事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

背乗りとはどういう意味か?なりすましと戸籍の乗っ取りとの違いは?

 

背乗り、なりすまし、戸籍の乗っ取りの違い

背乗り」とはどういう意味でしょうか?

この言葉について誤用が多いので整理していきます。

「背乗り」とはどういう意味か?

言葉を整理する必要があります。

「背乗り」「なりすまし」「戸籍の乗っ取り」の違いは?

「背乗り」「なりすまし」「戸籍の乗っ取り」

これらのうち、「背乗り」は実はその内容が定まっています。

対して、「なりすまし」と「戸籍の乗っ取り」は、「背乗り」を含んだものにもなれば、含まないものも意味することがあります。

次の記事で実際の背乗りがどのように行われているのかを確認しましょう。

実際の背乗り=(legalization、合法化)の例

北朝鮮が使う「スパイ術」で、日本の警察組織をかく乱した主婦がいた(竹内 明) | 現代ビジネス | 講談社(2/3)

黒羽一郎が忽然と姿を消したのは、1965年6月13日のことだ。朝起きた一郎は突然、スーツに着替え始め、照子に手話でこう伝えた。

「友達と山に行く」

当時、一郎は35歳。そのまま二度と照子のもとに帰ってくることはなかった。

照子は一郎を必死で探し、警察に捜索願を出したが、「事件性なし」と判断されてしまった。周辺の人々は、一郎が生活に疲れて家出したのだと考えたという。

しかしその後、戸籍だけが動いていたことは誰も知らなかった。

ー中略ー

ここまでの外形的な事実を見ると、一郎は35歳まで歯科技工士として贅沢もせず、寡黙に働いていたが、妻を捨てて突然上京。複数の語学を短期間に習得してセールスマンとして活躍、あらたに東京出身の妻を娶り、都内にマンションを購入できるまでになっていたことになる。

だが捜査員たちがその激変の本当の意味を確信したのは、「黒羽一郎」が1992年6月29日に在オーストリア日本大使館で、旅券の更新手続きをした際に提出した顔写真を見たときだったという。

それは、歴戦のスパイハンターたちも息を飲む驚きだった。写真にうつっていたのは、線が細く弱々しい印象だった福島時代の一郎とはまったく違う、たくましい顎をした体格のよさそうな男だったのだ。整形手術をしても不可能なほど、骨格からしてすべてが違う、別人の顔だった。

このとき、捜査員たちの脳裡にはじめて、「背乗り」という手口が浮かんだのだという。

ー中略ー

元KGBの非合法機関員、つまり「イリーガル」として米国・ニューヨークで活動したジャック・バースキー氏は、私の取材時にこう語っていた。

「私の場合、ワシントンDCのソ連大使館のKGB機関員が、10歳で死亡した子供の出生証明書を手に入れて、私はそれを受け取りました。その出生証明書を使って、図書館のカード、社会保障カード、運転免許、旅券を入手しました。

こうして私は自分の身分を合法化して、就職しました。KGB本部が私にくれた活動資金は7000ドル。最初はメッセンジャーのアルバイトから始め、その後、大学に通いました。私は本国では大学院を卒業して学生を教えていたのに、米国人として生活するために、もう一度大学に通ったのです」

英語圏の機関員の間では「背乗り」を「リーガリゼイション(legalization、合法化)」と呼ぶそうだ。米国では「出生証明書」は国籍を証明する重要書類だ。日本は「戸籍」が狙われる。標的となるのは本物の黒羽一郎氏のように身寄りのない者だ。

このように、「背乗り」とは、上記引用文の最後にあるように

書類は合法で、その書類に記載のある日本人として振る舞うこと」を意味します。

言い換えれば、「書類の不法な改変なしに本人と入れ替わること」が背乗りです。

本人の書類を手に入れることで「合法的に」本人として存在するということです。

ただ、身内が居ると容姿が異なることから直ぐにバレるので、身寄りの無い者や社会的な付き合いが無い者を対象に行われるということです。

通常のなりすましと異なってわざわざ「背乗り」という名称がついてるのは、こうした特殊な事態を言い表すためでしょう。

「単なる戸籍の乗っ取り」と背乗り:戸籍情報の不法な改変があるか否か

これに対して、「戸籍の乗っ取り」や「なりすまし」と表現される事態には、「戸籍(等の書面)の不実記載・偽造によって本人と異なる人物が本人として振る舞う」ことを意味します。

なりすましの例としての替え玉受験

なりすまし」の例としては「替え玉受験」があります。

これは実際に受験をしている者(作成者)が真実の自分の名前ではない、本来受験すべき者の名前(作成名義人)を書いていることで作成者と作成名義人の人格的同一性を偽る行為として偽造となります。

なりすましは、戸籍に関係ない場面でも通用する表現です。

ただ、背乗りの事例に関しても「なりすまし」が使われることもあります。

対して「戸籍の乗っ取り」がどういう場合に使われるかということは判然としません。

こちらも「なりすまし」と同様、「背乗り」とそうでないものも一緒くたにして戸籍の乗っ取りと言われていることがあるようです。

SNSのアカウント乗っ取り

こちらは「背乗り」の転用の事例ですが、分かりやすいと思います。

SNSのアカウント乗っ取りは、SNS側の本人性に関する記述には変化が無いのに、操作している者が別人に入れ替わっているというものですね。

わざわざSNS上の情報を改変する必要はないわけです。

現実の「背乗り」も、わざわざ役所や裁判所に対して戸籍情報の変更を申し出て情報を変更する必要などないわけです。国側の人間と結託して…なんてことをしてリスクを取る必要もないわけです。

最近の背乗りの例

日本人なりすまし21年不法残留、中国籍男を再逮捕 京都 : 京都新聞【 2017年10月20日 22時52分 】

京都府警伏見署は20日、21年間不法に残留していたとして、入管難民法違反(不法残留)の疑いで、京都市伏見区下鳥羽中円面田町、中国籍のアルバイトの男(47)を再逮捕した。

 再逮捕容疑は、1991年6月6日、就学ビザで入国し、在留期間を更新して期限が96年5月31日までだったのに、出国せず不法に在留した疑い。

 同署によると、男は実在する日本人の年金手帳を所有し、その人物の名前を使って生活していたという。同署が今月8日、同区の路上で、放置自転車を持ち去ったとして、占有離脱物横領容疑で逮捕していた。

ここでも、元々存在していた正規の書類を用いて本人に成り代わっていたということがわかります。

小括

  1. 「背乗り」は戸籍情報の改変(公正証書原本不実記載)なく本人になることを指すのが原義
  2. 「なりすまし」と「戸籍の乗っ取り」は、それ以外の広く本人であると偽ること全般に対して用いられることがある
  3. 戸籍情報を不法に改変する、国側の人間と結託するのは「足がつく」リスクが高い行為なので行う必要がない

しかし、現実には「背乗り」の意味をよく理解していない者によって、戸籍情報を改変するような場合にも背乗りと言う者が多いです。

たとえば、次に示す事案においても、「背乗り」が勘違いされています。

深田萌絵の藤井一良に対する「背乗り」指摘は背乗りではない

「背乗り反対」と言いながら、背乗り隠ぺいに走る足立議員 (214) - 深田萌絵 本人公式ノンポリ★ブログ(魚拓です)

私、一度もF祖父が「日本人ではない」なんて言ってないんですよ。その彼の戸籍が乗っ取られたって話でしょ?

論点はF祖父が「日本人かどうか」ではない。
論点はF祖父の戸籍が「乗っ取られた」かどうか。←論点ずらしたがるのでここキープ

足立さん、私が「ウソをついた」証拠を出してください!

得意の論点ずらし、「F祖父は本物日本人」だから記録あって当たり前です。
私は最初から藤井祖父は日本人で、彼の子供になりすましたという論点を必死にズラして印象操作はおかしいでしょ。

まあ、頭いい人だから国民くらい騙せると思ってやってるの分かりますよ。
背乗りに関して、取り締まる法律が無いと何度主張しても「スルー」されてますもんね。
「国会議員に帰化条項!」とか言いながら、「出生地削除」したらどこで産まれた日本人か分からないです。
こういう高等詭弁がお得意です(;´д`)

数年来から現在進行形で、深田萌絵(本名:浅田麻衣子)氏から藤井一良氏に対して、背乗りだという名誉毀損行為が行われています。

しかし、これは実際には「背乗り」の主張ではなく、「戸籍情報の改変」を伴う本人と詐称する行為を主張しています。

これは訴訟資料からも伺えます。

深田萌絵が藤井一良に起こした当事者不適格確認請求訴訟

東京地裁 平成28年11月11日 平成28年(ワ)第11911号 

(別紙)
       訴状訂正申立書
       当事者不適格確認請求訴訟

3.当事者のなりすましについて
 基本事件を提起した株式会社Alpha-IT Systemの代表取締役藤井一良は、平成3年に死亡した日本人藤井治の戸籍に虚偽の申請をして藤井治の息子の振りをしたなりすまし日本人呉也凡の息子であり、申立人藤井一良自身が日本人でもない公正証書原本不実記載に寄って不正に取得された戸籍で捏造された成り済まし日本人と言う実在しない人物であった。平成三年当該事件申立人の戸籍上の祖父にあたる藤井治は死亡し、平成五年に中国人女性が死亡した藤井治の戸籍に入籍して昭和28年生まれの申立人父藤井健夫を平成五年にその子として届け出て、平成六年に昭和59年生まれの申立人の出生届を出した。出生届は国外で生まれた場合でも三ヵ月以内に届けられなければならないので、戸籍法49条違反を以て行われた戸籍取得は刑法157条違反公正証書原本不実記載であり、藤井一良自身の戸籍が法的に有効では無い。従って、被告は日本の法律上で実在しない人物を債権者として基本事件で原告人が負うべきでない義務を課したのは被告国が公務員である裁判所職員及び裁判官の管理義務を怠り、当事者が実在するか否かの確認を怠っている事実を管理しなかった業務上の過失である。

公正証書原本不実記載と言ってるので虚偽の申請行為を前提としています。

ちなみにこの訴訟の確認部分(当事者適格)は深田氏が藤井氏に対して起こしている裁判のうちの一つに過ぎず、訴えの利益は無いので却下されています。
というか、この記載内容は藤井一良氏が「なりすまし=本人と入れ替わっている」と主張しているのか、父の藤井健夫は本人と入れ替わったがその息子は本来日本人として出生届けを出せる立場にないと主張しているのかが判然とせず、何をいいたいのかわかりません。

藤井氏はブログ等で反論していますのでそちらをどうぞ。

少なくとも祖父の藤井治と父の呉也凡はドキュメンタリーの中で登場しており、日本人であると言えるでしょう。

二人はチャイナで生活し、チャイナの名称で生活していたので、その戸籍上の表記については複雑なものがあると言えます。

藤井一良の出生についての特集番組のビデオを公開致します。「学徒出陣50年」蘇る”わだつみ”-戦後なき学徒兵の秘話- – 藤井一良 風評対策ブログ

深田の主張は「日本の役所組織や裁判所がすべてチャイナの手に落ちており、手を回す者が居る」ことを前提にしないと成り立たない主張です。

まとめ

「背乗り」と言うときには、原義としては戸籍情報の不法な改変を含みません。

しかし、それ以外の「本人へのなりすまし」行為を指す用法として誤用している例も多々あるという認識は持っていた方が良いと思います。

以上