事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

ふるさと納税の対象から泉佐野市らが除外:市の主張文書が勉強になる

f:id:Nathannate:20190517172339j:plain

大阪府泉佐野市がふるさと納税の新制度の対象外となったことを受けて

ふるさと納税の本来の役割とは? 2019 年 5 月 17 日 泉佐野市 

という文書をまとめて公表しました。

読み物としても面白く、勉強にもなるので抜粋して取り上げます。

ふるさと納税「三種の神器」:肉・カニ・米

ふるさと納税三種の神器」、いわゆる人気の返礼品です。当時は、北海道上士幌町の「」、長野県阿南町の「」、鳥取県米子市、境港市の「カニ」が大変人気で、掲載されるとすぐに品切れになるようなものもありました。

その後、山形県天童市の活躍で「フルーツ」もこれに加わることになります。

たしかに返礼品のページを見ても、これらが出現する確率は高いです。

これらが用意できない自治体はこれまでは他の自治体のものを返礼品に加えていましたが、6月1日からは「地場産品規制」によってできなくなりました。

鳥取県がパイオニア

実は、「スタバは無いけど、砂場はある」で有名な鳥取県が「7 割」という高還元率で返礼品を提供していました。しかも、県ですから鳥取県全域の事業者から返礼品を提供させ、豊富な返礼品ラインナップということも鳥取県がパイオニアでした。そういったこともあり、鳥取県は、2015 年の寄附金額で全国 3 位になりました。実は、高還元率のパイオニアは鳥取県だったということはあまり知られていないのではないでしょうか。

今は既に「スタバも砂場もある」鳥取県ですが、ふるさと納税制度が発足した当時は存在していませんでした(2015年に出店した)。

「県全域の豊富な返礼品ラインナップ」

というのが重要なキーワードですね。

島根県と間違えないように!

ふるさと納税制度の目的は「特産品の PR」「地場産業の振興」「地域経済の活性化」ではない。

返礼品で寄附者を釣るような募集のやり方は「ふるさと納税の本来の趣旨」にそぐわないと、北陸地方の自治体を中心に反対意見が出るようになります。
こうした動きに対し返礼品を提供する自治体は、批判への反論として、返礼品を送付するのは「特産品の PR」「地場産業の振興」「地域経済の活性化」などと主張するようになりました。
ー中略ー
その際、返礼品を提供していた自治体が訴求した上記のような主張が、あたかもふるさと納税の趣旨のように伝えられ、徐々にこれが「ふるさと納税の本来の趣旨」であるかのように認知が広がっていきました。

「特産品の PR」「地場産業の振興」「地域経済の活性化」

そういう認識は私はまったくもってなかったのですが、確かにメディアの報じ方を振り返ってみると、そういうものと捉えられるようなものになっていたなと思います。

ふるさと納税は、なぜ創られた?

省庁や大会社、人口、税収など、全てにおいて首都圏に一極集中している一方で、過疎化、産業衰退、人口減少、超高齢化などによって地方が著しく疲弊している状況があり、格差是正のため、首都圏に集中する税収の一部を地方へ移し変える、それを国民が自由に選択することができる制度として創設されました。

「国民が自由に選択できる制度」というのは、総務省もふるさと納税の理念を説明したページで「納税者が寄附先を選択する制度」と言っています。

総務省|ふるさと納税ポータルサイト|ふるさと納税で地方創生

他方で、「自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと」による「地域のあり方をあらためて考えるきっかけ」を作ることも第三の意義として説明しています。

官僚はふるさと納税制度には大反対で抵抗は非常に激しかったそうです。
なぜ反対したのかというと、政府(官僚)が税を徴収して政府(官僚)が配分するのが公正であると官僚は考えていたからです。
また官僚は非常に優秀ですので、現在の本市のように政府(官僚)のコントロールの効かない自治体が発生するのを予期していたのかも知れません。

しかし、ふるさと納税制度は、一旦税を中央政府が国民から集めて全国に差配する仕組みとは相反しています。

いわば、国民から直接自治体に税が供給されるような仕組みとなっています。

ですから、中央官僚としては権力の源泉を失ったことになるのです。

この制度の規模が拡大していけば、所管省庁の権力は相対的に小さくなっていきます。

それが気に食わなかったんだろうというのは、高橋洋一教授などが従前から指摘していました。

総務大臣による返礼品規制の通知集

年次を追って、規制対象がどんどん拡大していくのが分かります。

2015(平成 27)年 4 月 1 日付け 総務大臣通知

始めての総務大臣通知の内容は以下のようなものでした。
◎返礼品の価格を表示しないよう
◎返礼品割合を表示しないよう
◎以下の返礼品を送付しないよう
・換金性の高いプリペイドカード
・高額の返礼品
・返礼割合の高い返礼品

2016(平成 28)年 4 月 1 付け 総務大臣通知

二通目の総務大臣通知、内容は以下のようなものでした。
◎返礼品の価格を表示しないよう
◎返礼品割合を表示しないよう
◎以下の返礼品を送付しないよう
・金銭類似性の高いもの
(プリペイドカード、商品券、電子マネー・ポイント・マイル、通信料金等)
・資産性の高いもの
(電気・電子機器、貴金属、ゴルフ用品、自転車等)
・高額の返礼品
・返礼割合の高い返礼品

2017(平成 29)年 4 月 1 付け 総務大臣通知

三通目の総務大臣通知、内容は以下のようなものでした。
◎返礼品の価格を表示しないよう
◎返礼品割合を表示しないよう
◎以下の返礼品を送付しないよう
・金銭類似性の高いもの
(プリペイドカード、商品券、電子マネー・ポイント・マイル、通信料金等)
・資産性の高いもの
(電気・電子機器、家具、貴金属、宝飾品、時計、カメラ、ゴルフ用品、楽器、自転車等)
・高額の返礼品
・返礼割合の高い返礼品
◎返礼割合を3割以下にすること
◎市民には返礼品を送付しないよう

総務省が特に問題があると考えている自治体には、総務省から直接指導の電話がありました。泉佐野市には、総務省の課長補佐からピーチポイントの提供を止めるようにとの指導がありました。

2018(平成 30)年 4 月 1 付け 総務大臣通知

四通目の総務大臣通知の内容は以下のようなものでした。
◎返礼品の価格を表示しないよう
◎返礼品割合を表示しないよう
◎以下の返礼品を送付しないよう
・金銭類似性の高いもの
(プリペイドカード、商品券、電子マネー・ポイント・マイル、通信料金等)
・資産性の高いもの
(電気・電子機器、家具、貴金属、宝飾品、時計、カメラ、ゴルフ用品、楽器、自転車等)
・高額の返礼品
・返礼割合の高い返礼品
◎返礼割合を3割以下にすること
◎市民には返礼品を送付しないよう
◎(地場産品規制)「地域資源を活用し、地域の活性化を図ることがふるさと納税の重要な役割でもあることを踏まえれば、返礼品を送付する場合であっても、地方団体の区域内で生産されたものや提供されるサービスとすることが適切・・・」

総務省の調査は自己申告制、隠れ「返礼品率3割」が存在

なお総務省の調査は、あくまでも自己申告ですので、3 割以下と申告している自治体の中でも 3 割以上の還元率で実施している自治体は沢山ありました。余計なことかも知れませんが、現在でも 3 割と申告しながら、3 割を超える返礼率で実施している自治体は、多くはないですが存在します。

まぁ、そうですよねと。

その中で、「誠実に返礼品率を申告し」「ふるさと納税規模が大きい自治体」が総務省に狙われていたというのですから、なんとも不公平な話です。

泉佐野市は、この不公平を作った決定打が野田総務大臣(当時)の発言だと指摘しています。

地場産品規制

突然の通知、またまた自治体は大混乱
そのような中、通知を出さないと言っていた野田大臣が、2018 年 4 月にまたもや返礼品の規制に関する通知を出します。それも、かつてないとんでもない規制でした。「地場産品規制」です。

地場産品規制による問題点をコミカルに訴えた泉佐野市の取組はこちらで紹介。 

常軌を逸した総務省のパワハラが始まる(2018 年) 

 泉佐野市に対しても、総務省とのやり取りとの中で、総務省の担当者から「交付税などどうにでもできる」という趣旨の発言があり、脅しともとれるような違法な関与だったのではないかと考えています。 

「交付税」については、その後特別交付税の減額措置が取られました。

その問題点については以下にまとめてあります。

特別交付税からのふるさと納税分減額措置の総務省改正省令 

ふるさと納税の減額措置はなぜ悪質なのか

泉佐野市は、この頃から通知を守らない自治体の名前を公表したりして、混乱の原因を作った総務省が責任を自治体に転嫁してきた、と主張しています。

総務省が「ルール」という「3 割以下」「地場産品」という規制は、総務省の一方的な見解の押し付けに過ぎません。また総務省が行ってきた通知は、「技術的助言」の範囲であり、本来それをどうするかの判断は自治体に委ねられているはずです。それをあたかも守る義務があるかのように「ルール」という表現を使い、それに沿わない自治体を「違反自治体」と名指しで批判するという構図には怒りというよりは、国家権力への恐怖を感じました。

続く、総務省からの嫌がらせ、ペナルティも

2019 年 3 月 22 日、本来本市が得られるはずだった特別交付税が、後出しジャンケンのような省令改正で大幅に減額されました。その額は、約2億円という大きなものです。
それ以外にも、大阪府を通じて、府の貸付に関する優遇の廃止や、利率の高い金融機関への変更指示などの経済制裁的なものや、通常では考えられないタイミングで国の会計監査が入るなど、現在も様々な嫌がらせを受けています。

後だしジャンケンのような省令改正

省令ということは、国会で審議される法律とは異なり、省庁がその裁量で勝手に決める事ができる、ということです。これはふるさと納税制度の根拠が書かれている地方税法の改正とは別個の話です。

新・ふるさと納税の 3 つの問題点

➀経費 50%問題
総務省が示した「経費率 50%」という急に出てきた新たなルールは、寄附募集を積極的に行いたい自治体にとって相当厳しい内容であり、現在、全国の自治体が困惑しています。

②地場産品問題
そもそも地場産品規制は、持てる者と持たざる者で格差が生じることは明らかであったため、総務省は、多くの自治体からの要請もあり、地場産品の定義を緩和したと言っているようですが、現実には効果が出るとは思われず、従来から懸念していたとおり、特産品資源の乏しい自治体には厳しい競争環境になると思われます。

③指定制度問題
指定制度は、まるで自治体に踏み絵をさせるような内容になっており、総務省の恣意的な解釈によってふるさと納税に参加できる自治体を選ぶため、地方自治体が総務省の機嫌を伺わざるを得ないような、地方自治の理念から程遠いルールになったと考えています。

この問題点については泉佐野市が会見の場でスライドを用いて説明しているものがあります。

指定制度問題

指定制度とは、今年6月1日から、総務省の許可を得た自治体でなければ、ふるさと納税制度を利用できないというものです。

これは今年3月の地方税法の改正によって行われました。

総務省の顔を伺わなければならないような制度であるということ以上に、この制度の重大な問題として、「昨年11月以降の取組も考慮する」ということが総務省の方針で決まったというものです。そのことについて事前の通知は何もなかったようです。

これも特別交付税の減額措置と同じく、総務省が勝手に決めたことによる不意打ちです。以下で論じています。

泉佐野市のふるさと納税寄付額が497億円に:メディアが報じない総務省のいじめ

【泉佐野市】3月31日でふるさと納税の受付を一旦停止:改正地方税法の影響か 

安倍政権の怠慢、石田総務大臣の無能

加計学園問題でも岩盤規制が問題になりましたが、要するに官僚が既得権益を守ろうとする構造が諸悪の根源であることが非常に多いわけです。

加計学園も第二次安倍政権になってからも門前払いがあったように、既得権益の壁を突破することについて、安倍内閣がどれだけ本気で向き合っていたかと言うと、かなり疑問符がついていきます。

自民党内の守旧派が安倍内閣のリスク要因だということが感ぜられますが、安倍総理も守旧派を切るほどの覚悟が無い(政治力が無い)という現実があります。

ネット上の誹謗中傷・陰謀論は、改革派に対して向けられていることが多いです。

それは維新などの野党議員に対しても行われています。

皇位継承問題や憲法改正などが主目的なんでしょうが、ふるさと納税問題など地方を軽視した対応をしていると安倍政権は足元をすくわれると思います。

以上