事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します

『朝日新聞が「隠蔽目的で」首相動静記事を削除』は不合理:KSL-Live!の分析を補強する

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朝日新聞の2015年2月25日の首相動静記事が削除されている事に関して。

削除されていることはその通りですが(別の場所に移動)、「隠蔽目的で」削除されているという可能性は非常に低いです。

ネット上で「隠蔽目的」では?との指摘があり、有名な媒体としてはnetgeekやShare News Japanがその結論を前提に記事を書いたため、それらをSNS上で各人が引用したことで更に拡散されました。

しかし、KSL-Live!の検証によって、隠蔽目的で削除されたという可能性は非常に低いということが明らかになりました。

更に、netgeek以外にもツイッター上で証拠のWEB魚拓なるデマが再拡散されており、こちらは完全に捏造デマだということがKSLの検証によって明確になりました。

なお、他にも「B」を頭文字にするネットメディアが「意図的隠蔽」はデマだとする記事を書いてますが、KSLに後れること半日以上であり、証拠を示しているようで全く説明になってないものでした。

この記事はKSLの検証の補強をする後追い記事ですが、今後私たちがネット上の情報の扱いについてどのように注意していけばよいのかを整理していきます。むしろこっちが本編。 

KSL-Live!の検証の概要

上記の記事の概要は以下です。

  1. 21日夕方に「愛媛県の新文書」報道がなされる。
  2. ネット上で首相動静との比較対照が行われるが、情報源は首相動静をまとめていた個人ブログ
  3. 各所が情報源としている個人ツイート主は朝日新聞の2015年2月26日の記事は22日朝まで見れたと主張
  4. しかし、今日に至るまで、他に有力な証言者が存在しない
  5. その後、情報源の個人ツイート主が「証拠のWEB魚拓」なるものを同志が保存していたとしてUP
  6. しかし、そのWEB魚拓が捏造であることをKSLが検証

この辺りは詳しくはKSLさんの記事を参照してください。

朝日新聞が「隠蔽目的で」削除したのはデマなのか? 

netgeek、ネットギークの首相動静デマ

出典:netgeek.biz/archives/118939:時事事件の報道のための利用

この判断は私はKSLさんとは若干異なりますが、「そのような目的で最近削除した可能性は非常に低い」とだけ言っておきます。その理由は以下です。

  1. 最近の魚拓が存在しない
  2. 5月22日まで見れたと言う者がツイート主のみ(他の証言者も居ることには居るが、ツイート主にリプライをつけるだけで質問に答えず信憑性なし)
  3. そのツイート主が証拠として挙げたWEB魚拓が捏造
  4. 動機の欠如:朝日新聞自体が、当日の首相動静には安倍総理と加計孝太郎理事長が面会したという情報は無いという趣旨の記事を書いているため、首相動静の記事を消す理由がない
  5. 効果の不存在:朝日新聞の紙媒体では首相動静は残っているため、わざわざWEB上の情報だけ消しても証拠隠滅の目的が達成できない
  6. 朝日新聞の過去記事は約1年で自動削除となるものがほとんどであり、一部は残っているとしてもそれは例外であって、最近の記事が削除されていないと言う理由にはならない

ただし、本当にツイート主は削除前の記事を見たかもしれず、最近になって朝日新聞の担当者が削除されていないことに気付いて手動で削除したかもしれません。この可能性は極々低いですが残ります。

Share-News-Japanの朝日首相動静記事

出典:https://snjpn.net/archives/52328:時事事件の報道のための利用

しかしながら、原則としては「隠蔽目的」で朝日新聞が削除したと言う者が証拠を提示するべき状態なので、現状ではデマと呼んでもよい情況であると言えます。

なお、特設ページに移された首相動静は過去のものでも閲覧可能であることが分かっていますが、今回とは無関係です。

「証拠のWEB魚拓」という捏造デマ

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こちらのarchive.todayが提供しているarchive.isの魚拓が「証拠のWEB魚拓」とされたものです(URL=http://archive.is/xYgkP)。

証拠のWEB魚拓はなぜデマなのか

右上の保存日時が2018年5月21日となっていることから、最近まで見れたのではないかと言われていますが、KSLさんが指摘するように完全なる捏造デマです。

まず、「原本」とあるhttps://www.asahi.com/articles/ASH2T677VH2TULFA02T.htmlこちらのURLが現在は削除されている朝日新聞の元のURLですが、右側を見ると2015年8月14日の保存となっています。注意してほしいのですが、こちらは上記の画像の魚拓元ではありません。

上記の画像の魚拓元は、赤枠の一番上のhttps://web.archive.org/web/20150814215204/https://www.asahi.com/articles/ASH2T677VH2TULFA02T.htmlというURLです。こちらのページは、Internet archiveが提供しているWaybackMachineというWEB魚拓です。

つまりはこういうことです。

  1. 2015年8月にWaybackMachineで魚拓が採られた
  2. 2018年5月にarchive.isでWaybackMachineのページが再度魚拓をとられた

要するに、「魚拓の魚拓」を見ているということになります。

そもそも、このページの上部にURLが3つも並んでいるのは異常です。

通常は1つの元URL(原本URL)しか表示されません。

なお「UTC」は「協定世界時」を指し、日本時間の「JST」より9時間遅い時間帯です(要するにイギリスのグリニッジ基準)。なので、上記の表示時間に9時間を足したのが日本時間での魚拓を取った時間です。

朝日新聞デジタルのサイトデザインが変更されている

そして、次の画像の緑枠を見ていただきたい。

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これは2018年5月23日に魚拓を取った別の記事(http://archive.is/jEFVV)のものです。

「新規登録」「ログイン」「メニュー」という表示が、最初に示した魚拓と異なっていることに気が付きます。この部分は記事にかかわらず朝日新聞デジタルのページで統一された表記になっています。

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こちらはまた別の記事https://archive.is/LU2sd:元URL=https://www.asahi.com/articles/ASL385T4VL38UTIL03N.html)ですが、2018年3月9日に魚拓をとったものです。森友文書の記事です。

5月23日にとった魚拓と同じ表示になっていますね。

つまり、5月21~23日の間にサイトデザインの変更があった可能性はゼロです。

よって、証拠のWEB魚拓とされたhttp://archive.is/xYgkPの魚拓と上記2つの魚拓には時間的な隔たりがあるということがこれで明確になりました。

したがって、証拠のWEB魚拓とされたhttp://archive.is/xYgkPは、22日朝まで2015年2月25日の首相動静が書いてある26日の記事が削除されていなかったことを示す証拠にはなり得ないということが分かります。

さらに、このような証拠は意図的に作られたということも明らかになりました。

ソーシャルランキングについて

朝日新聞の首相動静

これは先ほどの証拠とされたWEB魚拓http://archive.is/xYgkP)のページ下部ですが、ソーシャルランキングの欄を見ると、「万引き家族」の記事があります。これは今年春にパルムドールを受賞したドラマ映画ですから、最近になって保存されたものではないか?と思う人が出てきています。

しかし、注目すべきは、他のところです。アクセスランキングにはあの野々村氏の話題や安倍首相の戦後70年談話など、明らかに2015年の話題がランクインしています。

要するに、ソーシャルランキングが現在の話題だからと言って、魚拓が現在取られたと言うことはできないということです。

なぜソーシャルランキングの表示だけ異なっているのか?

朝日新聞の首相動静

こちらの魚拓は上記で示した森友文書の記事のページhttps://archive.is/LU2sd(元URL=https://www.asahi.com/articles/ASL385T4VL38UTIL03N.html)で、2018年3月9日(UTCでは8日)にとられたものです。アクセスランキングとソーシャルランキングは当時のものになっているのがわかります。

ここで疑問なのは、なぜ「証拠のWEB魚拓」とされたhttp://archive.is/xYgkPでは両者は異なっていたのか?ということ。

以下の森友文書の記事のページのWaybackMachine上のスクショ画像がヒントではないかと思います。

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森友文書の記事のページをWaybackMachineで魚拓を取ると(URL:https://web.archive.org/web/20180308203746/https://www.asahi.com/articles/ASL385T4VL38UTIL03N.html)、アクセスランキングとソーシャルランキングはこのような見え方になります。

元URLはhttps://www.asahi.com/articles/ASL385T4VL38UTIL03N.htmlで同じなのに、ソーシャルランキングの見え方は2018年5月23日に話題になっているものになっています(アクセスランキングも若干違っているのは、魚拓が取られた時点が若干異なるからです)。

要するに、archive.isとは異なり、WaybackMachineの魚拓では、ソーシャルランキングは現在のものを参照するということです。

なので、「証拠のWEB魚拓」とされたhttp://archive.is/xYgkPでは、このWaybackMachineの魚拓上のソーシャルランキングの表記を魚拓として保存されたということではないでしょうか?

このあたりの仕組みについては明確には言えませんが、事実からはこのような推測が十分に可能でしょう。

小括

  1. 朝日新聞が「隠蔽目的で」首相動静の記事を削除したというのは、現時点ではデマと言ってよいが、そうではない可能性は理論上は残っている
  2. 証拠のWEB魚拓とされたものは、100%捏造デマ

今回の件によって、ネット上で「証拠」とされているものの信憑性判断について教訓を得ました。

ネット上の情報の証拠の信憑性判断

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既に示しましたが、このような表記は明らかに異常です。

アーカイブ元のURLとして3つも表示されることは通常はありません。

このような魚拓が出された場合、信憑性は無いものとして扱うべきでしょう。

なお、WEB魚拓ではなく、通常の魚拓、いわゆるスクリーンショットについても、注意が必要です。

スクリーンショットも100%信用していいかというと、そうではないということです。おそらく改ざんの痕跡は残るのでしょうが、それを見抜ける人がどれだけいるかという話ですね。

このような可能性を考えながら、情報は精査していかなければなりません。

バイラルメディアについて

今回、バイラルメディアと呼ばれるサイトが安易な結論を元に報じていましたので触れざるを得ません。

バイラルメディアとは

バイラルメディアとは、普通のニュースサイトとは別の観点からの定義づけがなされているサイトを表す用語です。

通常のサイトは基本的に「検索流入」によるアクセスを主目的に記事を書きます。

しかし、バイラルメディアは「SNSからの流入」によるアクセスを主目的にする ものです。ここが違いであり、「このサイトはバイラルメディアだ」と言い切るのが難しい場合もあります。
※「まとめサイト」は基本的に検索流入を目指しているというのが一般的ですが、実態はよくわかりません。

SNS拡散による流入を目指すので(「バズ」を起こそうと意図的に行動している)、必然的にショッキングな映像、画像、キャッチーなタイトルや内容になる傾向があります。

ほぼ独自取材や分析がなく(一部あるが)、ネット上に「落ちている」情報を拾ってつなぎ合わせて記事を作成していることがほとんどです。

報道機関ではないバイラルメディア

もう一つの問題として、多くのバイラルメディアは、さも報道機関かのように錯覚するような体裁・デザインのものがあるということです。そのようなサイトであるにもかかわらず、住所氏名等が公開されていないサイトもあります。

バイラルメディアの社会的影響力がどれほどあるかは不明ですが、ツイッターで引用されている状況を見ると、ネット上ではかなりの知名度を誇るサイトがあるのも事実です。

上記の記事は、地方議員がそのようなバイラルメディアが無責任な報道を行っている例を元に、バイラルメディアを規制する必要性を国会議員に陳情しに行ったということを示すものです。

バイラルメディアとどうつきあっていくか

最初にバイラルメディアはショッキングな映像、画像、キャッチーなタイトルや内容になる傾向があると指摘しました。そのような煽動的なツイートや投稿を見たら、一度冷静になること、安易にシェアせず、時間を置いてからにするなど、個人が慎重な対応をするべきであるということになります。

たとえば、個人のツイートを「ネット上の声」として紹介することがあります。それはそれでいいのです。しかし、情報ソースとして、何らのソースを提示していない個人のツイートを用いている場合には、その記事は一旦は信用しないべきでしょう。今回もそのようなケースでした。

そして、そのような記事を著名人がツイート等で拡散していることもあるので注意です。

自分の記事をツイートしていて分かるのですが、リツイートされた数よりも記事に飛んで閲覧した人の数は少ないです。ですから、マスメディアはタイトル詐欺を行います。

拡散前に一度、記事を見ること。

これだけで、不用意にデマを拡散していくことは少なくなります。

私も記事を書いて発信していく以上、注意していきます。

以上