事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

国会前大集合デモ:道交法違反のバリケード突破決壊動画2018年4月14日

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2018年4月14日の国会前大集合と題されたデモにおいて、警察のバリケードが強行突破されたので突破の瞬間ないし直後の動画配信をしているツイートをピックアップしました。

比較的近くで撮られているもので、顔なども見えるようなものを選びました。なお、投稿者がバリケード突破の実行者ないし煽動者であるということは確認していません。やっつけUPです。

国会前大集合デモ:バリケード突破決壊動画

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリケード突破等は法令違反

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バリケード突破は道路交通法、公安条例、その他法令に違反していると思われます。

道路交通法

道路交通法では、デモを行う際に事前に許可を取る必要があるとされています。

デモは77条1項4号ですね。

道路交通法

第七十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長(以下この節において「所轄警察署長」という。)の許可(当該行為に係る場所が同一の公安委員会の管理に属する二以上の警察署長の管轄にわたるときは、そのいずれかの所轄警察署長の許可。以下この節において同じ。)を受けなければならない。

四 前各号に掲げるもののほか、道路において祭礼行事をし、又はロケーシヨンをする等一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で、公安委員会が、その土地の道路又は交通の状況により、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要と認めて定めたものをしようとする者

許可申請の際には78条1項で内閣府令に定める事項を記載した申請書が必要です。

内閣府令とは道路交通法施行令です。

道路交通法施行令

第三章 道路使用の許可(道路使用許可証の様式等)
第十条 法第七十八条第一項の内閣府令で定める事項は、次に掲げるものとする。

三 道路使用の場所又は区間

五 道路使用の方法又は形態

この使用形態が変わる場合には届出が必要なので、当日に現場で許可された指定区間を外れた場合には同法違反となります。

東京都の公安条例

集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例

https://web.archive.org/web/20180415015843/http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1012205001.html

ここでも道路交通法と同様、デモ(集団示威運動)を行う際に許可の届出が必要とされています。

第二条 前条の規定による許可の申請は、主催者である個人又は団体の代表者(以下主催者という。)から、集会、集団行進又は集団示威運動を行う日時の七十二時間前までに次の事項を記載した許可申請書三通を開催地を管轄する警察署を経由して提出しなければならない。

三 集会、集団行進又は集団示威運動の日時
四 集会、集団行進又は集団示威運動の進路、場所及びその略図
五 参加予定団体名及びその代表者の住所、氏名
六 参加予定人員
七 集会、集団行進又は集団示威運動の目的及び名称

あれ?もしかしてデモ人数の「主宰者発表」って、ここで申請した際の数字なんですかね?

そして、この記載事項に虚偽があった場合や実際に記載事項と異なることになった場合には、違反として罰則があります。

第五条 第二条の規定による許可申請書に虚偽の事実を記載してこれを提出した主催者及び第一条の規定、第二条の規定による記載事項、第三条第一項ただし書の規定による条件又は同条第三項の規定に違反して行われた集会、集団行進又は集団示威運動の主催者、指導者又は煽せん動者は、これを一年以下の懲役若しくは禁錮こ又は三十万円以下の罰金に処する。

名宛人は主宰者、指導者又は煽動者に限られていますね。

なので、この条例の適用は、バリケード決壊でなだれ込んだだけの人間には適用されないということになります。もちろん、他の法律の適用を受けるでしょう。

国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律

国会議事堂周辺地域等静穏保持法

具体的には、「当該地域の静穏を害するような方法」での拡声器の使用を禁止しています。ただし、5条2項で除外規定があります。

第五条 何人も、国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域において、当該地域の静穏を害するような方法で拡声機を使用してはならない
2 前項の規定は、次に掲げる拡声機の使用については、適用しない。
一 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)の定めるところにより選挙運動又は選挙における政治活動のためにする拡声機の使用
二 災害、事故等が発生した場合において、人の生命、身体又は財産に対する危害を防止するためにする拡声機の使用
三 国又は地方公共団体の業務を行うためにする拡声機の使用
(違反に対する措置)
第六条 警察官は、前条第一項の規定に違反して拡声機を使用している者があるときは、その者に対し、拡声機の使用をやめるべきことその他の当該違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(罰則)
第七条 前条の規定による警察官の命令に違反した者は、六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
(適用上の注意等)
第八条 この法律の適用に当たつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。 

今回のデモは明らかに選挙運動や災害事故、国又は公共団体の業務のためのものではないので、当該地域の静穏を害する方法で拡声器を使用すれば一発アウト。懲役刑もあるという意外と重い刑です。

「国会前デモ」は違法?

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ここで、国会議事堂周辺地域等静穏保持法を見た方は『国会前デモは違法なのでは?』と思った方も居ると思います。何やら『「国会前デモ」は許可をとっていない』という話も聞きますので、そのような場合でも問題なのかについて整理します。

最初に規制法令を見ていきましょう

デモ等の規制法令

この法律で規制されている区域は具体的には以下です。

別表第一 国会議事堂周辺地域(第二条関係)
東京都千代田区霞が関二丁目及び三丁目並びに同区永田町一丁目及び二丁目の区域(側端の一方のみが当該区域に含まれる道路(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第二条第一項第一号に規定する道路をいう。以下この表において同じ。)の区間のうち、当該区域に含まれる道路の部分を除く。)

「道路」という用語にも定義があるようです。

道路交通法
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 道路 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第二条第一項に規定する道路、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第二条第八項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう。

道路法と道路運送法は以下です。

道路法

第二条 この法律において「道路」とは、一般交通の用に供する道で次条各号に掲げるものをいい、トンネル、橋、渡船施設、道路用エレベーター等道路と一体となつてその効用を全うする施設又は工作物及び道路の附属物で当該道路に附属して設けられているものを含むものとする。

第三条 道路の種類は、左に掲げるものとする。
一 高速自動車国道
二 一般国道
三 都道府県道
四 市町村道

さらに高速自動車国道とは…と、定義規定が続きますがここでやめます。

道路運送法

第二条 この法律で「道路運送事業」とは、旅客自動車運送事業、貨物自動車運送事業及び自動車道事業をいう。

8 この法律で「自動車道」とは、専ら自動車の交通の用に供することを目的として設けられた道で道路法による道路以外のものをいい、「一般自動車道」とは、専用自動車道以外の自動車道をいい、「専用自動車道」とは、自動車運送事業者(自動車運送事業を経営する者をいう。以下同じ。)が専らその事業用自動車(自動車運送事業者がその自動車運送事業の用に供する自動車をいう。以下同じ。)の交通の用に供することを目的として設けた道をいう。

「道路」の定義はいいとして、ここで「東京都千代田区霞が関二丁目及び三丁目並びに同区永田町一丁目及び二丁目の区域の区間のうち、当該区域に含まれる道路」とはどこか?

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画像の青枠で囲まれた部分とその内側の道路だと思われます。
※前の図を差し替えました。

これまで、「国会前デモ」とされたものは明らかにこの区域に含まれます。では、かつて行われた「国会前デモ」は違法ではないのか?というと、実はグレーなのです。

許可は必要でない?「国会前デモ」

東京都公安条例の規定を見ると以下のようにあります。

第一条 道路その他公共の場所で集会若しくは集団行進を行おうとするとき、又は場所のいかんを問わず集団示威運動を行おうとするときは、東京都公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。但し、次の各号に該当する場合はこの限りでない。
一 学生、生徒その他の遠足、修学旅行、体育、競技

シールズなどの学生団体が表に立ってきたのは、学生の修学のためですよ~というアリバイ作りのためだったのではないか?
(許可を取っていたなら、別にこんな小細工は必要ないです。)

おそらく、呼びかけは学生しか行っていません。しかし、現地で学生らによる「デモ」を見た人が「たまたま集まって」聞いている、呼応しているだけ、という事になります。いわゆる主宰者ポジションで音頭を取っている者は、おそらく学生しかいないのでしょう。奥田愛基が大学院に入学したのも、この「国会前デモ」の除外規定を活用できるようにするためだったのではないでしょうか?

それでも道交法上の許可は必要なのではないかと一見して思うのですが、この点については検証していません。

※本エントリ内で道路交通法上の「道路」に「歩道」が含まれないという記述をしていた部分については誤りだったため削除し訂正しました。誤った理解を与えてしまったことをお詫びいたします。

まとめ

  1. バリケード突破は道交法等の違反
  2. 突破後の拡声器使用も態様によっては法令違反
  3. 一連の「デモ」の中で警察官等への暴行等があれば、公務執行妨害等様々な罪が成立する

以上