重大な事実誤認。
- 弁護士の懲戒請求者へのメッセージ?
- 「学ぶ権利を否定」など成り立たない主張
- 懲戒請求者が主張の懲戒事由は朝鮮学校への補助金交付の会長声明関係
- 「在日朝鮮人の権利の平等性を認めていない」のか?
- 補助金交付をしないことは「学ぶ権利を否定」しているのか?
- まとめ:他人の権利をダシに使って事実誤認と認識煽動をする弁護士
弁護士の懲戒請求者へのメッセージ?
ある弁護士さんが無差別懲戒請求したネトウヨに送ったメッセージ。マジで読んでほしいんや。 pic.twitter.com/xXMZRdwGST
— 🇯🇵チャンドラー中西@アリゾナ兄さん🇯🇵 (@nakanishi12342) August 30, 2018
ある弁護士が「懲戒請求者」に送付したというメッセージがツイッターに上げられていました。
ただ、これが本当に実在の弁護士から送付されたのかという確認はとってません。
ですが、そうであれば、この内容は非常に問題です。
なぜなら、重大な事実誤認があるからです。
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「学ぶ権利を否定」など成り立たない主張
全部の掲載はしませんが、4つの画像の内、3枚目と4枚目の一部を引用します。
私が本当に憤っているのは、貴殿のした懲戒請求が、在日朝鮮人あるいはその子どもたちの権利の平等性を認めていないという点にあります。個人はその本質において平等だというこの社会の前提を壊している…
貴殿の懲戒請求によって在日朝鮮人の子として生まれたがために学ぶ権利を否定された子ども達にであり…
「子どもたちの権利の平等性」「学ぶ権利を否定」
この部分は成り立たない主張です。
懲戒請求者が主張の懲戒事由は朝鮮学校への補助金交付の会長声明関係
この件は960人からの懲戒請求の事案です。大枠は上記記事参照。
懲戒請求者が主張する懲戒事由はほとんどが同じ文言のコピペであり、概ね以下のような内容です。
「違法である朝鮮学校への補助金交付の会長声明に賛同、容認、その活動を推進することは、弁護士の確信犯的犯罪行為である。」
まず、メッセージを送った弁護士が実際に朝鮮学校への補助金交付に賛同していたかは不明ですが、仮にそうであったとしても、このような理由で懲戒請求が認められることは在り得ません。
この主張のうち、なぜ補助金交付が「違法」と言われているのかですが、憲法89条で公金支出規制が規定されているところ、朝鮮学校は私立学校であるからです。日本の私立学校にも補助金は交付されている例がありますが、同じ理由で疑問視されることもあります。
これは判例が無い領域なので、グレーゾーンの話です。
「在日朝鮮人の権利の平等性を認めていない」のか?
もしかしたらこのメッセージの受取人は少し違った主張をしていたのかもしれませんが、ここでは大量懲戒請求の事案を念頭に置いてますので、上記の懲戒事由を主張していたものとします。
朝鮮学校は学校教育法1条に定める高等学校=いわゆる「一条校」ではなく「各種学校」の区分です。
だからといって直ちに補助金交付の支給対象外ということにはなりません(ここは多くの人が勘違いしています)が、ありていに言えば予備校と同じ位置づけです。
予備校に対する補助金支給の例はありますが、権利としてではなく自治体の裁量で決められています。
朝鮮学校に対する補助金が支給されなくとも、それは学校に対する補助金なのであって、そこに通う生徒に奨学金が支給されないなどの話ではありません。したがって、在日朝鮮人を平等に扱っていないということではありません。
なお、朝鮮学校には日本国籍の生徒もごく一部ではありますが通っているようなので、外国人の権利云々の話はあまりするべきではないでしょう。
補助金交付をしないことは「学ぶ権利を否定」しているのか?
次に重要なことですが、朝鮮学校に通っている生徒は、他の学校に通う選択肢もあったのです。朝鮮学校で学ぶという権利は保障されており、転向先で学ぶ権利も保障されています。
したがって、「学ぶ権利を否定している」というのはまったくの事実誤認です。
懲戒請求者がこのような判断ができないと踏んで、無理な主張を通そうとしているとしか思えません。
まとめ:他人の権利をダシに使って事実誤認と認識煽動をする弁護士
弁護士が朝鮮学校に通う生徒の代理人として、本人の利益のために朝鮮学校への補助金支給は適法であるという主張の一環としてであれば、引用したような主張をすることは当然にして許されるでしょう。
それが代理人弁護士というものだと思います。
しかし、自己が訴訟提起するにあたって、その相手方を論難する場面において朝鮮学校の生徒の人権という無関係なものを、しかも事実誤認を含む形で懲戒請求者へのメッセージとして送るのは非常に不可解です。
「私が本当に憤っているのは」という書きぶりからは、まるで朝鮮学校という特定人格の利益を守りたいがために懲戒請求者に損害賠償請求をしているみたいです(それは決して公益に適う行為ではないし、公益であるという主張も見当たらない)。
代理人でもないのに法的に争いのある他人の事柄に関するものを訴訟提起の主たる要因としているということは、動機に於いてイデオロギーに基づく損害賠償請求であると暴露しているのと同義でしょう。
イデオロギーvsイデオロギーの戦いを始めたということでしょうか?
弁護士という肩書と分かち難い状況でこのような主張をすることは、果たして公益のために弁護士自治を認めたことと合致するのでしょうか?
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