クルド人男性が「警察官に首を絞められた、差別的だ」として動画がネット上にUPされ、国会議員も交えてデモまで行った事案に関して、警察側の認識が明らかになりました。
追記:クルド人文化協会がデモは不支持である旨の声明を出しました。
- 有田芳生議員「警察に事実確認しました。」
- クルド人男性は合図不履行・免許不携帯の道交法違反後に逃走を図っていた
- 「職務質問」とも書いていないメディア
- 毎日新聞・神奈川新聞は知ってて隠していた
- 見逃しは「逆差別」か、警察にやましいことがあったのか
有田芳生議員「警察に事実確認しました。」
●警視庁渋谷署警察官によるクルド人職務質問(5月22日)問題。
— 有田芳生 (@aritayoshifu) 2020年6月2日
警察庁に映像前後の事実確認を行いました。
① パトカーを急速度で追い越し、ウインカーを出さず車線変更する車がいた。
② 道交法違反の疑い(合図不履行)があるので追いかけて停車させ、運転免許証の提示を求めたが急発進。
③ さらに追いかけて停車させ免許証の提示を求めたが出さず。
— 有田芳生 (@aritayoshifu) 2020年6月2日
④当該人物(車内には他に2人)は車を降りて逃げようとした。
⑤ 交通量が多く、渋滞まで起き、危険な状況だったので身柄を捕捉。
⑥ 免許証を持っていなかったので指導警告して解放した。
⑦ クルド人だったことは報道で知った。
有田芳生議員が「警察に事実確認しました」としてこのようにツイートしています。
警察の言い分としては、ということなのだろうし、本当にそうなのかは我々は知る術はありません。しかし、国会議員が「事実確認」として提示したことは重いです。
以降はこの事実を前提に書いていきます。
個別事件の情報を出したのは警察側が「当事者」の社会的事案であるため、問題ないでしょう。そして、もう一つ重大なことが。
メディアは警察側の認識を知ってて隠してたことになりますよね。
クルド人男性は合図不履行・免許不携帯の道交法違反後に逃走を図っていた
有田議員が確認した警察側の主張によれば、クルド人男性は合図不履行・免許不携帯の道交法違反後に逃走を図っていたことになります。
道路交通法
第五十三条 車両(自転車以外の軽車両を除く。次項及び第四項において同じ。)の運転者は、左折し、右折し、転回し、徐行し、停止し、後退し、又は同一方向に進行しながら進路を変えるときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。
※注:罰則は第120条1項8号第九十五条 免許を受けた者は、自動車等を運転するときは、当該自動車等に係る免許証を携帯していなければならない。
2 免許を受けた者は、自動車等を運転している場合において、警察官から第六十七条第一項又は第二項の規定による免許証の提示を求められたときは、これを提示しなければならない。
(罰則 第一項については第百二十一条第一項第十号、同条第二項 第二項については第百二十条第一項第九号)
国際運転免許証若しくは外国運転免許証も同様です。
道交法違反の運転に対しては、多くは行政罰(違反点数加算と反則金)のみであり、基本的に刑事罰を科すような運用にはなっていません。
(反則者に係る刑事事件)
第百三十条 反則者は、当該反則行為についてその者が第百二十七条第一項又は第二項後段の規定により当該反則行為が属する種別に係る反則金の納付の通告を受け、かつ、第百二十八条第一項に規定する期間が経過した後でなければ、当該反則行為に係る事件について、公訴を提起されず、又は家庭裁判所の審判に付されない。ただし、次の各号に掲げる場合においては、この限りでない。省略
しかし、道交法上は、刑事罰の対象としても規定されています。
また、免許不携帯ということは「無免許運転」の嫌疑も出てくるわけです。それについても刑事罰が定められています。
今回の渋谷署の警察官は、(彼らの認識としては)任意捜査として問いかけを始め、その後に被疑者らが逃走を図ったなどの事情があったということです。
それにより、有形力行使の違法性についても判断が相当変わり得るということになります。
「職務質問」とも書いていないメディア
ネット上では「職務質問の問題」と言われていますが、実は毎日新聞と神奈川新聞の記事は「職務質問」であるか否かは書いていません。
弁護士アカウントなども、抽象的な職務質問の話として論じてはいるが、この事案についての具体的検討は避けていました。
それは、動画の前後の状況によっては、具体的な嫌疑が発生していない状況から行う職務質問とは異なり、具体的嫌疑が発生した段階で行われるものと区別されている犯罪捜査の側面があった可能性を否定できないと考えていたからでしょう。私もそう予想していました。(公務執行妨害の事実は無さそうです)
実は、この件を報じている毎日新聞や神奈川新聞は、男性を掴んだ行為について職務質問かどうかを書いていない
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2020年6月1日
①職務質問
②男性が抵抗
③公務執行妨害の嫌疑発生のため男性を制止
こういう時系列ならば、どうか。
そしてこの話は動画の前の時点でどのような事があったのかが分からないと、警察官の行為の正当性・不当性の判断はできない。
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2020年6月1日
だから色んな弁護士もこの事案に対して言及している者はほとんどおらず、「職務質問」の話として抽象論を指摘するにとどめている。
毎日新聞・神奈川新聞は知ってて隠していた
「警官に押さえ込まれけが」 渋谷署前で200人が抗議デモ クルド人訴えに共鳴 - 毎日新聞
「首つかまれ、息できず」 クルド人に不当暴力、抗議デモ カナロコ
これらの記事では「男性によると」という記述しかありません。
「警察側」の認識がまったく出てきていません。
取材していない、ということはあり得ません。私の経験上、メディアは取材はしたが記事化する際に情報を落としてるということが当然のように行われていますから、今回もそういうことでしょう。
そして、他に報道してる媒体はほとんどありません。日ごろから反権力である朝日新聞ですらこの件を報道していません。
マスコミが報じない、渋谷署前 警官がクルド人に不当な暴行及び逮捕をした疑惑に関するデモhttps://t.co/jv8aPwxoG3
— bakusan ANAインターコンチネンタルホテルを応援します (@bakusandesu) 2020年5月30日
および、その現場https://t.co/jj6edbB6aD
この事案を問題視する者も「マスコミが報じない」と言っていますが、要するにストーリーに無理があると考えているのでしょう。
見逃しは「逆差別」か、警察にやましいことがあったのか
免許不携帯を見逃してもらった「逆差別」に似た事ならワイも経験ある。
— 梓弓 (@Ma_R8) 2020年6月2日
アメリカで日本人同僚が運転しててた車に同乗しててスピード違反で捕まった時に国際免許証出したら、警官が処理の仕方が分からないので面倒くさかったのか、注意だけで許してくれた。 https://t.co/oQMf19nWGm
さて、免許不携帯であったなら(無免許ではなかったらしい)、通常であれば反則金の支払いが命じられるはずです。しかし、今回は「指導警告」とあることからはそのような事情が読み取れません。見逃しをした、という事になるかと思われます。
これは「逆差別」でしょうか?
もしくは、処理が面倒だったというだけなのでしょうか?
それとも、警察側の行為にも多少の行き過ぎがあった感が否めないため、相殺的にお咎めなしにした、ということなのでしょうか?
いずれにしても、警察側の主張が出てこないままデモを無条件に称賛していた人たちは、はしごを外された形となりましたが。
以上