津田大介が記者会見を行ってから数時間後、14時から表現の不自由展実行委員会側も外国特派員協会で記者会見をし、津田大介の説明に対してツッコみを入れています。
気になった点だけ取り上げます。
- 表現の不自由展実行委員会の外国特派員協会記者会見
- 不自由展の展示は検閲があったもの?
- 検閲・表現の自由の侵害:ではなくガバメントスピーチ
- トリエンナーレ検証委員会委員の上山信一:ガバナンスがガバガバ
- There is no censorship
表現の不自由展実行委員会の外国特派員協会記者会見
動画の13分くらいから表現の不自由展実行委員会の外国特派員協会記者会見が始まります。気になった点だけ取り上げます。
トリエンナーレ事務局への抗議電話について
先行して津田大介の記者会見において、「電話対応等は予想できる限りの十分な対策は講じていた」と説明されていました。
しかし、不自由展側からは、トリエンナーレ事務局への抗議電話については、当初は「公務員だから名乗らなければならない、先に切ってはならない」という指示があったようですが、「後日、強制力が無いということが分かってきた」と指摘。
また、「自動音声システムを導入することを提案し、採用された」「まだまだ対策の余地があったし、対策しなければならなかった」とも指摘していました。
私もたった1回だけですが、トリエンナーレ事務局に電話がつながりました。
担当の方は私の話し方について「非常に冷静」と言ってくださいましたが、どれだけ苛烈な言葉を浴びせられていたかは想像するに余りあります。私もこの種の業務の経験があるのでしのびない気持でした。
公務員だから実名を名乗る必要があるという点についても、そんな法的義務は存在しないでしょう。説明責任を果たすために職員の名前は必要ではない。聞いている側が職員の名前を知ったところで行政の行為を理解することには繋がらないからです。継続対応で同じ人間でないと意味が無いという場合だけ名乗ればよい。
自動音声システムの導入も、「録音させていただきます」の自動音声が入るだけで、かなり迷惑電話の抑止力になると言われていますから、今回においても有効だったでしょう。
不自由展の展示は検閲があったもの?
不自由展「公共施設や公共空間で検閲された美術作品を集めたものです。こちら(上図)は朝鮮の植民地支配、天皇制、福島の放射性物質汚染、その他となります。全体の構成は、日本の歴史や政治体制における負の問題を主題とした作品が多くを占めます。日本社会での検閲はほとんどこのモチーフの問題意識から発生します。これは2014年以降増えてきましたが最近かなり悪化しています。」
不自由展側はこう主張していますが、今回展示されたものが過去に憲法21条2項が禁止する「検閲」であると認定されたことは有りません。
判例の「検閲」定義が狭すぎるとしても、検閲という言葉は「公権力が」「事前にチェックして」「発表の場を奪う」という要素が公約数的であるはずです。
これらの作品について、そのような事案は存在していません。
これが英語では"censorship"として発信されています。
さらっと福島県の話題も紛れ込ませています。
とんでもないフェイクです。
検閲・表現の自由の侵害:ではなくガバメントスピーチ
「大村知事・津田監督は、今回の件は検閲ではなく安全の問題だと主張していますが、私たちはそうだとは思っていません。検閲にあたると思います。」
「河村市長と菅官房長官の発言も内容に踏み込んだ表現の自由の侵害だ」
不自由展側はこう主張しています。パブリックフォーラムだとの主張もしていました。
しかし、今回は単なる契約上の問題であって、憲法上の表現の自由の権利の問題ではありません。
主催・運営はほぼ愛知県たるトリエンナーレ実行委員会であり、これは「ガバメントスピーチ=政府言論」 と呼ばれる領域の話です。
実際に展示作業を行っている人間が誰であろうが、展示の法的な主体は公的機関たるトリエンナーレ実行委員会なのです。
仮に「愛知県そのものではなく実行委員会なので公的機関ではない」から政府言論ではないと言うならば、公的機関が権利を制約した話ではなくなるので、表現の自由の侵害の話ではなくなります。
憲法上の権利は国民が公権力との関係で主張するものであって、私人間の争いは基本的に民法上の規定によって規律されるという判例が確立しています。
トリエンナーレ検証委員会委員の上山信一:ガバナンスがガバガバ
一方で不自由展は、少女像を置いただけで、政治プロパガンダと見られ、さらに他作品とあわせサヨク的企画と見られるリスクは明らかだった。プロのキュレーターが関与できない状況に至った過程を検証、再発防止策を考えるべき https://t.co/5BJWQMp4ci
— 上山信一 (@ShinichiUeyama) August 31, 2019
動画の43分くらいからは、トリエンナーレ検証委員会に対する不信感も指摘されています。
「そもそも検証委員会の者がネットの公共空間でこのような内容を発信するというのは不見識」
まったくその通りですね。
検証委員会の委員に選任された後は、個人的な場での発信は控えるべきでしょう。
ましてや、第一回目の検証委員会が8月16日に開催された後にこのツイートをしているのですから、トリエンナーレのガバナンスをチェックするとか言ってる検証委員会自体のガバナンスがガバガバなんじゃないでしょうか?
同じ検証委員会の委員である憲法学者の曽我部教授もツイッターはやっていますが、検証委員会に選任されてからはメディアでの発信もしていないハズです。
曽我部教授が本件について見解を述べた記事が各所にありますが、それは委員就任前のもののはずです。
There is no censorship
この話は「検閲=censorship」だという認識が海外に拡散されているようです。
実際に英語でこの問題を取り上げて検閲問題だとして言えるブログも見つかります。
表現の不自由展側の人間が、こうしたフェイクを拡散するために外国特派員協会を利用し、まったく関係の無い福島の話と絡めているのは本当に許し難い行為だと思います。
以上