『「バイデンが不正投票組織を用意した」はミスリード!』
こういう「ファクトチェック」がされましたが、同じ動画内でバイデンが「共和党は有権者、特に有色人種の投票を困難にする出来る限りのことをしている」と発言したことはなぜファクトチェックされないのでしょう?
「バイデンが最大規模の不正投票組織を用意したと発言した」の日本メディアの報道について|Nathan(ねーさん)|note
- バイデン「共和党は有色人種の投票を困難に」「不正投票組織を用意」
- 海外メディアが「ファクトチェック」も共和党関連部分は無視
- 日本メディア「バイデンが不正投票組織を用意はミスリード!」だけ報道
- トランプ大統領は意趣返しか
- 「不正投票組織を用意したと発言」と「共和党は有権者の投票困難に」は対等ではない
- ファクトチェック対象の恣意的選定
バイデン「共和党は有色人種の投票を困難に」「不正投票組織を用意」
この動画の17分40秒くらいからの質問に対するバイデンの返答に「共和党は有色人種の投票を困難に」「不正投票組織を用意」という言葉が出てきます。
Republicans are doing everything they can to make it harder for people to vote — particularly people of color — to vote. So go to IWILLVOTE.com. Secondly, we’re in a situation where we have put together, and you guys did it for our administration — President Obama’s administration before this — we have put together I think the most extensive and inclusive voter fraud organization in the history of American politics.
両発言は、たったこれだけしか離れていません。
海外メディアが「ファクトチェック」も共和党関連部分は無視
Bogus ‘vote fraud’ claims proliferate on social media - The Washington Post
Viral Posts Take Biden Quote on Voter Fraud Out of Context - FactCheck.org
これらのメディアでは、"voter fraud organization"というのは、動画全体や直前の質問内容などから、むしろ「不正投票防止組織」不正投票の被害を申立て・回復するための組織」と理解できる、としています。
この解釈は、私も同意です。このような善意解釈が正統でしょう。
しかし、「共和党は有権者、特に有色人種の投票を困難にする出来る限りのことをしている」と発言している部分については、発言を引用しているにもかかわらず、なんら検証もしていません。
日本メディア「バイデンが不正投票組織を用意はミスリード!」だけ報道
バイデンが「アメリカ政治史上、最大規模の不正投票組織を用意した」と言ったとする動画が拡散されてますが、実際は、不正を防ぐための施策を紹介する発言の一部を切り取ったものです。
— 伊吹早織 Saori Ibuki (@ciaolivia) 2020年11月5日
トランプのYouTubeにも投稿され、陣営のYouTubeと合わせて85万回以上再生されています。https://t.co/9broIWP5yf
バイデン氏が「最大規模の不正投票組織を作った」と発言? トランプ氏側が拡散、全文まで見ると全く違う意味だった「長い映像から短い映像を切り取り、真実を反映しない偽の物語を作り出すものだ」(ワシントン・ポスト)ハフポスト日本版編集部
日本ではbuzzfeedとハフポストがワシントンポストなどの記事をベースに後追い記事を書いていますが、やはりバイデンが「共和党は有権者、特に有色人種の投票を困難にする出来る限りのことをしている」と発言していることにはまったく触れていません。
特にハフポストはバイデンの当該発言を引用しているにもかかわらず(buzzfeedはこの発言部分について触れていない)。
トランプ大統領は意趣返しか
トランプ氏のYoutubeチャンネルでもバイデンのこの発言は紹介されており、たしかに「切り取り」がされていますが、それはバイデンが「共和党は有権者、特に有色人種の投票を困難にする出来る限りのことをしている」と発言していることに対する意趣返しとも言えるでしょう。
「不正投票組織を用意したと発言」と「共和党は有権者の投票困難に」は対等ではない
さらに言えば、「バイデンが不正投票組織を用意したと発言」ということと、「共和党は有権者の投票困難にしている」は対等ではないですね。
前者は動画内で発言それ自体は確認できるのですから。そして、情報の拡散の仕方も「そのような発言をした」という点に焦点があり、「不正投票組織を用意した」ということが既成事実として拡散されているわけではない。
それに対して、後者はそのようなことを疑わせる事実の提示がまったく無いにもかかわらず、既成事実とされている内容です。
どちらの情報拡散の方が悪質でしょうか?
ファクトチェック対象の恣意的選定
バイデン氏が「最大規模の不正投票組織を用意した」? 拡散した動画は切り取り、ミスリードに注意
この動画について、ファクトチェックをしたワシントンポスト紙は「操作された動画(manipulated video)」と分類し、「長い動画から短い部分を切り出して、実際の出来事や発言とは異なる物語を作り出している」と指摘した。
さて、「ファクトチェック」を行ったところはこのように指摘しているのですが、「バイデンが共和党に関して真偽不明なことを口走っていることは無視して、トランプだけがフェイクニュースを拡散しているという異なる物語」を作り出していないでしょうか?
前々からファクトチェック対象の恣意的選定については話題にしてきましたが、ここまで露骨に行われるとは夢にも思いませんでした。
せめて「なお、バイデンの直前の発言中、このようなものがあったが、その真偽は不明である=判定留保」或いは「現時点では確証が無く、根拠不明」と書けばよいものを、それをしていない時点で「ファクトチェック」を都合よく利用しているだけでしょう。
以上