ウクライナ政府のロシア兵捕虜の動画・画像の扱いについて
捕虜の待遇に関するジュネーブ条約「公衆の好奇心から保護」
捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(第三条約)
— Nathan(ねーさん)💙💛 (@Nathankirinoha) 2022年2月26日
ロシア軍捕虜の動画、顔が見えるものを引用リツイートしてしまってましたが削除しました。
>捕虜は…公衆の好奇心から保護しなければならない pic.twitter.com/haWujU4Q0J
捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(第三条約)
捕虜は常に人道的に待遇しなければならない。抑留国の不法の作為又は不作為で、抑留している捕虜を死に至らしめ、又はその健康に重大な危険を及ぼすものは、禁止し、且つ、この条約の重大な違反と認める。特に、捕虜に対しては、身体の切断又はあらゆる種類の医学的若しくは科学的実験で、その者の医療上正当と認められず、且つ、その者の利益のために行われるものでないものを行ってはならない。
また、捕虜は、常に保護しなければならず、特に、暴行又は脅迫並びに侮辱及び公衆の好奇心から保護しなければならない。
捕虜に対する報復措置は、禁止する。
ジュネーヴ条約(第三条約)において、捕虜は「公衆の好奇心から保護しなければならない」と定められています。
そのため、SNSで拡散されている「ロシア軍兵士の捕虜の動画」については、みだりに引用リツイート・単純リツイートすることは控えるようにしました。
過去にもイラク戦争の際にメディアが捕虜となった兵士(アメリカ軍・イラク軍双方)の動画を報道した際にICRC=赤十字国際委員会が問題視するなどといったことがありました。
捕虜の保護状況の情報提供とプライバシーへの配慮
「ウクライナ側が保護してる」という状況を伝える趣旨のものなら良いと思いますが、顔が見える状態で叱責されているとみられる内容はやはり避けるべきだと判断しました。
— Nathan(ねーさん)💙💛 (@Nathankirinoha) 2022年2月26日
我々一般人が条約の義務を直接持つものではありませんが、その精神を尊重すべきというのは変わりません。
我々一般人が条約の義務を負うわけではありませんが、やはりその精神は尊重すべきです。とはいえ、一定の条件では妨げられるものではないと思われます。
防衛実務国際法 436頁
…たとえば米国は、公衆の面前で捕虜を行進させたり屈辱的な方法でその姿をテレビやインターネットに公開させたりすることはもちろん、収容施設当局の許可なく被抑留者を撮影することも原則として禁止している。
しかし、捕虜の映像を公開することは直ちに同条約に抵触することになるのだろうか。場合によっては、捕虜がどのような条件で抑留されているのかを対外的に示すことで自国の武力紛争法遵守を説明する手段として活用できるものとなりうるようにも思われる。もちろんその際には捕虜を侮辱したり公衆の好奇心にさらしたりすることにならないよう、顔にモザイクをかけるなど、プライバシーの保護に最新の注意を払う必要があることはいうまでもない
ウクライナ政府によるロシア軍兵士の捕虜の画像・動画のUP
現在、ウクライナ当局によってTwitterやyoutubeにロシア軍兵士の捕虜の画像や動画がUPされ、それが拡散されています。
また、ロシア軍兵士の捕虜と死亡者の情報をまとめたサイトも存在し、安否状況について個人の名前を掲示してyoutube動画を埋め込んでいたり、死亡者の顔写真含む身分証を掲載していたりしています。そのサイトのURLがウクライナ当局者からツイートされています。
動画の中にはウクライナ市民から叱責を受けていると思われるロシア軍兵士(顔がわかる)とそれを自制させている市民の動画や、顔は全部映らないが何かを言われて泣き出すロシア軍兵士、うつ伏せ状態で詰問を受けていると思われる者、全身の怪我の状態が分かるようにしている動画など、機微なものがありました。
そのすべてがジュネーブ条約に抵触しているとは言えないだろうと思うものの、「戦車大隊長を拘束した」とする当局のツイートにはその者の家族構成を書きつつ拘束している様子と身分証の画像を添付しているなど、判断が分かれ得ると思われるものもあります。
ウクライナ当局がSNSに情報を上げざるを得ない状況として、24日のロシアによる侵攻開始以降、ウクライナの政府系サイトの多くがダウンして表示されないという事情があります。これはロシアによるサイバー攻撃によるものとみられています。そのためか、ロシア軍捕虜と死亡者の情報サイトも、ガバメントドメインではありません。
当事国が行っている事は後から国際機関でルールを作って欲しいとは思いますが、いち一般人としては、自制的な扱いをしていこうと思います。
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