事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

伊是名夏子・弁護士ドットコム「国交省から鉄道会社に乗車拒否改善の通達」と書いてしまう

伊是名夏子弁護士ドットコム

6月18日、伊是名夏子へのインタビュー記事が弁護士ドットコムでありましたが、不可解な記述が… ※追記あり

伊是名夏子「国交省から鉄道会社に乗車拒否改善の通達」

2021年06月18日 10時18分 伊是名夏子さん語る「乗車拒否問題」後の中傷の嵐、それでも目指す「誰もが生きやすい世界」 塚田賢慎

――国交省では、駅の無人化におけるガイドラインの策定が、障害者当事者団体とJR東日本も含む鉄道事業者の話し合いによって進められています。どのような展開を期待していますか

全体の流れとしては、合理的配慮についてよい方向に進んでいます。

国交省から4月14日、各鉄道会社宛に、来宮駅での介助を求めた利用者に対して、乗車拒否として受け取られる事象が起こったことへの改善を求める注意喚起の通達が出されました。

国交省から鉄道会社に「通達」???

これはどういうことでしょうか?

国交省の通達一覧:最終更新日2021年5月18日

告示・通達一覧 - 国土交通省

最終更新日2021年5月18日の通達一覧に「2021年4月14日の通達」は書かれてません。

ざっと10年ほどさかのぼってみましたが、毎年4,5月は通達が他の月に比べてあまり出ていないのが分かりますから、単なる更新ミスという事でも無さそうです。

「通達」の意味と国交省・障害者団体・鉄道事業者との意見交換会

国家行政組織法

第十四条 
2 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達をするため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。

通達」とは行政機関の所掌事務について、上位組織から下位組織・職員に対して行う命令・示達と言えます。行政機関内部の話。

鉄道会社に対して行うものという意味としては法令上はあり得ません。

駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関する障害当事者団体・鉄道事業者・国土交通省の意見交換会

※6月21日追記

弁護士ドットコムで以下変更が追記されていました。

(6月21日13:36追記  国交省から出された「通達」に関して、訂正しました。訂正前の文章:国交省から4月14日、各鉄道会社宛に、来宮駅での介助を求めた利用者に対して、乗車拒否として受け取られる事象が起こったことへの改善を求める注意喚起の通達が出されました。)

本文の記載内容が以下、変更されました。

国交省鉄道局鉄道サービス政策室から4月14日、各地方運輸局を通じ、全国の鉄道事業者に向けて、来宮駅での介助を求めた利用者に乗車拒否として受け取られる事象が起こったことへの改善を求める注意喚起の連絡がなされました。

・利用者に乗車拒否として受け取られる「対応」をしたこと
・有人駅を案内して無人駅での「介助を拒否」したこと

いずれを問題視する趣旨の中身だったのか、それともその両方なのか。

よって、以下の記述のうち、意見交換会に関するものはほぼ無意味化しましたが、敢えて残します。

****追記終わり**** 

第4回意見交換会(2021年 5月14日)配布資料に以下のようなものがあります。

国交省の通達?

国交省の通達?

「降車を希望した駅が無人であることを理由に有人駅での降車を求められた事例」

「無人駅であることをもって駅の利用を断っていることはないとの認識である」

という記述は、例の【乗車拒否捏造事件】を伺わせる内容です。

しかし、「来宮駅」の事案を明示してはいません。

そして、この文書は「駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関する障害当事者団体・鉄道事業者・国土交通省の意見交換会の現状とりまとめ(案)」であり、正式決定されているものではありません。

5月14日の時点でこの認識なのだから、4月14日の時点で「各鉄道会社宛に、来宮駅での介助を求めた利用者に対して、乗車拒否として受け取られる事象が起こったことへの改善を求める注意喚起」が出ているとはあまり考えられません。

そもそも塚田記者は伊是名氏に対し「障害者当事者団体とJR東日本も含む鉄道事業者の話し合い」について問いかけていますし、あの事案から今まで伊是名氏は何度か発信をしていますが、「4月14日の通達」に触れたものはありませんでしたから、伊是名氏の言う「4月14日の通達」とは、この報告文書に過ぎないものを指している可能性が極めて高いと言えます。

弁護士ドットコム・塚田賢慎記者は伊是名氏を守らないのか

伊是名氏が報告文書に過ぎないものに書かれている意見交換会の現状とりまとめ案に過ぎないものを何か通用力のあるものと勘違いしてしまったこと、「通達」というワードを使ってしまったことは仕方がないと思います。

しかし、弁護士ドットコムの看板で出してる文章に法令上の用語である「通達」の誤った使われ方が為されているということは非常に残念です。

塚田賢慎記者は東京スポーツから現職の弁護士ドットコム編集部に転職したようですが、このあたりは社内でチェックしてあげられなかったのでしょうか?

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