ハフポスト安藤健二による【内閣官房と自民党、公式Twitterで「羽鳥慎一モーニングショー」を名指しして反論。言論弾圧を危惧する声も】という記事が、悪意に満ちた、本当に低レベルのものでした。
そこで行われている印象操作が典型例だったのでその手口を晒します。
- ハフポスト安藤健二の「言論弾圧」記事
- 内閣官房国際感染症対策調整室と自民党広報の連続ツイート
- 「未知のウイルス」の用語法を誤魔化して印象操作
- 新型コロナウイルスは新感染症ではない
- 新型インフル特措法を適用しない文脈での「未知のウイルス」
- 安倍総理は新型コロナの性質を述べる文脈での「未知のウイルス」
- 法律用語と日常用語の差異を利用する「悪意」の煽動・印象操作
ハフポスト安藤健二の「言論弾圧」記事
当該記事は、内閣官房国際感染症対策調整室と自民党広報のツイッターアカウントが、3月5日放送の「羽鳥慎一モーニングショー」に反論する連続ツイートをしていることを紹介し、それは言論弾圧であるという趣旨の内容です。
該当ツイートは以下です。
内閣官房国際感染症対策調整室と自民党広報の連続ツイート
【#新型コロナウイルス】
— 内閣官房国際感染症対策調整室 (@Kanboukansen) 2020年3月5日
3月5日のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」で、「総理が法律改正にこだわる理由は、『後手後手』批判を払しょくするため総理主導で進んでいるとアピールしたい」というコメントが紹介されています。(1/3)
【#新型コロナウイルス】
— 内閣官房国際感染症対策調整室 (@Kanboukansen) 2020年3月5日
法律改正をする理由はそうではありません。あらゆる事態に備えて打てる手は全て打つという考えで法律改正をしようとしています。(2/3)
【#新型コロナウイルス】
— 内閣官房国際感染症対策調整室 (@Kanboukansen) 2020年3月5日
現行の新型インフルエンザ等対策特別措置法では未知のウイルスしか対象としておらず、新型コロナウイルスはウイルスとしては未知のものではないので、今のままでは対象とならないからです。(3/3)
これらのツイートは、当該番組内で「総理が法律改正にこだわる理由は、『後手後手』批判を払しょくするため総理主導で進んでいるとアピールしたい」というコメントがなされたことに対する反論です。
その中で法改正の理由、すなわち現行法の新型インフルエンザ等特措法を適用できない理由を述べています。これは自民党広報も同じです。
3/5テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」で「総理が法律改正にこだわる理由は『後手後手』批判を払拭するため総理主導で進んでいるとアピールしたい」との政治アナリストの発言がありました。#新型インフルエンザ等対策特措法 の改正を目指す理由は?(1/2)
— 自民党広報 (@jimin_koho) 2020年3月6日
#新型コロナウイルス はウイルスとしては未知のものではないため「未知のウイルスしか対象としていない」現行の法律が適応できません。不測の事態に備えるため「打てる手は全て打つ」というのが法律改正を目指す理由です。
— 自民党広報 (@jimin_koho) 2020年3月6日
引き続き、新型コロナウイルス 対策への皆さんのご協力をお願いします(2/2)
ハフポストの安藤氏はこれに対して「言論弾圧」などと書きました。
反論されない権利など存在しないのに何を言ってるのか?
しかも、政府・与党側に対して再反論する機会は無限に存在しており制限されていないのに。
そして、最も異常なのは次の指摘です。
「未知のウイルス」の用語法を誤魔化して印象操作
内閣官房と自民党、公式Twitterで「羽鳥慎一モーニングショー」を名指しして反論。言論弾圧を危惧する声も
また今回、内閣官房と自民党は新型コロナウイルスについて「ウイルスとしては未知のものではない」と投稿したが、安倍首相は2月29日の記者会見の中で、新型コロナウイルスについて「未知の部分がたくさんあります」「未知のウイルス」という言葉で説明していた。
Twitter上では「安倍首相の発言は間違いということ?」「どっちなんや…」と戸惑う声が広がっている。
この部分は、「未知のウイルス」という同じ言葉を使っていても、場面が異なるため意味も異なることを無視している悪質な印象操作です。
一方は「新感染症には当たらない」という法解釈の場面。
もう一方は「新型コロナの性質」という日常用語として言及している場面です。
新型コロナウイルスは新感染症ではない
上記でまとめていますが、ここでも大まかに論じます。
新型インフル等特措法は感染症法上の「新型インフルエンザ等」か「新感染症」でないと適用できません。新型コロナに同法が適用されるとすれば「新感染症」に指定されねばなりません。
しかし、感染症法上の「新感染症」とは、感染症法の構造により、『病原体=ウイルスが未だ特定されていないものを意味する』ものと理解するしかありません。
そのため、新型コロナウイルスは既に「コロナウイルス」という病原体が特定されておりゲノム解析も行われているので、感染症法上の「新感染症」には当たらないのです。
その他、病状の重篤性などの要件も満たしていないと考える他ない
新型インフル特措法を適用しない文脈での「未知のウイルス」
内閣官房国際感染症対策調整室と自民党広報は、「なぜ新型インフル等特措法を適用しないのか?」という法解釈の文脈の元で「未知のウイルス」という用語を使っています。
それはつまり、感染症法上の「新感染症」には該当しない、既にコロナウイルスという病原体が特定されている、という意味で使っているということが明らかです。
これに対して安倍総理はそういう文脈ではありません。
安倍総理は新型コロナの性質を述べる文脈での「未知のウイルス」
ハフポスト安藤氏の上記記事でテキストにハイパーリンクが付けられている「安倍総理の未知のウイルス発言」のリンク先は以下です。
令和2年2月29日 安倍内閣総理大臣記者会見 | 令和2年 | 総理の演説・記者会見など | ニュース | 首相官邸ホームページ
今回のウイルスについては、いまだ未知の部分がたくさんあります。よく見えない、よく分からない敵との闘いは容易なものではありません。率直に申し上げて、政府の力だけでこの闘いに勝利を収めることはできません。最終的な終息に向けては、医療機関、御家庭、企業、自治体を始め、一人一人の国民の皆さんの御理解と御協力が欠かせません。
省略
今回のウイルスについては、いまだ未知の部分が多い中、専門家の皆様の御意見も踏まえながら、前例に捉われることなく、国民の健康と安全を守るために必要な対策を躊躇なく講じてきたところであります。
省略
未知のウイルスとの闘いはとても厳しいものであります。その中で、現場の皆さんはベストを尽くしていただいているものと思います。同時に、それが常に正しい判断だったかということについて、教訓を学びながら自ら省みることも大切です。私自身も含めてですね。
「未知」という単語が登場するのは上記3か所です。
安倍総理が「未知のウイルス」という言葉を使っているのは、新型コロナウイルスの性質について述べている場面であって、法解釈の場面ではありません。
よって、安倍総理の発言と内閣官房国際感染症対策調整室と自民党広報のツイートで同じ「未知のウイルス」という言葉が使われていたとしても、別の意味であるということは明らかです。
「オールラウンドエディター」の安藤氏がこのことに気づかないハズが無いでしょう。
気づかなかったとしたら、これまで何を見てきたのか?という話です。そんなことはあり得ないでしょう。
「内調」と自民党広報のツイートが分かりにくいのであれば、それを一般人にも分かりやすいように説明したり、逆に「内調」らに対して「分かりにくい」という筋で批判するべきです。
メディアが一般人の混乱に乗じて更なる煽動をするのは見るに堪えません。
法律用語と日常用語の差異を利用する「悪意」の煽動・印象操作
このように、法律用語と日常用語の差異を利用する、或いは両者を混同させることによる煽動・印象操作はしばしば行われています。
例えば「テロ等準備罪」の議論過程においても、「一般人に適用されるのか?」というくだらない質問がありました。「法律用語である構成要件の主体たる者」としては一般人が対象ではないが、私達が普段素朴な表現として使っている「一般人」はテロ等準備罪の対象になり得るというだけの話なのに、両者を混同して印象操作している例がありました。
これをやってる記事は100%「悪意」(法律用語・日常用語、両方の意味で)なので、到底信用できないものと判断するべきです。
以上