元裁判官の樋口英明 氏が虚偽の事実認識に基づいて判決文を書いていたことを自白。
- 元裁判官の樋口英明「原発は民間住宅より耐震基準が低い」
- 民間住宅は表層地盤、原発は岩盤における振動
- 過去の大地震時における原発立地岩盤における実際の揺れの大きさ
- 福井地裁・名古屋高裁金沢支部の差止訴訟判決文
- まとめ:樋口英明元裁判官の誤認
元裁判官の樋口英明「原発は民間住宅より耐震基準が低い」
大飯差し止め判決の元裁判長 「私が原発を止めた理由」とは 毎日新聞 2021/3/3 14:43(最終更新 3/3 14:47)
元福井地裁裁判長の樋口英明さんが「私が原発を止めた理由」(旬報社)を出版した。「多くの原発の耐震性が一般住宅より低く、その低さの根拠が不可能とされている地震予知に基づくことは間違いなく電力会社が最も国民に知られたくない事実」と指摘している。
「私が原発を止めた理由」は? 三重出身の元裁判官出版 聞き手・大滝哲彰 2021年3月5日 9時00分
私の自宅でも3千ガル(揺れの勢いを示す加速度の単位)以上で設計されているにもかかわらず、当時の大飯原発はそれをはるかに下回る700ガルでした。全く見当外れの耐震性です。2000年以降、700ガル以上の地震動をもたらした地震は全国で30回ありました。原発は平凡な地震にも耐えられないのです。
元裁判官の樋口英明 氏は「原発は民間住宅より耐震基準が低い」と発言していることが報じられています。この事自体は前々から主張していたようです。
三井ホーム(5115ガル)や住友林業(3406ガル)の耐震試験の結果を持ち出して指摘しているのですが、この部分は、比較不適当なものを比較している時点で虚偽の事実認識に基づいていると評価せざるを得ません。
民間住宅は表層地盤、原発は岩盤における振動
地震動には2種類あり、岩盤での地震動と、表層での地震動があります。
原発設置にかかる基準地震動とは、原子力施設の耐震設計を行うにあたり基準となる地震による岩盤上での揺れを言います。
一般住宅等で用いられる耐震基準の揺れは、この図で言えば表層地盤における揺れに対応したものであって、揺れが増幅されることが書かれています。
過去の大地震時における原発立地岩盤における実際の揺れの大きさ
女川原子力発電所の概要および 東日本大震災時の対応状況 東北電力株式会社
過去の大地震時における原発立地岩盤における実際の揺れの大きさについて。
東日本大震災時における女川原発1号機 原子炉建屋地下2階で検出された地震加速度は、567.5ガルでした。
「2933.2ガル」だとか「4022ガル」だとか言われているのは、軟弱な地盤における最大値を取り上げたものです。
原発は、そもそもそういう揺れが生じるような地盤には立地をしていないのだから、取り上げる意味がないわけです。
よって、一般住宅等に採用されている耐震基準としての地震加速度の数値を、そのまま原子力発電所における耐震基準としての地震加速度の数値と比べるというのは、専門知識が無くとも非常識甚だしいということが分かります。
福井地裁・名古屋高裁金沢支部の差止訴訟判決文
福井地方裁判所平成26年5月21日判決 平成24(ワ)394 平成24(ワ)394 大飯原発3,4号機運転差止請求事件
名古屋高等裁判所金沢支部平成30年7月4日平成26(ネ)126平成26(ネ)126大飯原発3,4号機運転差止請求控訴事件
同様の事は、名古屋高裁金沢支部も指摘しています。
この点、福井地裁判決の方は、平成19年7月の新潟県中越沖地震において,柏崎刈羽原発の解放基盤表面(その上部に地盤や建物がなくむき出しになっている状態のものとして仮想的に設定されたもの)における地震動の最大加速度値が1699ガルと推定されていることから軟弱地盤でなくとも耐震基準は不適当だとしていますが、高裁は「震源特性の影響のみならず,柏崎刈羽原発の敷地固有の地盤特性に負うところが大きく,本件発電所においてその大きさを考慮しなければならないものではない」と判断しています。
つまり、名古屋高裁の判決では、同じ岩盤層における仮定的数値であっても比較不適当なものがあるとして、原告の主張を退けているということです。
重要なのは、福井地裁の判示の中でも一般的な建物の耐震基準と原発のそれとを比べている部分は見当たらない点でしょう(私の見落としかも)。
まとめ:樋口英明元裁判官の誤認
- 民間住宅は表層地盤、原発は岩盤の上に建設
- 耐震基準として定められる「ガル」も、その層における揺れを想定している
- よって、樋口英明元裁判官は本来比較不能な表層と岩盤との耐震基準の話を混同
樋口裁判官が言えることは、せいぜい「国の原発設置の耐震基準は、大型地震にとっては安全ではない」という所まででしょう。
それを超えて「原発は一般住宅よりも耐震性が低い」と言うのは、見解の相違を超えて虚偽の事実認識であり、それは一般通常人によっても判別可能な事項です。
期せずして、樋口英明氏が個人的な信条を判決に反映させていたのだということが明らかになった報道だと言えるでしょう。
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