痩せてる人が飢餓判定される指標
- FAOのHunger Mapで日本が飢餓国に?(貧困国ではない)
- FAOの「飢え」の意味:Undernourishment
- 日本が「飢え」に分類される人が出てくる理由とその妥当性:高齢者の割合増加など
FAOのHunger Mapで日本が飢餓国に?(貧困国ではない)
日本、国連公認の貧困国に認定されました。 pic.twitter.com/LdHg9SRCXk
— Dr. Shintaro Sawayama (@sawayama0410) 2022年7月25日
FAOのHunger Map(2019-2021)を示して「日本が貧困国に認定」というツイートがバズリました。
これは飢餓マップであり「貧困マップ」ではない時点でアレなのですが、以降では「飢餓」の話として扱います。マップは以下にあります。
The State of Food Security and Nutrition in the World 2022 | FAO | Food and Agriculture Organization of the United Nations (魚拓)
FAOの「飢え」の意味:Undernourishment
I am hungry. What does it mean?
What is hunger?
According to the Food and Agriculture Organization of the UN (FAO), hunger is an uncomfortable or painful physical sensation caused by insufficient consumption of dietary energy. It becomes chronic when the person does not consume a sufficient amount of calories (dietary energy) on a regular basis to lead a normal, active and healthy life. “Hunger” may also be referred to as undernourishment.
「Hungerとは、undernourishment(栄養不良)である」と書かれています。
Hunger Mapでは"Indecator 2.1.1"とあり、 Prevalence of undernourishmentに基づいて判定されているということです。
Hunger | FAO | Food and Agriculture Organization of the United Nations
The Prevalence of Undernourishment (PoU) is FAO’s traditional indicator used to monitor hunger at the global and regional level and is based on country data on food availability, food consumption and energy needs. It estimates the adequacy of a population’s dietary energy intake. Historically, the number of hungry people in the world (between 702 and 828 million) has been derived using this approach. PoU estimates cannot be sufficiently disaggregated to be able to identify specific vulnerable populations within countries, which is a limitation for monitoring the very ambitious goal of Zero Hunger in an agenda that aims to leave no one behind.
The Prevalence of Undernourishment (PoU) とは、FAOが世界及び地域レベルで飢えを監視するために使用している伝統的な指標で、食料の入手可能性、食料消費及びエネルギー需要に関する国のデータに基づいている、これは、ある国民の食事によるエネルギー摂取量の妥当性を推定するものである、とあるように、個々の国ごとに基準となる数値が異なるようです。
その国の標準的な体格の人間のエネルギー需要を決め、実際の摂取カロリー推定値との差分を見て、ある基準を下回っている場合に「飢え」と判定しているということ。
3章 アフリカにおける「飢えている人々」の規模-飢餓人口 – アフリカ日本協議会 -Africa Japan Forum-
そして飢え人口とは、食事エネルギー摂取量が必要量に足りない状態で生きている人びとの数のことである。必要量とは、個人が健康を保ち、社会活動を可能にする最低限のエネルギー摂取量のことである。1996年のFAOによる世界食料調査では、この水準以下の人口を、食料不足人口と呼んだ。最近ではこれを栄養不足人口と同一視している。
食事エネルギー摂取量が必要量を充たしているかどうかを判定するための一つの基準としてBMR (Basal Metabolic Rate 、基礎代謝率) という考え方が用いられている。BMRとは「温かい環境下で食事もとらない完全な休止状態にある個人のエネルギー消費量」、つまり人間がただ生命を維持するだけのために最小限必要な食事エネルギー量のことである。実際に人間が生活していくためにはただ寝ているだけではだめなので、エネルギー消費量は、もちろんBMRよりずっと多い。FAOによって栄養不足の限界値として用いられているのは、その1.54倍すなわち1.54BMRである。BMRは個人の体重に大きく依存しているが、基準となる体重としては、身長統計から推定された最小限の望ましい体重が用いられている。BMRは成長期にある子供には適用できない。そのために10歳以下の子供については、BMRとは別に、体重1kgあたりの食事エネルギー必要量が用いられている。
発展途上国では、住民の体重などの統計が取れず、BMRを出せないので、貧困計算に使われるものと同じであるが、便宜的に体重65kg の成人男性が気温10度の環境で必要な活動エネルギー消費量1人1日3,000kcalを基準として使い、それに性別・年齢別の格差表を用いて家族員全員の食事エネルギー必要量を出し、それを最低線としている。この格差表では、例えば男女共に4歳の子供の必要エネルギー量は1,500kcalになる。
要するに、「痩せてる人が飢餓判定される」指標だと言えます。
このように、非常に大雑把な計算となっています。
これは飢餓を救うために誰も取り残さないことを目指すアジェンダの下で行われている計算なので、やむを得ない面があるということはFAOも認識しています。
https://www.globalhungerindex.org/pdf/en/2021.pdf
日本が「飢え」に分類される人が出てくる理由とその妥当性:高齢者の割合増加など
女性、24歳、身長157.5㎝、体重50.9㎏(2018年の平均)の場合、活動量が「普通」で基礎代謝量は1154kcal/日。
— 木星3 (@tetsulovebird) 2022年7月28日
これを1.54倍すると1,777kcal/日。
年度など適当だが、2022年でも大きな変化は無かろう。https://t.co/iOJCkmsnp0
この記事だと、「厚生労働省の調査では、20代女性の平均は1625キロカロリー」。
— 木星3 (@tetsulovebird) 2022年7月28日
適当だが、日本の若い女性の摂取カロリーがFAOの飢餓レベルとさほど変わらないことは分かる。
【クローズアップ現代】(NHK)2015年10月5日放送https://t.co/xzakiCmtHW
まず、日本人はFAOの基準だと「飢え」に分類される人が出てきやすいということが指摘できます。
例として日本人女性の標準的な基礎代謝量と実際の摂取カロリー推計は、FAOの飢餓レベル推計の一つの基準を下回っているのが分かります。
また、これはよくわかりませんが、「同じ基準でも前と比べて飢餓人口が増えた」という主張が出てくる可能性があります。
しかし、その場合でも日本は高齢者の人口比が右肩上がりに増えているので、成人であっても摂取カロリーが減り、その結果として飢餓人口比が増えた、という関係にある可能性があります。
いずれにしても、飢餓マップから「貧困」を導くことには無理があるということです。
以上:はてなブックマーク・ブログ・SNS等でご紹介頂けると嬉しいです。