「プライバシー侵害」は流石に不当訴訟だと思う。
- 共同親権記事巡りSAKISIRUにヴィンセント氏の妻が提訴
- 代理人弁護士にセブンナイツColabo弁護団の神原元・太田啓子ら
- 名誉毀損やプライバシー侵害と言われている西牟田靖の記事
- ヴィンセント氏の妻はMme. Fichot=フィショ麻依子
- 東京家庭裁判所令和4年7月7日判決で国際指名手配の事実認定?
- 同じ被疑事実での国際指名手配は追加的な社会的評価の低下になる?
- 「離婚協議」『子どもを「連れ去った」』がプライバシーの侵害?
- スラップ訴訟・リーガルハラスメントと指摘されるのもやむを得ない
共同親権記事巡りSAKISIRUにヴィンセント氏の妻が提訴
【闘争宣言】SAKISIRUを提訴。Colaboとも一部重複する弁護団はコイツらだ – SAKISIRU(サキシル)
共同親権に関連した記事を巡り、ニュースサイト「SAKISIRU」を運営する弊社(株式会社ソーシャルラボ)が、神奈川県内在住の女性から、記事で名誉を毀損されたなどとして、490万円の損害賠償請求を求める訴訟を東京地裁に起こされました。提訴は4月7日付です。
この記事の中で、次のくだりが問題視されました。
この判決で注目したかったのは、フランス政府が、ヴィンセントさんの妻に出した、逮捕状の影響であった。というのもハンスト終了後、母国フランスの裁判所はヴィンセントさんの妻を国際指名手配していたのだ。
これについて原告側は「逮捕状を出した事実は認定されているものの、国際指名手配されたとの事実はない」「西牟田は一度も原告に取材することなく本件記事を公開させた」という旨の主張をしました。さらには親権制度の問題点を読者に伝える意図があったとしても、離婚協議や子どもを「連れ去った」ことなどはプライバシーの侵害にあたると訴えています。
ニュースサイトのSAKISIRU(サキシル)に対してヴィンセント・フィショ氏の妻が共同親権に関する記事を巡って提訴し、名誉毀損やプライバシー侵害などを訴えていることを媒体自身が報じています。
代理人弁護士にセブンナイツColabo弁護団の神原元・太田啓子ら
なにやら代理人弁護士にはあの「セブンナイツ」ことColabo弁護団の一員である神原元・太田啓子らが居り、SAKISIRUとしてはこれはスラップ訴訟であり、リーガルハラスメントであると主張しています。
【闘争宣言】SAKISIRUを提訴。Colaboとも一部重複する弁護団はコイツらだ – SAKISIRU(サキシル)
今回の提訴の本当の目的が別にあるのではとゲスなりに勘ぐりをしております。失当以前に失笑しており、当社としては裏目的の一つが「スラップ訴訟」であると受け止め、極めて不愉快です。もし仮にそこら辺のブロガーと同じく圧力をかければおとなしくなるであろうと思っているのであれば、ネットメディアが少なかった時代の一昔前の感覚です。「みくびるな」の一言に尽きます。
~省略~
リーガルハラスメントと通称もされる、この人たちの近頃の活動については報道・言論の自由を脅かす「社会的害悪」ですらあると考えています。報道・言論を生業とする当社のプライドにかけて“闇討ち”にはこちらも“真剣”を抜いて最高裁まで徹底的に戦います。
私も法律構成などが疑問なので簡単に本件について触れていきます。
ただし、いずれが親権者に相応しいか・離婚後の共同親権があるべきか、との点については踏み込みません。
名誉毀損やプライバシー侵害と言われている西牟田靖の記事
西牟田靖とサキシルが訴えられました。これは言論弾圧です。
— 西牟田靖 (@nishimuta62) 2023年4月27日
神原元・太田啓子・斉藤秀樹弁護士というColabo弁護団、岡村晴美弁護士の四人。原告はフィショ麻依子氏。彼女は五輪の際、ハンストしたヴィンセント氏の妻。
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ハンストから1年、東京家裁で男性敗訴。判決は、フランスの逮捕状にも“開き直り” – SAKISIRU(サキシル)
この判決で注目したかったのは、フランス政府が、ヴィンセントさんの妻に出した、逮捕状の影響であった。というのもハンスト終了後、母国フランスの裁判所はヴィンセントさんの妻を国際指名手配していたのだ。
その理由は、「妻が子どもたちを連れ去って男性に会わせないのは略取容疑などに当たる」というものだ。西欧諸国の人と日本人による国際結婚が破綻し、日本人の親が子供を連れて帰国したことで問題になることが多い。しかしヴィンセントさんの妻のように、逮捕状が出て国際指名手配されることは稀だ。
このように国際指名手配されてもなお、夫に子供たちを会わせない妻と、DVの事実はなく「年間半分は妻に子を会わせる」という融和的な提案をしているヴィンセントさん。まったく会わせない妻より、ヴィンセントさんのほうが、親権者として相応しいのではないか。
原告から名誉毀損やプライバシー侵害と指摘されている西牟田靖氏の記事はこれです。
原告はフィショ麻依子氏と明らかにしています。
ヴィンセント氏の妻はMme. Fichot=フィショ麻依子
日本外国特派員協会での記者会見では"Mme. Fichot"と名乗っていたヴィンセント・フィショ氏の妻。以下の記事では"Maiko"という記述があります。
彼の妻がフィショ麻依子だというのは秘密でも何でもないでしょう。
東京家庭裁判所令和4年7月7日判決で国際指名手配の事実認定?
旬刊 判例時報 2023年 2/21号 [雑誌]/判例時報社に東京家判 令4・7・7の判決文と評釈が掲載されています。
フランス人の夫と日本で同居していた日本人の妻が、子らを連れて別居し、その後、フランスの裁判所が「監督責任を持つ者からの子供の略奪」などの罪状で妻を被疑者とする逮捕状を発布したという事実関係の下で、子らの親権者を妻と指定した事例
※「発布」は原文ママ。
これを読むと、被告のヴィンセント氏から、原告たる妻に関して「フランスの裁判所から逮捕状が出て国際指名手配されている」という主張が為されていますが、裁判所の判断部分では「国際指名手配されているか否か」の事実認定を回避しており、判決文からは真偽不明となっています。
裁判所は「逮捕状が発布されているとの一事をもって、直ちに被告が子らの親権者として不適格であるということはできない。」旨の判断を示しました。
なお、この判決の解説文には国際指名手配の事実を前提として裁判所が判示したかのような書きぶりがあったために誤解が広まっていますが、裁判所の判示としては上掲の通りです。
本稿ではこの「フランスにおける逮捕状の発布」の意味については踏み込まず、日本国の刑事法にいうところの逮捕状の発付の場合とそれとは別の国際指名手配の関係について私見を述べます。
同じ被疑事実での国際指名手配は追加的な社会的評価の低下になる?
フィショ麻衣子氏側は「逮捕状を出した事実は認定されているものの、国際指名手配されたとの事実はない」とサキシルに対して主張していました。
ヴィンセント氏の「国際指名手配」の主張は、逮捕状が出されたものと同じ被疑事実、つまりは「監督責任を持つ者からの子供の略奪」をベースにして為されたものです。
先述の通り、この被疑事実は日本の裁判所も認めているものです。
「麻衣子氏が行った行為」の側面からは、共通する事実を扱っていることになります。
日本の刑事法制度的な考え方をすれば、「逮捕状が発付された」と「国際指名手配された」の間には、政府機関等による対象者の扱いが追加された、という意味しかない。
したがって、麻衣子氏の社会的評価の低下をもたらす摘示事実は「監督責任を持つ者からの子供の略奪という被疑事実がある」以上のものはなく、「国際指名手配された」と記述されることによる追加的な社会的評価の低下は発生しないのではないか?
ヴィンセント氏と麻衣子氏は判例評釈も付くような事件の原被告であるから、この件に関して触れることは公共性があり、西牟田氏の論じ方も共同親権の是非という公益性のあるものと言えます。
したがって、そのような事件の被疑事実で逮捕状が出ているという事実が真実である以上、名誉毀損の違法性が阻却されるハズです。
「離婚協議」『子どもを「連れ去った」』がプライバシーの侵害?
SAKISIRUによればフィショ麻衣子氏は「離婚協議」『子どもを「連れ去った」』がプライバシーの侵害と主張しているようですが、言いがかりにもほどがあるでしょう。
麻衣子氏がヴィンセント氏との離婚をしようとしていたことや、子をヴィンセント氏の目の届かない所に連れていったことは、先述の通り公開裁判の判決文でも掲載されていますし、日本外国特派員協会においても離婚後の共同親権について主張されていることからは、公知の事実です。
「連れ去った」という表現がヴィンセント氏側の目線であるのが気に入らないというのではなく、「プライバシーの侵害」というのは、法律構成的に無理があります。
不当訴訟であるとされても仕方がないのではないかと思います。
スラップ訴訟・リーガルハラスメントと指摘されるのもやむを得ない
したがって、法律構成的に無理がある主張が含まれており、名誉毀損の主張も合理的とは思われないため、被告であるSAKISIRUが今回の提訴をスラップ訴訟・リーガルハラスメントと評するのはやむを得ないものだろうと言えます。
本件の前提となる認識については、詳細を別稿で書くかもしれません。
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