事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

中国の千人計画は単なる「人材呼び戻しプログラム」ではない:日本学術会議の議論にて

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中国共産党の「千人計画」にまつわる「説明方法」について。

千人計画を「人材呼び戻しプログラム」とする説明

誰とは言いませんが、中国の「千人計画」を「人材呼び戻しプログラム」とする説明を見ると得も言われぬ違和感を覚えます。

これを言っている人の中には他の発信において有益なことを主張している人も居るのですが、どうも、引っかかります。

なぜなら、そんなことは当の中国共産党も既に言っていないからです。

中国の千人計画は国籍を問わない

「千人計画」 | SciencePortal China

「海外ハイレベル人材招致」として、対象は「国籍問わず、原則上55歳以下、海外で博士号を取得している者。」と記述があります。

中国語のソースを知りたいなら例えば以下。

江西省安福県人民政府千人計画実施法(※文字化けするため表記は日本語に寄せた)

ここには以下の記述があります。

第III章はじめにプロジェクトと条件
第8条人材紹介に関しては、長期イノベーションリーダー、短期イノベーションリーダー、起業家リーダー、外国人専門家、高レベルのイノベーション・起業家精神チームを含む5つのプロジェクトが設立されます。

中国の千人計画は国籍を問わないということが分かります。

確かに、2008年当初には「人材呼び戻しプログラム」とする説明がありました。

しかし、現在では既にそういう説明ではないということです。

ここまではチャイナ側も認めている事実です。

問題はここから先です。

アメリカ政府の千人タレント計画"Thousand Talents Plan"の認識

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Threats to the U.S. Research Enterprise : China’s Talent Recruitment Plans

In recent years, federal agencies have discovered talent recruitment plan members who downloaded sensitive electronic research files before leaving to return to China, submitted false information when applying for grant funds, and willfully failed to disclose receiving money from the Chinese government on U.S. grant applications.

ここでは、アメリカ連邦政府機関が、中国に帰国する前に機密性の高い研究の電子ファイルをダウンロードしたことや、助成金を申請する際に虚偽の情報を提出したり、米国の助成金申請に際して中国政府から金銭の受け取りをしていたことを故意に開示しなかった人材採用計画のメンバーを発見したことを報告しています。

スパイ工作、機密情報・テクノロジーの窃取

Dr. James Patrick Lewis, of Fairview, West Virginia, has admitted to a fraud charge involving West Virginia University, the Department of Justice announced.

Lewis, age 54, pleaded guilty to a one-count information charging him with “Federal Program Fraud.” From 2006 to August 2019, Lewis was a tenured professor at West Virginia University in the physics department, specializing in molecular reactions used in coal conversion technologies. In July 2017, Lewis entered into a contract of employment with the People’s Republic of China through its “Global Experts 1000 Talents Plan.” China’s Thousand Talents Plan is one of the most prominent Chinese Talent recruit plans that are designed to attract, recruit, and cultivate high-level scientific talent in furtherance of China’s scientific development, economic prosperity and national security. These talent programs seek to lure overseas talent and foreign experts to bring their knowledge and experience to China and reward individuals for stealing proprietary information.

ウェストバージニア州フェアビューのジェームズ・パトリック・ルイス博士は、ウェストバージニア大学が関与した詐欺罪を認めたと司法省が発表した。

ルイス(54歳)は、「連邦プログラム詐欺」に関する訴因の1つに対して有罪を認めました。2006年から2019年8月まで、ルイスはウェストバージニア大学の物理学部の終身教授であり、石炭変換技術で使用される分子反応を専門としています。2017年7月、ルイスは「Global Experts 1000 Talents Plan」を通じて、中華人民共和国と雇用契約を締結しました。中国の千人計画は、中国の科学的発展、経済的繁栄、国家安全保障を促進するために高レベルの科学的才能を勧誘し、採用し、育成することを目的とした最も著名な人材採用計画の1つです。これらの人材プログラムは海外人材・外国人専門家を惹きつけ、彼らの知識や経験を中国に引き渡し、専有情報を盗んだことに対して個人に報酬を与えるものです。

どう表現するべきかはそれぞれだと思いますが、アメリカ政府は千人計画を、知的財産、テクノロジー機密情報等を窃取するスパイ活動であると認識している、と言ってよいでしょう。

こうした情報はアメリカの他の政府機関(FBIなど)も指摘しているし、報道もされています。

FBI長官演説「中国は悪意に満ちたわいろ、恐喝、裏取引を使った外交をする」

日本学術会議の議論に99%の真実に1%の誤魔化しが入る

日本学術会議に関連して千人計画が取りざたされるようになりましたが、たとえば日本学術会議と日本学士院との関係について正確な情報を発信している者が、千人計画については「人材呼び戻しプログラム」などと実態からかけ離れた説明をしていることに、私は強い違和感を覚えます。

そうした態度の人、他にいないでしょうか?

注意すべきだと思います。

以上