「羽生結弦が史上初の4A認定」は誤報?
「羽生結弦が史上初の4A認定は誤報」AFP
⛸️ Social media posts shared tens of thousands of times claim the International Skating Union 'recognised' Yuzuru Hanyu's quadruple axel jump attempt at the Beijing Winter Olympics.
— AFP Fact Check 🔎 (@AFPFactCheck) 2022年2月23日
But @ISU_Figure told us this is false ❌ https://t.co/28sRLK6Hq5
2022年2月23日、AFP通信が中国SNS=weiboを発端に「羽生結弦選手が4A=クアッドアクセルジャンプを史上初めて認定された」という言説が飛び交ったことを取り上げ、国際スケート連盟に確認をとった内容を報じています。
結果は「誤報」の判定。
同様の言説は日本のSNSやメディアでも取りざたされていたため、正確な理解が必要でしょう。
国際スケート連盟「4A認定」は無い アンダーローテーションだった
ISU=国際スケート連盟はAFPに対して「4A認定」は無い、アンダーローテーションだった、と回答したとしています。
2019/2020シーズンの採点基準やその説明をした文書では、「アンダーローテーション」は回転不足が4分の1を超えるが2分の1未満の場合としています。
さて、では「史上初」というのは誤報なのか。
実は、アルトゥール・ドミトリエフ選手が2018年に先に「4A」の表記がプロトコルに掲載されています。
これを見ると「4A<<」という表記となっており、ダウングレード、つまり2分の1以上の回転不足により「3A」の基礎点8.00点の扱いになっているのが分かります。
この場合には採点上は「4Aのダウングレード」ですが、実態からみると「3Aを飛んだ」、と言えることになります。
「4A<」という表記であり、基礎点が10.00の扱いになっています。
(4A成功なら12.50点が基礎点となる)
要するに「4Aのアンダーローテーションが史上初めて認定された」が正しいことに。
「4Aが史上初認定」という言葉遣いはそのような意味であれば間違いとは言い切れず、観念上のものだということ。記述上のものであれば既に「4A<<」の表記があるので。
2021ー2022シーズンに新たに導入された採点基準「クォーター」
2020/2021シーズンより新たに"Landed on the quarter (q)"=「クォーター」という表記と採点基準が新たに導入されているのが分かります。つまり、4分の1の回転不足の場合は、基礎点自体の減点は行わない扱い、ということになります。
>Landed on the quarter (sign q) -2
>Less than quarter missing (no sign) -1
たとえば今後「4Aq」という表記となる結果が出た場合、基礎点は4Aと同じだが、「回転不足」という評価が存在しているということで、この場合も「4A成功・認定」とは言われない可能性があります。
今回の羽生選手の記録はこの「クォーター」にも達していないため、これを「4A認定」と呼ぶのは苦しく、言葉の遣い方が特殊であり、まぁ強弁しようとすればできるかもしれない、ということになります。
「羽生が史上初の4A認定」という言説が広がったのは、おそらく、従来の2020/2021シーズンまでの採点基準からの発想で「4Aの扱いを前提としたアンダーローテーション」と【表現】してもそこまで間違いでは無いだろう、見出しとしてセンセーショナルだから、「史上初」ということ自体は正しいから、という言葉の扱い方が為されたことが理由だろうと思われます。
従来のフィギュアスケートの世界ではこのような場合にも「認定」という言葉遣いをする習慣があったとしても、新たに「クォーター」という分類が登場したことで、今後は異なる表現上の扱いとなる可能性もあると言えるでしょう。
演技中の解説などを聞いていると「クォーター」の場合には基礎点が変わらないので、実質的に成功扱いとしている感じを受けますが。
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