誰が誤った情報を流布しているのか?
- 「K-POPから始まったペンライト文化」という記事
- HYBE「K-POPから始まった응원봉=ウンウォンボン(応援棒)文化」
- 西城秀樹からのペンライトの起源を主張?サイリウムやケミカルライトとKPOPの応援棒
- まとめ:韓国のKPOPの応援棒は中央制御で発光管理、アイドル毎に名称がある別物
「K-POPから始まったペンライト文化」という記事
HYBE、2024年パリ夏季五輪用のペンライトを制作
— Kstyle (@Kstyle_news) 2024年7月9日
現地のコリアハウスなどに約5千個を提供https://t.co/yzF4iUkXjs#HYBE #Paris2024 pic.twitter.com/M1HCZBawzt
多くの方からご指摘を受け、内容を一部修正いたしました。今後注意して掲載してまいります。
— Kstyle (@Kstyle_news) 2024年7月9日
今後ともKstyleをよろしくお願いいたします。
2024年7月9日に掲載した「2024年パリ五輪用のペンライト」の記事におきまして、内容に誤りがありましたので、Kstyleでは一度ニュースを掲載中止させて頂きます。… https://t.co/zaQpDtr18V
— Kstyle (@Kstyle_news) 2024年7月10日
https://archive.md/y83vK https://archive.md/B8yKc https://archive.md/VPfl0
韓国情報サイトのKstyleが書いた記事内において韓国の総合エンターテイメント企業のHYBEの弁として「K-POPから始まったペンライト文化」と書かれていたことから炎上し、内容を「アイドルの応援文化」などと修正した後に記事掲載自体を取りやめたという顛末がありました。ただ、何について事実確認が足りていなかったのかは明らかにされていません。
Kstyleによれば、これはHYBEの情報を韓国のメディア各社が報道していた内容を転載したものだということですが、では、韓国メディアではどう報じていたか?
HYBE「K-POPから始まった응원봉=ウンウォンボン(応援棒)文化」
Kstyleの記事の構成と酷似しているもので早い時間帯に掲載されているのが韓国経済新聞のこの記事。
DaumやNaverでもほぼ同じ構成の記事が見られ、聯合ニュースでも似通った内容のものがあることからHYBEがメディア向けに周知したものについて各社が報じているのかもしれません。
当該記事では以下書かれています。
하이브, 파리올림픽 응원봉 만들었다…5000개 현지 제공 | 한국경제
하이브는 "K팝에서 시작한 응원봉을 국제 스포츠 무대에까지 확산하며 새로운 응원 패러다임을 제시하는 것은 엔터테인먼트 기업인 하이브로서는 매우 의미있는 시도"라며
ハイブは「Kポップから始まった応援棒を国際スポーツ舞台にまで広げ、新しい応援パラダイムを提示するのはエンターテイメント企業であるハイブとしては非常に意味のある試み」と述べ
元記事では「응원봉=ウンウォンボン」、訳すと「応援棒」と書かれており、Kstyleで書かれていたような「ペンライト」というものではありませんでした。
西城秀樹からのペンライトの起源を主張?サイリウムやケミカルライトとKPOPの応援棒
日本のネットでは「ペンライト文化の発祥は西城秀樹からであり、韓国側の主張は誤った起源主張だ」という論調で溢れていました。
例えば上掲サイトでは「「客席から光るものを振る」という文化は、1974年の夏、西城秀樹さんのコンサートをきっかけとして始まった。」とあり、確かにそれくらい古い時期から「ペンライト」が振られていたというのは言えるでしょう。それはその後、「サイリウム・ケミカルライト」と言われるものへと発展していきました。
が、それはHYBEが言及した「応援棒」と同じものなのでしょうか?
応援棒というのは例えばこういう形をしています。
元の韓国メディアの記事では応援棒の仕組みについて以下のように説明されています。
하이브, 파리올림픽 응원봉 만들었다…5000개 현지 제공 | 한국경제
응원봉 연출은 중앙 제어로 송신되는 신호를 받아 응원봉을 일사분란하게 발광하도록 구현하는 방식이다.
応援棒演出は、中央制御で送信される信号を受け、応援棒を一斉に発光するように実装する方式だ。
【BluetoothにIoT... K-POPアイドルの"応援棒"がすごいので調べてみた。|Monstarlab, Inc.】などで詳しく解説されていますが、これは「夜光棒を利用した公演演出制御システム(야광봉을 이용한 공연연출 제어시스템)」という特許技術を利用したもので、発光のタイムラグが無いようになっているようです。
どうやらアイドルグループによって形もだいぶ異なっているようであり、名称もそれぞれ独自のものが付けられています。例えばBTSは「ARMY BOMB(アミボム)」、TWICEは「CANDY BONG(キャンディーボン)」というもの。
こうした諸要素で構成される「응원봉=応援棒」というのは、日本で一般に想起される「ペンライト・サイリウム・ケミカルライト」といったものとは一線を画していると言えます。
まとめ:韓国のKPOPの応援棒は中央制御で発光管理、アイドル毎に名称がある別物
まとめると
- 「客席から光るものを振る」という文化は昭和期の日本で既にみられた
- 「ペンライトの発祥が西城秀樹」という情報は至るところで見られる
- が、韓国KPOPの応援棒は中央制御で発光管理し、アイドル毎に形状や名称が異なるものであり、別物
したがって、「응원봉=ウンウォンボン(応援棒)文化はKPOPから始まった」という内容は、西城秀樹に関わる事実によっては否定されないということになりそうです。
「日本など他の国で既に응원봉=ウンウォンボン(応援棒)と同様の仕組みや扱いが為されている例がある」かどうかまでは調べていませんが、少なくともそのような情報は管見の限りでは見当たりません。
※追記※
ライトの色を無線通信で自由に制御できる仕組みについてはFreFlow®(フリフラ)などの制御ペンライト・リストバンドの事例が2010年代初頭からあるようです。
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