なぜなら、国連も法務省も定義していないからである
- 水道橋博士「ヘイトスピーチの定義は国連も法務省も書いてるのになぜ国会議員が知らない?」
- なぜなら、法務省のHPにあるのは本邦外出身者に対する不当な差別的言動の定義だからである
- なぜなら、国連はヘイトスピーチの定義は定まっていないとして一応の理解しか示していないからである
水道橋博士「ヘイトスピーチの定義は国連も法務省も書いてるのになぜ国会議員が知らない?」
「ヘイトスピーチ」の言葉の定義は国連でも法務省でも書いてあるのに、なんで国会議員が知らないのか不思議で仕方ない。
— 水道橋博士(a.k.a. 御茶ノ水博士・Netflix版じゃない方の『浅草キッド』実物版 (@s_hakase) 2022年2月2日
水道橋博士は「ヘイトスピーチの定義は国連も法務省も書いてるのになぜ国会議員が知らない?」とツイート。同様の認識に陥っている者が多いです。
「なぜ消防車が来ない!?⇒誰も消防車を呼んでないのである」というマンガを思い出すシーン。
消防車が来ない話 ① pic.twitter.com/B9MQXpQ1sg
— のりつけ雅春。「アフロ田中」描いてます。 (@zenbutukawarete) 2019年2月18日
なぜなら、法務省のHPにあるのは本邦外出身者に対する不当な差別的言動の定義だからである
https://www.moj.go.jp/content/001352468.pdf
このページはいわゆるヘイト規制法が成立した2016年頃から存在したものがURLを変えているものです。旧:https://www.moj.go.jp/content/001221772.pdf
上掲のページの前にマンガが掲載されています。
「ヘイトスピーチに明確な定義はありません」と書いてあります。
最近の新しいHP上の表記は以下ですが…
特定の国の出身者であること又はその子孫であることのみを理由に, 日本社会から追い出そうとしたり危害を加えようとしたりするなどの 一方的な内容の言動が,一般に「ヘイトスピーチ」と呼ばれています
これは「一般に」という前置きがあることからして、ヘイトスピーチの「定義」として明確化されているものではありません。
また、いわゆる「ヘイト規制法」(この呼称が誤解の要因にもなっている)と呼ばれている法律の内容も似通っていますが、ズレがあります。
平成二十八年法律第六十八号
本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(定義)
第二条この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。
「地域社会からの排除」という限定要素が付いています。
- 法務省HP上にある説明⇒ヘイトスピーチの定義ではなく(誰が言っているのか不明だが)よくある説明として書かれているにすぎない
- いわゆるヘイト規制法上の定義⇒日本外属性者を理由にする地域社会からの排除
- 「ヘイトスピーチの定義」⇒???
こういう関係にあるだけです。
なぜなら、国連はヘイトスピーチの定義は定まっていないとして一応の理解しか示していないからである
アントニオ・グテーレス国連事務総長、 ヘイトスピーチに関する国連の戦略と計画を発表(プレスリリース日本語訳) | 国連広報センタープレスリリース 19-041-J 2019年06月21日(魚拓)
国連でヘイトスピーチに関する取り組みを宣言した文書ではヘイトスピーチの法的な定義や何がヘイトフルなのかについては論争がある、とハッキリ書いてあります。
そのため、「この文書における意味」はこうする、という形で暫定的な意味を書いているにすぎません。
また、よくヘイトスピーチの意味として持ち出されるのが人種差別撤廃条約4条の話ですが、これもヘイトスピーチの定義として書かれたものではない。
第4条
締約国は、一の人種の優越性若しくは一の皮膚の色若しくは種族的出身の人の集団の優越性の思想若しくは理論に基づくあらゆる宣伝及び団体又は人種的憎悪及び人種差別(形態のいかんを問わない。)を正当化し若しくは助長することを企てるあらゆる宣伝及び団体を非難し、また、このような差別のあらゆる扇動又は行為を根絶することを目的とする迅速かつ積極的な措置をとることを約束する。
人種差別の内容として優越性の思想が指摘されています。
さらに「憎悪」という文言がありますが、この部分がヘイトスピーチの禁止の中核要素であると理解されてきました。
ちなみに、人種差別撤廃条約は1条2項で「この条約は、締約国が市民と市民でない者との間に設ける区別、排除、制限又は優先については、適用しない。」とあり、国籍による扱いの差異は合理的である限り差別として扱わないとしています。ここはよく無視して積極的に勘違いさせようとする者が多いので注意です。
国連人種差別撤廃委員会、ヘイトスピーチに関する一般的勧告を採択 | ヒューライツ大阪(魚拓)
一般的勧告において委員会は、条約に「ヘイトスピーチ」という用語自体がないものの、4条に該当するあらゆる発言、反イスラム主義や反ユダヤ主義など民族宗教的集団に対する憎悪の表明、集団殺害やテロリズムを呼びかけるような極端な憎悪の表明などをヘイトスピーチとしてこれまで懸念や勧告の対象としてきたとして、ヘイトスピーチへの取組が条約の趣旨の実現に欠くことのできないものであるとしています。
国際法上の定義も無いと国連の報告者が発言しています。
「ヘイトスピーチは国際法において定義も条文もない」国連報告者 デビッド・ケイ氏による会見 - ログミーBiz(魚拓)
要するに、「定義」というよりも「ヘイトスピーチの要素が表れている文言」だとか、ヘイトスピーチの公約数的理解として「人種等の属性に対する憎悪表現」という用語法が広く用いられているというだけで、「定義」として確定されてはいません。
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