NHKも共犯
- 徴用工賠償金、韓国財団が肩代わり(第三者弁済)案
- 「第三者弁済は債権者が同意しないとダメ」の認識誘導をNHKが注釈なく再拡散
- 慶北大学法学専門大学院の法史学者金昌禄キム・チャンロク教授の主張
- なぜか別の条文である債務引き受けの要件から第三者弁済を論じる法史学者
- 日本の改正前民法と同じ韓国民法の第三者弁済:債権者の拒絶が許されない解釈
- 支援財団の設立趣旨には反しない
徴用工賠償金、韓国財団が肩代わり(第三者弁済)案
いわゆる「徴用工問題」と呼ばれている、朝鮮半島出身の戦時労働者(募集工)が、日本企業における労働が非人道的であったなどとして日本政府や日本企業に賠償を求めたが排斥されてきた中で、文在寅(ムンジェイン)大統領政権時代の2018年に韓国大法院が日本企業に対して賠償命令を下し、財産差押えが為されてきたという、1965年の日韓請求権協定に違反する状況について、尹錫悦(ユンソギョル)大統領下の韓国政府が1月12日に、「財団による賠償肩代わり」案を公式表明しました。
具体的には韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が主体で、新たに財団設立をするという案ではありません。
他、次善の策として日韓の経団連が財団を別途作る方策も話が上がっているようですが、こちらはメインではないようです。
が、どうやらこの話について、妙な認識誘導が行われています。
「第三者弁済は債権者が同意しないとダメ」の認識誘導をNHKが注釈なく再拡散
「徴用」めぐり 韓国 最大野党代表“政府の解決案に反対姿勢” 2023年1月16日 16時05分 NHK(魚拓)
これについて、韓国の国会で過半数を占める最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は、16日に開かれた集会で「日本の戦争犯罪に免罪符を与え、韓国企業に賠償責任を転嫁するものだ」と述べ、政府の案に反対する姿勢を強調しました。
また、イ代表は、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年の日韓合意に触れ、「当時の拙速な合意を、『徴用』の問題でも他山の石にしなければならない。政府は自虐的な外交を直ちに中止すべきだ」と批判しました。
このほか、出席した法学者は、政府の案で財団が原告への支払いを肩代わりするとしていることについて、「原告が同意しないかぎりは認められない」という見解を示しました。
2023年1月16日、NHKの報道で韓国の「法学者」が原告(=債権者)が同意しない限りは第三者弁済は認められないとする見解を示したことを報道。
この話、そのまま報じる意義はあるのか?
いったい誰が主張してるのか?
それは韓国民法の解釈上、正当なのか?
ということで調べました。
慶北大学法学専門大学院の法史学者金昌禄キム・チャンロク教授の主張
「朴正熙政権よりも没歴史的」…強制動員賠償案討論会であふれる怒り 登録:2023-01-17 02:27 修正:2023-01-17 07:34 ハンギョレ(魚拓)
16日午前、共に民主党のイ・ジェジョン議員の主催で国会議員会館第8懇談会室で行われた「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の対日外交診断と課題」緊急討論会で、パネラーとして参加した慶北大学法学専門大学院のキム・チャンロク教授は「債権者(強制動員被害者)が特定の債務者(日本の戦犯企業)から返済を受けなければならないという立場である場合には、債権者の承諾なき併存的債務引受は認められないと考えるべきだ」と述べた。併存的債務引受とは、三菱重工や日本製鉄などの戦犯企業が被害者に対して負っている債務を支援財団が引き受け、返済を肩代わりするというもの。政府は、過去の判例と学説に照らせば、併存的債務引受に被害者の同意は必要ないと主張する。これに対しキム教授は、債務だけ返済されれば済む一般の民事訴訟とは異なり、「特定の債務者(戦犯企業)から返済を受けなければならないという立場」である強制動員問題では、債権者の同意が必要だと指摘したのだ。
「第三者弁済は債権者が同意しないとダメ」という解釈論を展開したのは、慶北大学法学専門大学院の法史学者である金昌禄=キム・チャンロク教授でした。
「慰安婦」問題と未来への責任 / 中野 敏男/板垣 竜太/金 昌禄《キム/チャンロク》/岡本 有佳/金 富子【編】《キム/プジャ》 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア(魚拓)
いわゆる法曹と呼ばれる者が受ける訓練は、「法解釈学」です。
法哲学だとか法歴史学といった分野は、そうした領域ではありません。
民法学者じゃなくて憲法学者…とかいう話よりもさらに専門分野からは遠い。
第三者弁済は民法・民法学の話なのだから、民法学の専門家がどう解釈論を展開しているのかが重要なのに、不適格とは言わないが専門分野とは遠い人間を「法学者」として括って紹介したNHKは何をやってるのか?
なぜか別の条文である債務引き受けの要件から第三者弁済を論じる法史学者
「強制動員の韓国政府の解決策、憲法精神に反する」登録:2023-01-15 23:04 修正:2023-01-16 06:30 ハンギョレ(魚拓)
「欺瞞的だ。代位弁済(第三者が負債を代わりに返済すること)は、債権者の承諾がなければならない。最高裁の確定判決を受けた被害者が債権者だ。当然、承諾しないという。それだと代位弁済にはならない。いわゆる重複的・併存的債務引受は、債務者である日本企業と第三者が協約しなければならない。だが、日本企業もその協約はできないという。協約をすることになれば、債務があるという点、すなわち強制動員の不法性を認めることになるからだ。債務者が協約に参加しなければ、債務引受は成立しない。法的に解決する方法がないという意味だ。ところが、できないことをできると言いはり、ひとまず被害者がお金を受け取るようにしようとしているようだ。被害者たちに対する欺瞞だ。他国の利益のために自国民をだましているのであり、深刻な問題だ。
前項で引用した記事でもそうでしたが、キム・チャンロク教授は第三者弁済について論じている最中に、いきなり重複的・併存的債務引受の要件の話をし出しています。
しかし、これは実に奇妙な話です。
第三者弁済と債務引き受けは、民法上、別の条文です。
民法 (大韓民国) - Wikisourceを見ると以下書いてあります。
第5節 債務の引受
第453条(債権者との契約による債務引受)①第三者は,債権者との契約により債務を引き受け,債務者の債務を免かれさせることができる。但し,債務の性質が引受を許さないときは,この限りではない。②利害関係のない第三者は,債務者の意思に反して債務を引き受けることができない。
第454条(債務者との契約による債務引受)①第三者が債務者との契約により債務を引き受けたときは,債権者の承諾によりその効力を生ずる。
②債権者の承諾又は拒絶の相手方は,債務者又は第三者とする。
第455条(承諾与否の催告)①前条の場合において,第三者又は債務者は,相当の期間を定めて承諾与否の確答を債権者に催告することができる。
②債権者がその期間内に確答を発しないかったときは,拒絶したものとみなす。
第三者弁済の規定は、以下です。
第469条(第3者の弁済)①債務の弁済は,第3者もすることができる。但し,債務の性質又は当事者の意思表示により第3者の弁済を許さないときは,この限りではない。
②利害関係を有しない第3者は,債務者の意思に反して弁済をすることができない。
実はこの規定は、日本の改正前民法と同じです。
日本の改正前民法と同じ韓国民法の第三者弁済:債権者の拒絶が許されない解釈
日本の改正前民法では、債権者が第三者弁済を拒むということは解釈上許されていませんでした。それが、現行の民法では可能になりました。
民法
(第三者の弁済)
第四百七十四条 債務の弁済は、第三者もすることができる。
2 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。
3 前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。
4 前三項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。
韓国の民法解釈が日本の旧民法解釈と同じかどうかまで調べていませんが、韓国の基本法は日本法をベースにしていることが多々あり(刑法も類似)、解釈も同様の場合があります。
仮に同じだということであれば、徴用工訴訟の原告=債権者が韓国政府からの第三者弁済を拒むことはできないということになります。というか、同じじゃなくて債権者の同意が必要ならば韓国政府が第三者弁済の手法を言い出すということは考えにくいです。
また、日本で第三者弁済の規定が債権者も拒めるようになったのは、債権者が関係ができることを望まない第三者がしゃしゃり出てくる(要するに反社会的勢力などが勝手に弁済してくる)ような場面を想定していたのであって、日帝強制動員被害者支援財団は、既に韓国の徴用工訴訟原告と関係を持っているでしょうし、関係を持つことを嫌がるという背景も無い。
解釈上、債権者も拒めることがあるとしても本件では妥当しないという理解も可能。
あとは求償権の放棄が為されるか、それが許されるか、という問題です。
ハンギョレは従前から虚偽の法解釈のナラティブを振りまいていたのか。ここではワザと「債務引受け」についての規定を持ち出して『第三者弁済は被害者(債権者)の同意なしには不可能であると解釈される』と書いてる。酷い歪曲だ。https://t.co/XdIv9q8zrC
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2023年1月17日
昨年の別のハンギョレの記事でも、「債務引受け」についての規定を持ち出して『第三者弁済は被害者(債権者)の同意なしには不可能であると解釈される』というキム・チャンロク教授の駄文が垂れ流されていました。
明らかに世論を騙すためにやっています。
支援財団の設立趣旨には反しない
「朴正熙政権よりも没歴史的」…強制動員賠償案討論会であふれる怒り 登録:2023-01-17 02:27 修正:2023-01-17 07:34 ハンギョレ(魚拓)
チェ・ボンテ弁護士(法務法人サミル)は、併存的債務引受を遂行する機関である支援財団の性格を批判した。同氏は「韓国政府の発表を見ると、支援財団の設立趣旨に真っ向から反して(被害者による)日本政府および企業に対する権利闘争を邪魔する手先にしてしまっている」とし、「日本に保管されている日本製鉄や三菱重工業などが供託した供託金を回収し、そのための訴訟支援をするどころか、定款のこのような目的を達成できないよう債務を消滅させ、このような活動ができないよう妨害する財団へと墜落させてしまった」と語った。
記事を再掲しますが他に「支援財団の設立趣旨に反する」という主張もあるようです。
が、この日帝強制動員被害者支援財団は「対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援に関する法律」に基づいて設立されたもので、その事業目的・設立の趣旨は「被害者支援」です。
金銭債権の弁済の提供の主体が誰であるかは、関係ないでしょう。
法律上「真相を究明し、歴史の真実を明らかにする」とありますが、被害が存在していたとしてもその救済責任を有するのは韓国政府である、ということが日韓請求権協定で決まったわけで、被害実態としての真相は既に明らかにされています。
「日本企業に対して訴訟によって支払いを命じられた賠償金を原告らに支払わせる」という極めて限定的な目的で設立されたのではない。
こうしたところでも読者の認識を誘導して、「だったら仕方がないのかな」と思わせようとしているわけです。日本語で記事が書かれてることから日本人も対象です。
その言説をわざわざ日本に注釈なく再拡散するNHK、ふざけるな。
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