金|東京都生活文化スポーツ局

一般社団法人Colaboは、東京都の【配偶者暴力被害者等セーフティネット強化支援交付金】=DV被害者等セーフティネット強化支援交付金を受け取っていました。

Colaboの会計に関して住民監査請求をしている暇空茜=水原清晃氏は、この点に関するColaboの資料を都に情報開示請求していました。

暇空茜の都への情報開示請求で事業計画書や貸借対照表の非開示

暇空氏の東京都への情報開示請求で、DV被害者等支援の交付金に関する「事業計画書」や、「貸借対照表」「定款」の大部分が非開示とされたことが報告されています。

公約の進捗 | 都民ファーストの会を見ると『「のり弁」をやめます』という公約については【実現】とあるのに…小池都知事…。

暇空氏の画像を見る限り、DV被害者等交付金の公募の際の添付書類等を求めているとみられ、ここでの「貸借対照表」は、Colaboが毎年作成していたところの全事業の貸借対照表と思われるところ、画像で見える非開示部分の理由としては東京都情報公開条例7条各号該当としていますが…

(公文書の開示義務)

第七条 ~省略~

 法人(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると認められるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。

イ 事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある危害から人の生命又は健康を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報

ロ 違法若しくは不当な事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある支障から人の生活を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報

ハ 事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある侵害から消費生活その他都民の生活を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報

 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報

一般社団法人の貸借対照表は公告義務:Colaboは懈怠で先日公告

一般社団法人の貸借対照表は公告義務が課されています。

そして、義務違反の法人の関係者には100万円以下の過料が課されることが規定されています。Colaboはこの義務を懈怠していてつい先日、貸借対照表をColaboのHP上に公開しました。

ただ、貸借対照表の公告義務違反でこの行政罰を受ける所はほとんど無いようです。

平成十八年法律第四十八号 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

第百二十八条 一般社団法人は、法務省令で定めるところにより、定時社員総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大規模一般社団法人にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない
2 前項の規定にかかわらず、その公告方法が第三百三十一条第一項第一号又は第二号に掲げる方法である一般社団法人は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる。

~省略~

平成十九年法務省令第二十八号 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則

(貸借対照表の区分)
第三十条 貸借対照表は、次に掲げる部に区分して表示しなければならない。この場合において、第三号に掲げる部については、純資産を示す適当な名称を付すことができる。
一 資産
二 負債
三 純資産
2 前項各号に掲げる部は、適当な項目に細分することができる。この場合において、当該各項目については、資産、負債又は純資産を示す適当な名称を付さなければならない。

他方で、一定の方法に拠る場合には、貸借対照表の要旨を公告することで足りるとしています。

(公告方法)
第三百三十一条 一般社団法人等は、公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定めることができる。
一 官報に掲載する方法
二 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
~省略~

Colabo弁護団は貸借対照表に関して釈明した文書で「なお現在はホームページに掲載する電子的方法としているが、今後は合理的な公告方法のあり方も含めて検討したい。」とも書いていたように、今後は要旨の公告で済む方法にする方針なのかもしれません。

なぜ貸借対照表が非開示なのか?その原因についての考察

もしも非開示とされた貸借対照表がColaboが毎年作成していた法的公告義務のあるものであった場合、都は公告、つまりは公に対して公表することが法的に要請されている書類について、その表紙と合計金額以外は非開示としたという点で、有り得ない判断をしているということになります。

ここで、要旨の公告で済ませる旨が定款に定められている一般社団法人の貸借対照表に関しては、具体的部分を非開示にしても情報公開法上妥当であるという旨の審査会への諮問結果が出ています。

令和3年1月8日(令和3年(行情)諮問第10号) 令和4年2月3日(令和3年度(行情)答申第512号)特定法人の決算報告書の一部開示決定に関する件

また、貸借対照表の公告方法について,特定法人は官報に掲載すると定めており,その場合,同法128条2項により貸借対照表の全てを公告する義務はなく要旨を公告することで足りると定められている。なお,何を以て要旨とするかは,法令上定められていない。(3)貸借対照表の中小項目の金額及び正味財産増減計算書の全ての項目の金額については,公表を義務付けられているものではなく,また,特定法人も自ら公としていない,法人の事業規模や営業に係る情報であり,これを公開すると法人の経営状況がある程度具体的に明らかとなり,特定法人の競争上の地位その他正当な利益を害することとなる

(※本件不開示部分は,貸借対照表及び貸借対照表内訳表の中小項目の科目名の各一部及びその金額並びに正味財産増減計算書及び正味財産増減計算書内訳表の科目名及び金額の全て)

対して、今回のColaboは、貸借対照表は電子的方法で公開しており(2018年度のものも2022年11月末に公開したという懈怠があるが)、一定の項目について明示しています。

Colabo 2022.3貸借対照表

したがって、こうした対応を採っている法人にとって、この部分を公表することが「公にすることにより、当該法人等又は当該事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれ」たり「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ」があると類型的に認められることは有り得ないハズです。

が、なぜColaboに関しては非開示とされたのでしょうか?

敢えて都の担当者が合理的な理由を述べていると考えてみて、予想を書いていきます。

1:開示請求・非開示の意見書提出と貸借対照表公告方法と公開の時期

前項で触れたように、Colabo側は、貸借対照表について「今後は要旨の公告で済む方法にする方針」を匂わせています。もしもこのことを都とすり合わせているのであれば、近いうちに官報や新聞で要旨の公告をするために、具体的部分を非開示とすることが妥当となる状況になるということに?

しかし、来年度以降の貸借対照表ならともかく、現時点で既にネット上で公開されているものについてはおかしい気がします。

今度は視点を変えて、暇空氏が受け取った非開示の通知は、いつ頃のものか?というところから考えてみます。

11月22日には「請求対象文書に記載されている個人」から「一切非開示の意見書」が提出されたことが報告されています。

とすると、この時点ではまだ貸借対照表はHP上で公開されていません。

公告義務懈怠の状態だった貸借対照表について、都に情報公開請求したら出て来るというのは、何か座りが悪い気がします。Colaboが都に対し、要旨の公告で済む方法を採る方針を伝えており、HP上で公開=公告するまでのタイムラグ中に非開示通知が為されたのではないか。

でも、これだとColaboが都の側をだましてることになってないでしょうか?という気がしないでもない。まぁ、仮に意見書を超えて両者で開示請求を受けてる文書に関して意思疎通してるのであれば、それ自体がおかしいのですけど。

2:「暇空がColaboにデタラメな誹謗中傷をしている状況」の例外対応?

次に、Colabo弁護団は、暇空氏がColaboや仁藤氏に対して「現に目の前に存在する情報ですら歪めて事実を捏造している」、というような主張をしていました。

【弁護団声明】Colabo及び仁藤夢乃さんに対するネット上の攻撃について – 一般社団法人Colabo(コラボ)

したがって、【現時点の段階で】各種の資料を公開したところで、その資料の読み方を曲解されてしまい、それを元に誤った理解が新たに拡散されてしまう、そういう極めて例外的な状況にあるのだから、当面の間は非開示にすべきだ、と。

私が彼らなら、こんなような非開示の意見書を書くかなぁ、と思ったりしています。

この理屈なら貸借対照表以外の様々な書類についても非開示とする理由になるかも?

が、そういった時限的な非開示の対応ができる法制度になっているのだろうか?という疑問があります。

まとめ:その他書類についての非開示も併せて謎が深まるばかり

法的公告義務のある貸借対照表の前提で検討してきましたが、そうでなくとも事業計画書や定款の大部分が非公開とされる合理的理由としても納得できないものがあります。

今後、何か合理的な理由が説明されるのでしょうか?

それとも、やはり都の非開示通知は違法な対応だったのでしょうか?

もはや、情報公開請求訴訟を提起するしかないのでしょうか?

謎は深まるばかりです。

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