事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

古谷経衡「NIKE批判してる奴、日本にヘイトデモ連中一杯いるじゃん」日本人差別とストローマン論法

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日本人差別とストローマン論法の悪魔合体

古谷経衡「NIKE批判してる奴、日本にヘイトデモ連中一杯いるじゃん」

魚拓

古谷経衡氏が「日本には人種差別は少ないはずだ、よってNIKEのCMはけしからん」と批判している者に対して「実際にヘイトデモをする連中がいるでしょ」と主張。

これは3つの面で非常に問題です。

1:「日本には人種差別は少ない」に対して「実際にある」はストローマン論法

まず、【日本には人種差別は「少ない」】という命題に対して【実際にある】と指摘することは、反論が成立していません。これは「ストローマン論法」の典型例です。

「少ない」に対応するのは「多い」ですが、古谷氏のツイートでは少数の例を挙げるだけで論破できているという内容になっています。

「日本には人種差別は少ない」と言っている者の多くは、具体的な「数」ではなく、世界の他の国との比較で言っているはずです。(「差別は無い」についても、比較的少ない、ほぼ無いと言える程度の悪質性、という意味で使っている者も居る)。

「1桁なら少ないが、100件を超えてるので多いだろう」みたいな乱暴な議論はダメでしょう。

詳しくは以下。

2:ヘイトデモをする者は極少数⇒日本人と一般化する日本人差別

ツイートの最後の方では「一杯いる」と書いてあることから、対応関係にあるとすると、より問題は深刻になります。

本邦外出身者に対する不当な差別的言動或いはいわゆるヘイトスピーチそのものではない)とされているものの多くは、少数の事例でもって在日韓国人一般が悪いかのように主張しているものです。

例えば、大阪市ではいわゆるヘイト規制条例によって、違反者の発言者の氏名を公表していますが、その事案においては在留韓国・朝鮮人53万人中、3000人強の犯罪率から「〇〇人は犯罪民族」などと一般化をして論じていることなどが、違反の事実を構成しています。

参考:答申の概要(ヘイトスピーチ該当性等の有無)〔平 28-16〕(公開期間が設定。魚拓はご自身で検索してください)

川崎などでデモを行っているのは在特会を中心としたごく少数のグループであって、実際に示威活動をしているのはせいぜい数百人規模しか居ません。

古谷氏の主張は、同じ事を日本人に当てはめて行っています。

日本人相手であれば許されると思ってるのでしょうか?

「一杯いる」は、たしかに3桁になってくるとその人数は「一杯」と言えるのかもしれませんが、この文脈でそうは理解しないでしょう。「日本社会に広く存在している」と言っているようにしか文面上は見えない(古谷氏本人が本当にそう考えているとは思えないが)。

3:過度な一般化の論法こそ在日朝鮮人を苦しめている

そして、このような過度な一般化の論法こそが、在日朝鮮人を苦しめている行為そのものです。

古谷氏の主張では、この論法を是認する形となっているのですから、それは在日朝鮮人に対するこのような攻撃を是認しているのと同じです。

批判するべきは論理の飛躍

古谷氏がその立場で批判するのなら、「日本には人種差別は少ない」ということから「よってこのCMはけしからん」と言っている者(こういう論法の人は確かに居るが)に対して、「(世界の中で比較的)少数だろうが関係ない」と言うべきでしょう。

過度な一般化によって特定の集団を貶める言論は「ネトウヨ」全盛期の安倍政権下だったから需要があっただろうが、今後はまともな相手の言論にシフトしないと市場が無いんじゃないですかね?

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