消費増税、予定通り来年10月実施…首相表明へ : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
10月14日(日曜日)の読売新聞に「安倍総理が2019年の消費税増税を決定」するかのような内容の記事を書きました。
これは2重の印象操作があるので指摘しておきます。
- 消費税10%への増税は法律によって既定路線
- 安倍総理が「増税を決定」という印象操作
- 安倍総理は未だ増税の最終決定をしていない
- 消費増税の前提:「日本は財政破たんする」は嘘?
- 「増税ハルマゲドン」もまた害悪
消費税10%への増税は法律によって既定路線
消費増税をする方向であるということは法律で決まってます。
【法律第六十八号(平二四・八・二二)社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律】
こちらの法律に消費税を10%に上げる日にちが書かれているのです。
増税を「延期」「凍結」の判断をしたといいますが、単に政治判断をするのではなくて、この法律に書いてある日付を改正することで可能になっているのです。
法律が成立した日付を見れば分かるように、これは民主党政権時代に制定されています。
更に遡ると、麻生政権時代の「所得税法等の一部を改正する法律」の附則に消費増税の足掛かりが書かれ、それに沿っていわゆる「三党合意」が為されたために、この法律が出来上がりました。
安倍総理が「増税を決定」という印象操作
以上より、法律に消費税を増税するということと、増税の日付が書かれているのですから、 増税するという大きなベクトルは法律によって定められているのです。
これは時の政権が誰であっても同様です。
よって、安倍総理が「増税を決定する」という表現は、実態を正確に表現していません。
安倍総理が「決定」をするのは「法律に定められている日にち通りに増税をすること」や「増税の日にちを延期すること」であって、「政治判断・閣議決定によってはじめて増税が決定される」というわけではありません。
安倍総理は未だ増税の最終決定をしていない
もう一つの印象操作について。
安倍総理は法律の予定通り増税することを最終決定したわけではありません。
菅官房長官は、記者からの質問に対して、最終的な決定ではないという旨の発言をしています。
この日の閣議決定は、2019年10月に消費税率を10%に引き上げることで経済悪化をさせないよう軽減税率等の施策の策定を進めるよう指示した、ということにとどまります。
冒頭の読売新聞の報道は飛ばし記事ですね。
「財務省が増税気運を高めるために読売に書かせたのではないか」という推測が至るところでなされています。
増税見送りの可能性がまだあるということはいろんな人が指摘しています。
ただ、当該法律は「増税するベクトル」にあるので、「増税廃止」や「減税」をするためには当該法律を改正・廃止する手続を取らなければなりません。
消費増税の前提:「日本は財政破たんする」は嘘?
ちょうど、近い時期にIMFがレポートをだしていました。
これによると、「日本の公的部門のネット資産対GDP比はほぼゼロ」という結論になっています。
財務省は、日本政府の子会社とも言える日銀のバランスシートを考えずに政府の負債のみを取り上げています。特に「借金が1000兆円~」というのは、資産を見ていません。
しかし、日銀のバランスシートと見えない資産と言われる徴税権を足すと下型の図のようになるという説明がされています。高橋洋一さんによれば、IMFのレポートはこの理解とほぼ同様であるということです。
財務省はさらに、ネット上で国家を家庭に置き換えた虚偽情報を宣伝していました。
虚偽情報を拡散してるため通報しました。
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) July 26, 2018
資産の無い家庭なんて無いだろ! https://t.co/L80N7ncEiv
【日本の財政を考える】#平成30年度予算 #財務省
— 財務省 (@MOF_Japan) July 25, 2018
全15回シリーズで、日本の #財政 について簡単にご紹介しています。
本日は、第5回目「日本の財政を家計に例えると、借金はいくら?」です。
動 画:https://t.co/3z7OM7l2eR
web page:https://t.co/ASf0kjgpOE pic.twitter.com/eOa4PQeWpc
財務省の動画では資産の無い家庭を前提にするかのような内容で「借金が膨大」であるという危機感を煽っていました。
消費税の増税は「社会保障のための安定財源の確保」が目的で、財政破たんのおそれがあるから行う必要があるんだ、というロジックだったのですが、このロジックが最初から捏造だったのですから、消費増税の根拠は無いわけです。
(もちろん、「借金をいくらしても大丈夫」とか、なんでも国債を発行すれば良い、ということではありません。バランスシートが崩れたら問題です)
高橋さんの主張を理解するには国債の性質についての理解が不可欠ですので興味があれば著書を見ればいいでしょう。
国債を買うための口座を作るときに個人口座では銀行では嫌な顔をされるとか、証券会社では国債以外の金融資産への投資や投資信託を強行に迫られるとか、実際に国債を買う場面を想定した内容も書かれています。
「増税ハルマゲドン」もまた害悪
田中秀臣さんが指摘している、「マイナーな論点」 だが重要な指摘。
「増税したら日本経済は終わる」などという「増税ハルマゲドン」論者が居るみたいですね。
田中さんは増税ハルマゲドン論者に対しては「事実上、金融政策を否定するに等しい」と言っています。
経済学がわからなくても、8%に増税されたのに日経平均株価は上がり、雇用改善がされているという現状を見れば、「消費増税即悪ドグマ」がどれだけ間違っているのかは経験則で分かるでしょう。
私も消費税10%への増税には反対ですが、「消費増税をしたら全てがダメだ」という短絡的な理解に走らないようにするということも大切だと思います。
特に、増税する大きなベクトルは、法律がある以上動かし難いのですから、そういう前提の下では「消費増税するタイミング」として今が適切か、という議論が建設的なんだろうと思います。
以上