事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

河野太郎ブログ「二重国籍について真意をお伝え インタビューを悪意を持って改竄し拡散する人が」

河野太郎、重国籍説明ブログ

重国籍は人口減少対策になるんだろうか?

河野太郎「二重国籍について真意をお伝え」

二重国籍 | 衆議院議員 河野太郎公式サイト魚拓

ネット上で、私のメディアでのインタビューを悪意を持って改竄し、拡散している人がいるようですので、私の真意をお伝えしたいと思います。

日本国内での2019年の婚姻件数は、599,007件ありました。

そのうち、一方が外国籍のケースは21,919件

つまりおよそ27件に1件は国際結婚ということになります。

このような婚姻の場合、日本のように父母のどちらかがその国の国籍を持っていれば子どもに国籍を与える両系血統主義の国民同士が結婚すると、子どもは父親の国籍と母親の国籍の両方を持つことになります。

欧米やオーストラリア、ニュージーランドなどでは二つあるいはそれ以上の国籍を持つことを容認する国がある一方、日本では、この場合、22歳になるまでにどちらかの国籍を選択しなければなりません。

両親のそれぞれの国籍と文化を受け継いで育った子どもが、どちらかの国籍を選択し、他方を放棄することを迫られている現状を改める余地があるのではないかと私は思っています。

二重国籍を認めていない国(中国やインドなど)や兵役の義務が課せられている国(韓国やイスラエルなど)を除いた国々の両系血統主義で得た子どもの国籍を、22歳以上になっても保有することを認めていくべきではないでしょうか。

この他に、アメリカのような出生地主義の国で生まれたことにより国籍を得た場合や、優れた業績を持つ研究者などが研究などの都合などで他国の国籍を得た場合に、国籍の選択を迫ったり、日本の国籍の放棄を義務づけたりすることについても、議論する余地があるのではないかと思います。

また、他国の国籍も保有しているものが選挙に立候補したり、閣僚や裁判官などに任命される場合などに、他国の国籍の放棄を義務づけるということは必要でしょう。

コロナ禍で、日本の内向きの状況がさらに加速する中で、国際的な日本の立ち位置をしっかりと考えていく必要があると思います。

自民党広報部長の河野太郎議員が「重国籍について真意をお伝え」としてブログを1月15日にUPしました。全文を掲載しています。

読んだ印象としては、FCIでのインタビューでの回答における論じ方とはロジックの組み立て方が若干異なっているなと思います。

もっとも、ここで「矛盾だ」などと言うつもりはなくて、話し言葉よりも文章で書いた方が本心に近いでしょうから、そちらが本来の主張だという受け止めをしていきます。

「ネットでインタビューを悪意の改竄・拡散をしている人がいるよう」

いる「よう」って何なんだろうか?特定したんだろうか?

当該インタビューは動画を添付したものがTwitter上で拡散されている例がありますが、添付された動画自体は上掲のFCIのインタビュー動画の該当部分(10分頃以降)をそのまま掲載しています。

河野太郎議員の動画で見られる発言の書き起こしは以下

22歳でどっちかを選べというのは、これはもう今の現実に合わなくなってきているんだろうと思います。かつてはいろんな国で兵役があって、日本国籍の人が二重国籍だとそっちの国で兵役に行かなければならないだとかいろんな説明がありましたけど、そういう時代でもないと思いますし、今年、ノーベル賞を取られた真鍋先生はアメリカで研究をするためにアメリカ国籍を取るために日本の国籍をギブアップしなくてはならなかった。日本からしても大きな損失になっていると思います。また、人口がこれだけ減っている日本がせっかく国籍を持ってる人がいるのに重国籍はダメですというのもおかしなことだと思いますので、私はこれはもう二重国籍をしっかりと認めていく、少なくともお互いに認めようよという国とは二重国籍を認めていくということは考えていかなければいけないと思います。

なお、この話題の前に「在米邦人との交流」について論じているが、文脈としては一度途切れた上で質問がなされている上、ブログの通り重国籍の文脈の対象はそうした人たちに限らない。

動画では真鍋博士の例も挙げていることから「人材の海外流出を惜しむ」文脈の要素が強い言い方となっています。

しかし、「人口減少⇒だから重国籍を」というロジックがよくわからない。

在外邦人(現行法では「在外邦人だった者」)が、子供の世代も含めてスムーズに「戻って」来れるようにという意味なのだろうが、それは相手国も理屈の上では同じ条件

なので、人口減少対策とするならば、既に二重国籍を認めている国との相互承認で、となるだろう。ブログでも「二重国籍を認めていない国…を除く」としている。

ただ、同時にブログでは「日本国内で婚姻の届出をした国際結婚」を取っ掛かりにしているのだから、日本国内で生活する重国籍の子供の例も含めた扱いを論じていることになっています。

拡散されている当該ツイートが河野議員の主張を歪めているとはまったく思えない。

とすると、「ネット上」とあるのは2chや他のSNS、動画サイトでの発信ということなんだろうか?
それとも、FCIの動画自体が(編集されているのは分かるが)何か重要な文脈を欠落させているということなんだろうか?流石にそうであるならばそれを指摘するべきだろう。読売新聞のイージスアショア撤退に関する記事を「フェイクニュース」と断じたのと同じ匂いがするんだが。

2019年の日本の婚姻件数と国際結婚の動向

人口動態調査 人口動態統計 確定数 婚姻上巻 9-18 夫妻の国籍別にみた年次別婚姻件数・百分率 | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口

結婚と家族をめぐる基礎データ 内閣府男女共同参画局 令和3年11月2日 

2019年の婚姻件数599,007件、そのうち一方が外国籍のケース21,919件はここで確認。

27件に1件=27.3件に1人ですが、実は右肩上がりに増えているわけではありません。

統計を見ると過去最も高い国際結婚の比率は2006年の16.3件に1人でした。

2013年⇒30.7件に1人であり、一時期、比率は下がっていたことになります。

相互承認した両系血統主義(父母の一方の国籍が自国のものであれば、子に自国の国籍取得を認める主義)の国同士という前提だが、日本国内で婚姻届を出した者の子供が一度海外に行っても国籍があれば戻ってきやすいだろう、国籍選択の負荷が軽減されるという理屈は理解できます。

ただ、河野議員も「他国の国籍も保有しているものが選挙に立候補したり、閣僚や裁判官などに任命される場合などに、他国の国籍の放棄を義務づけるということは必要でしょう。」と指摘するように、制度上、手当をしていかなければならない要素はたくさんあるでしょう。

「重国籍を認める」というのは相当大きな政策変更ですから、そのロジックの詳細を知りたいというのは当然。少なくとも動画で表に出たロジックだけでは不安になる人が出てくるのは仕方がないと思います。

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