事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「表現の不自由展に10億円はデマ・寄付金420万円」という詭弁:大村知事会見の誤魔化し

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8月5日の大村・愛知県知事の会見で、「表現の不自由展に10億円はデマ」という詭弁による論点のすり替えがありました。

「表現の不自由展に10億円というデマ」があった?

<令和1年8月5日>愛知・大村知事会見(少女像中止、河村市長に反論、大阪府知事大阪市長を批判、他) - YouTube

これは昨日午前中にですね、担当と相談をして、いろんなご意見があるとは思うんですが、どうもネットとかでですねこの展示に10億円使ってる、10億円使ってる、10億円使ってる、というレッテル張りがですねということが流れているんですね。それはもう為にする議論しか無いんですね。なんであんなちっちゃな展示で、見にきてもいない人がね、10億円だ10億円だ税金だと言われるから、ちょっとね、それに対応するのも、んーと思いましたけどね、事実、ファクトをきちんと示す、示させていただくという意味で、今回の表現の不自由展に使われた費用は420万円ですよと、全体が予算で言うと12億円かな。でもこれは420万円なんで、給付金とか協賛金とか頂いておりますので、そうした方がたのお申し出などもありますので、420万円をそうした方がたの民間からの寄附でまかなっていきましょうということで、津田さんとも話をしてそういう形でネットですけどね、発信させて頂いたということで、そういうふうにしていただければということです。そうしなきゃいけないとかそういうことではなくて、あんまりにもこれに10億円これに10億円というまぁ、何なんでしょう、こう誤った情報でレッテル張りで見に来てもいない人がですね、あの規模で10億円かかるわけがないじゃないですか。にもかかわらず10億円だ税金だとんでもないとかいうことばっかり言い立てられているので、それは違いますよということを分かりやすく言うためにですかね、それでも言われるでしょ、いやそんな話じゃないんだ、建物使ってるじゃないか事務局がなんだかんだ言われますけど、まぁ、それは何があっても言うんでしょ。でももう我々としては事実ではないことを言い立てられてドンドンドンドンレッテル張りされていく、印象操作どころじゃないですよね、事実じゃないことを決めつけて、だからけしからんというのを一方的に洪水のように流している。それも特定の方がですよ。特定の方が。もうそこらへんはそういう世の中なのかというか。だからそういう人達に対してブロックするという意味でね、分かりやすくするということでそれじゃこの点にについては税金は使いませんよということをメッセージとして出すということです。それ以上でも以下でもありません。それ以上の意味はありません。そういう方がたをブロックしておかないともうとにかく特定の方がもうパンパカ出しますからね。10億円だ税金だ10億円だって。よう書かれるわと思うけどまぁしょうがないですよねそれは。そうしたくて仕方ないんでしょそういう人は。だからそういうことだからね、ブロックするためにも遮断するためにもそういうまったく事実でない根拠のない議論から遮断するためにもそういうことを申し上げたということです。

同じ内容のことを何回も言ってるんですが、こういう発言の場合は大抵が言ってる内容も意味不明です。文字に起こすと頭が痛くなるような事をだらだら喋ってるだけだということがハッキリわかります。(「特定の方が」って何だよ)

トリエンナーレに補助金が使われることとなっているため、表現の不自由展もその恩恵を受けている構造であるということを批判する者が多数居るのですが、その中でなぜか「表現の不自由展に10億円が使われていると言われている」ことを取り上げて否定しています。

こういうのを「論点のすり替え」と言います。

あと、「ネットで発信させて頂いた」っていうのは津田大介のツイッターですかね?大村知事のツイッターでも愛知県のHPでもトリエンナーレのHPでも発信は見当たらないのですが。

あいちトリエンナーレと表現の不自由展と津田大介の関係

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「表現の不自由展・その後」は、あいちトリエンナーレのプログラムのうち、「国際現代美術展」の中の一つの展示です。

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トリエンナーレ実行委員会は厳密には自治体とは別組織ですが、実質的に愛知県と同一です。なので、「民間事業に公金が支出されている」のではなく「公的機関が運営している芸術祭」なのです。

津田大介はトリエンナーレ実行委員会の芸術監督として実行委員会から作品の選考等の職務を委嘱されています。

つまり、トリエンナーレ全体の展示について津田大介が企画の職責を追っているということになります。

トリエンナーレの事業負担と補助金

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あいちトリエンナーレ及び文化芸術振興事業への寄附金を募集しています(文化振興基金) - 愛知県

あいちトリエンナーレ 2019 について 名古屋市

2019年度「日本博を契機とする文化資源コンテンツ創成事業(文化資源活用推進事業)」採択一覧

実行委員会運営費用が全体で約12億6600万円かかっています。

そのうち愛知県負担金は7億8600万円ですが、文化庁の助成金7829万円が愛知県を事業者として採択されています。

名古屋市の負担金が2億1000万円ですから、合計で約10億円が愛知県と名古屋市から支出されていることになります

「表現の不自由展に10億円」と言ってる人はいるのか?

ツイッターで検索すると「有本香 デマ」というのがあって、このツイートが取り上げられているのが見つかりました。

大村知事の発言は、どうも有本氏のことを念頭に置いているようです。

魚拓:https://web.archive.org/web/20190806120342/https://twitter.com/tsuda/status/1157839533116837889

しかし、有本氏はトリエンナーレ全体の芸術監督である津田大介に対して言及しているのですから、表現の不自由展以外の展示についても「杜撰な企画」の可能性があると言っているように読めます。

少なくとも明示的に「表現の不自由展が10億円かかっている」と言っていることはありませんし、一般人の感覚として10億円があの表現の不自由展について言及しているとは考えられません。

補助金はトリエンナーレ全体に対して出ることになっているにせよ、表現の不自由展はその10億円のイベントに「乗っかってる」展示であるため、他の展示への影響を切り離すことは不可能です。

「費用420万円分は寄附にしたから問題ない」ではない

「420万円を寄附にしたから問題ない」となるわけがありません。

表現の不自由展はトリエンナーレのチケットがあることで展示を見ることができ、表現の不自由展だけのチケットがあるわけではありませんでした。

展示場所も愛知芸術文化センターという公の施設のうち、8階の愛知県美術館ギャラリーという場所を使用していました。

当然、トリエンナーレの公式WEBサイトにも表現の不自由展は紹介されています。

トリエンナーレの一部を構成することで多くの来客数が見込めていたわけですから、費用分は寄附でまかなったから無関係では済まされません。

ところで、トリエンナーレに寄付をした企業はイオンやトヨタグループなどがありますが、表現の不自由展に対して寄付金が使われても良いのでしょうか?

それとも「申出があった」のはまた別の人・企業であって、任意の拠出だったのでしょうか?だったらその「表現の自由を守ろうとした勇敢な人・企業」の名前を教えてほしいですねー()

まとめ:「10億円デマ」は大村知事のすり替え

「10億円デマがネットであった」などというのはごまかしに過ぎません。

指摘を受けて急きょ寄付金に頼ることにしたようですが、元々は「表現の不自由展・その後」の費用分については愛知県か名古屋市の負担分から拠出されていたのですから、「事実と異なるレッテル張り」ではない訳です。

たとえ寄付金によったとしても、それまでにトリエンナーレのブランド価値を利用して宣伝していたのですから、当然、作品の選考過程や文化庁の審査体制のチェック、津田大介を芸術監督に決定した委員の判断過程などが問いただされるべきでしょう。

以上