「炊き出しの精神」でやられては困ります。
- スマートニュースCEO鈴木「炊き出しの精神」
- 職域接種による地域住民の接種は可能
- 他の職域接種における住民への接種の例
- 細かいことはどうでもいい、乗り越えればいい
- 「炊き出しの精神」という表現がアウトオブアウトだった
スマートニュースCEO鈴木「炊き出しの精神」
スマートニュースは「炊き出しの精神」で、地域の方へのワクチン接種を明日より開始します。職域接種で、一般の方を対象とするのは全国で最初だと思います(たぶん)。接種券さえお持ちであれば、渋谷区の居住者だけでなく、仕事や学校で渋谷区に通う方でも接種が可能です。https://t.co/ZXb8ExBIkH
— 鈴木 健 (@kensuzuki) 2021年7月1日
スマートニュースCEOの鈴木健 氏が自社の職域接種における地域住民の接種について「炊き出しの精神」と発言。物凄い勢いで叩かれています。
これについては職域接種制度を踏まえて考える必要があります。
職域接種による地域住民の接種は可能
新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する職域接種向け手引き(第2版)令和3年7月1日(魚拓)
職域単位でのワクチン接種(以下「職域接種」という。)については、市町村で実施している住民への接種と同様に、予防接種法附則第7条の特例規定に基づき、厚生労働大臣の指示のもと、都道府県の協力により、市町村において実施するものである。そのため、職域接種とは、集合契約により市町村と委託契約を結んだ医療機関が企業等の単位で、職域単位でワクチン接種を実施するという実施形態を指す。
職域接種に関する Q&A(令和3年6月 23 日版)(魚拓)
Q1-4. 近隣住民も接種対象に含めてもいいですか?(6月 17 日更新)
A. ①企業・大学等が個人情報を管理する必要があること②企業・大学等が接種対象者の2回目接種まで実施できる体制を整備する必要があること、などを踏まえて、接種対象者について慎重に検討して下さい。
「職域接種に地域住民を加えてもいいのか?」
という問いに対しては、「禁止はされていない」とは確実に言えます。
ただ、この文言だと「あまりに拡大すると弊害がある」と考えていることが伺えます。
実際、職域接種の趣旨は、自治体の接種を阻害しない範囲で、つまりは補充的な役割で、自治体のリソースを消耗しないで接種を加速することでした。
政府からのファイザーワクチン供給が大幅に減少し、各市町村では新規予約受付の停止・制限を行うなど混乱が出ています。
— 熊谷俊人(千葉県知事) (@kumagai_chiba) 2021年7月2日
65歳未満の自治体接種が滞り、一部の関係者のみが接種できる職域接種が進むという不公平な状況が生まれかねず、昨日、1都3県で国に緊急要望を行いました。https://t.co/Kd1JmCyGFm pic.twitter.com/nNwUG7gaXX
明示的に厚労省がそう説明していたかは定かではありませんが、この理解は共通認識です。自治体接種への影響を無くすために職域接種の受付を制限しているのですから。
【職域接種、大学拠点接種に申請された企業、大学等の皆様へ】
— 首相官邸(新型コロナワクチン情報) (@kantei_vaccine) 2021年7月2日
職域接種及び大学拠点接種の見通しについての考え方を資料のとおりまとめましたのでご覧ください。 pic.twitter.com/ylGeZyNZpZ
他の職域接種における住民への接種の例
虎ノ門ヒルズ・六本木ヒルズ・アークヒルズを会場として10万人規模の職域接種を行うとのこと。
— 画像診断医k🐾屋代香絵 (@AdultSpotDiffer) 2021年6月11日
テナント従業員も含める上に、居住者も含め、ありとあらゆる人が対象。本気度が凄い。https://t.co/dnNjuzxziV
他の職域接種における住民への接種の例としては、森ビルやソフトバンクがあります。
人数の比率などはあるものの、やっていることはスマートニュースとほぼ同じです。
想像に過ぎませんが、政府としては森ビルのような例が「職域接種による近隣住民の接種」の典型例だと思っていたんじゃないでしょうか?
ただ、スマートニュースの場合、方針決定後に渋谷区が以下のように異例の協定を結んだという特殊事情があります。
【ワクチン】7/2(金)、スマートニュース株式会社が新型コロナワクチン接種の職域接種を開始するに際し、渋谷区民や区内の就業者などに対してもワクチン接種を実施することとなり、これに関する協力体制についての協定を締結しました。(広報課) https://t.co/h7TvUHBy4d
— 渋谷区 (@city_shibuya) 2021年7月1日
「職域接種とは、集合契約により市町村と委託契約を結んだ医療機関が企業等の単位で、職域単位でワクチン接種を実施するという実施形態を指す」
ですから、いちいちこんなのを明示するというのは珍しい。
細かいことはどうでもいい、乗り越えればいい
想定外に職域接種で多くのワクチン申請があったため、大学等での接種の予定に支障が出た(予約キャンセルの伺いをするところもでた)という実態がありますが…
これは最終的には政府側の要件設定或いは事前の推測、アナウンスが不十分だった、ということになると言えると思います。
しかし、この規模のロジなんてどの企業がやったとしても途中でこういう「失敗」はあったのではないでしょうか。
政府は全体最適を考えるが、細かいことが積み重なってどうなるかは予測がつかない。
自治体や企業は個別最適だけを考えているわけではないが、どうしても全体が見えないから、政府が上限設定をしていない以上、可能な事はやろうとする傾向になる。
なので、この件は、調整した上で乗り越えていけばいい。
この程度の話なんじゃないかと思います。
「炊き出しの精神」という表現がアウトオブアウトだった
これね…。
— エルコン@愛麗速子 (@hidelcondorpasa) 2021年7月3日
職域接種の希望者が増えすぎて新規の申込みが一時停止しているところに「炊き出し精神」って言葉を選んでしまったことに尽きるよね。
SmartNews社員数以上に多大にワクチン確保しといて、言わば食物の流通をストップさせているのに困っている人に「炊き出し」ってそりゃ石投げられますわ。 https://t.co/vmsjao0gbQ
結局、スマートニュースCEO鈴木健 氏の「炊き出しの精神」という表現がアウトオブアウトだったという話だと思います。
「炊き出し」は材料から何から自腹で用意して、それが得られない者に与えるものですが、職域接種のワクチンは(そこが申請しなければ他の国民に行きわたるものである)国から供給されるものですから、『何を勘違いしてるんだ?』と。
それでいて渋谷区と協定がどうの…という、他の職域接種では決して聞かないような広報(タイミングも)がなされては「売名行為」と思われるのも無理はないと思います。
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