事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

毎日新聞「岸田総理は国葬の理由について説明」記者会見動画を見ると…:長期政権・非業の死・海外からの評価について

岸田総理

先走ってるのかもしれない

毎日新聞「岸田総理は国葬の理由について説明」

岸田首相、安倍氏の国葬で「弔意を国全体として示すことが適切」毎日新聞 2022/8/6 12:20(最終更新 8/6 16:09)

岸田文雄首相は6日、広島市で記者会見し、9月27日に予定されている安倍晋三元首相の「国葬」について「世界各国がさまざまな形で弔意を示している。我が国としても弔意を国全体として示すことが適切だ」と述べ、改めて必要性を強調した。

 首相は国葬に対して「さまざまな意見があることは承知している」と述べた。その上で、国葬を開く理由について「8年8カ月という憲政史上最長の(首相在任)任期、民主主義の根幹たる選挙運動中の非業の死、これらは間違いなく他に例を見ないものだ」と説明した。

首相は開催に当たり「特に海外からの評価」を考慮したと強調。海外での議会での追悼決議の採択や公共施設などでのライトアップなどの例を挙げ「世界各国がさまざまな形で国を巻き込んで安倍元首相に弔意を示している」と指摘し、「わが国としても国の公式行事として開催し、各国の代表をお招きする形式で葬儀を行うことが適切だ」と述べた。

 国葬の規模や内容については「だんだん明らかになってくるので、さまざまな機会を通じて丁寧に説明をしていきたい」と述べた。国会での説明については「さまざまな機会を捉えてしっかり説明を続けていく」と述べるにとどめた。【中村紬葵】

8月6日の岸田総理の広島市での記者会見について毎日新聞は「岸田総理は国葬を開く理由について説明」と報道しています。

が、記者会見の動画をみると…

8月6日岸田総理の広島での記者会見動画を見ると

記者 安倍晋三元首相の国葬についてお伺いします。各社の世論調査でも国葬について反対がやや上回る結果がでています。総理はかねてより丁寧に説明をし、できるだけ多くの国民の皆さんに納得をしていただくと仰っていますが、どういった場で丁寧に説明しようと考えてらっしゃるのでしょうか。たとえば国会の閉会中審査で総理自らが説明することもあり得るのでしょうか。

岸田総理 まず安倍元総理の国葬儀については、様々な意見があるということ、これは私も承知をしております。そして、安倍元総理の国葬儀については、まず安倍元総理、この8年8カ月という憲政史上の最長の任期、また、民主主義の根幹たる選挙運動中での非業の死、これらは間違いなく他に例を見ないものであると思っております。

あわせて国の内外における様々な業績も指摘をされているわけでありますが、特に海外からの評価。これは国によっては議会において追悼決議を全会一致で採択するとか或いは政府として服喪を決定するとか、また国によってはその国の公共施設、ランドマークを白と赤でライトアップするなど、世界各国が様々な形で国を巻き込んで安倍元総理に対する敬意と弔意を示している、こうした状況にあります。こうした状況を踏まえて、我が国としても、個人に対する敬意と弔意を国全体としてあらわす儀式を催す。国の公式行事として開催をし、その場に各国の代表をお招きする。こうした形式で葬儀を行うということは、適切であると政府としては考えているところです。

こうしたことについて私も記者会見や官房長官の記者会見等で説明をしてきましたが、今後、国葬儀につきまして具体的な規模ですとか内容について、今検討を進めている、段々内容があきらかになってきておりますので、こうしたことも様々な機会を通じて丁寧に説明をしていきたいと思っています。そして、国会で説明するということについては、具体的な国会審議の進め方は国会でご判断いただかなければならないと思いますが、政府としては様々な機会を捉えてしっかりと説明を続けていきたいと思っています。以上です。

記者の質問は「どういった場で丁寧に説明しようと考えてらっしゃるのでしょうか」

国葬実施の理由について直接問うたわけではなく、説明の場をどこにするか、ということをメインで聞いています。

岸田総理の返答は『安倍元総理の国葬儀について』とした後で「歴代最長政権」「非業の死」「国の内外における様々な業績」「海外からの評価」について触れています。これは7月14日に国葬儀を実施することを決定したことを表明した記者会見上でも同様の発言をしていました。

ただ、文脈上、「歴代最長政権」「非業の死」と「国の内外における様々な業績」が国葬実施の実質的根拠=法的根拠として語られているかどうかは判然としません。

「国葬に法的根拠が無い」は本当か?|Nathan(ねーさん)|note

私は他でも述べていますが、「歴代最長政権・選挙中の凶弾に倒れた」は、国葬実施の実質的根拠にはなり得ません。

岸田総理の発言は背景説明・状況説明も混ざったものと理解すべきだろうと思いますが、今後、オフィシャルな法的説明をする場面があるならば、きちんとこの辺りを明確化してほしいと思います。

なお、他のメディアでは理由を説明したものとは書いていないところ(FNN)や、「歴代最長政権」「非業の死」は国葬実施の理由としては書かれていないところ(東京新聞)が見つかります。

安倍元首相の国葬 岸田首相「適切だ。様々な機会で丁寧に説明したい」 FNN

安倍元首相の国葬は適切 首相「国全体で弔意表す」:東京新聞 TOKYO Web

※8月7日17時40分追記:前例との比較の趣旨と現時点での功績評価を行うべき事情

「歴代最長政権」は、過去の前例との比較で不相当ではないことの意味としての趣旨ならば理解できる。つまり功績の判断のためにはあまりに短い政権だとその疑義が生じるが、そうではない、という意味。

また、「選挙中の凶弾に倒れた」についても、事件の性質に鑑みて現時点での功績評価を行う必要がある、というような事情として挙げたのかもしれない。

国葬となった吉田茂元総理(7年2か月)よりも長い政権期間(7年8か月)であったにもかかわらず国民葬となった佐藤栄作元総理大臣の場合、現役政治家に対するものであったことが影響したと考えられており(死去の時点で政治的評価が定まっていないということ)、安倍晋三元総理の場合も現役政治家であることから同様の懸念が生じ得るところ、事件の性質に鑑みて現時点での功績評価を行う必要がある、というような事情として挙げたのかもしれない。
※追記終わり※

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