嘘はいけない
- 仁藤夢乃「刑務所で働いてColaboに寄付する死刑囚の方も」
- 死刑囚=死刑確定者は拘置所という刑事施設に拘置される
- 死刑囚にも自己契約作業(旧監獄法の請願作業)はある
- ファクトチェックまとめ:「刑務所で働く死刑囚」ではないが、自己契約作業の報酬等は領置金品として寄付できる
仁藤夢乃「刑務所で働いてColaboに寄付する死刑囚の方も」
死刑制度に反対です。国がなぜ人を殺すのか。なぜ国家が人を殺す判断をするのか。人権を尊重しない社会の根底に死刑制度があると思う。
— 仁藤夢乃 Yumeno Nito (@colabo_yumeno) 2022年7月26日
刑務所の中で働いて少しずつ貯めたお金をColaboに寄付し続けている死刑囚の方もいます。それは自身も虐待され、福祉や学校、地域や社会で誰にも手を差し伸べられず
一般社団法人Colabo代表や性売買経験当事者ネットワーク灯火のコーディネーターである仁藤夢乃 氏が「刑務所の中で働いて少しずつ貯めたお金をColaboに寄付し続けている死刑囚の方もいます」とツイートしているものについて「嘘だ」とする発信が相次いでいましたので調べてみました。
死刑囚=死刑確定者は拘置所という刑事施設に拘置される
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
(刑事施設)
第三条 刑事施設は、次に掲げる者を収容し、これらの者に対し必要な処遇を行う施設とする。
一 懲役、禁錮又は拘留の刑の執行のため拘置される者
二 刑事訴訟法の規定により、逮捕された者であって、留置されるもの
三 刑事訴訟法の規定により勾留される者
四 死刑の言渡しを受けて拘置される者
五 前各号に掲げる者のほか、法令の規定により刑事施設に収容すべきこととされる者及び収容することができることとされる者
死刑の言い渡しを受けた者は、死刑執行まで刑事施設に拘置されます(刑法11条2項)
死刑囚=死刑確定者は、刑務所ではなく拘置所という刑事施設に収容されます。
法務省設置法
(設置)
第八条 本省に、次の施設等機関を置く。
刑務所、少年刑務所及び拘置所
少年院
少年鑑別所
婦人補導院
2 前項の刑務所、少年刑務所及び拘置所は、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成十七年法律第五十号)の規定による刑事施設として置かれるものとする。
「刑務所」や「拘置所」というワードは法務省設置法から。
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
(被収容者の分離)
第四条 被収容者は、次に掲げる別に従い、それぞれ互いに分離するものとする。
一 性別
二 受刑者(未決拘禁者としての地位を有するものを除く。)、未決拘禁者(受刑者又は死刑確定者としての地位を有するものを除く。)、未決拘禁者としての地位を有する受刑者、死刑確定者及び各種被収容者の別
三 懲役受刑者、禁錮受刑者及び拘留受刑者の別
第二条では「被収容者」が刑事施設に収容されている者の総称であり、「受刑者」が「懲役受刑者、禁錮受刑者又は拘留受刑者」とされ、「死刑確定者」とは異なる定義が為されていますから、懲役・禁固刑の受刑者と死刑確定者は別の施設に収容されるということが分かります。
死刑確定者が収容されるのは拘置所である、ということは条文上からは分かりませんが、実態としてはそうなっています。「刑務所、少年刑務所及び拘置所組織規則」と、過去の死刑囚の収容施設を調べればわかるでしょう。
刑務所で働くという行為が懲役刑の執行なので、死刑囚はこの意味で働くことはありません。
が、例外があります。
死刑囚にも自己契約作業(旧監獄法の請願作業)はある
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
第三十九条 刑事施設の長は、被収容者に対し、刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがない限り、余暇時間帯等(受刑者にあっては余暇に充てられるべき時間帯をいい、その他の被収容者にあっては食事、就寝その他の起居動作をすべき時間帯以外の時間帯をいう。次項において同じ。)において自己契約作業(その者が刑事施設の外部の者との請負契約により行う物品の製作その他の作業をいう。以下同じ。)を行うことを許すものとする。
被収容者全般に対して自己契約作業(旧監獄法の「請願作業」)が認められており、閉居罰を科されている被収容者による自己契約作業が明示的に禁止されているだけなので、死刑囚にも法的に認められていることに。
実際にも「"自己契約作業" "死刑囚"」などで検索すれば実例がいろいろ出てきます。
自己契約作業の結果、被収容者が得る報酬は、契約企業等から被収容者に差入れさせて領置金に組み入れることとなっています。
法務省矯成第3326号 平成18年5月23日 改正 平成19年5月30日付け法務省矯総第3362号
法務省矯成訓第3325号受刑者の余暇活動の援助等に関する訓令
そして、領置金品の外部への交付は一定の場合を除き制限されていません。
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
(保管私物又は領置金品の交付)
第五十条 刑事施設の長は、被収容者が、保管私物又は領置されている金品(第百三十三条(第百三十六条、第百三十八条、第百四十一条、第百四十二条及び第百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する文書図画に該当するものを除く。)について、他の者(当該刑事施設に収容されている者を除く。)への交付(信書の発信に該当するものを除く。)を申請した場合には、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これを許すものとする。
一 交付(その相手方が親族であるものを除く。次号において同じ。)により、刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあるとき。
二 被収容者が受刑者である場合において、交付により、その矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるとき。
三 被収容者が未決拘禁者である場合において、刑事訴訟法の定めるところにより交付が許されない物品であるとき。
ファクトチェックまとめ:「刑務所で働く死刑囚」ではないが、自己契約作業の報酬等は領置金品として寄付できる
仁藤夢乃 氏が「刑務所の中で働いて少しずつ貯めたお金をColaboに寄付し続けている死刑囚の方もいます」という発言のうち、「刑務所の中で」というのは「拘置所」の間違いですが、「働いて貯めたお金を寄付」というのは、死刑囚は自己契約作業の報酬等を領置金品として寄付できるので正しいということになります。
嘘だと言うのはやめましょう。
以上:はてなブックマーク,ブログ,note等でのご紹介をお願いします