政治的表現の自由と営業の自由を尊重してあげて
- 金井米穀店「侵略的外来種というと武蔵野市の外国人投票権」
- ヘイトスピーチだとして店前で抗議者がプラカード提示
- ヘイトスピーチの意味とは:公権的な定義はない
- 人種差別撤廃条約の「人種差別」は国民とそうでないものとの合理的差異は対象外
- 侵略的外来種の意味とは:その生き物自体が恐ろしいとか悪いというわけではない
- 武蔵野市の外国人投票権付与条例案(否決されたが)は「侵略的外来種」なのか
金井米穀店「侵略的外来種というと武蔵野市の外国人投票権」
金井米穀店が「侵略的外来種というと武蔵野市の外国人投票権」とツイート。
これは、昨年末に武蔵野市において松下玲子市長が意欲的に外国人投票権付与条例案に取り組んだが、議会で否決されたという前提があります。
これに対して抗議者が店舗前やその周辺に集まりました。
ヘイトスピーチだとして店前で抗議者がプラカード提示
#金井米穀店
— ちゅる子💙💛 (@Bfvx5Ba) 2022年7月30日
金井米穀店さんの店頭に反日左翼が集結しています。
騒然としています。
怖くてオニギリ買えません! pic.twitter.com/qNIwWeR6fs
外国人投票条例について、吉祥寺のお米屋さんが自分と違う意見をツイートしただけで、こんな嫌がらせをし、それを正義だと思っている思考回路がヤバ過ぎる。そもそも外国人投票条例への反対=レイシストではない。#金井米穀店 pic.twitter.com/WvPwlYkZim
— 長田 剣誠 (@kenseinagata) 2022年7月23日
@wadamasamune
— 馬頭batou (@sec_kouan9) 2022年7月30日
自称「反差別団体」C.R.A.C.@cractyo
の #金井米穀店 前での昨日の活動状況動画です。
①https://t.co/zPOvifCCV1
②https://t.co/nN1i9jRvuT
③https://t.co/4deknUwBVm
先生もご存知と思われる神奈川新聞の記者らしき男性が写っている場面もあります。 pic.twitter.com/32zJz5jvbx
金井米穀店の投稿に対して、「これはヘイトスピーチだ」として店前でプラカードを提示する者たちが複数集まりました。
動画を見る限り何か声を張り上げたり客に積極的に絡むような行動は見当たりません。
ヘイトスピーチの意味とは:公権的な定義はない
水道橋博士「ヘイトスピーチの定義は国連でも法務省でも書いてあるのになぜ国会議員が知らない?」⇒なぜなら、国連も法務省も定義していないからである - 事実を整える
「ヘイト」は英語の"hate"ですが、原義は「憎悪」という意味です。
「ヘイトスピーチ」についての法務省の一般的な説明では【特定の国の出身であることや特定の血筋であることのみを理由に地域社会から追い出そうとしたり、危害を加えようとする言動】がヘイトスピーチにあたるとされますが、単なる威嚇的・侮辱的な表現ではありません。
他方、いわゆるヘイトスピーチ規制法と呼ばれている【本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律】では、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」を以下定義しています。
「専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するものに対して差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」
「ヘイトスピーチ」を公権的に定義したものは存在しません。それは国連も同じです。
ヘイトスピーチ・ヘイトクライムはマイノリティに対するものというデマと立法事実
金井米穀店のツイートは、上記のいずれにも当てはまりません。
人種差別撤廃条約の「人種差別」は国民とそうでないものとの合理的差異は対象外
第1条
1 この条約において、「人種差別」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう。
2 この条約は、締約国が市民と市民でない者との間に設ける区別、排除、制限又は優先については、適用しない。
Q4 「国籍」による区別は、この条約の対象となるのですか。
A4 この条約上、「人種差別」とは、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づく」差別と定義されていることより、「国籍」による区別は対象としていないと解されます。この点については、第1条2において、締約国が市民としての法的地位に基づいて行う区別等については、本条約の適用外であるとの趣旨の規定が置かれたことにより、締約国が行う「国籍」の有無という法的地位に基づく異なる取扱いはこの条約の対象とはならないことが明確にされています。
ただし、「国籍」の有無による異なる取扱いが認められるかは、例えば、参政権が公権力の行使又は国家の意思の形成に参画する行為という合理的な根拠を持っているように、このような取扱いに合理的な根拠のある場合に限られ、例えば、賃貸住宅における入居差別のように、むしろ人種、民族的、種族的出身等に基づく差別とみなすべきものは、この条約の対象となると考えられます。
人種差別撤廃条約の「人種差別」は国民とそうでないものとの合理的差異は対象外としています。外務省も、典型例として参政権の付与をしないことについては合理的根拠があるとしています。
したがって、金井米穀店のツイートは人種差別撤廃条約上の人種差別ではありません。
侵略的外来種の意味とは:その生き物自体が恐ろしいとか悪いというわけではない
侵略的な外来種 | 日本の外来種対策 | 外来生物法(魚拓)
侵略的な外来種とは?
外来種の中で、地域の自然環境に大きな影響を与え、生物多様性を脅かすおそれのあるものを、特に侵略的外来種といいます。
「侵略的」というと、何か恐ろしい・悪い生き物なのかしら?と思われがちですが、本来の生息地ではごく普通の生き物として生活していたものですので、その生き物自体が恐ろしいとか悪いというわけではありません。たまたま、導入された場所の条件が、大きな影響を引き起こす要因を持っていたに過ぎません。
「侵略的外来種」の意味について環境省自然環境局のHPでは、「その生き物自体が恐ろしいとか悪いというわけではない」と書かれています。
これを人間に対して当てはめる比喩的用語法の場合は、たとえば外国人の場合、単に移住してきたというだけでは「外来種」のままです。金井米穀店のアカウントにおいて、そのような場合でも問題視しているような投稿があるとは確認できていません。
この場合に「侵略的外来種」という比喩が妥当するのは、『地域社会の形成に大きな影響力を持つこと』、つまりは政治参加の権利が大きく付与されたような場合を意味すると理解できます。
そのような場合に「選挙権」「被選挙権」が該当することは明らかです。
武蔵野市の外国人投票権付与条例案(否決されたが)は「侵略的外来種」なのか
外国人に住民投票権を付与することは違憲か:武蔵野市の住民投票条例と法制局「選挙権に匹敵も」
武蔵野市外国人住民投票条例案否決:朝日新聞「日本は閉鎖的という印象を与える恐れ」近藤敦教授の発言
他方、否決された武蔵野市の松下玲子市長による条例案の場合は「投票権」であり、武蔵野市内の条例に基づいて市内の特定の議論対象について投票の機会が付与されるものです。
これが『地域社会の形成に大きな影響力を持つこと』と評するかは、投票対象の事象が何かという要素も絡んだ程度問題でしょう。
したがって、金井米穀店のツイートは比喩が妥当か否かという評価の別は有り得るものの、それ自体が外国人一般への誹謗中傷だとかヘイトだとか人種差別など言われる理由はなく、政治的見解の一つです。
【多様性】を叫ぶなら、一店舗の政治的表現の自由くらい尊重してはどうだろうか?
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