事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

あいちトリエンナーレで外国国章損壊罪?アメリカ国旗が下敷きに

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あいちトリエンナーレでアメリカ国旗が下敷きになっている展示物がありました。

これは外国国旗損壊罪でしょうか?

あいちトリエンナーレでアメリカ国旗が下敷きに

映像の最後の方に映ります。

展示品の元の名前は「馬鹿な日本人の墓」

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https://iwj.co.jp/wj/open/archives/129037

可視化された表現の自由の範疇 〜美術館に作品の撤去を求められた芸術家・中垣克久氏インタビュー ━原佑介記者 | IWJ Independent Web Journal魚拓

今年2月16日、東京都美術館で開かれた「現代日本彫刻作家展」で、彫刻家の中垣克久氏の作品が「政治的な宣伝になりかねない」として、美術館側が作品の撤去を求めるという「事件」が起きた。中垣氏と都美術館は協議の末、作品の表現の一部を削除することで合意し、作品は出展された。

 都美術館は運営要綱で、「特定の政党・宗教を支持、または反対する」場合は、施設の使用を認めないと規定している。中垣氏の作品には、総理の靖国参拝や政府の右傾化を批判する文言が入っており、これが要綱に抵触すると判断されたという。

何でもかんでも芸術と称するのは、個展なら許されますが、助成金が出ているところでは許されないでしょう。

津田大介によれば愛知県は展示のリスクを把握した上で展示を許容してきたらしいのですが、現行の法規に抵触しさえしなければなんでもよいということで、東京都美術館の公募の場合と異なり、何らの基準も設けずにやっていたのは問題でしょう。

外国国章損壊罪にあたるのか?

刑法(外国国章損壊等)
第九十二条 外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、外国政府の請求がなければ公訴を提起することができない。

ここで言う「国旗」に「公用性」があるもののみを指すという解釈が通説です。

実際の事件例でも、日中友好協会長崎市部主催のチャイナ物産展で、チャイナである事を標示するために蛍光灯からつりさげられた中華人民共和国の国旗様の旗を引き下ろして取り除いた事件があり、そこでは刑法は適用されず、単に軽犯罪法1条31,33号で処断されました。(長崎簡命 昭和33・12・3)

逆に中国大使館の敷地内にある中華人民共和国の国旗を引き下ろした事件では、刑法92条が適用されました。

大コンメンタール刑法第2版 66~69頁参照。

考えてみれば、映画の中で国旗が倒れて汚れている描写などが刑法に抵触するのはおかしいので、私的用途で使用されているものについてはここでいう国旗には該当しないとした方が良いと思います。

あいちトリエンナーレは公の施設での展示ですが、「国旗様の旗」は手製のもので、アメリカ大使館等が公的な用途として用いているわけではないので、外国国章損壊罪にはあたらないでしょう。

まとめ:侮辱的であることは間違いない

刑法に抵触してはいないとはいえ、国旗が地面に触れていたり汚れている状態を敢えて表現されるというのはまったく良い思いをしないものです。

芸術に仮託した侮蔑的表現をする者は、表現の不自由ではなく、頭が不自由なのでしょう。

以上