アテンションエコノミーの末路
- アベプラAED企画『事実関係の完全な確認は困難という結論に至りました』番組冒頭で謝罪
- テレ朝の篠塚浩社長が「再取材」公表も、Abemaお知らせページが変更される
- テレビ朝日報道局が業務委託を受けて制作:「アテンションエコノミー」はマスメディアも同じ
アベプラAED企画『事実関係の完全な確認は困難という結論に至りました』番組冒頭で謝罪
https://abema.tv/channels/abema-news/slots/Cn3N8msAsUazRu
先日1月20日に配信したAEDに関する企画についてご報告があります。
配信の中でAEDで助けた女性から被害届が出されたという内容のSNS投稿を取り上げました。番組としては、投稿した方にお話を直接伺うなどした上で紹介しましたが、取材が不十分でした。
今回改めて当局や関係者に取材しました。10年ほど前の出来事だという事で、事実関係の確認には限界があり、完全な裏付けを取るのは困難という結論に至りました。
大変申し訳ありませんでした。
この取材の結果を受けてアーカイブ配信していたABEMAビデオやYouTubeの動画については配信を取り下げさせていただきます。
なお、今回の企画については、異性であってもAEDの使用について躊躇しないで欲しいという趣旨で制作したものです。番組では、このAEDにかかわる問題について向き合い続けると共に、改めて適切な使い方や心構えについて近日中に取り上げる予定です。
サイバーエージェントとテレビ朝日が50%ずつ出資しているAbemaNEWSの番組「アベプラ」で2025年1月20日に放送された【「女性にAEDを使わないで」男性が恐れる“社会的制裁”とは?分断の向かう先は?】にて、『女性へのAEDをして救命したが女性の親から強制わいせつ罪で被害届が出され警察から事情聴取されたものの女性が親を説得して和解』という内容の体験談が読み上げられて紹介されたことに関して、ネット上で『デマではないか?』という声が上がったことを受けて各所が動いた結果、アベプラが2月25日の番組冒頭で『事実関係の完全な裏付けは困難という結論に至りました』と謝罪が為されました。
連動して関連動画は削除され、改めて適切な使い方や心構えについて近日中に取り上げる予定があるとされました。
本件は当該番組の放送直後から、衆議院議員の米山隆一氏が警察庁等への認識確認、取材をしており、その後、アエラドット、弁護士ドットコムなどが追加取材とAbemaの認識を問う記事を出していました。
今回のアベプラの謝罪は、この話に一応の決着が付いた形になります。
テレ朝の篠塚浩社長が「再取材」公表も、Abemaお知らせページが変更される
女性へのAED使用巡るABEMA番組 テレビ朝日が「再取材」公表 https://t.co/e1A9okhBEC
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) 2025年2月25日
テレ朝の篠塚浩社長は25日の定例会見で、「事実関係の確認が不十分だった」として「再取材を進めている」と明らかにした。
会見でテレ朝の篠塚社長は「『AEDの使用を躊躇(ちゅうちょ)しないでほしい』という趣旨で制作している」と釈明。証言の真偽については「10年以上前のことで、事実関係の詳細の確認が不十分だった」とした上で、「当局への取材を含めて、再取材をしているので、その結果については番組のほうで適切に対応してもらえたらと思っている」と説明した。
先だって、本件については25日朝にAbemaのHPで「お知らせ」ページに再取材と適切な対応が宣言され、同日夕方にはテレ朝の篠塚浩社長が定例記者会見で「再取材」を公表していました。
が、25日21時に上掲のお知らせ内容が変更。
番組での「事実関係の完全な裏付けは困難という結論に至りました」という最終結果の報告に合わせた変更と言えますが、テキストで残してほしいところです。
「女性へのAEDで冤罪!」というデマは、10年ほど前からSNS(ツイッター)で2件見られ、それをネットメディアが無批判に取り上げることで大拡散されたという経緯があります。今回のデマは、3つ目の事例として刻まれることになります。
テレビ朝日報道局が業務委託を受けて制作:「アテンションエコノミー」はマスメディアも同じ
ABEMAで「AED」報道巡りデマ疑惑 「SNSの極端な意見を拡散している」指摘に…テレ朝社長が見解― スポニチ Sponichi Annex 芸能
記者から「SNSの極端な意見を拡散して分断をあおっているのではないか?」と追及されると「ABEMAプライムという番組は、ネット配信の番組で、ネットに親和性がある。ネット上でバズったことや、話題になったことを日頃から取り上げている番組であるのは間違いない。それを議論の題材にしているところがある。それは当然、地上波と違って、対象者もネットをご覧いただいている方」と主張した一方「このようなご指摘があるのは重々承知しているので、そのあたりは制作現場に注意するよう伝える」と語った。
番組自体について「ABEMAニュースは、テレビ朝日報道局が業務委託を受けて制作しているので、我々に制作責任がある」と説明したが「最終的な放送はABEMA社なので、ABEMA社あるいは番組からなんらかの対応がある」とした。
アベプラの番組はテレビ朝日報道局が業務委託を受けて制作しているということも説明されています。要するに、マスメディアが「アテンションエコノミー」に基づいた番組構成をしていたということ。
そもそも本件の体験談の出元は、「女性にAEDを絶対に使わないで」などと書いた投稿がバズり(番組が中心的に取り上げた投稿)、その投稿に後から返信欄で体験談として「AEDで訴えられた」と投稿してきたという経緯があり、バズの恩恵狙いの疑いがあったものでした。
そして、このアカウントの過去の投稿を探ると、「JKの子」をAEDで助けたが「文句言ってくる人が居た、たぶん彼氏さん」という別件の投稿があり、他にも常人が経験しないであろう事柄を多数投稿するなど、その投稿内容の信憑性に疑問符が付く者でした。
さらに、このアカウントは女性に対する敵意を表す投稿も度々しており、「女性へのAEDで冤罪」という話題に乗っかる動機が推認される者でした。
そのため、本人の体験談とされるものだからといって、鵜呑みにして信じてはならない類の人物であるということが明らかでした。
もちろん、だからといって本件の体験談が嘘であるという推論は危ういのですが、信憑性に留保を付けるべき理由が十二分に揃っている者でした。
「SNSでアテンションエコノミー」などと、さも新しい現象かのように言われていますが、もともとはマスメディア、特にテレビがアテンションエコノミーを最大限に利用していたでしょう。それをネット・SNSに擦り付けているだけです。
当然、ネット・SNSもマスメディアをバカにして終わることはできません。
特に本件では1月のアベプラの放送後、「それみたことか、やっぱり女性へのAEDはダメだ」「AED論争に決着」などとしたり顔でアベプラの放送内容を拡散していた多数の者が居ました。そんなに予言者になりたいか?
そうした反応をしていた界隈が日ごろから口を出している騒動に関して、他のSNSユーザーは、今一度評価・認識を改めなければならないのではないでしょうか。
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