事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

安倍総理大臣が自衛隊会同で改憲訓示は憲法尊重擁護義務違反という妄言

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共産党界隈の似非憲法論

安倍総理大臣が自衛隊会同で改憲訓示

平成30年=2018年9月3日、安倍総理大臣が防衛省で開かれた自衛隊高級幹部会同で「全ての自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整える」などと訓示しました。

これに対して「憲法尊重擁護義務違反だ」と言う向きがあるのでその主張の是非について整理します。

実は1年前の以下の記事で完全網羅しているので、そちらを見て頂ければ良いのですが、今回はコンパクトにとどめます。

憲法尊重擁護義務を守るべき?憲法96条は?

憲法尊重義務は99条に定められていますが、だったら96条で憲法改正手続を定めていることの意味が通りません。

憲法尊重擁護といっても「憲法の何を擁護するのか」を言えない人は、オウム返しに言っているだけでしょう。

同様の反応は昨年5月に自民党総裁として安倍晋三氏が改憲議論の呼びかけをしたときに起こりましたが、先述の私の記事で検討しています。

議院内閣制を無視した三権分立違反論

「安倍は憲法尊重擁護義務違反だ~」と言っている者の論拠の中で、論理的に最もあり得るのが「三権分立に抵触する~!」という論ですが、議院内閣制の日本では通用しません。

日本の議院内閣制の趣旨は、行政府と立法府の協同を図る目的で立法府に属する国会議員が行政府に属する内閣を構成するというものです。

内閣に属する者たる国会議員の立法権を排除する規定はどこにもありません。

なお、「憲法は権力を縛るものだから…」などと言っている人は不勉強にも程があるので無視するといいでしょう。それ以外の論拠で憲法尊重擁護義務違反を言っている人も同様です。

発言が全て権限行使になるわけではない

また、三権分立は「権限」についての抽象的な理念ですから、総理の発言がすべて権限行使になるハズが無いので、三権分立に抵触するという発想自体があり得ません。

三権分立に抵触するというのは、例えば内閣が憲法改正原案を国会に提出するというような場合です。これは国会法で改正原案の提出が「議員」にのみ認められていることから、形式的には起こりません。
※明確化のため追記:そういう制度になったからといって確定的に憲法違反であるということではない。

内閣総理大臣職にある安倍晋三氏が「議員」として憲法改正原案を提出できるかは争いがありそうですが、おそらくこの辺りは三権分立への配慮で内閣に属する議員の名義では提出しないのではないでしょうか。仮にそのような事があったとしても、三権分立違反かどうかは分かりませんが。

安倍総理が内閣総理大臣職であるからといって、自衛隊の会同で訓示をしたからといって権限行使ではないのですから、三権分立違反とは言えません。

まとめ:自衛隊会同での改憲訓示は法的に何ら問題なし

  1. 憲法尊重擁護義務と言うなら改正を定めた憲法96条を護れ
  2. 議院内閣制の日本では内閣の議員は立法権を剥奪されていない
  3. 自衛隊会同での訓示は権限行使ではない

まとめると、自衛隊会同での改憲訓示は法的に何ら問題ありません。

本稿は「憲法99条!」「憲法尊重擁護義務ガー!」と呟き続けるゾンビに出会った際のお清めの塩程度にお使いください。

以上